BADO?風雲騎士?調査 |
「これは・・・・ソウルメタルの銃弾?!しかもこれはララが持っている物よりも小さい・・・・・」
「ええ。獅子緒が一昨日の晩、バヴィネスカの討伐に向かった時、二丁の魔戒銃を携えた人間を見たと言っていました。」
元老院に呼び出された凪とララはグレスに謁見をしていた。彼女が差し出したある物を見て、凪は大きく目を見開く。ララも口に出しはしなかったが、目が大きく見開かれ、驚きの表情を見せた。
「ソウルメタルの弾丸に魔戒銃・・・・と言う事は、相手は騎士なのですか?」
「恐らくそうでしょう。この謎の人物の目的は復讐だと言っていたそうです。改めて考えると、号竜『イデア』を発動したシグマを思い出します。」
布道シグマ。元は閃光騎士狼怒の称号を継ぐ布道家の長男であったが、父ゴウキが継承させる相手を自分ではなく双子の弟であるレオに与えた直後に消息を絶った。更にその後、黄金騎士の称号を持つ冴島鋼牙を含む名立たる騎士達の胸に次々と破滅の刻印と言う呪いの印を刻み付け、人間の肉体を動力源とする巨大号竜『イデア』を発動させた暗黒の道に落ちた魔戒法師である。
「あの事件ですか・・・・・」
凪は嫌悪感を隠そうともせずに小さく舌打ちをする。
「でも、おかしい。」
「何がだ、ララ?」
「ソウルメタル、手に入れた。でも、どこから?」
口元に指を当て、可愛く首を傾げる。
「プラント手に入れる、出来る。でも、難しい。」
「確かに。ゼドムを封印している塚から種を呼び出し、体内に取り込む禁術の使用が許されているのは、故人となった竜清法師やララの様なジンケイの血を受け継ぐ法師のみです。並の法師が行えばどうなるか分かった物ではありません。それについては私が調べましょう。凪、貴方はララと一緒にレオの元に向かうのです。」
「何故?」
「詳しい話はレオが話します。急ぐのです。彼は今東の管轄にいます。」
「はい。ララ、行くぞ。」
「ん。」
元老院を後にして再び市街地に出た二人。出た先は袋小路なので目撃される心配は無い。
「街はあまり好きじゃないんだがな。人が多過ぎる上にうるさいし、空気が腐っている。」
「でも、文明社会、便利。」
「確かにな。しっかり掴まってろ。」
ララの頭にヘルメットをかぶせると、自身もヘルメットを被って発車した。車道はそれなりに空いていたので渋滞に引っ掛かる事も無くグレスに指定された場所にたどり着いた。そこに立っていたのは肩を並べて立つ二人の男。一人は黒尽くめの服装に身を包んだ凪の弟分である涼邑零、もう一人は黒と暗いオレンジ色のコートを羽織って背中に鞄を背負った同い年位の青年が立っていた。
「お、来た来た。レオ、彼が俺の兄貴分の雲平凪。風雲騎士波風だ。って、同じ元老員付きだから知ってるか。」
「はい。凪さん、ララさん、お呼び立てしてすいません。」
レオと呼ばれた青年は進み出てお辞儀をした。凪とララもそれを返す。
「いや、元老院一の発明家である法師に呼ばれては行かない方が失礼と言う物だ。で、用件とは?」
「これです。」
レオは首から下げていた鞣革の袋から銃弾を取り出した。ララが使う魔戒銃に装填する物とは違い、かなり小さい。
「銃弾・・・・ソウルメタルか?」
「はい。お察しの通り、これはソウルメタルの銃弾です。獅子緒さんが薬莢を持って来てくれたお陰で可能な限り元の形を再現する事が出来ました。実験の結果、これは僕達魔戒騎士が使う武器と同じ効果を発揮する事が分かりました。見ていて下さい。」
そう言って、数メートル離れた幾つも重なった土管を指差した。
「あの土管から放たれる邪気を、一撃で消せます。」
銃弾を宙に浮かべて筆先で雷管をなぞると、乾いた音と共に銃弾は土管からもやの様に立ち上る陰我を貫き、その影は消えた。
「だが、問題はそのソウルメタルをどこから手に入れているかだ。ジンケイの人間を知る者は僅かしかいない。それに、ゼドムの塚に辿り着いたとしても、単独では不可能だ。複数犯である事はまず間違い無い。」
「その結論には、僕も辿り着きました。ですが、何もソウルメタルを使う必要は無いんです。」
「何?」
「あ!ホラーの、爪。ソウルメタルの代わり、なる。」
「そうです。一々プラントを精製する必要は無い。ホラーを狩り続ければ、ララさんの言う通り、ホラーの体の一部、特に爪や骨等を採取すれば、銃弾を作るのは難しくありません。」
「あー、盛り上がってる所悪いんだけど、」
いつの間にか蚊帳の外に置かれてしまった零が手を挙げて三人の間に入り込んだ。
「どうやって探すのさ?相手の特徴は疎か男か女かどうかも分からない。使えそうな手掛かりは何もないんだぜ?」
「そうでもないんです。獅子緒さんは言っていました。相手は影の中から現れ、影の中に再び消えて行ったと。それに加え、ソウルメタルを撃ち出せる銃を持っている。ソウルメタルを操れるのは騎士のみ。そして術を使える騎士はそうはいません。」
「そっか、そうだ!だから兄さんを呼んだのか。」
「俺も容疑者の一人と言う訳か。まあ、確かにな。術を使う騎士と言ったら真っ先に上がる名は二つある。一つは風雲騎士、もう一つは白夜騎士。」
「でも、お二人は違います。これで更に調べて行けば、更に相手の正体を絞り込める筈です。」
レオの力強い言葉に凪は舌を巻いた。法師や騎士としての腕前は一流、更にはかなりの切れ者であると言う一面を見せつけられ、短時間でここまで絞り込む事に成功したのだ。
「流石、『阿門法師の再来』と呼ばれるだけの事はある。」
「僕はこれから元老院に戻って術を使える騎士の系譜を調べます。何か分かったらすぐにお報せしますので。」
「頼んだぜ、レオ。」
「ララ、手伝う!」
「お願いします。」
「じゃ、俺と兄さんはエレメントの浄化をしておく。」
「ララ、レオさんがいるから心配は無いと思うが、気をつけろよ?」
「ん。でも、凪も。」
「ああ、気をつけるさ。」
分かれる前に最後にもう一度だけララの流れる金髪を梳いてやると、零に目配せしてバイクに乗り、走り去った。暫く走ると、河の上にかけられた橋の手前で停まる。
「兄さん。」
「ん?」
「ララちゃんの事、好きでしょ?」
「・・・・・・何故そんな事を?」
「え?もしかして気付いてないの?」
「何の話だ?ララは竜清法師の孫で、法師が死ぬ前に形見として俺が面倒を見る事になった。それだけの事だ。」
「ふ?ん・・・・」
零の態度と自分の言葉への反応が気に食わないのか、凪はチッと小さく舌打ちした。
「何だ?本当にそれだけだぞ?俺が嘘を言っている様に見えるのか?」
「あー、いや・・・・まあ、良いや。さてと、シルヴァ、陰我の反応は?」
「ここに来る途中で一斉に消え初めたわ。」
「何?!」
「ゲルバ、どうだ?」
「うむ、その通りだ。陰我が次々に浄化され始めている。凄まじい速さだ。」
説明 | ||
第八話投下です。そして再び原作キャラ登場です。 | ||
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