BADO?風雲騎士?共同
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「ブルトスレイヴですか・・・・・また厄介な代物が再び現れましたね。それも只の人間の手に渡っていようとは。」

 

普段は落ち着いた表情を崩さない元老院のグレスだが、今回ばかりはその表情も厳しく、強張っていた。

 

「既にララとレオさんが負傷しました。そして、一つ気になる事が。」

 

「何でしょう?」

 

「先端に赤い宝玉を嵌めた銀色の錫杖を得物とする白衣、白髪の男。ゲルバは魔戒杖だと言っていました。騎士の中でも最も古き武器の一つであると聞きました。お心当たりは?」

 

「魔戒杖・・・・まさか・・・・」

 

「あるんですね?」

 

グレスが手を振ると、以前凪と零が相対した白髪の男の姿が空中に現れた。

 

「彼の名は黒月イルマ、またの名を月影騎士幻無。貴方達魔戒騎士が操るソウルメタルの剣と鎧を生み出した、騎士を生み出した法師の始祖とも言える家系から生まれた騎士です。」

 

「つまり奴の一族がブルトスレイヴを制作したと言う事ですか。しかし何故それ程の人物が?」

 

「分かりません。ですが、その結果多くの騎士と法師が犠牲になりました。彼を何としてでも止めるのです。」

 

「おーーーーい!!!」

 

丁度立ち去ろうとした所で遠方から叫び声が聞こえた。

 

「この粗野な声・・・・」

 

凪の落ち着いた表情は曇り、嫌悪感を露わにし始める。

 

「お、もう来てたか。よかったよかった、丁度良い。」

 

謁見の間に息せき切って飛び込んで来たのは、布袋を肩に担いで来た獅子緒だった。

 

「何事ですか、獅子緒?」

 

「あー、盗み聞きみたいな形で耳に入っちまったのが申し訳ないが、そのー、ブルトスレイヴだっけ?多分俺様、そいつを持った奴と戦ったぜ?何か変な剣を持った奴と昨日の夜やり合ってな。まあ、ホラーの気配がしたからすぐにぶった切ったが・・・・んで、剣も折っちまったみたいでな。でも、ほれ。」

 

袋を地面に置くと、それを開いた。中から抜き身の西洋剣を一振り現れた。刀身はやはり気味の悪い赤黒い色をしている。獅子緒は破片を丁寧に並べて行った。天窓から差し込む光が刃に反射し、まるで剣が小刻みに動いている様だ。ソレ自体が命を持っているかの如く。

 

「何かの役に立つかと思って持って来たのよ。獅子緒ったら思いから嫌だ、なんて抜かすもんだから。」

 

ルルバも嘆息してそう言った。

 

「イヤー、疲れた。近くの入り口が全部閉まっててよお、閉じる前にギリギリで飛び込んだんだぜ?」

 

能天気にのたまう獅子緒を見て凪は一瞬ぽかんと惚けてそれを見つめていたが、すぐにいつもの自分に戻る。

 

「グレス様、すぐにコレを調べるべきです。何も知らない騎士や法師がこれに手を出せば、被害は更に拡大します。」

 

「分かりました。凪、貴方は獅子緒と共にイルマの行方を追うのです。」

 

「彼と、ですか?」

 

グレスは頷いた。反論しようと凪は口を開いたが、グレスの有無を言わせぬ眼力に気圧されて考え直し、開きかけた口を噤んだ。

 

「獅子緒は既に戦果を上げています。皆にも注意を呼び掛けます。貴方達も、番犬所の騎士達に通達をお願いします。」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凪、お帰り。」

 

外傷は見えないが、まだ内部のダメージが残っているのか、ララの動きは少しぎこちなく、何時も以上に弱々しい。

 

「ララ、まだ傷は癒えてないだろう?寝ていろ。」

 

「大丈夫。凪、頑張ってる。ララだけ寝る、不公平。」

 

何度かこの押し問答を繰り返したが、凪は折れた。

 

「そう言えば、レオさんは?」

 

「グレス様、呼び出し。」

 

「傷も碌に治ってないのにあのまま出て行ったか・・・・まあ、あの人なら傷薬位片腕でも調合出来ると思うが。」

 

「しかし、月影騎士か・・・・・成る程な。それで合点が行く。道理であれだけ高度な術をああも容易く操れる訳だ。凪よ、雷神壁を破られたのも致し方あるまい。あ奴は確実に数枚上手。太古から我々の戦いを影から日向から支えて来た古参の騎士だ。法術も体術も、御主を遥かに凌駕しておる。」

 

元老院を後にして獅子緒とと共に自宅に戻ると、ゲルバは重苦しい口調で凪にそう告げた。それを聞いた凪の表情も曇りだす。

 

「しっかし、ララちゃんもレオも無事で良かったぜ。」

 

「どうやって見つけた?」

 

「え?」

 

「ブルトスレイヴを持った人間をどうやって見つけたかと聞いている。」

 

「臭いだよ。」

 

「何?」

 

「だから、臭い。俺の嗅覚は犬以上なんだ。血の臭いがして様子を見に行ったら、結果的に見つけたって訳さ。」

 

何でも無さそうに肩を竦めてそう言う獅子緒。

 

「レオさんが何らかの方法を見出ださない限りは探知は無理か。面倒だな。」

 

凪は目をきつく閉じて数分の間逡巡していたが、やがて目を開いた。

 

「・・・・非常に不本意且つ不名誉だが、お前の力を借りなければならない。」

 

「何よ、その態度!!?」

 

「ルルバ、黙ってろ。正直言うと、助けるのを断られてもやるつもりだった。俺の親も、あの剣の所為で死んじまったからな。寧ろ力を貸して欲しいのは俺の方だ。頼む。」

 

深々と頭を垂れる獅子緒を見て、凪は暫く黙っていた。それを見たララは軽く凪の袖を引っ張った。彼女と視線が合い、ララが頷いた。彼女の目が語っている。彼の助けを借りるべきだと。

 

「・・・・・・良いだろう。俺もどうやら知らない間に相手から並々ならぬ恨みを買ってしまったみたいだからな。」

 

「じゃあ」

 

「だが、」

 

頭を上げた獅子緒の胸ぐらを掴んで引き寄せる。息がかかる程の距離で、澄んだ目の開いた瞳孔が獅子緒を射抜く様に睨み付けた。

 

「幾つか先に断っておくぞ。一つ、俺の使命は何も変わらない。首謀者である黒月イルマは俺の獲物だ。俺が斬る。邪魔はするな。二つ、はっきり言って俺はお前が嫌いだ。山林で年月を過ごした人の形をした獣と馴れ合うつもりは無い。あくまでこの関係は呉越同舟だと言う事を忘れるな。」

 

「分かってるさ。アンタが俺様を嫌おうが、呉越同舟だろうが構わない。俺様はあの剣を見つけ次第、一本残らず、叩き折る。邪魔をして欲しくないなら、アンタも俺様の邪魔をしないでくれ。それなら文句ねえだろう?」

 

「凪!喧嘩、良くない。」

 

ララは掴まれた獅子緒の胸ぐらから凪の手を引き離した。

 

「・・・・・手掛かりを探しに回る。ララ、閑岱に連絡しろ。非常時だ。大先輩の腕利きを呼べ。」

 

「あ、じゃあ!!!」

 

「ああ。邪美さんと烈花の力を借りなきゃならない。法術なら、俺なんて足元にも及ばないからな。」

説明
ちょっと短くなってしまった様な気がします
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