魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百二話 神様からの依頼
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 〜〜フィアッセ視点〜〜

 

 「おはようございまーす」(ボソボソ)

 

 私は今、勇紀の寝泊りしている部屋に侵入した所です。

 勇紀ったら『一緒の部屋で寝ようよ』って誘ったのに断って別の部屋で寝ちゃうんだもん。お姉ちゃんはプンプンです。

 けど、諦めません。絶対に一緒のベッドで寝るんだから!!

 

 「(ま、今はそんな事より…)」

 

 抜き足差し足忍び足〜〜っと。

 せっかくなので勇紀の寝顔を見ようと思い、ホテルの支配人にマスターキーを借りて部屋に入ったのです。

 

 「(勇紀の寝顔…小さい頃に一緒に寝た時以来見てないからなー)」

 

 お姉ちゃんとして可愛い弟の寝顔を見る義務があるのですよ。

 不法侵入?

 知りませーん。ワタシ、ニホンゴワカラナイ。

 足音を立てず、ゆっくりと目的の場所へ近付いて行く。何だかテレビでよくある『寝起きドッキリ』みたいで楽しいなー。

 

 「(ね・が・お♪ね・が・お♪)」

 

 遂には寝室にあるベッドの側までやってきた。

 ベッドまで近付くと布団を被って気持ち良さそうに寝てる勇紀。

 うーん…やっぱ寝顔を堪能するだけじゃ勿体無いよね。それに…

 

 「ジークリンデだけ一緒に寝られるのはズルいよね」(ボソボソ)

 

 勇紀の横にはジークリンデがスヤスヤと寝息を立てて眠っている。

 毎日添い寝されてると言うのだから羨まし過ぎる。

 

 「お邪魔しまーす♪」

 

 私はジークリンデが寝てるのとは反対の方向に移動してベッドに潜り込む。で、ギュッと抱き着く。

 はあ〜〜〜♪♪♪幸せだよぉ♪♪♪

 久しぶりの添い寝。これで今日は頑張れちゃう。

 

 「ふあああぁぁぁぁぁ〜〜〜…」

 

 勇紀の体温が丁度良い温かさでバッチリ目覚めてた私までまた眠たくなってきちゃったよ。

 

 「おやすみぃ〜〜〜…」

 

 私はゆっくり目を閉じて意識をシャットダウンした………。

 

 

 

 〜〜フィアッセ視点終了〜〜

 

 「……で、フィー姉は勝手に人の寝てる所に忍び込んできたと?」

 

 目が覚めた俺は現在、フィー姉を正座させ、ベッドに侵入していた事の真相を追及している。

 

 「そうだよー。ちなみに反省も後悔もしていない」

 

 ビシッ!

 

 「痛っ!?」

 

 反省も後悔もしていないらしいフィー姉にチョップをかます。

 

 「とりあえずフィー姉は朝食の時間まで正座ね」

 

 時計を見ると6時半を回った所だ。朝食は7時なので後30分程。

 

 「えっ!?私、足が痺れ始めてるんだけど?」

 

 「問答無用♪」

 

 笑顔を浮かべて俺は答える。

 

 「はうっ!勇紀の笑顔!!これで今週は勝てる!!////」

 

 笑顔は逆効果だったみたいだ。

 てか誰に勝てるんだ?

 

 「ん〜……にゅ〜〜……」

 

 モゾモゾと動いた後、ゆっくりとジークが起き上がる。

 瞼を擦りながら、頭をフラフラさせている。

 

 「ん?ジークもう起きる?」

 

 「うん……おふぁよう〜兄ふぁん〜」

 

 欠伸をしながら挨拶するジーク。

 

 「ジーク、朝ご飯食べたら一旦家に帰って制服に着替えないといけないからな。とりあえず顔洗っておいで」

 

 「は〜い」

 

 ベッドから下りて洗面所へ向かうジーク。寝起きのため若干フラフラしている。

 

 「むぅ…勇紀、ジークリンデに少し甘いんじゃないかな?」

 

 「そうかな?まあ妹の面倒を見るのは兄の役割でしょ?」

 

 「お姉ちゃんの面倒を見るのも弟の役割だよ!」

 

 「逆だよ逆!!」

 

 アンタが普通面倒見る立場なんだよ。

 

 「じゃあ私が面倒見てあげる!お姉ちゃんとして当然の役割だもんね?」

 

 「結構です。面倒見て貰う程、子供じゃないから」

 

 「もう〜♪勇紀はツンデレさんの恥ずかしがり屋さんだなぁ♪けどそんな勇紀も可愛くてお姉ちゃんは大好きです♪」

 

 どこぞの銀髪イケメンでオッドアイな自称・オリ主と同じ様な事言わないでフィー姉。

 

 数分後…。

 

 「兄さーん。顔洗ってきたよー」

 

 洗面所から戻って来たジーク。目もパッチリと開いている。どうやら眠気も完全に取れた様だな。

 

 「ん。じゃあコッチおいで」

 

 「うん」

 

 俺の側までやってきたジーク。

 そのまま後ろを向かせ、俺がジークの髪を梳きながら両サイドに髪を分けてリボンで結ぶ。

 寝る時はリボンを外しているのでストレートに髪を下ろしているジーク。こうやって朝一番に俺がジークの長い髪をいつものツインテールにしてあげるのも、習慣の1つになってしまった。

 

 「……はい、これでオッケー」

 

 「えへへ。ありがとう兄さん」

 

 はにかむ笑顔で答えるジーク。

 

 「……………………」(シュルシュル)

 

 で、俺の視界に映るフィー姉はリボンを解いてポニーテールからロングのストレートに髪形を変える。

 ……いや、何をしてほしいのかは言わずもがなだけどさ。

 

 「チラチラ…ソワソワ…」

 

 「……………………」

 

 「チラチラ…ソワソワ…」

 

 「……………………」

 

 「チラチラ…ソワソワ…」

 

 「……ジーク、朝ご飯の時間になるまでテレビでも観てようか」

 

 「まさかの無視!?」

 

 貴女は自分で身嗜み位整えられるでしょうが。

 まったく…将来が思いやられるな………。

 

 

 

 朝食を食べ終え、一旦家に帰ってジークを制服に着替えさせ、再びホテルに戻って来た俺。

 シュテル達もそろそろ家を出て学校に向かってる筈だ。

 正面玄関から入り、ホテルのロビーに来た瞬間に見知った人の背中が目に入った。

 

 「ゆうひ姉さんだ」

 

 大きいトランクを押しながらエレベーターの方に向かうゆうひ姉さん。

 俺はその後をついて肩を軽く叩く。

 

 「はい?」

 

 「おはよう、そしてお久しぶりですゆうひ姉さん」

 

 「あ、ゆう君やんか。おは……」

 

 振り返ったゆうひ姉さんは喋ってる途中で言葉を止めてしまう。

 ゆうひ姉さんが固まって十数秒後…

 

 「ななな、何でゆう君がここにおるんやーーーーーー!!!!!?」

 

 「ぐああああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!」

 

 超至近距離で叫ばれたため、俺は耳にダメージを受ける。

 

 「がが、学校はどうしたん!!?今日は平日やで!!?はっ、もしかしてお姉ちゃんがおらん間にグレてもうたんか!?アカン、アカンでゆう君!!これからはお姉ちゃんがずっと一緒におるからちゃんと学校行こ!!」

 

 更に耳元で早口に言われた言葉の音量も大きく、俺に追加ダメージを与える。

 

 「ゆう君はええ子や!!頑張ればやれる子なんやから道を踏み外しむぐぅっ!!?」

 

 これ以上、大声で喋られると耳のダメージがいつまで経っても抜けないので、ゆうひ姉さんの口元を抑える。

 

 「とりあえず落ち着いて!!俺は学校サボってる訳でもグレた訳でも無いから」

 

 「むぐむぐむぐ……」

 

 しばらくはもがいていたゆうひ姉さんだが、落ち着いてきた頃合いを見計らって俺は口を塞いでいた手を放す。

 

 「ぷはっ…」

 

 「ここにいる理由は…まあティオレさんにでも聞いて下さい。どうせ今から挨拶に行くつもりだったんでしょ?」

 

 「そやで。コンサートにはうちも出るんやし」

 

 「それより何でティオレさん達と一緒に来てなかったんです?アイリーンさんもいませんでしたし」

 

 エレベーターに乗り込んだ後、ゆうひ姉さんに尋ねる。

 わざわざティオレさん達と別々に来るなんて。

 

 「ただ単にイギリスでやってた仕事の都合で遅れただけなんよ。多分アイリーンも同じ理由ちゃう?」

 

 そうだったのか。

 

 「けどゆう君も大きくなってきたなぁ」

 

 「育ち盛りで成長期の真っ最中ですからね」

 

 「小さい頃はうちがゆう君を膝の上に乗せてたけど、いずれはうちが乗せられそうやわ」

 

 「いや、そんな事しないと思います」

 

 「ぶ〜…」

 

 ぶーたれないで下さい。

 エレベーターから降りてティオレさんがいる部屋まで向かう途中は色々聞かれた。主に俺が何してたのかって事だけど。

 それはそうと義妹が出来た事も報告しておいた。んで、睨まれた。……アンタもライバル心高過ぎです。

 その後、ティオレさんが宿泊してる部屋に着き、挨拶と一通りの説明を終える。

 

 「ふむふむ。じゃあゆう君も不思議な力を使って戦えると。なんや、リスティといい、薫ちゃんや那美ちゃんといい、さざなみ寮ってそういう人種が集まり易いんかいな?」

 

 「俺はさざなみ寮の住人じゃないんですけどね」

 

 「まあ、どんな力持ってようがゆう君はゆう君やしうちは別に距離を取って接したりするつもりなんてないから安心してな♪」

 

 「それは分かってますよ。ゆうひ姉さんの事は大体理解してるつもりですから」

 

 この人がこんな事で人付き合いを変える様な人ならさざなみ寮の住人としてやっていけんし。

 

 「んふふ〜♪理解してくれてるなんてお姉ちゃんは嬉しいわ〜♪////」

 

 頬を薄く染めて上機嫌なゆうひ姉さん。それとは対照的に

 

 「……………………」

 

 ティーカップを片手に持ちながら瞳から光を消しているもう1人のお姉様。

 そのすぐ傍に居るエリスさんとタエさんは冷や汗を掻きながらも平静を保っている。

 現在ホテル内を見回っている設子さんやキンジさん、アリアさんが羨ましい。このやや重たげな空気を感じずに済むんだから。

 

 「あっ、どうせやったらゆう君、うちの事護ってくれへん?その方が安心できるし」

 

 ガチャンッ!!

 

 そこまで言うとフィー姉がティーカップを力強く叩きつける様に置く。

 ……そんな事したらカップが割れてしまいまっせ。

 エリスさんとタエさんは『ビクッ!』と身を竦ませる。

 

 「ゆうひ、何を言ってるの?勇紀のお姉ちゃんは私だし、私の護衛をするのも勇紀なんだよ?」

 

 「フィアッセこそ何言っとるんよ。ゆう君のお姉ちゃんなんてうちをおいて他にはおらんやろ?それにフィアッセには他に護衛の人が沢山おるやんか。ゆう君までは必要ないやろ?」

 

 「だったら皆ゆうひの護衛に就けてあげるよ。正直、勇紀1人で私の事護れるだろうし」

 

 「身柄を狙われてんのはフィアッセやん。ならフィアッセの方に多くの護衛を割くべきや。ゆう君は別としてな」

 

 「……………………」

 

 「……………………」

 

 ゆうひ姉さんもいつの間にか瞳から光を消し、完全にフィー姉と敵対している。

 

 「全く貴女達と来たら…勇紀君が絡むとどうしてそうなるの?普段は仲良いのに…」

 

 『ハア〜』と溜め息を吐いて額に手を当てるイリアさん。この人の苦労が手に取るように分かるよ。

 

 「若いって良いわねぇ」

 

 いや、ティオレさん止めて下さいよ。

 

 「《おーい勇紀。聞こえるかなー?》」

 

 その時、直接脳に響く声。

 ん?

 この声は神様じゃないか?

 鳴海少将を介さずに直接念話が飛んでくるなんて。

 

 「《聞こえてますよ。どうしたんです?》」

 

 「《実はその世界に新たな転生者が転生したんでね。その事についてちょっと…》」

 

 へー。また来たのか新たな転生者が。

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 転生者?

 

 「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!?」

 

 「「「「「「ひっ!!?」」」」」」(ビクッ!!)

 

 あ、やべ。

 神様の突然の告白に思わず声を上げて驚いてしまった。

 

 「ど、どうしたの勇紀君?」

 

 タエさんがおずおずとしながらも尋ねてくる。

 

 「あ、気にしないで下さい。今窓の外に人影っぽいものが見えて驚いただけですから」

 

 咄嗟に考えた理由で答えると

 

 「えっ!?嘘!?」

 

 「まさか脅迫状の送り主が!?」

 

 何ていう言葉が飛び交って全員で窓の方を向き、警戒しながら臨戦態勢を整える。

 しかし誰もいない事を確認すると皆、緊張を解く。

 まあ普通に考えればここはかなり高い階層だから人間が窓から侵入するなんて難しい。

 俺やシュテル達みたいな『魔導師』という例外を除けばの話だが。

 ま、皆の気を逸らせたので良しとしよう。今は神様に事の顛末を聞かなければ。

 

 「《どういう事ですか?アンタまた何かうっかりミスやらかしたんですか?》」

 

 「《今回はその問いに『No』と断言させてもらうよ。というよりも転生させたのは私ではなく、別の神なんだ》」

 

 別の神様とな?

 

 「《うむ。その神は普段からやる気を今一つ見せないぐーたら神でな。今回の転生の際、術式を適当にしたせいで私の管理する『リリカルなのは』の世界に転生してしまったらしい》」

 

 …よくそんなんで神様やってるなぁオイ。

 

 「《その転生者も『とらハ』の世界へ転生希望だったらしくてな。その世界は『リリカルなのは』が主軸になってるとはいえ、とらハ要素も混じってるだろう?》」

 

 そうですね。他には現在進行形で『緋弾のアリア』も絡んでるし、キャラだけで言えば色んな作品のキャラがこの世界の住人として存在してますよ。

 

 「《ただ神々の決まりとして『自分が管理する世界以外への干渉は対称の神が許可しない限り絶対にしてはいけない』というものがあるんだ》」

 

 へー。

 

 「《私は当然許可なんて出してないから今回その神はこの決まりを破ったという事で神を解任、さらに神専用の牢獄行きだ。神には『寿命による死』がないので、今は裁きを司る神によって死刑を執行されるのを待つだけだね》」

 

 厳しいな。

 てかアンタもしょっちゅううっかりミスやらかすのに裁かれないので?

 

 「《私はうっかりさえなければ優秀だからね。ミスした分のリカバーは完璧にやってるし》」

 

 自画自賛してるよ。

 

 「《それで申し訳ないんだが、その転生者の対処をお願いしたい。私達、神の直接介入も基本、禁止なんだよ》」

 

 「《俺が担当するんですか?》」

 

 「《今、勇紀はとらハにバリバリ絡んでるじゃないか》」

 

 まあね。

 

 「《それと気を付けておいてくれ。その転生者はかなり歪んだ人間だ》」

 

 「《歪んだって、どういう事です?》」

 

 「《前世では数人の女性を強姦し、最後には首を絞めて殺害していた連続殺人犯でな。ついでにヲタクでもあったがプレイする18禁ゲームは全部凌辱、調教系の類がほとんどだ。純愛系の18禁ゲームもプレイするが、大抵脳内では凌辱してるシーンを思い浮かべて性欲を処理する様な人物だね》」

 

 「《そんな奴転生させんなよ!!》」

 

 地獄に送れよそんな奴は!!

 

 「《君の反論はもっともだが、神のせいで死なせてしまった場合はどんな極悪人でも転生させなければならないんだ。済まない》」

 

 本当に申し訳無さそうな声色で謝ってくる神様。

 

 「《…今回はアンタに文句言っても仕方ないですよね。分かりました。で、ソイツがこの『とらハ3OVA』に関わってくると考えておいて…俺が捕まえれば良いんですね?》」

 

 「《いや……》」

 

 神様は俺の言葉を否定し、少し間を空けて

 

 「《その転生者を((殺してくれ|・・・・・))》」

 

 ハッキリと『転生者殺害』の依頼を口にするのだった………。

 

 

 

 〜〜ディアーチェ視点〜〜

 

 昼休み…。

 我等はいつものメンバーと屋上で食事を摂っていた。

 

 「えっ!?じゃあ勇紀君、今週は学校に来ないんだ?」

 

 「ええ」

 

 今し方シュテルがユウキの用事について説明し終えると、なのはが少しばかり驚きながら声を上げていた。

 

 「良いなぁ勇紀君。SEENAさんやアイリーンさん達の歌が毎日聞き放題だなんて」

 

 すずかは心底羨ましがっておるな。姉共々ファンなのだから当然か。

 

 「それとユウからの伝言。『ホテルに結界が張られたら戦闘になってるだろうから誰も近付かない様に』だって」

 

 「クロノにはリンディから、守護騎士にははやてから、リニスやアルフにはフェイト、アリシア、プレシアの誰かから連絡しておいて下さい」

 

 続いてレヴィ、ユーリもユウキからの伝言をしっかりと伝える。

 

 「わたし等は何もせんでええの?」

 

 「そうだね。脅迫文を送って来る様な犯人の逮捕に協力する事は出来るよ?」

 

 子鴉やフェイトは協力すると言っておるが

 

 「それは流石に許可出来ないわね」

 

 すかさずリンディが口を開く。

 

 「どうしてですか?なのは達も協力した方が…」

 

 「アリサ、この世界では『魔法』なんてものは空想上のモノなのです。そんな力を人前で使えないというのは理解しているでしょう?」

 

 「ええ、でもそれなら勇紀だって条件は同じじゃあ…」

 

 「いえ…ユウキの父親は裏の世界では超が付くほどの有名人で『衝撃波』という普通の人には扱えない力を振るいますから。息子であるユウキが衝撃波、もしくは衝撃波以外の妙な力を持っていても不思議ではないという事です」

 

 「けど絶対とは言い切れないでしょ?『親がそんな力を持ってるから子供も持っている』なんて」

 

 「ですね。けど、今回の一件でユウキの事は裏の世界にも伝わると思いますよ?『父親同様に異能を持っている』と」

 

 アリサの言葉にユーリが答える。

 ユウキにとっては自分の名前が売れると言うのは面倒事だろうが、裏の世界では堂々と魔法が使える様になるな。

 

 「本来ならHGSで誤魔化せれば良かったのだがな。ユウキには翼など無いし」

 

 それに精密検査等で調べられたらバレるしな。

 

 「そもそも今回の一件はロストロギアが関わってる訳でも無いから勇紀君みたいにこの世界の裏に事情、理由が通じる何かが無い以上、私達管理局員が介入する事は出来ないわね」

 

 プレシアが言う言葉に我も続く。

 

 「下手に介入して我等の使う魔法の存在が公になると厄介な上、自分の周りに迷惑が掛かるかもしらんからな。だから我等魔導師組は今回は何があっても静観だ」

 

 「勇紀は大丈夫なの?裏の世界っていう響き、凄く危なそうに聞こえるんだけど?」

 

 「ていうか絶対に危険ですよアリシア。裏の世界じゃ銃器類の質量兵器は当たり前に使われるみたいですし」

 

 「ええ!?それって違法…」

 

 「時空管理局からすればな。しかしここは管理外世界…管理局の法は通じんのだぞ」

 

 「あ、そうか」

 

 …なのはよ。貴様、この世界出身の人間であろうが。

 しかしユウキの事が心配じゃないと言えば嘘になるしな。銃器類は扱い方さえ知っていれば魔法と違い、誰でも使用する事が出来る。

 当然非殺傷なんていう便利な機能もある筈がない。

 

 「(ユウキ、無茶な事して我等に心配掛ける様な事はしないでくれ)」

 

 我は空を見上げながら静かに祈るのだった………。

 

 

 

 〜〜ディアーチェ視点終了〜〜

 

 「いらっしゃい……って、おや?勇紀君かい?」

 

 「どうもです。士郎さん」

 

 学校では昼休みが終わり5時間目真っ最中の時間帯。

 俺は翠屋に昼食を食べに来ていた。護衛の役は他にもいるので昼休みはローテーションで取る事に皆と相談して決めたからだ。

 

 「学校はどうしたの?サボりは良くないよー」

 

 「サボりじゃないッスよ美由希さん」

 

 翠屋のエプロンを身に着けた美由希さんにも声を掛けられる。

 

 「ふーん。とりあえずこの時間帯に来たって事はお昼食べに来たんだよね。じゃあお席にご案内しまーす」

 

 美由希さんが営業スマイルを浮かべた後、背を向けて歩き出すのでその後をついていく。

 店内のピーク時は過ぎたのかお客さんの姿はそれ程見掛けられない。とりあえずカウンター席に案内された俺。

 

 「ご注文は何にしますか?」

 

 「ランチセットで。まだやってますよね?」

 

 「勿論だよ。ランチセットだね。では少々お待ち下さい」

 

 美由希さんが注文を繰り返して、厨房の方へ行く。

 それから昼食が出来るまでの間、俺は神様に依頼された『転生者殺害』について思い返していた。

 前世では前科持ちの犯罪者。で、別の神様が勝手にこの世界に転生させてきた……と。

 この世界では俺達以上にイレギュラーな存在となるソイツをどうにかするために、ソイツの魂を抜き取って神様たちのいる神界に持ち帰るんだとか。

 けど魂を抜き取るためには肉体の死……つまり転生者を殺害しないといけない訳で…。

 

 「(ただ、神様が殺しを依頼するのもどうかと思うんだけどな)」

 

 ついでにソイツの容姿も聞いてみたが銀髪、イケメンのオッドアイらしい。しかも自称オリ主系の人間。

 …もうヤダ。何で自称オリ主な転生者が沸いてくんの?欝だ。

 

 「(どうせ、何らかのチート能力も貰ってるんだろうし…)」

 

 この世界に転生してきたのは2ヶ月程前らしいが、その2ヶ月という日数の間で前世と同様の強姦、殺人を行っているという。

 その件数はもう二桁を突破してるとか。

 

 「(流石にそんな奴は放っておけないよなぁ)」

 

 正直、プロフィールを聞いてて胸糞悪くなった。

 

 「《ユウ君、どうするの?》」

 

 色々考えているとダイダロスが尋ねてきた。

 

 「《どうするって、何が?》」

 

 「《イレギュラーな転生者の事だよ……殺すの?》」

 

 「《……正直、殺せるかどうかは分からない》」

 

 小さい頃、日本中を回っている際、父さんに言われた事がある。

 『裏の世界に首を突っ込むなら((他人|ヒト))の命を奪う覚悟を持て。未来を見据え、ソイツが悲劇を引き起こす様な奴だと感じたなら迷わず討て』と。

 その時は素直に頷いたんだけど、いざそんな現実が目前に迫ると『殺す』という事に躊躇いを感じている。

 魔法には『非殺傷設定』がある。けど、今回は殺さずに捕えても意味が無い。転生者の魂を回収するために必ず殺さなくてはならない。

 

 「(……けど管理局に所属していても、こういう場面に出くわす可能性だってある訳だし)」

 

 管理局員は非殺傷設定を基本的に自己の判断で解除できない。

 それが許されるのは歴代の『闇の書事件』と同等かそれ以上の大規模災害を引き起こそうとする犯罪者に対してぐらいだ。

 

 「(『今回はそういった事件に遭遇してしまった』と割り切るしかない…か)」

 

 未だ胸中穏やかではないが、そう思い込んでおかないと精神的に参りそうだし。

 

 「お待たせしました。ランチセットです」

 

 そこへ美由希さんが注文の品を2人分持ってきてくれた。

 ……2人分?何で?

 

 「あっ、私もまだ休憩取ってなかったからね。せっかくだしお昼を一緒に食べようと思ったんだけど良いかな?」

 

 ああ。もう1人分は美由希さんのか。

 

 「別に断る理由も無いですから良いですよ」

 

 「(よしっ!)じゃ、一緒に食べようか」

 

 隣の椅子に腰を下ろす美由希さん。

 

 「「いただきます」」

 

 俺達は昼食を摂り始める。

 モグモグ……相変わらず美味しい料理だ。シュークリームやケーキ類だけがこの店の売り上げを支えている訳じゃ無いのが良く分かる。

 

 「ところで勇紀君」

 

 食事の最中に美由希さんが話し掛けてきた。俺は視線を美由希さんの方に向ける。

 

 「さっき眉間に皺が寄って考え事してるようだったけど何か悩んでたの?」

 

 「…そんなに皺が寄ってました?」

 

 「うん」

 

 「まあ、2つ程悩みがありまして1つは個人的な事なので自分で解決してみせます」

 

 説明するには転生者の事とかを言わざるを得ない。

 そんな事、言う訳にはいかないからな。

 

 「そっかぁ…何かあったら言ってね。相談に乗るぐらいの事は私にも出来るから」

 

 「ありがとうございます」

 

 「それで2つの内後1つの悩み事って?」

 

 「戦力不足っていうのが悩みなんです」

 

 「戦力不足?」

 

 美由希さんが頭の上に疑問符を浮かべてる。まあこれだけじゃ理解出来ないよな。

 俺は周囲を確認する。一般のお客さんはいない。俺が悩んでる間に会計を済ませ、店を出た様だ。

 

 「実は俺が学校に行ってない事と関係がありまして……ぶっちゃけていうと有名人の護衛をする事になったんです」

 

 「へー…有名人の護衛か。凄い事じゃない」

 

 「で、俺以外にも護衛の人はいるんですが、腕の立ちそうな人がやや少なく感じてるんです」

 

 「ふむふむ」

 

 「もしこちらの護衛の人達以上の人数で危険な輩が迫ってきたらと思うと不安になるんですよねぇ」

 

 『ハア〜…』と軽く溜め息を吐く。

 今回の一件、脅迫状の送り主である『ファン』、原作OVAでファンに雇われ、美由希さんと闘った戦闘狂の『グリフ』、そして緋弾のアリアから『ブラド』と今回相対するであろう『転生者』。

 転生者は俺が、ブラドには武偵のキンジさんとアリアさん。後、タエさんと設子さんもブラドにぶつけるとしてエリスさんがフィー姉の護衛をさせるとなるとファンとぶつかるだろう。

 ……誰がグリフの相手するんだ?一般のSPさん達じゃ絶対無理だ。

 それに他にもイレギュラーな要素が混じって来るかもしれないし。

 そう考えるとマジで戦力足りねー。

 なのは達魔導師組は今回参加させないから除外。

 …いや、他にも伝手があるっちゃーあるんだけど。

 

 「ねえねえ勇紀君」

 

 俺が思案していると美由希さんにクイクイと服の裾を引っ張られた。

 

 「私で良ければお手伝いしようか?」

 

 「はい?」

 

 「ほら、私も父さんや恭ちゃんには劣るけどちょっとばかし剣には自信あるんだよ」

 

 …どうしよう?

 確かに美由希さんが来てくれたら心強いし、原作の様にグリフを抑えるのにはうってつけなんだけど。

 

 「(グリフが原作より強かったりしたら、美由希さんが危ないし…)」

 

 悩むなぁ……。

 

 「父さん!父さーん!!」

 

 って、士郎さんを呼び始めた!?

 

 「どうしたんだ美由希?」

 

 「うん、実はね…」

 

 美由希さんが事情を説明中…。

 聞き終えた士郎さんはゆっくりとコチラに視線を移す。

 

 「勇紀君」

 

 「何でしょうか?士郎さん」

 

 「美由希を護衛として雇ってあげてくれないか?剣の腕は僕が保証するよ」

 

 「……良いんですか?」

 

 「うん。美由希は既に恭也と共に裏の世界にも手を出している。実力も恭也と肩を並べる程だ。しかし経験だけが唯一恭也に劣っているため恭也を越えられない」

 

 むむ、恭也さんと肩を並べる……か。それは凄い。

 

 「だから今回美由希を連れて行ってほしい。もし、戦闘にでもなるんだったらこの娘に経験を積ませてあげてほしいんだ」

 

 「成る程」

 

 そこまで言われると勧誘したい。戦力は多いに越した事は無いからな。

 

 「とりあえずティオレさんに連絡入れてみますからちょっと待っていて下さい」

 

 俺は一旦店の外に出てティオレさんに連絡を取る。

 ……結果としてはOK。雇ってくれるとの事。

 その旨を士郎さんと美由希さんに伝える。

 

 「じゃあ、雇って貰えるんだね。私、頑張っちゃうよ」

 

 「無茶はしないで下さいね」

 

 「それはお互い様でしょ」

 

 ですね。皆を心配させたくはないし。

 

 「もし私が危なくなったら助けてね♪」

 

 「その時、美由希さんと行動を共にしているのなら全力で守りますから」

 

 笑顔を浮かべて答えておく。

 

 「あうぅ…そ、その時はよろしくお願いします////」

 

 顔に赤みが増した美由希さん。

 

 「(……美由希が先かなのはが先か……勇紀君を射止めてしまったらこの家を出て行くのだろうな)」

 

 何故に睨むのですか士郎さん?

 士郎さんから発するプレッシャーにやや圧され、俺は冷や汗を止める事が出来なかった………。

 

-2ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 新たな転生者…勇紀に殺らせるか他の誰かに殺らせるか悩み中です。

 それほそうと3つ程ご報告。

 1つ目はアンケートの結果が出ました。

 結果………C番になりました。

 コメント欄の集計だけならA番なのですが、この小説を読んでいる地元の友人数人は普通に口頭で伝えてきたので最終集計がA番を上回りました。

 アンケートに協力して下さった皆さん、ありがとうございます。

 

 2つ目はコラボのお知らせです。この最新話を上げるまでの間にショートメールで3人の作者様からコラボ依頼が来て自分は今嬉しい悲鳴を上げています。

 本編との兼ね合いがあるので超・番外編を上げるまでには時間がかかりますが、気長に待って頂ければ幸いです。

 3つ目。

 

 これは前回コラボした『魔法少女リリカルなのは 闇を纏いし者』の作者、夜の魔王様がこの作品とのコラボ作品を書いて下さいました。

 他の作者様が書く勇紀達の奮闘に新鮮味を感じてました。内容はハーメルンに掲載されてますのでご覧下さい。

 夜の魔王様、ありがとうございました。それとお疲れ様です。今後も体調に気を付けて頑張って執筆して下さい。

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
いやはや、なんだかどんどん大事になっていきますなぁ・・・しかも神様直々に”殺せ”と来ましたか。嫌な予感がする・・・(海平?)
それは兎も角、今回の事件を切欠に勇紀が御神流を覚えるって展開があっても良いんですけどね。そうすれば手札が増えるだろうし。(俊)
……makeさんが本気を出すのなら、馬鹿二匹の転生特典を使えるモノは透が手に入れてからにして欲しいですね。馬鹿二匹は存在自体が必要無いですから(俊)
ムムッ?!これは私も本気で考えなければなりませんかね・・・・・・。(make)
神様って「地上には要らない人だから」天にいる、なんて話がありますが………混沌具合が加速してますね。勇紀君、一般的な倫理観とどう折り合いを付けるのか。続きが楽しみです。(てんぺす党)
美由希もヒロイン入りになっちゃったか・・・(にゃん死神)
前世も現世も強姦殺人犯とは!!○すしかないでしょ!神のせいの理由は@起案段階からの執行手続き自体に神が関っていたA執行以外の死(警官により射殺・獄死等)のせい。@は無いだろ(刑死したのに性格放置転生)。(道産子国士)
新たな転生者もサウザーには勝てんだろ()あいつ強すぎるしw(黒咲白亜)
確かに悩みどころですね。他の誰かが殺ったところで勇紀の性格で悩まずに居られるわけもないし…(プロフェッサー.Y)
相変わらずお姉ちゃんズはフリーダムだなw さて勇紀は性格的にも○すことができるかどうかですねぃ。あとは現場をヒロイン達に見られてしまうなんて事が無ければいいですが(氷屋)
↓いやいや、サウザーは勇紀の命令しか聞かないし、存在感が在り過ぎるから護衛対象のフィアッセ達に精神的プレッシャーを与えると思いますよ?(俊)
↓護衛はサウザーだけでも十分なんじゃないか?(nikora)
犯罪者な転生者はサウザーの南斗鳳凰拳の餌食になって欲しいですね。勇紀の方は父親に負けた惨めな敗北者が相手で良いんじゃないですかね?(俊)
屑は滅尽滅相でフィニッシュです。いくら勇紀が優しくても家族や友人が被害にあうかも知れんのだからそこらへんでスパッと割り切れるようになる事を祈る(Thanatos)
個人的には勇紀には人を殺めてほしくないです。殺した方がいい対象かもしれませんけどね(ohatiyo)
でも、この世界の為にも殺した方が良いのは事実なんですよね。犯罪者を殺す事で勇紀がどんな覚悟を決めるのか、期待しています。(俊)
遂に美由希も本格参戦かな? ここから巻き返して欲しいですね。しかし、勇紀に転生者の殺害依頼ねえ? 優しい勇紀が殺せるのかがポイントでしょうね。(俊)
アサシン『約束された勝利の剣で一瞬で灰も残さず滅却して欲しいですね』(アサシン)
勇紀が殺すとしたら宝具を使用してほしいですね(シュヴァイツァ)
前世の事と今世で既に二桁ならもう殺すしかないよね(アインハルト)
勇紀の手での殺害を希望します(ゲス顔)(slash)
紹介感謝です。転生者はフィアッセに手を出してファンに殺られればいいよ。てかろくな神がいない(夜の魔王)
殺したほうが良いと思いますね前科が前科ですし。(アラル)
今回の件に関しては、他人事と感じてしまうだろうが、殺すべきであると思う。そうでなければ今後、危険な目に合うことが増えるかもしれない(FDP)
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