恋姫婆娑羅
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「右目の調練」

 

 

 

 

 

 

 

城の一室で何やら呻き声が聞こえてくる。

 

「この状況ではどのような策を執る?」

 

「・・・い、一点突破・・・?」

 

「・・・本気じゃねぇよな?」

 

「え、えぇと・・・。あっ! 中央突破かッ!」

 

頭を抱える小十郎、現在、彼は春蘭に頼まれて戦術や剣技など様々な事を教えていた。

 

「良いか? この場合はだな・・・」

 

「うぅ・・・。なぜ、そのような面倒な動きをしなくてはならないのだ・・・」

 

「何度言ったら分かる? 如何にこちらの損害を減らしつつ敵を倒すかと言う事を教えているのだろう?」

 

「片倉・・・。貴様は、華琳様の軍勢がそこらの凡敵に後れを取るとでも言うのか!」

 

「はぁ・・・なんでそうなる」

 

小十郎は何気無しに春蘭の頼みを了承したが、考えていた以上に大変な事であった。

いくら小十郎が真面目に教えても、春蘭の超理論で話が全く進まない。

よくもまぁ、これまで一軍の将としてやって来れたものだと逆に感心する。

 

「春蘭よ・・・。お前、これまで兵法書の類いを見た事は?」

 

「なんだ、有るに決まっているだろう? ・・・・まぁ大体理解出来なかったから途中までしか読んでないがな!」

 

怒鳴りたくなる気持ちをグッと堪え、春蘭を見据える。

 

「・・・そんな事を胸を張って言うなよ」

 

「・・・? 戦場では武の腕があれば十分にやって来れたぞ? 策やら何やらは全部、秋蘭や華琳様がやっていたしな」

 

痛む頭を押さえて、どうしたものかと思案する小十郎。

それを不思議そうに見つめる春蘭の真っ直ぐな瞳が何とも憎らしい。

純粋故にそれを全て信じてしまう春蘭の性格は人としてはとても美しいものだ。

しかし、将としては些か問題がある、時には何かを疑い、時には狡猾に立ち回らなくてはならないのだ。

このままでは不味いのだが、教える手段がというより、教えても理解が付いてこない。

 

「姉者、調子はどうだ?」

 

「秋蘭! ああ、順調だぞ!」

 

「そうかそうか、姉者は順調か・・・」

 

様子を見に来た秋蘭は、元気一杯の春蘭と見るからにやつれている小十郎を交互に見て状況を理解する。

 

「・・・片倉よ、姉者は中々強敵だろう?」

 

「分かっていたつもりだったが・・・。ここまでとはな」

 

遠い目をして、小十郎はあの日の事を思い出す。

 

 

 

 

 

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その日、小十郎は腕の怪我も大分良くなり、まともに世話出来ていなかった畑へと足を運んでいた。

育った野菜の収穫は片手でもなんとかなっていたものの、土の手入れとなると片手では厳しいものがあった。

誰かに手伝ってもらうという手段もあったが、自分の畑は自分でなんとかすると言うのが小十郎のポリシーである。

以前より少しばかり荒れてしまった畑に鍬を入れていく、離れて少ししか経ってないのだが、土の感触が懐かしく感じる。

思わず顔がほころんでいく小十郎であったが、そこにおずおずと近寄って来る影があった。

 

「お、お〜い、片倉。・・・ちょっと良いか?」

 

「ん・・・なんだ、春蘭じゃねぇか。どうかしたのか?」

 

「い、いや・・・その・・・なんだ・・・」

 

「・・・? 歯切れが悪いな? 何か言いづらい事か?」

 

顔を俯かせてモジモジしている春蘭に怪訝な表情を向ける小十郎。

あの反董卓連合での出来事から春蘭の様子がどうにもおかしい、話し掛ければ顔を赤くして飛び上がり、顔を合わせればこのようにモジモジと俯くばかりである。

病気かとも心配したが、どうやらそうでも無いらしい。

 

「あ、あの時の事なんだが・・・」

 

「あの時だと? ・・・いつの事を言っている?」

 

「だ、だから・・・。お前に庇って貰った時の事だ・・・」

 

「なんだ、その事はもう良いと言った筈だが?」

 

春蘭が言っているのは反董卓連合での事、己の無茶で小十郎に怪我をさせてしまった時の話である。

あの時は、春蘭には死ぬほど謝罪され、秋蘭には泣きながら感謝された。

それ程大した怪我でも無いのに、看病と言って自分の世話を焼きたがるこの二人には大層手を焼いたものだ。

 

「それは分かっている・・・。今日は謝罪では無く、お前に頼みがあって来たのだ・・・」

 

「頼みだと?」

 

「あ、ああ、怪我をさせてしまった私がこんな事を頼むのも可笑しいかもしれないが・・・。私に戦術と剣技を教えてくれないだろうか?」

 

「・・・どう言う風の吹き回しだ?」

 

「い、いや・・・。もう私の不手際で誰かに迷惑を掛けたく無いだけだ・・・。秋蘭に頼もうかと思ったが、それでは甘えてしまうと思ってお前に頼もうと・・・」

 

「なるほど・・・お前にしては中々殊勝な考えだな」

 

これまで、猪武者の代名詞と言っても過言では無い彼女の口から、このような事を聞く事になるとは夢にも思わなかった。

少々、面食らう小十郎に不安げな表情で見つめてくる春蘭。

 

「だ、ダメ・・か・・?」

 

いつもの威勢の良さはどこへ行ったのか、今の春蘭はまるで子犬のようだ。

秋蘭や華琳などであれば、この光景に悶絶している事だろう。

小十郎は言い知れぬ罪悪感を感じて、どうにも居心地が悪くなってきた。

 

「分かった、分かったからその湿気た顔をやめろ!」

 

「で、では、受けてくれるのか?」

 

「ああ、戦術でも剣術でも何でも教えてやる」

 

「や、やったー! 恩に着るぞぉ〜片倉ぁ〜!!」

 

「お、おいっ!」

 

小十郎の言葉に感極まったのか、春蘭は大喜びで小十郎に抱き着いてくる。

いきなりの行動に焦る小十郎であったが、春蘭が正気に戻るまで、この抱擁が解かれる事は無かった。

 

 

 

 

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あの時にもう少し冷静になれればと自分の未熟を改めて感じる小十郎であった。

そんな彼の何とも言えない表情に秋蘭がクスクスと笑う。

 

「まぁ、なんだ・・・。私も出来る限りの手伝いはするから姉者の事をよろしく頼むぞ」

 

「・・・分かっている。一旦引き受けた事を投げ出すつもりはねぇよ」

 

「おい! 片倉よ、いつまでも秋蘭とばかり話しているんじゃない!」

 

何やら拗ねたように小十郎の腕を引っ張る春蘭。

 

「ああ、悪かった・・・、じゃあ、今日の座学はここまでする。次に剣術の稽古でもするか」

 

「おおっ! やっとか!」

 

「良かったな、姉者」

 

「うん!」

 

剣術の鍛錬と聞いて嬉々とした様子を見せる春蘭。

座学とは大違いの態度に小十郎は苦笑いするのであった。

 

 

 

 

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さて、場所は変わって調練場で向き合う小十郎と春蘭。

二人とも己の獲物を握りしめている。

 

「じゃあ、春蘭。好きに打ち込んで来い!」

 

「分かっている! いくぞぉ! 片倉ぁっ!!」

 

一足で小十郎の目前まで接近し、大上段から剣を振り下ろす。

しかし、その攻撃が当たる事は無く易々と躱される。

 

「悪くねぇ攻撃だが・・・踏込みがもう半歩ほど浅いな。いつものお前らしくもないぞ?」

 

「く、まだまだこれからだ!」

 

その言葉通りに大剣を軽々と振り回すが、その全てがまるで予知されているかのように当たらない。

ひらり、またひらりと躱し続ける小十郎に焦りが生じているのか、春蘭の太刀捌きがどんどんと大振りになっていく。

 

「春蘭ッ! なんだその攻撃は? どんどん雑になっているぞ、もっと冷静になれ!」

 

「そんな事は無い! これでどうだッ!」

 

小十郎の激に反発するようにさらに攻撃を繰り返す春蘭、足さばきも乱れ、息も上がってきている。

そんな中で生れる隙を小十郎が見逃す筈も無く、強烈な一閃が春蘭の脇腹を捉える。

 

「ぐ・・ふ・・」

 

「あ、姉者・・・!」

 

膝から崩れ落ちる春蘭に観戦していた秋蘭が悲鳴にも似た声を出す。

それほどまでに痛烈な一撃であったのだ。

 

「立て、春蘭! この程度で音を上げる気か?」

 

「うっ・・・。言われずとも・・・」

 

立ち上がる春蘭は、まだやれると剣を構える。

そんな彼女に小十郎は一切の手抜きなく打ちかかる。

 

「良いか、春蘭。戦いの最中で冷静さを失うな! 炎のように熱い闘志を持つ事は悪い事じゃねぇ。だが、常に氷の様に冷静な心を持て」

 

「こ、氷の様に・・・?」

 

「そうだ、まぁ、これはある方の受け売りだがな・・・」

 

打ち合いつつも春蘭への助言をしていく。

彼女の腕前は、この世界においてはかなりのものだろう。

しかし、小十郎は感じていた、彼女の力はこの程度のものでは無いと。

 

(この太刀筋・・・あの頃の俺を思い出す・・)

 

小十郎は春蘭との立ち合いの最中で昔の自分を思い出していた。

あの小田原での敗走、軍神との会話、己の覚悟、真剣勝負にかまけるばかりに主の理想をないがしろにしていた事を。

春蘭は小十郎からすれば未だ、ただの武人に過ぎない、将としての自覚と覚悟を身に付かせなければならないのだ。

 

「甘いぞ、春蘭! もっと脇を締めろ! 大振りになるな! 常に相手から目を逸らすな!」

 

「うっ・・・くっそぉぉぉ!!」

 

「バカ野郎! 冷静になれと言っているだろう! 自分を見失うな! 息を整えろ!」

 

「わ、分かっている!」

 

「そうだ! 良いぞ、その調子だ!」

 

すでに何十合と打ち合い続けている。

だが、春蘭の瞳から闘志は消えてはいなかった。

結局、打ち合いは日が暮れるまで続いたのである。

 

 

 

 

 

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「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「頑張ったな、春蘭」

 

「姉者・・・大丈夫か?」

 

「・・・ッ。あ、ああ、なんとかな・・・」

 

疲れ果てて立ち上がる事も出来ない春蘭を秋蘭が心配する。

小十郎も少しばかりやり過ぎたかと頬を掻く。

 

「はぁ、しかし腹が減ったな・・・」

 

「そうだろうな・・・。では、今日は私が腕を振るってやろう!」

 

「おお! 秋蘭が料理を作ってくれるのか! それは楽しみだな!」

 

「ああ、姉者の好きな物を作ってやる。片倉も一緒にどうだ?」

 

「・・・良いのか?」

 

「一人増えたところで変わらんし、姉者もその方が喜ぶからな」

 

「しゅ、秋蘭ッ!? な、ななな何を言っているんだ!」

 

酷く狼狽する春蘭に不思議そうな顔をする小十郎と愉快気な顔をする秋蘭。

疲れ切った体のどこにそんな力があるのかと顔を真っ赤にしてブンブンと手を振っている。

 

「それでは準備もあるから、私は先に行くぞ。 片倉は姉者を連れて来てくれ」

 

そう言って立ち去って行く秋蘭を見送る。

 

「じゃあ、俺らも行くか・・・立てるか春蘭?」

 

「・・・すまないがもう少し掛かりそうだ・・・」

 

「やれやれ、仕方ねぇな・・・」

 

「え、・・・うわっ!? か、片倉!? 何をしてるんだ!」

 

疲労で動けない春蘭を小十郎は抱きかかえる。

いわゆるお姫様だっこである。

突然の行動に春蘭はこれまで見た事の無いくらいに真っ赤になって声を上げる。

 

「お、降ろせ! 片倉ぁ! は、恥ずかしいだろ!」

 

「少し辛抱しろ、どうせまともに歩け無いのだろう?」

 

「そ、それはそうだがぁ・・・。ううぅ・・・」

 

春蘭は感じていた。

ここ最近、小十郎と共にいると恥ずかしいと言うか、むず痒いというか、嬉しいというか、とにかく今まで感じた事のない気持ちになる。

この感情の正体が一体なんなのか自分には分からないが決して嫌な物では無い。

今、こうして抱えられているのも実は悪い気はしていないのだ。

なんとなくだが、この時間がもう少しだけ続けば良いと思う春蘭であった。

 

 

 

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今回は小十郎と夏候姉妹との話でした。そろそろイチャコラとしたものが書きたいとフラグを立てていきまくりたいと思う今日この頃です。

 

そんなのはいいから本編進めろやタコ! と思う方もいるかもしれませんが・・・そもそもイチャコラを書きたくてこの小説を始めたようなものなんで・・・許してね!!

 

それでは、ここまで読んで下さった方には最大級の感謝を! ではまた!

 

 

 

 

説明
さて、そろそろイチャコラさせようかと思って書いた話だよ!

閲覧にはちょっと注意してくださいね?

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コメント
nakuさん これからどんどんイチャコラ話は書いていきたいと思いますのでご期待ください! でも希望に沿えない場合もありますので何卒ご了承を・・・(KG)
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クロスオーバー 戦国BASARA 恋姫†無双 

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