超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編 |
俺達は遂に過激派ギルドの本拠地に突入することが決定した。
場所は直ぐに特定できた。そもそもこのルウィーの教会制度は他の国とは全く異なり、全ての街が一個の自治都市として活動している。故に全ての教会に連絡をして、一番遅く又は返事がなかった所を調べていけば自ずと場所が特定できるということだ。それにハードレブイカーやキラーマシンといった兵器を作るための資材や施設を用意するだけで、莫大な資金が必要だし、そこら辺も調べれば特定は容易だった。
そして、俺達は過激派ギルドの本拠地を裏から進んでいる。前からは教会関係者の集団が囮になって、騒ぎになっている隙に俺達が一気に捕縛していく作戦だ。
「テケリ・リ」『これで少なくても人やモンスターからは見つかることはありません』
「魔法って便利だね」
「こんな術式は見たことがない。異世界からの…?」
「テケリ・リ」『はい、魔法術と陰陽術を組み合わせたハイブリット式です。特に私は隠密や幻惑などの魔術を得意とします』
「へー、なんだかすごいね。武器は剣?」
「テケリ・リ」『バルザイの偃月刀と言います。所持者に魔力ブースト等のサポート機能があるんですよ。私のは特別性で姿を自在に変えることが出来ます』
ポチさんは背負っている三日月の形をした刃が特徴的な剣に目を向けた。
空の従者ってことで色々と技能を会得している様子だ。これは戦力としてかなり期待できるし、ネプテューヌ達と和気藹々と雑談できる人柄だ。
「特注品なんだー。いいなぁー、でも私もこれがあるよ!」
そういって、ネプテューヌは自分の武器を抜いた。
『機械剣・アルマッス』。ラステイションで開かれた総合技術博覧会優秀賞を取った武器だ。
「……テケリ・リ」『……血潮と魂が込められた素晴らしい武器ですね。これを作った職人は、自らの職に誇りを持つ素晴らしい人でしょう』
「そうでしょうー。シアンっていう人なんだ。それは誰に作ってもらったの?」
「テケリ・リ」『主様ですよ』
「へー、空ちゃんって、本当になんでも出来るんだね。欠点とかないのかな?」
「テケリ・リ」『そうですね。……秘密です』
「えー!そこでお決まりの企業秘密です☆は卑怯だよー!」
あの空に弱点か。
料理はプロ顔負けレベルで、武器を作ることも出来る。そして、実力は女神でも簡単に足掃うほど強く、頭もいい。更に俺に似た不死身属性を持ってどれだけ傷つこうと顔色一つ変えず戦闘を続行する……完璧じゃねぇ?性格には難があると思うが、それは弱点ではない気がする。
「空の従者ってことはあなたも強いの?」
「テケリ・リ」『どうでしょうか……主様からは才能があまりないと言われて、それなりには努力してきましたが、今でも主様には敵いませんね』
「そもそも、空と比べる時点で間違っていると思うけど」
俺のツッコミに全員が頷く。ルウィー本教会への奇襲時だって、ほとんどアイツが沈めたほどだ。
俺を含めてネプテューヌ達を含めて、やっと指で数えきれないほどだが、あいつは俺達の倍は沈めている。しかも俺達が倒したのほとんどの機体は空が仕留めそこなった奴ばかりだった。
「テケリ・リ」『しかし、この世界のモンスターには決して遅れをとりません。故に心配は無用です』
「そうよね……あの空の従者だもん、弱い訳がないわ」
「むしろ、私達の方がお世話になりそうです」
というか、現在進行形でいまお世話になってもらっている。ポチさんを中心に隠密用の結界を張っているので、近くのモンスター共はこちらに振り向きもしない。パーティーに一人は欲しい人材だ。
「……欲を言えば、空にも来てほしかったな」
「空さんは、まだまともに立ち上がることすら困難ですから仕方ないです」
「大丈夫だよ!私も含めて女神が二人もいるんだしなんとかなるよ!それに空ちゃんにはいいものを貰ったんでしょ?」
「あぁ、あいつ絶対に俺達がゲイムキャラの力を借りることすら読んでいたかもしれない」
俺達が出る前に空は地図を渡してくれた。それは、ゲイムキャラの力を高めることが出来る場所を記して物だ。空曰く((念のため|・・・・))と言っていたが、空自身がゲイムキャラに協力を要請するか、それともネプテューヌがゲイムキャラの力を借りることを予想に入れていたのか、どちらにしても相変わらず隙がない奴だ。
「これを使うとなれば、戦略的撤退も頭に入れておかないといけないな」
「地図が記した場所は世界中の迷宮の最奥。もし相手がハートブレイカーやキラーマシンなら壁を盾にしながら移動できる撤退戦には最適よ」
「よーし!これだけ用意してもらったら、後は勝つしかない!」
「そうね。とっとと終わらせて、最後の鍵の欠片も集めないとね」
全員が頷く。これだけ用意してもらったんだ。
絶対に成功させてみせる。再度決意を新たにして足を進ませる。
そして、森を抜けて崖の頂上へと出た。見下ろせば、そこには小さな集落があった。
「…隠れるのには最適な場所ね」
「周囲は山に囲まれているし、あまり人は近づきそうにないわね」
アイエフが言った通り、集落を覆い隠すように山が囲っており貿易などの目的がないと人は近づくことがない地形だった。
「テケリ・リ」《下り道は足を滑りやすいので気を付けてください》
下は雪を被った岩石の道だ。ポチさんはそれを悠々と歩き出した。
それに付いていく俺達、かなり慎重に下っていく。雪の所為で滑りやすいからだ。
「これなら飛んで行った方がいいよー」
「飛んだら目立つからダメよ」
確かに女神化して飛んでいけば楽に下れるが、それだと目立つな。良くも悪くも女神と言う存在は大きいからな。アイエフはルウィー出身なのか、多少慣れた感じで進んでいく。心配なのはネプテューヌにコンパ、そして以外にもブランだった。
「こんなところを通るなら、真っ先に女神化するわよ…っ!」
「便利な力はついついそれを多用しちゃうよね…」
同じ女神化できる同士であるネプテューヌとブランはため息を吐いた。
俺もブラッディハードか、((漆黒の皇神鎧|アーリマン・ディメイザスケイルメイル))があるが、強い敵なら使うときがあるそれと同じだ。
「しかし、こんな時に奇襲でもされたら最悪だな」
「そのとおりね」
「嫌なこと言わないでよ。本当にされたら飛べない私とコンパは一巻の終わりよ」
『見た所、集落の方は静かだし慎重に動けばいいと思うよ』
珍しく正しいことを言ったデペアに全員が頷いた。ポチさんはこんな歩きにくい状況を気にもせず降りている。俺達が遅れていることに気づいたのか、待つようにその場で停止した。
ーーーー■■ッ■■ハ■■
「……聞こえたか?」
「聞こえたよ。……物凄く嫌な予感がする」
突如としてノイズかかった機械音にも聞こえる誰かの声がした。嫌な気配と共に既知感が襲ってくる。
不安が一気に膨れ上がってきて、足を止めてしまった。
ーーーそして、黒い流星が空を切り裂いて俺達が集落を見下ろした崖に直撃した。
『やばっ!』
「ちっ、全員何かにしがみ付け!!」
途端に襲りくる振動、急いで近くの岩に手を回した。
ネプテューヌ達も滑り落ちないように近くの岩にしがみ付いて、地震に似た揺れを耐えた。
「ーーテケリ・リ!」『雪崩が起きます!全員逃げてください!!』
「ネプテューヌ、アイエフを頼む!!俺はコンパを!」
「了解ーーー女神化!!」
降り注いだ一発の魔弾は地盤を緩ませて、山を覆っていた雪が一部崩れて一気に流れ始めた。
ネプテューヌは直ぐに女神化して、バックプロセッサを羽ばたかせて身近にいたアイエフを抱き締めて一気に
上空に上がった。
「きゃぁぁ!?」
「ッーー!!」
同じく女神化しようとしたブランは揺れによって足を踏み外してその場から落ちた。
直ぐ先には、剣のように尖った岩石が並んでいた。
俺は魔力で無理やり、その場を固定して一気にブランに目掛けて跳躍して彼女の小さな体をキャッチをする。そして重力によって落ちていくのを感じながら聖句をーーー否、負と悪に塗れた邪句を唱えた。
「世に希望あれば、希望を疎い。
世に絶望あれば、絶望を喰う。
悪を背負い、負を纏い我は闇を掲げる柱となる!!」
血の様な紅い光が体を包むと俺という存在が変わった。
腕には荒々しいガントレットを装着して、武骨な甲冑をイメージさせるプロセッサユニットを纏った姿へと変革する。バックプロセッサを広げると紅いノイズで構築された双翼が展開され、後腰から伸びる二つの筒状のスラスターから紅い粒子を放出しながら、落ちている体制から整えてブランを片手で抱えると、雪崩に?み込まれる直前で手を伸ばしていたコンパの手を握り、紙一重で浮上することで?み込まれずに済んだ。
「危なかったですぅ…」
「大丈夫かコンパ?それにブランも……」
「私は大丈夫です。こぅさんが助けてくれるって信じていたから」
手をしっかり握り返してきたコンパに俺も答えるように離さないと握り返す。
しかし、このままの状況だと不味いので、雪崩が起きていない場所に直ぐに移動を始めた。それを追うようにアイエフを抱えたネプテューヌと魔法陣を足場に跳んでいるポチさんが来る。
「集落が!」
「……テケリ・リ」『……間に合いません』
雪崩は止まらず岩石を?み込みながら集落を襲った。
岩石を含むことによって、破壊力が増した雪崩はそのまま無情にも集落を一瞬で白に染めた。轟音が響き断末魔も聞こえることなく集落は雪に沈んだ。その場にいるであろう過激派ギルドに属していた人を?み込んで。
全員が口を開くことなく目を背けた。
確かに彼らは罪深き事をしたかもしれない。だけど、だからって、死んでいいほどの重罪人じゃないはずだ。
静寂の中で、集落が合った場所に着陸した。呆気ないほどの終焉だった。
彼らを((生きて|・・・))捕縛することに全力で俺達は力を入れるつもりだったのにそんな俺達の思いを捻り潰す様な結果が残った。
俺も含めてネプテューヌ達は集落が合った場所に降りた。
全員が静かに疎ましい物を見るように地面を見ていた。
「………ふざけんなよ」
そんな空気の中で、ブランは呟いた。
白い光が彼女に包み女神化したブランは雪に手を突っ込んで放り投げた。
「今まで散々ウチの大陸で好き勝手しておいてこんな展開は許せねぇぞ!!お前らは私の前で這いつくばせて土下座させて謝罪させるって決めているんだよ!!オイ、コラァ!!生きていたら命乞いの言葉を寄こせよ!!命だけは助けてやるから!!」
必死で雪を放り投げて生きているかと叫ぶブラン。
どれだけの罪人でも、結果的には誰も死んでいない、本教会は奇襲される前に戻されたのだから、何も壊れていない。邪神と言う存在に手を貸してかもしれない……それでも、やっぱり、可笑しいよなこれは。
バックプロセッサの出力を上げた。頭に響くのは負の声。それを振り払いながら翼を地面に突き刺して一気に放り投げる。
「誰か生きている!?いたら返事をして!!」
「大丈夫ですかー!!いま助けるから安心してくださいです!!」
「あー!もうー!あんたらは牢獄にぶち込む予定なんだから、ここが貴方達の死に場所じゃないわよ!!」
「お前らが苦しいって思っているなら、それを必死で思え!それを俺は感知できる力があるから諦めるな!!」
ネプテューヌが、コンパが、アイエフが続けて雪崩に埋まった人達を救う為に雪を掘り始める。
また翼を雪に突き刺して持ち上げて放り投げた。負をエネルギーで力を増す冥獄神ブラッディハード状態の俺には負を感知出来るはずだ!
女神の悪口でもいい!とにかく強く思えば負の流出している部分が特定できる筈だ!
「テケリ・リ!」『零崎様!』
「ぐっー!!」
突然、腰に手を回してその場から離された。
「なにをするんだ!」
「テケリ・リ!!」『冷静になってください!!敵が来ます!!』
俺がいた所は大きく陥没していた。
ポチさんの一喝で再び魔弾が落されと理解した。
ーーーー■■ッ■■ハ■■
「……マジェコンヌ!!」
莫大な負の塊が雲を切り裂いて舞い降りてきた。
リーンボックスで完全に消滅させたと思っていたマジェコンヌ。その姿はポチさんが見せてくれた目撃写真の通り、腕と杖だけが実体化してそれ以外は闇で構築され、それはまるで地獄から這いずりあがってきた幽鬼を思わせた。
「テケリ・リ!」『救助はあとです!』
「で、でも……!」
「テケリ・リ!!」『こいつを放していれば、この惨状が再び起こされます!!それこそあなた方、女神が最も憎みことでしょう!!』
再びポチさんの一喝にネプテューヌは歯を噛み立ち上がって自らの獲物である太刀を具現化させた。
ブランは静かに立ち上がり、荒々しく自身の背丈を超えるほどの巨大な戦斧を具現化させた。
全員が怒っている。この惨状を引き起こした張本人に対して!
「マジェコンヌ。お前は変わった。空の野郎から聞いたときは正直、信じられなかった。信じたくなかった。守護女神がそんなことをするなんて想像できなかったーーーけど」
全員が肩を並べて武器を構えた。
ブランはその瞳に烈火の如き炎を宿しながら、戦斧の矛先をマジェコンヌに向けた。
「潰す。完膚なきまで、お前の、存在は、一片も許さねぇ」
ーーー■■ッ■■ハ■■!
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