Need For Speed TOHO Most Wanted 第一話 ロックポート
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 ―六日前。

 

 窓から入る潮風が心地いい。愛車M3 GTRに乗りながら、私は窓を開いて潮風の匂いを楽しむ。

 数か月前、長いこと過ごしていたベイビューを離れ、私、霧雨魔理沙はこのロックポートへやってきた。

 ベイビューで最速を名乗っていたケイレブを撃破し、ベイビューに敵がいなくなった私は、さらなるライバルを求めてこの地へやってきた。どんな強敵が出てくるのか、今から楽しみだ。

 分岐の合流を超えると、一台のクルマが猛スピードで迫ってきた。

(おっ、早速対戦相手第一号か?幸先がいいぜ)

 私の横に並んだのはイエローのマツダRX-7(FD3S)半目に改造されたリトラにBNスポーツのワイドボディ。巨大なGTウイングが非常に目立つ。ニュージーランドのドリフター、「マッド・マイク」が乗っているレッドブル仕様のFD3Sをそのまま黄色一色に塗ったようと言えば読者にもわかりやすいだろうか。

 音が普通より甲高い。3ローター仕様なんだろうか?

 乗っていたのは女だった。肩のあたりで切りそろえられた金髪は先の方がウェーブと言うか癖がかかっていて、頭に赤いカチューシャがついている。ここからではよく見えないがどうも水色の服を着ているようだ。

 FDのドライバーは私を見て口の両端を上げると、心地いいロータリーサウンドを残して加速していった。私も続いてそれを追う。

(パワーは同等か私よりも少し上か・・・?)

 ストレートでは少し差が開く。迫力ある見た目と音通りのチューニングがなされているようだ。面白い。

 二台は一般車を止まっているクルマのように追い越しながら中心街の方へ向かっていく。

 狭くコーナーの多いこの区間でもFDの勢いは止まらない。地元でコースの勝手を知っているというのもあるんだろうが、こちらもついていくので精一杯だ。

(こりゃあ初っ端からいい獲物に出会えたぜ。ここにきて正解だったな)

 

 しかし、そんなウキウキした時間もそう長くは続かなかった。

 

 FDが中心街の大きな交差点で急停車する。私もそれに合わせて車を止める。すると、向かい側にとまっていたスカイラインGT-R(BNR34)が勢いよくこっちに加速してきて、私達の目の前で横滑りして止まった。FDはすぐさまバックしてどこかへ逃げてしまったが、残された私はリアフェンダーに小さく「POLICE」と書かれたGT-Rから逃げ遅れてしまった。

 ・・・前言撤回。幸先は最悪だ。

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 GT-Rから降りてきたのは二人の女。・・・それにしてもこっちではこんな悪趣味なパトカーが運用されているのか?ニスモのフルエアロに黒をベースに稲妻をイメージしたような白いバイナルがデカデカと張り込まれている。あれか?某国民的ロボットアニメみたいに腕利きの警官は自分のパトカーを自分好みに塗装したり改造したりすることが許されているのか?

 GT-Rを運転していたらしい婦警が口笛を吹きながら警察バッヂを見せて顔を出した。

「〜♪ふふ、飛ばすわねぇ。私はロックポート警察の霊夢よ。・・・へぇ、すごいクルマに乗ってるのね。バケットシートにロールケージまで。こんなすごいクルマで一体どこを走る気なのかしらね?」

 レイムと名乗った警官は私のM3の内装を見てニヤニヤと笑う。

「そのボンネットの下の中身に、興味がそそられるわね」

 一緒に乗っていたらしいピンク色の髪をした婦警が笑う。怪我をしているのか、右腕が包帯でぐるぐる巻きにされている。あんな怪我負ってまで業務に励むとは、ご苦労なこった。

「ふふふ、私もよ。・・・それじゃこうしましょう。これをバラシて、よく調べる。違法な改造がないかどうかをね。ひょっとするとコレは、とんでもないパーツが出てくるかもしれないわね。レッカー車呼んで!」

 マズい、私のM3はまんまGTレースに使われてるのを少しデチューンしたくらいのクルマだから、いうなれば違法改造のオンパレードだ。ベイビューでの蓄えがある程度あるとはいえ、初っ端からこのクルマを取り上げられたらたまったものじゃない。

「あなた、もうレースには出られないわね」

 私の思いを知る由もなく、獲物を捕らえたお役人さんは嬉しそうに笑っている。

「そうね。ああ、ついでに教えておくわ。ロックポートでのレースはもう、終わりよ。なぜなら、この街からあんたたちストリートレーサーが誰一人、いなくなるからね」

「なんだと・・・?」

 ずいぶんと自信に満ちた言葉だった。この街はこっちの業界でもレベルの高いレーサーが多く、ストリートレースが盛んなエリアだ。それを根底から潰すということが、この女警官は分かっているのだろうか?

「さぁ降りなさい。このクルマはうちで預かるわ」

「・・・・・」

 レイムがM3のドアを開ける。渋々私が降りようと腰を上げようとすると、

『全車に告ぐ。現在逃走する複数の車両を追跡中です。付近の車両は、至急応援に向かってください』

 二人の持っている無線から応援要請の指令が下された。耳を澄ますと、甲高いエキゾーストノートと、緊急車両のサイレンの音が聞こえる。現場は近いようだ。

「・・・チッ」

 指令を聞いた二人は不服そうに顔をしかめて舌を打った。レイムは乱暴にM3のドアを閉める。

「ハァ。・・・今回は、運がよかったわね」

 レイムはM3から離れるとGT-Rのキーを取り出した。そしてそれを私のM3のリアフェンダーにあてがい、思い切りひっかき始めた。

「な・・・!?」

 キーはリアフェンダーからフロントフェンダーまで真っ直ぐに進み、タイヤハウスの上あたりでその歩みを止めた。

「センスのいいバイナルね」

「そりゃどうも」

 大切な愛車を傷つけられて私の内心は沸騰寸前なのだが、クルマをバラされて押収されるよりかは何百倍もマシだ。この傷一つで済んだのはある種の幸運と言えるのかもしれない。

 GT-Rは豪快に私の目の前でJターンを見せ、あっという間に視界の外へと消えてしまった。とりあえず私もクルマを発進させ、移動する。

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「・・・くそ」

 レイムにやられた傷は思ったよりも酷かった。ちょうど前後タイヤハウスのてっぺん、ホイールベースと同じくらいの長さをやられていたが、相当な力で引っ掻いたらしい。クリアや塗装、バイナルはおろか、その下のサーフェイサーを貫通し、アルミの下地が出てしまっていた。

「バラされなかっただけよかったと踏ん切りたいが・・・。畜生め、あの女警官。今度会ったらぶっちぎってやる」

 あのFDの女も酷だ。余所者とはいえ、こんな仕打ちをするなんて。ここの連中はまともな奴がいないとは聞いていたが、こうも無法地帯とは思わなかった。

 あまり今日はいい夢見れそうにないな・・・。

「とりあえず錆びないように誤魔化し低度にはやっとくか・・・」

 クルマから傷の補修キットと塗装スプレーを取り出し、私は渋々修復作業に入った。

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 その二日後。どうにか修理を終えたM3でバトル相手を求めて街を流していると、

「ん?」

 公園の入り口をふさいで不自然に停まっている、水色のトヨタ・スープラ(JZA80)を見つけた。RIDOXのボディキットだろうか。

 私がスープラの脇を通り過ぎるとスープラは豪快にアクセルターンを披露し、私のM3を追ってきた。

 並んだスープラを見ると、水色のロングストレートに桃?の髪飾りをつけた女が「クルマを止めろ」と私に合図を送ってきた。

 言われるがままに私はクルマを止める。

「見かけない顔ね。他所モンかしら?」

「ああ、そうなるな」

「立派なクルマ乗ってるじゃないの。ちょっと手合わせ願えるかしら?」

「ああ、いいぜ。ちょうど相手を探してたところだ」

 スープラの女は缶ホルダーに入っていた空き缶を取り出した。

「ゴールはキャンデンビーチの港。場所は分かるわね?」

「ああ。ここいらは一通り回ったつもりだ」

「話が速いわ。じゃあ、この缶が地面に落っこちたらスタートよ」

 言うと同時、高々と空き缶を放り投げる。大きく放物線を描いた空き缶は乾いた音を立ててバウンド。同時に二台がホイルスピンをして走り出す。

(このスープラ、結構馬力あるな・・・。このクルマの加速についてこれるのか)

 クルマの性能は悪くないが、ドライバーはどうかと聞かれると首を傾げてしまう。決して下手ではないのだが、ベイビューでアタマを取っていた私から見ると速いとは言えないレベルだ。事実、じわじわとスープラとM3の差は開いている。

(まぁなんにせよ、記念すべき初バトルは勝利で終われそうだ)

 特に何ら変わったことはなくバトルは私の勝利に終わった。しかし、本当の波乱はこれからだった。

 

説明
 一話です。プロローグから少し時間をさかのぼります。

 魔理沙が主人公です。霊夢は意外なポジションかも。

  本作品は上海アリス劇団様・東方projectとエレクトロニック・アーツ様・Need For Spees Most Wantedの二次創作作品です。
 原作ブレイク、キャラ崩壊、独自解釈設定を多く含みます。物語そのものや、二次設定の使用、キャラクターの人選等不快感を覚える方は閲覧をお控えください。
 また、この物語はフィクションです。劇中のカーアクション等は非常に危険です。実際のクルマを運転するときは法規上の交通ルール・モラル面の交通マナーを守り、安全運転を心がけましょう。
  
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東方Project 二次創作 ニード・フォー・スピード クルマ 霧雨魔理沙 

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