真恋姫無双〜年老いてNewGame〜 序 |
作られた外史──。
それは新しい物語の始まり。
終端を迎えた物語も、望まれれば再び突端が開かれて新生する。
物語は己の世界の中では無限大──。
そして閉じられた外史の行き先は、ひとえに貴方の心次第。
さぁ。
外史の突端を開きましょう──。
「・・・流れ星?不吉ね・・・」
「・・・様!出立の準備が整いました!」
「・・・様?どうかなさいましたか?」
「今流れ星が見えたのよ。」
「流れ星、ですか?こんな昼間に?」
「あまり吉兆とは思えませんね。出立を延期なさいますか?」
「吉とでるか凶とでるかは己次第でしょう。このまま予定通り出立するわ。
全員、騎乗!無知な盗賊どもに奪われた貴重な遺産をなんとしても取り戻すわよ!」
「・・・イッテェ・・・」
体が軋む痛みに目を覚ましてみれば、目の前には青空が広がっていた。
目を覚ましたその場所は見知った景色ではなかった。
本来ならば天井が見えているはずの視界は大きく開けており、雲ひとつ無い青空だ。
「・・・おかしいな。確かに家で寝てたはずなんだが・・・」
ためしに昨日までの行動を振り返ってみる。
近いうちに提出する予定だった仕事を片付けるために徹夜で作業していた。
さすがに昔と違って三日連続で徹夜というわけにはいかない。少し仮眠をとって起きたら続きを・・・
と思っていたはずなんだが・・・その先がまったく思い出せない。
自分の名前はしっかり思い出せる。北郷一刀。よし、完璧。
生年月日も現住所もしっかり思い出せているので、記憶障害ではないだろう。
しかし、自分に欠陥が見つからないのであれば、なおさら今の状況は理解できないものとなった。
「・・・ここは・・・どこなんだ?」
見渡しても見渡しても青い山・・・というより高原だろうか?
こんなところ北海道でもない限り日本じゃそうそうお目に掛かれないところだな・・・
おぉ、すげぇ・・・地平線とか見えちゃってるよ・・・だだっ広いというのが正しいのだろうかねこりゃ・・・
とぼけた頭が少しずつ覚醒し始める
しかし、結局行き着いた結論は同じだった。
「・・・ほんと、ここどこなんだよ。」
もう少し若かったら俺も大声を出して周りに人がいないか確認していたのかもしれないが、
そうそう元気に振舞えるほど若くはない。
「人も見つからないことには話にならないが・・・っとそうだ、携帯携帯。GPSで見ればわかるかも。」
…。
もはやこういうときのお約束だよな。
画面の端にきらめく圏外の表示が恨めしかった。
他に持ち物らしい持ち物といえばフランチェスカの卒業記念にもらった万年筆と・・・財布はあるな、あとはタバコにライターか。
ろくなものが無かったが、財布には多少のお金が入っていたのは救いがあるぞ。
タクシーさえ拾えればどうにかなりそうだ。
タクシーが拾えるような道に行き着ければ、の話だけど・・・
そこまで調べて気がついた。
年季を感じさせるくたびれ方はしているこの服。
いま袖を通しているのはスーツではない。
無駄に頑丈な作りだが、その外見は立派に見えるあの対青春時代用の勝負服。
かの青臭い時代をともにすごしたもはや相棒というべきこいつを見間違えるはずは無い。
その服は、間違いなくフランチェスカの制服だった。
「・・・もう何がなんだかさっぱりわかんないな。」
どうしたって答えなんか出てこないんだ、こうなってしまった以上仕事なんて気にする必要も無いだろう。
そう開き直った途端に、ここしばらく味わったことの無い開放感に包まれた。
「わからない以上あわてたって仕方ない。とりあえずそうだな、南にでも向かってみるか?」
何とはなしにそう決めて立ち上がって、服についた埃を払いつつ歩き始めると、
「アニキ!変わった服着てるオッサンがいやしたぜ!」
「なんか変わった服を着てるやつが要るんだな」
「そうだな、変わった服着たオッサンが見えるな」
・・・いきなりオッサン扱いされた。
「ハァ・・・確かにここのところ徹夜続きでちょっとヒゲ面だけどな・・・そこのヒゲの兄ちゃんよりかは若いと思うぜ?」
どう見たって自分より年食ってる野郎にオッサン扱いされたことにむっとした俺は軽口交じりで言い返した。
が、どうもそれが逆鱗にふれたのかしらね?
「そんなことはどうだっていいんだよ、ほれオッサン、その服脱いでこっちに渡しな。あと持ってりゃ金目の物もな。」
そうぶっきらぼうに言い放った男の手には鈍く光る金属製のものが握られていた。
今まさに俺の首筋に当てられているこの金属・・・
俺の軽口を止めるには十分効果はあった。
「・・・これ・・・この短刀、間違いなく切れるなよな。」
「お前変なこと聞くな?ためしに引いてみようか?」
「いや・・・遠慮しとくよ・・・それにいまのまま俺の首切ったら服が汚れちまうだろ?」
「確かにそうだな。だから早く脱げよ。まだ若けぇってんなら死にたかないだろ」
ぴたぴたと頬に当てられる短刀は間違いなく切れるものだろう。
しかしなんだろうか・・・
昔の俺だったらビビリまくってたようなこの状況だが、いまだに状況が把握できていないせいだろうか、全然脅されているという気がしなかった。
むしろ・・・うまく逃げられるんじゃねぇかなとさえ思った。
「いいけどさ、ヒゲの兄ちゃん。金目のもんなんて持ってないし、俺の服って変わってるんだろ?」
「あぁ!?そうだよ!だからさっさと渡せって・・・」
「いいから最後まで聞きなよ。あらかたこの服を売ろうって考えだろうけど、それ、まずくないか?」
「・・・・・・はぁ?お前何言ってんだ?俺達ゃそれが金になりゃいいからなんでも・・・」
「だから最後まで聞けっていってるのに・・・いいか、この服は変わってる。
ひとめでそれがわかるってことはそれなりに目立つってことだろ?
見たところゴロツキのあんたらがこんなもの持ち歩いててみろ。これ以上ない目印だ。」
「はっ、なんだそんなことか。売る相手が俺らの身内だったら何の問題もねぇじゃねぇ・・・」
「お前の身内が金でお前らを売らない保障がどこにある?ただでさえ変わったものを売りつけられて金は取られるんだ。
そんなことするんだったら俺なら金で官憲にお前らを売って物だけいただき丸儲けするって。
違うか?」
「ば、バカなこと抜かしてんじゃ・・・」
「これが本当に馬鹿なことに聞こえるなら・・・ぶっ殺して服でも金でもふんだくっていくんだな。
ただ、その場合、俺だってただで殺されてはやれないから・・・そうだな・・・目玉の一つ位は覚悟するんだな?」
予想外の事に相手はあっけに取られている。
その一瞬の隙を突いてヒゲ面のリーダーの目に人差し指を突きつけ、逆の手で頭を鷲掴みにし、威嚇の体勢をとった。
「さぁ、どうする?俺は首を切られたってかまわないんだぜ?
兄ちゃん知ってるか、人間ってのはな、首を斬り落とされてもすぐには死なねぇんだとよ。」
一分だったのか、五分だったのか、それとも30秒もかからなかったのか・・・
喉もとの短刀と目に向けた人差し指。
命と目の取り合い。
その気になれば相手は無傷ですむだろうという、なんとも釣り合いの取れないこう着状態は、
意外にあっけなく終了することとなった・・・
「・・・チッ、離しやがれ!
・・・一体なんなんだこいつは・・・なんだか萎えちまった。おい、いくぞおめぇら!」
「なんですアニキ!やっちまわねぇんですかい!?」
「あぁ!?うるせぇ!こんなめんどくせぇやつ相手にしてられるか!!おらいくぞチビ!デブ!!」
ボーナスゲームと思っていた雑魚に手をかまれてイラついているリーダー格にどやされてながら退散していく。
三人組の姿が小さくなった頃になって、やっと自分の行動の愚かさと分の悪い賭けに勝ったという認識が体に追いついた。
膝は震えるし足先に力は入らない。
手の指先の感覚がだんだん遠くなって、しまいには立っていられなくなってきた・・・
つまり、腰が抜けたということだ。
「ッッッッップッハァァァ・・・アッハッハッハッハッハ!あ〜、生きた!流石に死ぬかと思ったね!」
首に当てられた刃の感触なんて今思い出しても寒気がする。
殺しなんて日常茶飯事にしてそうな目だったなあの兄ちゃん達。
あいつの気分しだいでは死んでたんだろう、と想像すると身震いが起きる。
「我ながら無茶したもんだ。アッハッハッハッハ・・・フゥ・・・あ〜生きた心地ない。
それに肝心のことを聞き忘れちゃったよ。ほかに人もいないだろうし・・・
しかし変な格好してたなあいつら。日本人であんな格好してる奴なんて見たことないし・・・」
そんな独り言を言ってタバコでも吸うかと思ったときだった。
これもまた突然に。
声をかけられた。
「あいやお見事!おぬし、まことにお見事であったな!」
「お兄さん、大丈夫ですかー?」
「まったく、あんな盗賊相手に武器なしで挑むなんて無茶なお方だ。ほら、立てるか?」
そこにたっていたのは盗賊というには程遠い
しかしどう考えても日本にはいないような
そんな三人組だった。
俺は、これから、どうなるのだろうか。
説明 | ||
某掲示板で投稿してたやつです。 ちょこちょこと手直しして上げていきます。 そんなにきつくならないように頑張りましたがオリジナル要素がありますのでそういうのが苦手な方はご注意ください。 |
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コメント | ||
面白そうですね〜しかし威嚇の体制の所がちょっとどういう状況なのかが想像しにくいですね〜(スターダスト) | ||
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