【獣機特警K-9UG】ごたいめ〜ん【交流】 |
惑星ファンガルドの衛星軌道上に停泊する空母ユグドラシル。ファンガルド宇宙軍第3艦隊の旗艦である。全長600mを超える威容は、まさに宇宙を往[ゆ]く城だ。
今、小型のシャトルがゆっくりと飛行甲板に着艦した。入れ違いのように、艦載戦闘機が、訓練のために発艦していく。
ユグドラシルは、ファンガルド地表に対して艦の上部を向ける、いわゆる背面飛行の姿勢で周回している。そのため、シャトルから降りた人物たちは、青く輝く美しい惑星を、頭上に見上げることになる。
「すごいな。これ、宇宙飛んでるのか?」
特徴的な緑色の毛皮の、ヤマネコ型ファンガーの少女が、物珍しそうに艦内を見回す。
「もう、ナディさんってば。はしゃぎ過ぎですよ。シャトルに乗った時からこの調子なんだから」
エゾリス型ファンガーの少女が、苦笑しながら、ヤマネコ型ファンガーの少女をたしなめる。
もう一人、トラ型ファンガーの少女は、心なしかぐったりとしていた。
「ぐうぅー、まだ気持ち悪い……」
「シンディ、シャトル飛び上がる時気失ってた。ナディ、シンディより強い!」
「そこ競う所じゃないでしょ」
彼女たち3人を出迎えたのは、キツネ型ロボットの女性士官だった。
「いらっしゃい、ナディちゃん、マイちゃん、それにシンディちゃん。ようこそユグドラシルへ!」
「あなたはハセガワ・レイミ大尉ですね? わたしはANCF所属の自然保護官、マイ・シューティングスターです。こちらは同じくナディ保護官、そしてこっちはシンディ保護官です。よろしくお願いします!」
マイは敬礼した。ナディとシンディも見よう見まねで敬礼する。レイミは微笑んだ。
「そう固くならなくてOKよ。さて、立ち話も何だし、ご飯でも食べながらお話しましょう。長時間のフライトでお腹も減ってるでしょう? お姉さんのおごりよ」
ナディとシンディの目が輝く。
「やった! メシ!」
「お腹ペコペコ!」
「ナディさん! シンディさんも!」
マイは2人の様子に苦笑するしかなかった。
4人は、通称「ダーティシャツ・メス」と呼ばれる、士官食堂(メスホール)に入った。様々な職種の、様々な服装の兵士が慌ただしく食事をする様子から、そう呼ばれている。
「騒がしくてごめんなさいね。メスホールはいくつかあるけど、ここは24時間営業なのよ」
ビュッフェ形式で、4人は思い思いの料理をトレーに盛りつける。ナディとシンディのトレーは、肉料理がほとんどだった。レイミとマイのは、栄養バランスがよく考えられている。
「あなたたちを呼んだのは他でもないわ。あの子が完成したのよ」
好物のかき揚げ丼を口に運びながら、レイミが切り出した。
「あの子って、ナディさんをモデルにしたっていうロボットですか?」
マイは尋ねた後にスープをすすった。ナディとシンディは、フライドチキンにかじりつくのに夢中で、ほとんど話を聞いていない。
「そうよ。ナディちゃんも、完成してからあの子に会うのは初めてでしょ?」
「え? あー、そうだ。ナディ、ホネホネの時しか、アイツ見てない」
唇を油まみれにしながら、ナディが答えた。マイが、ナプキンでその口を拭ってやる。
食事を終えた4人は、艦内のトレーニングルームに移動した。何人かの兵士たちが、トレーニング機器に向かって汗を流している。
レイミは、ランニングマシンで走っている人物に声をかけた。
「サナ! お客さんよ!」
「了解した。すぐに移動する」
その少女は、ランニングマシンを停止させ、まっすぐにこちらに歩いてきた。
彼女はナディによく似ている。ライトグリーンの毛皮、体の各所のタトゥのような模様、そして、意志の強そうな大きな瞳。
「ファンガルド宇宙軍第3艦隊所属、サナ・アローウェーブ少尉だ」
その少女、サナは、極めて事務的な口調で挨拶した。やや面食らうマイたち。
「え、えっと、ファンガルド自然保護局所属の、マイ・シューティングスターです。よろしくお願いします」
「あたしはシンディ。自然保護官だよ。よろしくね!」
「ナディだ。マイとシンディいっしょに自然保護官やってる」
3人も自己紹介する。
「オマエ、ナディ元に作られたんだな? ほんとにナディそっくりだ!」
ナディは、興味津津といった感じで、サナを見つめた。そして、手を伸ばしてサナの頬に触れる。
「フサフサだ! ナディといっしょ!」
そのまま、サナの体のあちこちを撫で回すナディ。直立不動で無表情だったサナが、やや困ったような表情になっていく。心なしか、その頬が赤く染まっているようにも見える。
「この行動に何の意味があるのか、理解できない。説明を求める」
「スキンシップ、ってヤツだよ」
シンディが答える。シンディは、ひょんなことから、動物のトラからトラ型ファンガーへと姿を変えたという経緯を持つ。野生のトラだった頃から、ナディやマイにはよく撫でられていたのだ。
「……好意的な行動であることは理解した」
ひと通り撫で終わると、ナディはにっこり笑った。
「オマエ、ナディ元に生まれた。オマエ、ナディの妹! マイと、シンディと同じ、ナディの妹だ!」
「妹……。私は貴女のデータを元に製作された。だから、貴女はむしろ、私の母親のような存在だと認識している」
サナの言葉に、ナディは目をぱちくりさせる。
「へ? ナディ、オマエの母[かか]?」
ナディのその表情に、思わず噴き出すマイとシンディ、そしてレイミ。
そして。
「じゃあなサナ! また来るからな!」
「レイミ大尉もお元気で!」
「バイバイ!」
大きく手を振るナディ、マイ、シンディ。レイミも手を振り返す。サナも、小さく手を振る。
シャトルが、頭上の美しい惑星、ファンガルドの青い大気に吸い込まれ、見えなくなる。サナはそれを、ずっと見送っていた。
その胸元には、小さな牙のペンダントが輝いていた。
説明 | ||
マイちゃん http://www.tinami.com/view/636102 シンディちゃん http://www.tinami.com/view/639095 レイミ大尉 http://www.tinami.com/view/637208 サナちゃん http://www.tinami.com/view/639242 ナディ http://www.tinami.com/view/636190 |
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コメント | ||
>>古淵工機さん 女の子同士の触れ合いっていいですよね!(尾岸 元) >>Dr.Nさん ナディ姉妹は書いてて癒されますw マイちゃんがナディの口を拭いてあげるところとか自分でも転げ回れそうでしたw(尾岸 元) 内心サナも照れくさいことでしょうwなにはともあれがんばれ!!(古淵工機) 三姉妹にまた一人妹が加わって四姉妹になった!レイミ大尉も含めた女子同士の会話、それぞれの個性が出ていてほっくりきましたw サバンナ、宇宙と活躍する場所は違うけど、がんばれ四姉妹! (Ν) |
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