超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編
[全1ページ]

犯罪神は世を憎む様な雄叫びを上げた。

周囲に漆黒の風が渦を巻きながら禍々しい魔力が周囲の雪を浮かび上がらせ、それは集まっていき巨大な氷の槍と化す。空中で停止されていた幾多の氷槍が、犯罪神の魔力を火種に一斉に襲い掛かる。

 

対峙する白金の鎧を身にまとった空はそれを剣で捌き、時に回避する。

地面は直ぐに氷槍によって針鼠のようになった。そんな氷槍を足場にして電光石火の如く駆け抜ける漆黒の影。腕を大きく捩じりながら突進する。犯罪神が咄嗟に貼った触手の壁の展開は間に合わず、既にその閃光は犯罪神の懐にあった。

 

「■■■■■■ォオォォォ!!」

 

一つ一つが凶器のように鋭くその歯牙の一撃それが身に届けば、その射線上の全ては持って行かれるほどの恐るべき上と下からの双撃は、刹那に放たれた螺旋を描く一撃が全てを覆した。

 

 

「テケリ・リ!!!」『参ノ奥義《((迅雷風烈|じんらいふうれつ))》!!!』

 

 

ドンっ!と落雷にも似た轟音と共に犯罪神の巨体が吹き飛ぶ。

本来この技は、自らの腕を捩じりながら放つ打撃技。そして、この技を放つポチの本来の姿は原型を持たないスライムの体が故に、人間と違って拳を捻じる((限界|・・))がない。螺子特有にの螺旋状模様が出るまで捩じられバルザイの偃月刀(ガントレットモード)による魔力ブーストを受け、更にポチ本来の筋力によって生み出される正に雷神の如き一撃に犯罪神の下半身には大きな亀裂が走る。

 

 

「流石、僕の従者!」

 

 

その声と共にポチの頭上を通過したのは主である夜天 空の姿だった。

剣を主体にして戦う天使のような姿の《エリス》から、鉤爪付きのガントレットを主体に戦乙女のような姿の《アサルト》に変形している。四対の翼は、上下展開式の大型スラスターに変わっており、転回性能を落して加速力を上げた形態であり、放たれた一矢の如く黄金の三本の鋭爪が犯罪神を射程上に捉えた。

 

 

「ヴァルキリー・クロー!!」

 

 

亀裂が走るその場所に激しく撃ち込まれる連撃。

飛び散る火花は、熱した鉄を叩く鍛冶場を連想させた。

 

「テケリ・リ!」『主様!』

 

「−−−ッ!」

 

従者の声に左右から巨大な腕が押し潰すと言わんばかりに迫ってくることに気づき、技を中止して上空に飛び回避する。そして手と手は合わさり、響き渡る轟音にもしあの間にいればプロセッサユニットごと潰されていたかもしれないと冷や汗を流しながら、脚部のプロセッサユニットが解放され莫大な光の粒子を吹かしながら、犯罪神の瞳に向かって剛猛な力を込めた蹴りが放たれる。

 

「ハードブレイクキック!!!」

 

大気を震わすほどの一撃。真面に喰らえば犯罪神の瞳は体から乖離せざる負えないほどの強烈な蹴りは二つの腕によって防がれた。

犯罪神の大木のような腕は((四本|・・))だ。二つを攻撃に二つを防御に実に理に叶っていると空は舌打ちをした。ハードブレイクキックは交差された犯罪神の腕によって防がれ空の動きが止まってしまう。その隙に下から腕が伸びる手に空は咄嗟にバックプロセッサを前方に回して回避行動をするが、わずかに間に合わず片足を掴まれてしまう。

 

 

ーーーゴギッ。

 

 

血飛沫が指の隙間から噴き上がった。

犯罪神の凶悪な怪力によって、空の足は潰された。脚部のプロセッサユニットごと。

それだけでは終わらない。犯罪神の瞳に光が灯っていく、腕にもとんでもないほどの禍々しい魔力が集まっていく。空には幾度もなく犯罪神の戦いを見てきて記憶がある故にどのような技を使ってくるかは直ぐに予測が出来たが、足を拘束されているこの状況で回避する手段を取ることが出来ない。更にこのプロセッサユニットの弱点として防御力は他のプロセッサユニットより劣っている。変形機構の為に装甲を柔軟にしたのが原因だ。それでも全魔力を全面に展開すれば防ぎることは可能だろう。

しかし、今の空の体はプロセッサユニットの補助なしでは立つことすら困難だ。後々の事を考えれば手段は選べられなかった。

 

「−−−ポチィ!!」

 

「テケリ・リ!」『御意に!』

 

ギリッ、と空は歯を食い縛り信頼している従者の名前を叫んだ。潰され本来の機能をまともに果たせない足を鉤爪で((切り落とし|・・・・))拘束から外れる。ポチは腕を人から粘着性のある液体に変化をさせて、それを鞭のように空の腰に回してその場から緊急回避するために引っ張る。

 

 

「■■■■■■ァァアァァァ!!!!」

 

その瞬間、『破界なる導き』が放たれる。

空たちがいる空間は白で染め上がり。

そして爆発の極光が、全てを破壊した。

 

 

 

 

 

 

激しい雨を連想させる炎弾が一瞬にして壁を蜂の巣にして粉々にして崩れ落ちる。

バックプロセッサから生み出されるノイズの双翼を大きく前方に展開することで直撃を免れているが、正直な所一発一発がとてもつもなく重く、集中力を乱せば一瞬で打ち抜かれてしまう。

 

「ネプテューヌ、場所は…!」

 

「まだ遠いよ!うー……女神化できたらちゃんと戦えるのに!」

 

「相手はFDVシステムを搭載している確率が極めて高いわ。今の私達じゃ足手まとい所か、火に油を注ぐような行為よ」

 

今にも飛び出しそうなネプテューヌをブランも複雑な表情で抑えてくれた。

世界中の迷宮、この場所は様々な色をしたブロックが積み重なる様に壁や地面を作り出している不思議なダンジョンだ。今は俺達は迫りくるモンスターをネプテューヌ達に任せながら新型ロボットの猛威を塞き止めている。

 

「空が神と言っていた化物より、こっちの方がマシよ!」

 

「そうです。あれは凄く気持ち悪いモンスターさんです!」

 

アイエフはモンスターをカタールで切り裂き、注射器の針先から圧縮された液体でモンスターを倒しているコンパが犯罪神と言われた化物について恐怖を隠せれない様子だった。

 

あれは感覚で分かる。俺と同じ負を司る神であることが。

しかも、俺とは違って全く制御されていない代物だと言うことが。

 

「あの空のことだ。きっと大丈夫のはずだ……だから、俺達はこいつをなんとかするぞ!」

 

仲間にも、そして俺自身にも言い聞かせるようにして叫んで更に双翼に力を込めた。

降り注ぐ炎弾の嵐を防ぐ。負を媒介して力を得るブラッディハードの力を行使していけばするほど、人の怨嗟が頭に響き頭痛が激しくなる。

それでも集中力を乱せず、翼を操作出来たのは後ろに守るべき人がいたからだ。

 

『紅夜!気を付けろ!あちらさん果てがないとガトリングガンを捨てたぞ!!』

 

「チッーー!!」

 

新型ロボットは腕に装着していたガトリングガンをパージした。巨大なガトリングガンは地面に落ち、空間内に大きな金属音を響かせる。そして異様な魔力を感知した時、新型ロボットの装甲に張り巡らされた刻印のような物が浮かび上がり、それは手に光となって集まっていく。

させまいと翼に回していた魔力を前方に集中して、双銃剣の引き金を引く。

撃ちだされた魔力の弾丸は俺が展開していた魔力を押し出す形で威力を増しながら新型ロボット目掛けて一気に距離を詰める。

 

「いけぇぇぇ!!!」

 

《夢幻剣戟術式兵装『アフトゥ』》

 

その瞬間、魔力の弾丸は一刀両断に切り裂かれ、胸に閃が走り血飛沫が上がった。

 

「な……に…?」

 

ボタボタボタと大量の血が落ちていき水溜りを作った。

俺は何が起きたのか整理が追いつかない。

新型ロボットの手にはいつの間にか枯れた木のような剣が握られていた。もしあの剣で斬られたと仮定しても、俺と新型ロボットの間は少なくても50メートル以上離れている。あの剣を振るったとしても、剣先すら届く訳がない。

 

『紅夜!次が来るよ!!』

 

「ぐっーー!!」

 

デペアの言葉に胸から走る激痛を抑えながら、再び翼を大きく展開して壁を作る。

後に居たネプテューヌ達は、かなり奥に進んでいる。とにかく時間を稼ぎが俺のすべきことだ。

忌々しいブーストが吹かれる音と共に翼があっさりと切断される。下段から構えから一気に振り上げる一撃に双銃剣を交差するが、単純な力勝負では歯が立たず俺はあっさりと吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。その衝撃で真っ赤な血が口から吐き出る。

 

「なんなんだ、あの剣は…!?」

 

『多分、視覚内になる物に対して絶対切断能力がある兵装…!」

 

「それってつまり、目に見える物ならなんでも切れるってことか…!!」

 

再び振り下ろされる絶対の剣。枯れた枝のような形からは常識じゃ考えれないほどの魔術が組み込まれているのか、バックプロセッサを停止させた重力に従って落ちることで紙一重で斬撃を躱す。

 

「要は剣の先に立たなかったらいいんだよな!」

 

『その通り、あれを前に防御なんてなんの意味をもたない!!」

 

血で濡れた口を拭って、再度バックプロセッサに魔力を込めることで展開されず紅いノイズの双翼を広げてその場を離れると同時に剣が突き刺さる。

双銃剣を構えて、なんとか接近戦に持ち込む。奴からすれば俺は小さく、俺からすれば大きい。小さな的を大きな弾丸を命中することが困難なように必殺の斬撃を回避しながら新型ロボットの中心に円運動をしながら、足を止める。

 

 

『玉砕波動術式展開《アッツュールバニパルの焔》』

 

「な、ぐはぁ!?」

 

新型ロボットが腕を体に纏わせた直後、機体中に張り巡らされた刻印が燃えるように光を放ったのが見えた瞬間、俺は見えない力で一気に押し出されたように吹き飛んだ。まともな体制を整えずそのまま地面に激突、一瞬意識がブラックアウトするほどの衝撃だった。

 

『紅夜、速く立て!不可視斬撃が来るぞ!』

 

「ゴフッ……ぐっ…」

 

胸に走る裂傷から出血が酷すぎて、意識が朦朧としてデペアの声が聞き取れない。

だが地面に接触していることで、新型ロボットが動くほどに生じる振動を感じることが出来た。バックプロセッサを広げて、その場をから離れることで新型ロボットの一撃を避ける事には正解したが、剣に気を取られすぎて新型ロボットが薙ぎ払うように放った蹴りを諸に受けて、吹き飛ばされる。

 

「ハァ、ハァ……!」

 

頭が割れた所為で流血が視界を真っ赤に染め上げる。

ボロボロだ。勝ち目がない。それでも、まだ両手に力は入った。

双銃剣を地面に突き刺して、体重を掛けながらなんとか立ち上がる。

 

「…まだ、やれる」

 

「そうだよね。でも、こうちゃんは無理過ぎだよ」

 

そして俺の前に二つ影が現れた。小さな背中、けれど大陸を背負い守る使命を持って生まれた神の背中。

 

「なんで、戻ってきた…!」

 

「止めようとしたら既に走っていた。道はアイエフとコンパに任せている」

 

ブランはそういって肩にハンマーを担いだ。

 

「こぅちゃん、言ったじゃん。私達はパーティーで運命共同体だって、仲間を犠牲にするようなことは絶対にありえないって!!」

 

……本当にバカな野郎だ。

態々後ろを向くなよ。

血混じりのため息を吐きながら、双銃剣を地面から抜けて眼前の悪魔の様な新型ロボットに剣先を向ける。

 

「女神化できないのにやれるのか?」

 

「うーん、なんとかなるでしょ!」

 

「夜天が言っていたように、これが女神として最善の選択よ」

 

女神化できないネプテューヌとブランを加えて三人…か。

正直な所、これでも勝機は微妙な所だ。さっきから足が震えて気を抜いてしまえば倒れてしまいそうだ。

枯れた木の剣先が、天井に向かって構えられる。相打ちを覚悟で力を込めた瞬間、懐かしい声と共に振り下ろそうとしたロボットの腕が突如発生した緑色の魔法陣より出現した|捻じれた石の槍《・・・・・・・》によって停止された。

 

「シレットスピアー……よくも、私の紅夜を傷物にしてくれましたわね。その罪は万死に値しますわ」

 

「な、な………!」

 

言葉を失って俺は目の前の存在に震えた。

騎士のようなプロセッサユニットに美しいエメラルド色の髪をポニーテールにしているのが特徴的な、雄大なる緑の大地を守護する女神『グリーンハート』が怒りの形相で槍を構えてそこにいたからだ。

 

「はぁぁあぁぁぁ!!!トルネードソード!!」

 

上空から気合の声と共に巨大な光刃がロボットの腕を切り裂いた。

宿主から斬り離れた剣は光となって消えていく。

そして黒い流星の如く現れた彼女は、重厚なプロセッサユニットを装備して腰に届くほどのウェーブ掛かった長髪が特徴的な、重厚なる黒の大地の女神『ブラックハート』だった。

 

「私にかかればこんなの朝飯前よ。それにしても紅夜ひさしーーーのわぁぁ!?!?貴方血だらけじゃない!大丈夫!?」

 

「大丈夫だから、まずはお前が落ち着けノワール……久しぶりベールも」

 

涙目で心配してくるノワールを抑えて、こちらに笑みを送ってくるベールに手を振るう。

…あれ、なんでお前ら女神化してんのにピンピンしているの?もしかしてあいつFDVシステムを搭載していない?

 

『彼女の様子から察するにその様子だね』

 

「どういたしましたの?」

 

「いや、お前たちが本当に女神様だってことを再認識したまでだよーーーネプテューヌ!ブラン!!」

 

もしあのロボットにFDVシステムが搭載されていたのなら、今頃ノワールとベールは苦しんでいた筈だが、そんな様子はなかった。俺の声にネプテューヌとブランは察したのか女神化した。

 

「まさか…四女神が集結するなんてな」

 

圧倒的な美しさと強さを誇るゲイムギョウ界に存在する四人の守護女神。

この四人は今戦争中で、お互いの視線上には火花が散るが直ぐにそれは治まり、俺と肩を合わせた。

 

 

「積もる話はあると思いますが、まずはこれをなんとかすることは優先ですわね」

 

「ネプテューヌ、今日の共闘は本当に偶々、偶然、利害が一致したからに過ぎないわ。だから、勘違いしないでよ」

 

「分かっているわ。ベールにノワール、本当に心強いわ。来てくれてありがとう」

 

「……色々と言いたいことがあるが、……今は力を貸してくれ」

 

四女神はお互いの獲物を構えた。

ノワールが切り裂いたロボットの腕は独りでに分解して再度、ロボットの切断面にくっ付き再生した。

本当に厄介な奴だ。俺一人じゃ到底勝てっこないかもしれない。だけど、ここには女神がいる。

 

「ネプテューヌ、ノワール、ベール、ブラン!」

 

彼女達がいる。希望がある。

これ以上の光はない。

俺の声に四人が答えてくれる。

既に流血は止まり、今までにないくらいの活力が沸いてきた。

双銃剣を持ち直し、プロセッサユニットの出力を限界まで上げる。もう、何も怖くはない。彼女たちがそこいるから!

 

 

「行くぞォォー!!」

 

 

だから、戦える!!

 

 

 

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その25
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