黒外史 第三話 |
黒外史 第三話
一刀達一行の五人が丁原に招かれた宴の後の深夜。
彼等は用意された客間で話し合いを始めた。
于吉の張った結界により、彼らの話す内容は外部に漏れる事は無い。
燭台が照らす薄暗い部屋の中で、窓の横の壁に背中を預けて左慈が一刀を睨む。
「北郷一刀、貴様は丁原の言った事を鵜呑みにしては居ないだろうな。」
話す声は不機嫌さを少しも隠そうとはしていなかった。
対する一刀も嫌悪感を顕に言い返す。
「丁原さんは嘘を言っていない。だがそれが真実だとはまだ思ってない。」
一刀が言いたいのは、丁原が真実と“信じている事”を正直に話したと云う事。
NPCが情報提供者として真実を語るRPGでは無いのだ。
一刀は丁原の語った情報の真偽を確認していない。
情報戦は複数のルートから仕入れて真実の情報を見つけ出すのが基本だ。
「それが解ってるならいい。それとこの外史の住人に貴様お得意の情を掛けるな。
どうせ消す外史だ。最後で躊躇われてはかなわん。」
「ケツを狙ってくる奴らに掛ける情なんて持ってねぇ。」
一刀と左慈は睨み合う。
協力関係を結んでまだ半日も経っていないのだ。
今まで積み重ねた恨みを思えば、一刀は我慢している方だった。
于吉はそんな一刀を蔑む目をして口を歪める。
「貴方のお尻を狙う奴はそうでも、お尻を振って来る相手はどうですかね。」
一刀が今度は于吉を睨んだ。
「張遼と呂布の事を言ってるのか?」
「ええ、そうですよ。もしあの二人を駒として手元に置いて、いざと云う時切り捨てられるのですか?」
今までの一刀なら于吉の言う通り、情に絆され命を取る事はしないだろう。
しかし、今の一刀はこの外史を抜け出し、愛する者と再び出会う事が最重要目的だ。
「俺は彼女達に会う為なら、鬼にも魔王にもなってやる!」
一刀の目は真剣だ。
その目を見て于吉は小さく息を漏らす。
「その覚悟。最後まで保つ事を願いますよ・・・・・では、情報を整理してみましょう。」
于吉は袂から紙と筆を取り出し机の上に置いた。
「丁原の語った情報で真実と思われる物。
霊帝は未だ後継を決めていない。
何皇后と何進が同一人物。
何進と十常侍が対立している。
丁原は何進派である。
各地で乱が起きている。
太平道が信者を増やしている。
并州に匈奴、鮮卑、烏丸が時折攻め込んでくる。
精々こんな物だけですね。」
箇条書きにした内容を于吉以外の四人が確認する。
この中に書かれていない情報がひとつだけある。
それは女性が存在しない事。
左慈はその情報に特別な意味を感じなかったので無視した。
于吉は女が居ない事を歓迎しており、既に男しか居ない世界を当然の様に考えていたので態々挙げなかった。
一刀は女性が居ないと云う現実から目を逸らしたかったので口にしなかった。
貂蝉と卑弥呼は自分達の作った外史が変わり果ててしまった中、数少ない希望が残っている事に喜んでいたが、この話をすれば一刀がどの様な反応をするか解っていたので敢えて触れない事にした。
そして卑弥呼は于吉の書いたメモを見ていて或事に気が付く。
「于吉。貴様、『太平清領書』を張角に渡したのか?」
『太平清領書』とは正史で于吉が記した書物であり、太平道の教典となった物である。
「私が直接手渡さなくとも“張角”を名乗る者は手に入れるでしょう。
尤もこの外史ではどんな内容の物か分かりませんがね。」
他人事の様に話す于吉に一刀は眉間に皺を寄せた。
「それはどういう意味だ。」
「演義では荘子・・・いえ、南華老が張角に『太平要術の書』を渡しています。
他の外史では私も張角に直接同名の書を渡した事が有りますが、少々内容に手を加えました。
この外史では私が関わってはいませんが、どの様な『太平清領書』若しくは『太平要術の書』を手に入れている事やら。」
皮肉な嗤いを浮かべる于吉。
もしかしたら彼が管理者となり外史を潰しているのは、自分の書いた『太平清領書』のパクリ本を抹消するのが切欠だったのかも知れない。
「ふむ、貴様が手を加えていないと成ると、益々どの様な内容に変貌しているか見当が付かんな。」
卑弥呼は腕を組んで唸った。
左慈は苛立たしげに再び一刀を見る。
「奴らの教典がどうなっていようが関係無い!
要は黄巾の乱が起こった時に北郷一刀、貴様はどう動く心算だ。
完全に叩き潰すのか、手駒として取り込むのか!?」
左慈の態度にムカつきつつも一刀は冷静に考えていた。
「黄巾党は出来れば手勢にしたい。正史通りに進めば青洲兵を曹操が手に入れちまう。
曹操の勢力強化を阻み、こちらの戦力を強化出来るとなれば一石二鳥だ。」
「方針としては悪く無い。だが、俺と于吉の術を期待するなよ。
俺達がそこで術を使えば、それは俺と于吉の勢力に成ってしまい鏡に影響を与えられん。」
この外史を消滅させる最終兵器の鏡は一刀が勢力を伸ばして行くとエネルギーの吸収力が上がる。
鏡を発動させる為には白装束兵を極力使わない方が良い訳である。
「ご主人さまならあんなのに頼らなくても大丈夫よぉん。
何しろこの外史でわたしと卑弥呼はご主人さまの愛の、し・も・べ?
大暴れしちゃうんだからぁ〜ん♪」
「貂蝉の言う通り!私達ならば雑兵の五万や十万、軽くて蹴散らしてくれるわ、がっはっはっは♪」
何とも暢気な物言いだが、恋が黄巾兵三万を全滅させられるのだから貂蝉と卑弥呼ならば充分可能だろう。
「戦に関してはそれで良いとしても、勢力を拡大するには強いだけじゃ駄目だ。
それは正史の呂布が証明している。
俺はこのまま丁原さんの所で暫くは手柄を立てて行くのが近道だと思う。」
一刀の言葉に于吉が興味を示す。
「その理由をもう少し詳しく聞きましょうか?」
「丁原さんは朝廷に太いパイプを持ってる。
ここで手柄を立てて丁原さんの推薦を貰えば高い官職に就く事も可能だ。
『天の御遣い』が官軍の味方をすると云う宣伝効果を考えれば充分に朝廷の興味を引ける筈。
黄巾の乱の後の董卓と対処するにも洛陽に行った方が良いだろう。」
「成程、中々に面白いですね。洛陽の政争に自ら飛び込むという訳ですか。」
于吉は楽しそうに笑っていた。
「黙って群雄割拠の時が来るのを待ってるよりは近道だろう?」
一刀も于吉に笑い返した。
一見和やかにも見えるやり取りだが、お互いの腹の底は隠したままの探り合いでもあった。
そんな一刀と于吉を、左慈は興味が失せた様な態度で眺め呟いた。
「董卓が出て来た時、正史の様に呂布に裏切られて死ぬなよ。
初めからやり直すのは面倒臭い。」
そこまで言って左慈は嗤った。
「そうだな、貴様が呂布の尻を掘ってやれ。きっと奴は裏切らなくなるぞ。」
一刀は言葉に詰まり冷や汗を流した。
宴で見せた呂布の態度を思い起こせば確かにその通りに違いなかったからだ。
「りょ、呂布に関しては何か別の方法を考える・・・・・そんな展開だけは絶対に避けてやる・・・」
一刀達が晋陽にやって来て数日。
彼等は昼間に情報収集を行い、夜にはその情報を話し合った。
そして手に入れた情報の中に、西の国境で匈奴の姿が確認されたと云う物が入って来た。
後々五胡も手勢として手に入れる事が出来れば華北、西北の攻略に役立つ。
匈奴がどんな民族か確認する為に、一刀は丁原へ匈奴迎撃の名目で出撃を願い出た。
実際に『天の御遣い』デビュー戦の相手としても充分だ。
その戦い振りで、先ずは丁原、呂布、張遼を完全に信用させねばならない。
そして五胡を服従させる布石とするのだ。
一刀達五人は晋陽から三千の兵を預かり出発した。
そこに丁原、呂布、張遼も随行してその戦い振りを見定める。
見定めると言うよりは一刀達の勇姿を見るファンの様な感じだが。
「北郷殿、昨夜もお盛んだったようじゃのう♪」
「ぶふっ!!」
一刀は革の水筒から水を飲んでいる最中だったので派手に咽せた。
于吉の張った結界で部屋の中の会話は外に漏れないが、無音では余計怪しまれるので適当な音を外に聞こえる様にしていたのだ。
何が聞こえるのか一刀が知ったのはつい先日の事だった。
「げへっ!ゴホッ!!・・・・・・はははははは。」
一刀は言い訳も出来ずに虚ろな目をして乾いた笑いで誤魔化した。
「所で北郷殿、五胡と呼ばれる異民族について少し説明しておいた方が良いじゃろう。」
丁原は馬上で話し始めた。
一刀は五胡の知識を別の外史で朱里等から聞かされている。
それを踏まえ、この外史の五胡がどれだけ差異が有るか確認する事にした。
「便宜上異民族と呼んでおるが、アレは人の姿に近いだけの妖じゃ。」
行成、本来の五胡とは全然違う物が出て来た。
「あ、あやかし・・・ですか?」
一刀にとっては目の前にいる丁原も“やおい穴”なる信じられない・・・いや、信じたくない器官を持つ妖怪みたいな物だ。
「背は我ら漢族より低く、手足も細いがそれに惑わされてはいかん。
その膂力は呂布に匹敵する者さえおる。
ひと目で解る外見の一番の違いは、胸に瘤を持っておる処じゃ。」
一刀はその言葉に一条の光を見た。
(まさか!異民族ってそう云う事なのか!!)
「瘤の大きさは個体差が有っての、中には首の下に尻が有る様に見える者まで居るのじゃ。」
(巨乳も存在するのか!こ、これは・・・・・五胡十六国を最初から目指した方が!)
一刀の心が大きく揺らいでいる時、何処か遠くから喇叭の音が聞こえて来た。
「むむ!匈奴の奴らめ!ここまで入り込んで来よったかっ!!」
「爺さん!右前方に砂煙や!」
丁原と張遼の示す方向に、近付いて来る騎馬の一団が居た。
その数はまだハッキリしないが、一刀は経験から砂煙の量で四千位と踏んだ。
匈奴の馬が立てる蹄の音と、またしても喇叭の音が聞こえて来る。
その喇叭に一刀は聞き覚えが有った。
それは外史に来る前の記憶。
パパラパパラパパラーーーー!
族は族でも暴走族だった。
一刀は驚異の集中力を発揮してその姿を捉える。
馬に跨っているのは特攻服を着ている“女の子”。
そう!一刀が一度は諦めた女の子が集団で駆けて来るのだ!
「人間の真似なぞしおって!片腹痛いわ!」
吼える丁原に一刀が声を掛ける。
「ええと・・・あの子達って人間だよね?」
「何を言っておいでか!!先程も申した様に奴らは妖の精!
臍も、乳首も、排泄器官も、性器も無いのですぞ!」
一度浮上した一刀の希望にヒビが入った。
「そ、それじゃあ・・・・・どうやって子供を産むんだ・・・」
数日前にもした質問が思わず口から漏れた。
「奴らは葉牡丹から生まれ、鳥が部族の下に運ぶと文献に有る!」
「何でそんなメルヘンチックなんだよ!」
一刀はこんな設定を考えたのは誰かと貂蝉、卑弥呼、左慈、于吉を見た。
しかし、四人とも驚いたり呆れたりしているので違うらしい。
(そうなると・・・原因は俺の記憶の影響か・・・・・)
つまり一刀の記憶の端々をかき集め、再構成された結果がコレである。
(と、兎に角最初の予定通り、あの子達を追い返せば良いだけだ!)
一刀はまだ未練を残している様だった。
それでも馬上で武器を構える。
その武器は偃月刀。
出発前に丁原の部屋で見掛けて貸して貰った物。
馬上での戦いは剣よりリーチの有る偃月刀の方が有利だからだ。
次第に近付いて来る匈奴の一団を再び見ると旗も掲げているのが解る。
旗には『匈奴参上』『夜露死苦』『武血斬利』と書かれていた。
戦車も何台か有る様で、しっかりハコ乗りをしている。
「あの旗は無視した方がいいじゃろ。どうせ見様見真似で書いてあるだけじゃ。」
丁原の言葉は一刀の頭に届いてはいない。
一刀の目には馬の動きに合わせて上下するおっぱいを見ていた。
(哺乳類じゃないから乳首が無いのか!?だったら何でそんなおっぱいしてやがんだ!!
ちくしょおおおおおおおおおおおお!!)
一刀は一頻り心で叫んでから丁原を振り返る。
「今から俺達五人だけで戦うので見ていて下さい。」
これには丁原だけでは無く張遼と呂布も驚いた。
彼らにはまだ一刀達の力がどれだけの物なのか、まだ把握出来ていない。
丁原は慌てて止めようとしたが、それを一刀は手で制した。
「貂蝉と卑弥呼は俺の横を頼む。」
「ご主人さまの隣で戦えるなんて夢みたいだわぁん♪」
「うむ、任された!」
「左慈は好きに暴れてくれ。お前ならその方が楽だろう?」
「ふん、どちらにしろ面倒臭いだけだ。」
相変わらず不機嫌そうにしているが、口の端が上がっている。
「だが、少しは気晴らしが出来そうだ。」
拳を握り関節をボキボキと鳴らして気合は充分の様だ。
「于吉は敵の動きを見て指示をくれ。」
「任されましょう。死なない様に援護くらいはしてあげますよ。」
一刀達五人は三千の兵から離れ匈奴を待ち構える。
しかも武器を持つのは一刀ひとり。
貂蝉、卑弥呼、左慈に至っては馬にすら乗っていない。
そんな五人に向かって匈奴の一団が喇叭を鳴らして接近してくる
「うらああああああああ!匈奴だあああああ!当たると痛てえぞおおおおおお!!」
やはり何度も見ても馬に乗ったレディースにしか見えない。
しかも手にしている武器の大半が竹槍だった。
竹ヤリマフラーと呼ばれるバイクや車の排気管が有るが、どうやらこれはその名残らしい。
そんな匈奴も一刀達に気が付いた。
「止まれええええええっ!!」
頭と思われる赤い特攻服の号令で四千の騎馬が止まった。
一刀は相手の出方を待つ。
一騎打ちで頭を捕える事が出来れば、無駄に戦わなくて済むとも考えた。
しかし、赤い特攻服は一刀の予想を大きく外す事を言い放つ。
「やっだぁ〜!ナニあいつら?キッモ〜〜〜〜い♪」
頭の言葉に追随する様に黄色い笑い声が匈奴から湧いた。
「キャハハハハ!なんなのアレ?変な格好してバッカじゃないの〜〜〜?」
「ヤッダもう、気持ち悪ぅ〜〜〜〜!死ねばいいのに!」
「マジ、死んじゃえって感じ〜〜〜♪」
「特にあのマッチョ二匹!パネェくらいバケモンよ、バケモン!信じらんな〜〜〜い!」
「ぬわんですってぇええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「ぬわんだとぉおおおおおおおおおおおおおおおお〜〜〜〜〜っ!!」
漢女二人がキレた。
「どぅわぁあれが筋肉ムキムキのマッチョの世界のマッチョの国からやってきた筋肉ムキムキマッチョ姫ですってぇええええっ!!」
「どぅわぁあれがマッチョマッチョと歌って踊ってマジックポイントを削っていくバケモンだとぅうううっ!!」
「こんなに美しい漢女二人をとっつかまえてなんて事吐かすのかしらああああああっ!!」
「こうなったら容赦はせんっ!お仕置きであああああああああああるっ!!」
「うっふううううううううううううううううううんっ!!」
「ぬっふううううううううううううううううううんっ!!」
漢女二人の突撃によって匈奴はまるでボーリングのピンの様に弾き飛ばされて行く。
しかもその勢いは留まる事を知らず、それまでの嘲笑が一気に阿鼻叫喚へと変わった。
「なんか、あの二人だけでも大丈夫そうだけど・・・俺らも突っ込むか・・・」
「丁原達にも畏怖を与えておく必要があるからな。行くぞ。」
一刀と左慈が掃討戦の様に残っている匈奴を追い立てる。
「私はここで匈奴がこちらに逃げて来ない様に見ていましょう。まあ、必要ないと思いますがね。」
于吉は馬上で肩をすくめていた。
結局、僅か数分で匈奴は逃げ出した。
戻って来た一刀達を丁原と呂布と張遼、そして兵三千が盛大な拍手で迎える。
「いやはや!剛の者とは思っておったが!ここまで強いとは!さあ!早く戻って今宵も宴を催そう!」
丁原は喜色満面で一刀の肩を叩いた。
「いやあ!ごっついで!気分がスカッとしたわ!恋もそう思うやろ!?」
「うん♪」
張遼と呂布は興奮で顔を紅潮させて燥いでいる。
「丁原さん。偃月刀を貸して頂き有難う御座いました。」
一刀が偃月刀を差し出すと、丁原は何かを思い付いたらしく更に目を輝かせた。
「北郷殿!いや、一刀殿!こちらは差し上げよう!もっと貴方に相応しい装飾を施しておくので楽しみにして下され♪」
「い、いや、そこまでして貰っては気が引けますよ・・・」
一刀の本来の武器はご存知の様に刀だ。
偃月刀の扱いは、ある外史で愛紗から教わった物だ。
今回はたまたま目に入ったので借りたに過ぎない。
「何言うてんの!一刀はんの活躍やったらこれでも安いで!なあ、爺さん!」
「はっはっは!張遼の言う通りじゃ♪」
「んで、爺さん。物は相談なんやけど、ウチも同じモン作ってええ?」
「なんじゃと!?それでは一刀殿の為に作る意味が無くなってしまうじゃろ!」
「色は変えるがな!并州を守る二色の偃月刀!ごっつカッコええやんか♪」
一刀はそんな張遼の燥ぐ姿に霞の面影を見た気がした。
「丁原さん。張遼の偃月刀も作って貰えるなら、その偃月刀も有り難く使わせて頂きます。」
「なんと・・・張遼よ。一刀殿の顔に泥を塗らぬよう、更に精進するのじゃぞ。」
「判っとるって!一刀はん!ウチはまだまだ強うなるから見とってや♪」
一刀と張遼のやり取りを呂布が指を咥えて羨ましそうに見ていた。
「なんじゃ?呂布も同じ偃月刀が欲しいか?」
「・・・・・ううん。恋は稽古して欲しい。」
一刀は呂布に右手を差し出した。
「俺でよければ付き合うぞ、呂布。」
「うん♪もっともっと強くなるよ♪」
呂布は一刀の手を両手で優しく包み込んだ。
不意に一刀の脳裏に数日前の于吉の言葉が蘇った。
『もしあの二人を駒として手元に置いて、いざと云う時切り捨てられるのですか?』
一刀は頭を振って、今は考えない事にした。
「丁原さん、ひとつお願いが有るのですが。」
「何ですかな?儂の尻を望まれてもこの歳ですからお相手は出来ませんぞ♪」
丁原が冗談では無く本気で言ってるのが判る。
一刀はこの外史から早く抜け出そうと決意を新たにした。
「・・・・・・・・・城に戻ったら、五胡の文献を貸して貰えますか?」
「おお、そんな事でしたらお安い御用ですぞ♪」
城に戻った一刀は、宴が始まるまでの間に五胡に関する文献を借りた。
文献には丁原の語った事がより詳しく書かれている。
『五胡は大陸北部中央山岳地帯の葉牡丹から生まれる。
生後にコウノトリで運ばれ北東海岸から北西内陸の一帯にやって来る。』
「だから何でこんなメルヘン設定なんだよ・・・」
一刀は涙を流して文献にツッコミを入れた。
『食べる物は人と同じだが排泄はしない。』
「昭和のアイドルかよ!」
『生殖行動を行わないので当然生殖器官は存在しない。排泄器官も同様である。』
「ちくしょう!徹底的だな。」
『胸に在る瘤は脂肪の塊で長期間食料を摂取しなくてもその脂肪で生き続ける。』
「駱駝かっ!」
『話す言葉は意味不明だが、その悪意だけは漢族の心を抉り正気を失わせる。』
「そういやマッチョとか言ってたな。きっと他にも横文字系の単語を使うんだろうな。
悪意の方は・・・桂花や詠で慣らされたお陰で気にならなかったな。」
『時に漢を惑わし連れ去り使役する。その漢は正気を失っているので使役される事に悦びを感じる様になる。』
「それってそいつがマゾなだけじゃないのか?」
『五胡で最も危険なのは、時折漢の精を喰らう事である。』
「精を喰らう!?という事はもしかしてフェラ!?そうだよ!なにしろ恋姫†無双はフェラゲーとまで呼ばれた・・・いかんいかん、メタ発言だ。」
『漢の陰部を食いちぎる為、邑が襲われ壊滅する事もある。』
「ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「何を騒いでいる!」
左慈がまた不機嫌な声で一刀を制した。
その後ろには于吉、貂蝉、卑弥呼も揃っている。
「あ、ああ。これが五胡に関する文献だ。これを読んでてつい・・・」
一刀が文献を手渡すと四人が内容を確認し始めた。
「成程、身体の特徴は書いてある通りだな。」
左慈は興味を失った様子で文献から目を離した。
「お前・・・確認したのか?」
「貴様が丁原と話している最中に、俺が殺した一体でな。確かに臍も乳首も無かったぞ。」
一刀は動揺していた。
それは五胡が文献の通りに人外の物と解ったからではない。
では人外とは言え女の子の姿をした相手を殺したからか?
否、今の一刀は女性兵士であろうと戦場に居るならば躊躇わず命を奪う覚悟がある。
実際、今日の戦いに於いて何人も殺している。
「左慈・・・お前は死者を冒涜してまで情報を集めてくれた・・・・・。
なのに俺は・・・・・五胡が人間では無い事を確認する事を恐れた。
覚悟が・・・足りないんだ・・・俺は・・・・・」
これまでの一刀は、まだこの外史に希望を見いだせる事を期待していた。
その事が最終的に一刀自身を苦しめると判っていても。
「ふん、情報収集は俺達の仕事だ。貴様はその情報を元にコネを作り、勢力を拡大しろ。
そうしなければこの外史は消滅させられんのだからな。」
そう言って左慈は部屋を出て行った。
「北郷一刀、貴方がそうやって苦しむ姿は私にとって実に愉しいですよ。
これからも貴方達と馴れ合って、悩み苦しむ姿を眺めさせて貰います。」
于吉も椅子から立ち上がり部屋を出た。
「ご主人さま・・・」
「御主人様よ・・・」
「判ってる・・・貂蝉、卑弥呼。あいつらなりに励ましてんだろ?
俺が悩んで苦しむって事は、俺が変わらずにこの外史から出て行くって事だ。」
一刀は二人に微笑んだ。
「だけど、もう少し言い方ってモンを考えて欲しいよな。」
一刀、貂蝉、卑弥呼は笑って二人の出て行った扉を見た。
そして数日後。
早朝から城下が騒然となった。
『蒼天已死 ?天當立 ?在甲子 天下大吉』
この紙が街の至る所に貼られていたのだ。
あとがき
今回は一刀と左慈と于吉の関係を軸にしました。
今後もドラゴンボールのピッコロやベジータの様な存在にしていこうと思います。
五胡の匈奴の台詞は出来るだけムカつく物を考えたのですが
書いていて心が痛くなって来ました・・・・・。
五胡は物語の今後に関わる伏線です。
五胡の設定はまだ全てを表していません。
どうなるかは今後をお楽しみに。
次回は遂に黄巾の乱です。
この原稿を書いてる途中で『久遠戦記ZERO』を観て驚きました。
やっぱり久遠戦記は面白いなぁ♪
説明 | ||
今回もこの外史の姿がまた一つ明らかになります。 |
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コメント | ||
naku様>まだ三話ですので先のことを色々と想像してお楽しみくださいw 腐軍師達の声は呪いの域に達していそうですねwww(雷起) naku様>単性で増殖していく所はナ〇ック星人と同じですよね。この世界の住人の精神面はあちらの足元にも及びませんがw 一刀がこれから出会う相手によって、どう決断をしていくのか。暫くは悩み続けて貰います。(雷起) メガネオオカミ様>【久遠戦記】盛っていると言うか倍増と言うかってうわぁ!衛生兵!衛生兵!(ズバァアアッ!!)ぐわあぁっ!・・・・・・・・ご、ご、五胡が絡むまで・・・少々・・お待ち下さい・・・・ガクッ・・・。(雷起) メガネオオカミ様>【適当な音]相手が恋姫達なら当然の行動ですよねw【暴言]一刀は物足りない感じだったかも知れませんねw【フェラ】気を付けろ一刀!貂蝉と卑弥呼も狙ってるぞwww(雷起) 禁玉⇒金球様>蒟蒻はこの世界なら普通に在りそうですね。(雷起) ぐ、ぐふぅ……。ご、五胡がこれからどのようにストーリーに絡んでくるか……た、楽しみで……(バタリ)…………(メガネオオカミ) ※今回の(書くかどうか半刻ほど悩んだツッコミ 【適当な音】悪意200パーセントw ……まあ、他の外史なら割と事実なんですけどね! 【暴言】桂花に比べたらマシですよねw 【フェラ】一刀さんのお気に入り!www 【久遠戦記】面白いですよね♪ 『南華』には驚かされました。……あのどこぞの誰かさんとは違う立派な体つk――(ズシャアアアア!!!)(メガネオオカミ) この世界には蒟蒻芋はないのかな?、使用目的はまぁその、アレですよいい加減に気の毒なんで一刀に「んほぉ」フラグを勃てて犯って下さい作者様。(禁玉⇒金球) 禁玉⇒金球様>そうです!今の一刀は甘々です!!山羊ですら上等過ぎですよ。ニワトリか典雅卵で充分です!(雷起) 凄い展開だな、いやいや凄い展開だな、取り敢えず一刀君が他人をどうこう言えない最悪の策士になるのだろうけどまだ甘えてやがるな。さて置き彼には是非とも山羊を贈ってあげたいですね、用途は勿論性欲処理ですがなにか?(禁玉⇒金球) 殴って退場様>この五胡の存在は一刀が洛陽に行った時に重要な意味を持ってきます。黄巾の乱はここまで突飛な話にはならないと思います(^_^;)(雷起) 何と言ったらいいのだろうか…意外な展開過ぎてどうなるか予想が付かない。(殴って退場) 劉邦柾棟様>スイマセン、自分にはまだそこまでの八百一力が有りませんでした・・・。ですが、于吉の結界の外ではこの様に聞こえていたに違い有りませんwww(雷起) さすらいのハリマエ様>何しろこの外史の基礎を作ったのが漢女二人ですから・・・・・(^^;(雷起) 左慈の余りの態度に一刀がキレて…… 一刀「よし、わかった! もう頭にキタゾ!? オイ、于吉! 俺が「左慈」を『掘る』からお前は「左慈」に『掘られろ!?』」 左慈「Σな…! 貴様、いきなり何を言っt……「わかりました! さあ、左慈! 私を掘って下さい!?」って、お前も何を言っているんだ! ホモ眼鏡!」っという遣り取りが欲しかったです。(劉邦柾棟) イイ男達にとってはある意味楽園だな…(黄昏☆ハリマエ) |
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