真・恋姫†無双〜家族のために〜#34洛陽、燃ゆる
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 虎牢関突入から二日後、全ての準備を終えた連合軍は洛陽を目指し出立した。

 この『二日』というのは曹操が出した指示だ。もちろん、勝手に指示を出したことに袁紹が食って掛かったが、曹操と各陣営の軍師達の集中砲火に合い、最後に顔良の説得され渋々と引き下がった。

 

 こうして出立した連合軍であったが、曹操、諸葛亮は嫌な予感がしてしかたがなかった。

 そしてその予感は的中するのである。

 

 洛陽へ到着し、間諜を放ちつつも包囲せんと各陣営が動き出したところで突如閉じられていた洛陽の門が開門した。

 飛び出してきたのは呂、張、華の三つの旗。

 彼女達は飛び出してきた勢いそのままに、まだ包囲の済んでいない方向へバラバラに疾走した。

 そう、敵前での逃走を図ったのである。

 呆気に取られていた連合軍を尻目に彼女達の勢いは増し、追撃を命じる頃には彼方へと過ぎ去っていた。

 

 うろたえる連合軍を立ち直らせたのは袁紹だった。

 

「私達の威光にひれ伏し逃げた敵のことなど放っておきなさい! それよりも洛陽を目指すのです! 華麗に優雅に進軍なさい!」

 

 どこに威光があったのか……それは別として、彼女の一言で次の行動に迷っていた連合軍は洛陽を目指すという一つの目的を得た。

 それと同時に洛陽へと放っていた間諜が戻ってきていた。

 

「報告します! 各地でボヤ騒ぎと見られる小規模の火災が発生している模様!」

 

 皆が報告を受けている間に飛び出したのは孫堅軍。

 数瞬遅れて曹操、劉備が続いた。

 孫堅軍からは孫堅、周泰、甘寧。

 劉備軍からは関羽、張飛、趙雲。

 曹操軍からは夏侯惇、夏侯淵。

 計八人がさらに先行して洛陽への侵入を果たした。

 

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 おかしい。

 ボヤ騒ぎが起きているというのに騒ぐ住人が誰一人としていない。

 そもそも、街の中に人の気配が全くしない。

 それは私だけじゃなく姉者もその他の者達も感じているらしい。

 皆がより一層警戒心を強くしたときその方は前方から現れた。

 

「だ、誰か! た……たすけっ……!」

 

 少年は外套を被った何者かに後を追われているようだった。

 姉者達は即座に武器を構え、少年の後ろへと躍り出た。私は弓を構えつつも少年へと意識を向け、庇うように移動した。

 

「何者だ!」

 

 関羽が問いかける。気迫のこもった声だ、並の者ならば萎縮するだろう。華琳様が欲しがるのも無理はない……か。

 

「……ちっ」

 

 だが、外套の者は小さく舌打ちをすると踵を返し逃走した。

 もちろん姉者達はそれを追いかけ、私も後に続こうとしたが少年に服を捕まれていたようですぐには動けなかった。

 

 残ったのは私と孫堅殿とおそらく劉備のところの槍使いの三人だけだった。

 姉者達のことも気になるが、まずはこの少年のことだ。

 追われていたところを見ると敵ではないようだが……。

 名前を聞こうとしたとき、息を整え終わった少年が先に話し始めた。

 

「皆、大儀であるぞ。よくぞ余を賊から守ってくれた。褒めて遣わそう」

 

 堂々としていた。先ほどまで脅威に怯える、ただの民にしか見えなかった者だったのにだ。

 それにこの言葉遣い。そして己のことを余と呼ぶ者などあの方以外いない。

 そのことに気付いた私達は一斉に頭を垂れた。

 

「大変な無礼を、失礼致しました!」

 

「そんなに畏まらなくてもよい。お主達は余の命を助けてくれた、いわば恩人じゃ。

 それよりも急ぎ城に向かってくれ」

 

 城に向かうのは吝かではないが、劉弁様はどうすれば……。

 そんなことを思っていたのに気付いたのか、劉弁様はこう続けた。

 

「そなたは確か……孫堅だったかのう? お主のところに余は保護を求める。

 その間に、さきほどの賊を……董卓を討ち取れ」

 

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 なんなのだ奴は!

 こちらは六人で追いかけているというのに追いつけず仕舞い。

 入り組んだ道をくねくねと曲がり差も縮まらん!

 正々堂々と勝負をしないか!

 

 

 気が付けば城の中にいた。

 外套の奴の姿は完全に見失い、私達は警戒しながら玉座の間を目指し進んでいる。

 しかし火の回りがひどい。このままでは私達の身も危ない……ここらで引き下がらねばならないか。

 

「やめろ! 貴様、私を誰だとぎゃああああああああ」

 

 男の悲鳴が聞こえた。

 即座に全員で悲鳴の聞こえた方向へと走った。

 突き当たりを左に曲がり、その先には炎に包まれた扉があった。

 おそらくこの扉の先に声の主がいるはずだ。

 神経を集中させ、三振り。

 私達は扉を破壊し中へと入った。

 

 

 どうやらここが玉座の間だったらしい。

 帝の為に作られたのであろうこの部屋は、炎の渦に包まれていて全貌は計り知れない。

 辛うじて玉座らしきものが確認できるほどだった。

 

 玉座の近くには男が一人、背中を向け佇んでいた。

 足元には首のない胴体だけの死体が。

 炎の中をよくみれば、頭はその男が持っていたようだ。

 こちらの気配に気が付いた男が振り向き、大きく息を吸った。

 

「逆賊董卓は討ち取った! 連合軍の者達よ、助力感謝する!」

 

 そして、死体共々炎に包まれた。

 

 

 

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【あとがき】

 

皆様こんにちは

九条です

 

前回から駆け足気味に進んでいますが、如何でしたでしょうか

 

今回、作中では視点が三回変わっています。分かりましたかね?

ぶっちゃけると夏侯淵→夏侯惇→関羽です ※最初は説明文なので除外します

あえて主人公達の視点を描きませんでした

そこらへんも次回へと続く布石なのだと勝手に想像していてください(ぁ

 

年内にもう一話投稿できればいいなーと思う今日この頃

予定ではあと二話以内に本編が終わるはずなので、キリが良いといいんですけど……

 

 

ところ変わって本編とは関係のないお話

アニメ夜桜四〇奏を見ていると、主人公とは別に男キャラがいるのはいいなーと思いました

恋姫はハーレムのお話なのでなるべく男キャラは出さないようにしていたのですが

よく考えれば兵士さんとか、モブキャラのお話が萌将伝にありましたね

まぁ次回の作品に登場するかは別として、男キャラの案も考えつつプロットを作っております

族ための改定版と言いながら全く別の作品と化してるのはご愛嬌……なんでしょうか(苦笑

 

 

ということで

コタツで寝落ちて、起きたときに身体中の水分が飛んでいて、

干からびてしんどくなる季節になりましたが(笑)

これからも九条の作品をどうか応援お願いしますねー!

 

では次回まであでぃおす!

説明
駆け足駆け足
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コメント
>雪月さん 視点を変えてるとき2段ほど改行をしてたりします(九条)
秋蘭は姉者達や弓を構える表現があって分るんだけど、最後は愛紗でも春蘭でもいけそうな気がするし・・・春蘭間に挟んでいるしどこだろ?(滝汗(雪月)
>qisheng様 あの性格を考えると、どうしても非道にはできなかったのですよ。決してロリコンというわけではry(九条)
ふむふむ こういう手ですか。  月が安全なのがなによりです(qisheng)
>ツナまんさん 楽しんでいただけて光栄ですなのですよ。個人的にまだまだの部分がたくさんあると思っていますが、それも個性で良いんじゃないかと思うようにしています。終幕へのハードルが着々と上がっていく……(汗(九条)
いやぁいつ読んでも面白いです。こうして読んでると自分の作品のお粗末さ加減がよくわかってきて色々勉強になります。終幕、楽しみにまってます(ツナまん)
>禁玉⇒金球様 想像されてなくて一安心。次話にて終幕となりますのでそちらに期待していてください。(九条)
>観珪様 董卓だけを殺すという話もあったんですけど他の作品で見た気がしたのでボツにしましたー。正直、追いかける面子に悩みました(笑 なにせ突出しながらも冷静に判断できなければいけない人材が必要でしたので…(九条)
中々の手腕ですね、想像だにしなかったです。散り散りな連中もまた再会いして欲しいな。(禁玉⇒金球)
そういう方法で逆賊董卓を殺すのか……確かに、証言者が連合軍に複数いるから月ちゃんたちも安全ってわけですね(神余 雛)
なんか書けてしまったので、次話の更新は5日の0時です。(九条)
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