ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY13 新たな謎 |
STORY]V 新たな謎
デュオ視点
剣を鞘に収めて気が抜けた俺たちは、地面にへたり込んだ。
キリト「なんでSAOのフロアボスが・・・?」
息を荒げ、目を丸くしたキリトが、こちらに顔を向けて訊いてくる。
デュオ「こっちが訊きたいくらいだ。ただ・・・」
俺は、イルファングが出現した(あるいは召喚された)例の板状建造物を睨む。
俺に倣って、キリトもそちらに視線を向けた。
デュオ「“あれ”が無関係だとは思えない」
キリト「だな」
デュオ「どうする?試しに破壊してみるか?」
背中の剣に手を掛ける俺を、キリトは手で制する。
キリト「やめておこう。下手に手出しして、もう一戦になったりでもしたらこっちが持たない」
デュオ「確かにそれは勘弁してもらいたいな」
俺は剣から手を放し、両手を付いて空を見上げた。
出発した時は東に傾いていた太陽も、今ではかなり南に昇ってきている。
傾き具合から見て、今は10時ぐらいだろう。
初日でこの有様だとすると、あの暗殺者の追跡は相当苦労しそうだ。
さっきのようなボス戦はもう勘弁してもらいたいが、可能性が0とは言い切れない。
キリト「おい、デュオ」
デュオ「ん?あぁ、なんだ?」
考え込んでいた俺は、キリトが話しかけてきているのに気が付かなかったようだ。
そんな俺の様子を見て、キリトは呆れ顔を作る。
キリト「これからどうするんだ?」
デュオ「そうだな・・・とりあえずこの林を抜けよう。そうすれば、シュヴァルの言ってたプラントが見えるはずだから」
キリト「よし!」
キリトと俺は立ち上がり、ズボンに付いた汚れを叩き落とした。
そして、林を抜けるために再び歩き出す。
しばらく進んで木立を抜けた俺たち2人は、海岸沿いの平原に出た。
辺りを見渡してみると遠方に煙を上げる施設―――おそらくシュヴァルの言っていたプラントと思われる建物―――が見えるが、その他には何も無い。
背の高い木々が生えていないということと、人が通っていると思われる場所の土が踏み固められて草が生えていないということ以外は、ほとんど手付かずのままの状態。
林1つ挟んだだけなのに、主街区とは豪い違いだ。
だが、お陰でもはや道に迷うことはない。
俺たちは、ただ真っ直ぐにその建物を目指して歩いた。
施設前に着いた俺たちは、金属製の分厚い門を飛び越えて中に入る。
コンクリートに似た材質塀の向こう側では、巨大タンクやそれらを繋ぐパイプ、さらにそれらを動かす油圧装置のようなものが所狭しに並び、そのほとんどが高温状態で動いていた。
キリト「凄げ〜。((現実|リアル))で用意したらどのくらいするんだろうなこれ?」
デュオ「さぁな。工業製品に詳しくないから、全く検討もつかない」
そんなことを話しながら、俺たちはプラントの奥に進み、敷地内に建設された建物に入る。
建物の内部は、外側と打って変わって静寂に包まれていた。
デュオ「どうなってるんだ?」
キリト「人がいない・・・?」
そう、完全な無人。
明かりは点いておらず、それどころか、所々埃を被っている。
どうやら、あまり人の出入りがないらしい。
ブーツが床を打つ硬い音だけが空しく響く。
俺たちは、だだっ広いエントランスホールを通り抜けて、階段を上がりとにかく手当たり次第に探索する。
暗殺者の男の目的がわからない以上、それしか選択肢がなかった。
しばらく探し回っている内に、俺たちは資料室のような部屋に辿り着く。
そこは他の部屋と違い、微かに人のいた痕跡が残っていた。
幾つもの並ぶ本棚の横に置かれた机に、何冊かの本が無造作に投げ出されている。
埃を払った後がまだ真新しい。
おそらくここ数時間の間に埃を払い、これらの本を読み漁ったのだろう。
街のトップであるはずの教皇が殺害された直後にこんなところに足を運ぶのは、あの男以外あり得ない。
デュオ「暗殺の次はお勉強か?ずいぶん極端な行動だな」
俺はそう呟きながら、机に置かれたうちの一冊を手に取って中に目をやる。
中身は見たことの無い文字で書かれていて解読出来そうにない。
何ページかパラパラをめくってみたが、やはりどのページも意味不明の文字で書かれていて、読むことは出来そうにない。
キリト「何て書いてあるんだ?」
デュオ「読めるなら読んでみろ」
そう言って俺は、本をキリトに押し付ける。
そして、違う本に手をつけようとしたその時、背後に気配を感じた。
同じく気配に気付いたのであろうキリトが本を投げ捨てて背中の剣に手を掛けるのとほぼ同時に、俺は右手を剣の柄にかけ、左手で引き抜いた銃を気配のした方向に向ける。
そこにいたのは、中世のそれを思わせる純白の鎧騎士だった。
左手に巨大な盾を持ち、右手には2mはある長いランスを携えている。
そして、腰には聖堂を守っていた騎士たちが持っていたものと同じ剣を吊るしていた。
どうやら、教団の人間らしい。
キリト「教団の人か。脅かすなよ。てっきりあの男かと思った」
ふぅっと息をついたキリトが、剣から手を放す。
すると、鎧騎士は何も言わずにゆっくりとこちらに向かってきた。
不気味な感覚だ。
動きは機械では出来ないほど生物的だが、人間のような気配をしていない。
まるでSAOのモンスターのような・・・
思考がそこまで至った次の瞬間、事態は起こった。
ゆっくりと迫ってきた鎧騎士が、いきなりキリトに向かってランスを突き出したのだ。
俺は慌てて抜剣、抜いた勢いで剣を一気に振り降ろす。
鋭利な先端がキリトの眼に触れる約3cm手前で、俺の剣がランスの側面を叩き落とした。
弾き落とされたランスが床に食い込み、俺は弾いた勢いで剣を背中に戻して銃を向ける。
デュオ「不法侵入のお咎めにしては、やり過ぎじゃないか・・・?」
騎士は答えることなく、すぐさまランスを引き抜き、体勢を立て直して身構えた。
あくまでこちらと戦うつもりらしい。
デュオ「やる気みたいだな。死んでも、文句言うなよ」
そう呟いた直後、隣にキリトが駆け寄ってきた。
キリト「デュオ!」
デュオ「キリト、どうやらこいつは俺たちを殺したいらしいぜ」
キリト「みたいだな」
俺たち2人は、それぞれ武器を構えながら騎士を睨む。
騎士はそれに怯むこと無く、再びランスを構えると、凄まじい速さで突進してきた。
俺たちは左右に跳んで回避し、振り向き様に銃弾を撃ち込む。
だが、俺の放った弾丸は全て鎧に弾かれた。
しかも、鎧の強度は相当なものらしく、マグナム弾が直撃したにも関わらず無傷。
デュオ「・・・硬いな。だが・・・」
キリト「これならどうだ!」
一瞬で懐に潜り込んだキリトの剣が、騎士の左側から弧を描いて跳ね上がる。
しかし、騎士は慌てることなく左手の盾を突き出してキリトの剣に叩き付けた。
耳をつんざくような甲高い金属音が響き渡り、同時にキリトの剣が体ごと大きく弾かれる。
大きく仰け反るような形になったキリトに、鎧騎士は再度突きを放つ。
デュオ「させるか!」
今度は俺がキリトの反対側―――つまり鎧騎士の右側―――から上段斬りを打ち込んだ。
硬いものを叩いた時特有の振動が手に伝わる。
そして、先程とはやや異なった金属音とともにランスが中ほどからへし折れた。
騎士は折れたランスを捨てて、大きく後ろに下がると腰の剣に手を掛ける。
キリト「甘い!」
すぐさまキリトの斬撃が騎士の脇腹を捉え、体勢を崩す。
キリト「デュオ!今だ!」
デュオ「わかってる!」
キリトに続くように駆け寄った俺は抜剣、強く床を蹴って飛び上がり、空中から剣を横薙ぎに切り裂いた。
胴体と切り離された頭部が宙を舞う。
その時、俺は騎士を斬った感触に違和感を覚えていた。
SAOやALOでは感じた相手の防具を貫通した時の感触、いわゆる肉を斬る感触がしない。
まるで中身が無いかのよう、空虚な手応え。
その答えは、すぐにわかった。
首を失った鎧騎士はよろめくと、そのまま力無く膝を突き、その場に崩れ落ちる。
そして鎧だけが床に散らばった。
近づいて見てみると、本来中に入っているはずの人間が入っていない。
中身は空っぽだった。
デュオ「どうなってるんだ?」
一発発砲してもう動かないことを確かめた後、俺は鎧の一部を手に取ってみる。
中を覗き込むと、それは完全に空っぽで機械の類も見当たらない。
俺は背中に剣を戻すと、駆け寄ってきたキリトに鎧を見せる。
デュオ「どうやら、機械じゃないらしい」
キリト「この鎧騎士は、モンスターってことなのかな?」
デュオ「さぁ、それはわからないが、おそらく教団と関わりがあるはずだ」
そう言って、俺は鎧騎士の残していった剣を顎で指す。
デュオ「あれは聖堂にいた連中の持ってたのと同じ剣だ。ということは間違いなく無関係じゃない」
キリト「・・・どうする?」
デュオ「今は何とも言えない。けど、またあの鎧に襲われたら、その時は教団の奴らに訊くとしよう。どうせ、今考え込んでいたって何も解決しない」
キリト「そうだな」
鎧を投げ捨て、大きく息を吐く。
デュオ「よし!もしかしたら他にも手掛かりがあるかもしれない。まだ探してないところを探してみよう」
そう言った後、俺たちはまだ訪れていない場所を見て回ることに決めた。
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やっとテストが終わりました。 | ||
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コメント | ||
本郷 刃さんへ 今回は仲間のほとんどが生死不明という極限状態ですから、2人はいつもとは違った対応をするかもしれませんね(やぎすけ) テストお疲れ様でした! さて、デュオとキリトは新たな謎にどう立ち向かうのでしょうか・・・気になります(本郷 刃) |
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