【獣機特警K-9UG】暴け!都市計画の黒い罠【交流】 |
「そんな…あんまりだわ…!!」
バー『Fox Tail』の店主、長谷川 麗は泣き崩れた。
手に握られていたのは一枚の紙。そこに書かれていた文字はこのような文章であった。
《退去勧告》
以下の物件は、以下の都市再開発計画予定地につき退去願います
地区:ラミナ市キャニスD地区A12〜A34 に該当するすべての物件
期間:本状到着より2箇月以内
備考:期日までに退去なき場合は強制的に撤去いたします
ラミナ都市圏建設開発局 局長
巣蔵・パンド・ビルド
しばらくして、ラミナ警察署捜査課のジース・ミンスターとミハエル・アインリヒトが訪ねてきた。
「…そうですか、こんなものが…」
勧告状を見つめながら考え込むミンスター。
「あまりにも突然すぎます。ずっと今までこの場所で…店を構えてきたのに…!」
大粒の涙を流すウララの背後から、娘の麗奈がやはり涙を浮かべて出てくる。
「ママ…お家がなくなっちゃうなんていやだよ…なくなったりしないよね!?」
「うっ、うっ…」
レイナの言葉にもウララはどうすることもできず、ただ泣くばかり。
しばらくしてレイナは、ミンスターたちのほうに向き直ると、涙ながらに訴えた。
「お願い刑事さん!あたしたちを…この家を助けて!!」
ミンスターはレイナの頭に手を置くと、優しく語り掛ける。
「…大丈夫だよレイナちゃん。おじさんたちが何とかしてあげるから。だから泣くのはおよし」
「うん…」
しばらくしてミンスターとミハエルは、同じような勧告が届いた物件を回っていた。
「絶対おかしいっすよあの局長。何か企んでるに決まってまさぁ!」
「しかし、確たる証拠がない。ヘタに動き回れば我々だって身動きが取れなくなるんですよ」
「でも、ウララさんもレイナちゃんも泣いてた…ああいうやつって腹黒いって相場が決まってる!!そうでしょ!?」
「落ち着きなさいミハエル君。まずはこの都市圏開発局で話だけ聞いてみるのはどうでしょう」
…ラミナ都市圏開発局。
ラミナ市のほか隣接するバンブーヒル、ドルフィンベイ、パームビーチなどの複数の都市計画を行う地方官庁の一つである。
「…ラミナ警察署・捜査課の者ですが」
ミンスターたちが訪れたのは局長室。
「入りたまえ」
野太い、そして重々しい声とともにドアが開き、二人は部屋の中へと入っていった。
「これはこれは、わざわざ警察の方がお見えとは。どういったご用件で?」
と、煙草をふかしながらミンスターたちのほうを向いたのは太ったゾウ形ファンガーの男。
彼こそ開発局のトップである巣蔵・パンド・ビルドであった。
「巣蔵局長。その件なんですが、こちらの都市計画のことで」
と、ミハエルが例の通告書を見せた。
「ああ、その案件ですか。実はこの付近に大規模福祉施設を建設する計画がありましてね。それと区画整理を同時に…」
と、言い切らないうちからミハエルが飛び出し、巣蔵の胸倉に掴みかかる!!
「福祉施設だ!?住民達追い出して、それのどの辺が福祉なんだよ!!」
「うぐ…な、なんだね君は!!」
「ミハエル君!まだ容疑者と決まったわけでは!!」
「止めないでください警部!…おう局長さんよ!てめえはあの住民達がどんな思いでこの文書を見たかわかってねえだろっ!!」
「何を言っている!放せ!!」
「放してたまるか!!なんだったらここで一発殴り飛ばして吐かせたって…!!」
その時、ミンスターはすっかり逆上しているミハエルの背中を掴んで巣蔵から引き離す。
「な、何すんスか警部!」
「ミハエル君、早まるなといっているでしょう。…部下が大変なご無礼を」
「う、うむ…まぁ若いのはいいことだが。ちゃんと教育をしたほうがいいのではないのかね?」
「なにを!?」
「ミハエル君!!」
ミンスターは再び飛び出そうとするミハエルを押さえながら、巣蔵に話しかける。
「…では、我々はこれで失礼いたします、巣蔵局長」
「うむ。くれぐれも粗相のないように気をつけてくれたまえ」
…ラミナ警察署。
「大黒星だったな!これでしばらく都市圏開発局には手が出せんぞ!!」
署長エルザ・アインリヒトの怒号がミハエルに向けて飛ばされる。
「でも、俺には自信があったんだ…あの巣蔵って野郎が何か企んでるって…」
「だからいつまでたっても青二才なんだ。まったくお前という弟は…!」
まるで姉弟ケンカのようなやりとりにミンスターが割って入る。
「まあまあ署長。もうその辺にしてあげたらどうです」
「しかし警部……」
「ミハエル君は逆上のあまり周囲が見えていなかっただけなんです。あとは私が言って聞かせますから、どうか穏便に」
「…ミハエル。警官たる者、あまり感情的になりすぎてはいけない。よく覚えておくんだな」
「くっ…!」
…同署・捜査課。
「…ですから、君には冷静さが足りない。熱くなるのも時として大事ですが、捜査の基本はまず落ち着くことです」
「……」
諭すように語るミンスター。ただ黙り込むミハエル。
「…もっとも、あの家族達の涙を見た君のこと…。助けたい気持ちが止められなかったのでしょう。ですが本当に助けたければ、まず耐えることです」
と、ミンスターは缶コーヒーをミハエルの前に持ってくる。
ミハエルは、ただ黙ってそれを受け取り、缶のふたを開けると一口飲んだ後に呟いた。
「…警部…」
「?」
「やっぱり納得いかねえっすよ。確かにあの時は俺も周りが見えてなかったかもしれない。でも…!」
ミハエルの目からは、ひと筋、ふた筋、涙がこぼれていた。
同日深夜。
ラミナ都市圏開発局ビルの向かいにある高層ビルの屋上に、トリッカーズの姿があった。
「…あれね…いかにも侵入が難しそうな建物だわ」
「それは官庁ですもの、それなりのセキュリティは張り巡らされているに違いありませんわ」
と、怪盗ディアとヴィクセンがビルをにらみながら話していた。
「今回の依頼は巣蔵・パンド・ビルドの経歴に関する情報を洗い出せってことだったケド…」
と、怪盗バニーが考え込む。
そのとき、ディアの通信機が信号をキャッチした。
「こちらルプス。侵入に成功」
「こちらディア。状況を知らせてちょうだい」
「こちらラピヌ。現在は局長室のすぐ下のダクトにいるわ!」
「そう、それで?」
「なにやら話し声が聞こえる…一人は巣蔵局長だってことは間違いないけど…」
「ルプス。話し声を拾い出してくれるかしら?」
「OK!」
ディアの合図で、ルプスが小型マイクをダクトの上の部分に取り付けた。
『しかしよくやってくれたね局長さん?』
『ああ、あんたらの要望どおりコトが運べば、後はカジノの建設開始を待つだけだ』
『じゃあ、キックバックはこの通り。契約書の半分ってコトでどうだい?』
巣蔵が話していたのは一人の女だった。ディアはすぐに指令を飛ばす。
「ラピヌ。あなたにもたせた『謎ちょうちんカメラ』の映像を送ってちょうだい」
「了解」
しばらくしてミクが持っていたパソコンに映像が送信された。すると…。
そこに映っていたのは巣蔵と、話し相手は和服姿の女性ロボット。さらに話は続く。
『それにしても驚きましたな、お嬢。まさかゴクセイカイが存続していたとは』
ディアとヴィクセンの表情が急に険しくなる。
「ゴクセイカイですって!?」
「あの組織はつい最近ブラッドファミリーに潰されたって聞いたわ!!」
『もっとも今のアタシらはただの残党だ。再興のためには資金が要る…』
『ふふふ、わかってますよお嬢』
『ま、活動の基礎はこれで十分さね。さ、アンタのサインもらうよ』
と、和服姿のロボットは一枚の書類を取り出した。
(極秘)契約書
ラミナ・グランドカジノ建設工事 ブラックスター建設代表取締役 氷雨・キクガオカ
「…ラピヌ。今の書類押さえたわね」
「ええ、同様の契約書類も盗み出したし、あとはこれを警察に届けるだけよね」
「そうと決まれば次の行動ね。トリッカーズ撤収よ!」
「了解!!」
…翌日。ラミナ警察署・会議室。
「なんですって!?トリッカーズが開発局に侵入した!?」
驚愕の表情を浮かべるミンスターに、エルザはなおも告げる。
「ああ。その証拠にこんなものが贈られて来たんだ」
エルザが取り出した封筒には、こう書かれていた。
“親愛なるエルザ署長へ トリッカーズより愛を込めて”
「ふむ…またトリッカーズに出し抜かれたと思うと妙な気分だが…とりあえず見てみるか」
エルザがディスクをプロジェクタにセットし再生すると、そこにはあのまがまがしい商談の一部始終が映し出されていたのだ!
「これは!?」
「トリッカーズが盗んできた情報だろう。巣蔵め、まさかあんな一面があったとはな…」
歯を食いしばるエルザ。ミハエルはその様子をただ呆然と見ていた。
その時エルザは、ミハエルの元に歩み寄る。
「あ、姉貴…」
「昨日はすまなかった…言いすぎたよ。だが、警官たる者あまり感情に流されてはならない。そこだけ理解してくれ…」
「わ、わかったよ…どうしたんだ急に」
そうしている間にも、次々暴かれる巣蔵の悪事の数々。
「ミハエル君!巣蔵局長の容疑がこれで固まりました。すぐに行きますよ」
「…ほら、何してるんだ。はやくミンスター警部のもとへ行け」
「お、おう!」
ミハエルは頬を赤らめながら、ミンスターの元へと走り出した。
…その後巣蔵・パンド・ビルドは乗り込んだミンスターとミハエルにより逮捕され、
当該地区に出された退去勧告も取り消し処分となったのであった…。
翌日、バー『Fox Tail』。
「本当に、この度はどうもありがとうございました!」
深々と頭を下げるウララ。
その傍らではマリン、カリンのココノエ姉妹がレイナと話をしていた。
「レイナ、家潰されなくてほんとによかったな!」
「あの巣蔵って人、あんな腹黒い人だったなんて思わなかったわ!」
「うん、あたし絶対ああいう大人にはなりたくないもんね!!」
その様子を見て、ミハエルの表情も穏やかになっていた。
「本当によかったっすね。あの子たちも喜んでくれてるし」
「そうですねミハエル君。…ところで」
ミンスターはどこに隠し持っていたのか、本の山を持ち出した。
「この事件を教訓に、捜査の基本をまた勉強するのはどうでしょうか」
「う…も、もう過ぎた事件じゃねえっすか…」
「だまらっしゃい。今日はみっちり指導しますからね」
「は、はい…」
真っ白になって燃え尽きたミハエルの姿を見て、ウララとロボちゃんズはただ苦笑するばかりであった。
説明 | ||
突然平和なバーに届いた立ち退き勧告。これは何かの陰謀か!? ミンスター(TG):http://www.tinami.com/view/375309 ミハエル(TG):http://www.tinami.com/view/395141 ウララ:http://www.tinami.com/view/622163 レイナ:http://www.tinami.com/view/556297 マリン:http://www.tinami.com/view/553167 カリン:http://www.tinami.com/view/553518 トリッカーズの皆さん 氷雨:http://www.tinami.com/view/611465 |
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コメント | ||
今回はミハエルの不器用さとトリッカーズのスマートさの対比が際立ったと思いますw(古淵工機) またしてもトリッカーズにしてやられた悪党、そして警察。しかしどんなカメラだ謎ちょうちんwww(Ν) |
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