第三話「迫り来る出来事」
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特別実習から1ヶ月がたった。季節は綺麗に咲いてたライノの花が散り、穏やかな陽気に変わっていた。Z組の連中と行った特別実習先で起きた出来事。当然俺はオリヴァルトに報告をした。ひとまずはこれからもZ組の連中と一緒に特別実習に同伴する事となった。オリヴァルトや学園長は本気なのか冗談なのか、俺にたまにでいいから学園で教官をしないかと言い出した。勿論丁重に断ろうとしたが、一般人をあまり学園に出入りさせるのが厳しいそうだ。それで、Z組の特別教官になる事となったのだ。肩書きはそう言うことだが、実際はオリヴァルトからのイライヲスムーズにこなす為だ。後、学園長にも俺の正体をばらした。流石に、聞いたときは物凄く驚いてたけどな。こうして、今現在俺の正体を知っているのは、オリヴァルトに学園長、クレアとアルフィン皇女の四人だ。ま、時期を見てサラにも話すつもりだがな。

 

知憲「さてと、学園長から次の実習の日取りも聞いたし、実技テストの時にZ組の特別教官の事を話すっていってたし。取り合えず今日の所は店を開けるか。」

 

俺は、何時も通りに店を開けて1日を過ごした。そして閉店後・・・

 

オリヴァルト「お邪魔するよ。」

 

ヴァンダイク「いや、実に久し振りだな。この店に来るのは。」

 

店を閉めようとした時に、丁度いいタイミングでオリヴァルトと学院長がやって来た。

 

知憲「久しいなオリヴァルト。学院長もお久し振りです。少し待ってて下さい。店の看板下ろしますんで。」

 

そうしていつものように看板をcloseにする。

 

知憲「さてと、まずは注文を聞こうか?」

 

オリヴァルト「いつものを頼むよ。」

 

ヴァンダイク「わしはワインと、それに合うつまみを作ってもらおうかな?」

 

知憲「了解です。」

 

俺は注文を受けると、すぐさま調理に取り掛かった。そして、あっという間に料理を作り終え俺もグラスを片手に戻る。

 

知憲「お待たせ。オリヴァルトにはいつものように焼鳥と枝豆とビール。ついでに冷奴だ。学院長にはワインとつまみにチーズとウインナーをかけたのと、サラミで。」

 

俺はカウンターの中に入り椅子に座った。

 

知憲「で、以前報告した件で何か進展があったんだろ?」

 

オリヴァルト「ああ・・・以前君が自然公園で聞いた笛の音についてだが、かなり前に帝国が管理している所から盗み出されたみたいなんだ。」

 

知憲「なるほど・・・しかし、帝国からそんな話は聞いてないな?」

 

オリヴァルト「それはそうだよ。帝国も鉄壁と言われているが故に、盗みがあったなんて市民に言えば、不安がるだけだからね。そのまま内部での認識のみさ。」

 

知憲「相変わらずくえないね。」

 

ヴァンダイク「我々は、あくまで中立を保つつもりでいる。」

 

知憲「それでいいさ。もし、ここがどっちかにつくなら俺は悪いけど手を貸せないな。」

 

オリヴァルト「それについては安心してくれ。それより、明後日には再び特別実習に入る。この前みたいにどちらかの班に付き添いと言う形になる。」

 

ヴァンダイク「その前に、明日にはこの前のようにグラウンドに来てくれたまえ。知憲君が、Z組の特別教官になったことを、サラ君を含め全員に話すことになっている。」

 

知憲「特別教官ね〜・・・と言っても、それも学院に入るための口実に過ぎないからな。ま、オリヴァルトやヴァンダイク学院長には恩もあるし、別に構わないが。どうせ特別実習以外は普段通りでいいんだろ?」

 

オリヴァルト「ああ、それで構わない。何かあれば、学院長を通じて君に連絡がいく手筈だから。」

 

ヴァンダイク「これからも宜しく頼むよ知憲君。おっと、今はヴァイツェン君だったね。」

 

オリヴァルト「そうでしたね。さて、それでは僕達はこの辺で。」

 

ヴァンダイク「いやいや、実にいい気分で飲ませてもらった。それでは・・・」

 

オリヴァルト「何時ものようにお代はこの袋に入っているから。それじゃお休み。」

 

オリヴァルトと学院長は店を出ていき、それぞれの自宅に帰っていった。後片付けを終えて何時ものように袋の中身をみる。

 

知憲「何時もより多いな?」

 

袋の中には、何時もの倍の金額が入っていた。

 

知憲「35万ミラって・・・あんだけ食って飲んでもそこまでしないぞ?」

 

こうして、俺の貯金額はまた増えたのであった。そして翌日、言われた通りグラウンドに向かったのであった。

 

サラ「は〜い、それじゃあ残り全員でやっちゃいましょ。」

 

丁度実技中みたいだな。一体のロボットに5人でか。これは見ものだな。しかし、俺の期待とは反して見るに耐えない結果だった。ま、理由は分かりきっているけどな。

 

サラ「そこの二人は充分反省なさい。今回の実技テストは以上。続けて今週末に行う特別実習の発表と重大な事を伝えるわ。」

 

リィン「重大な発表ですか?所で・・・この班分け。」

 

マキアス「冗談じゃない!!!サラ教官、いい加減にしてください。何か僕達に恨みでもあるんですか!?」

 

ユーシス「・・・茶番だな。こんな班分けは認めない。再検討をしてもらおうか。」

 

サラ「う〜ん、あたし的にはこれがベストなんだけどな。特に君は故郷って事で、A班からから外せないのよね。」

 

ユーシス「・・・・・・」

 

マキアス「だったら、僕を外せばいいでしょ!!セントアークも気は進まないが、誰かさんの故郷より遥かにマシだ!《翡翠の公都》・・・貴族主義に凝り固まった連中の巣窟っていう話じゃないですか!?」

 

サラ「確かにそう言えるかもね。だからこそ君もA班に入れてるんじゃない。」

 

マキアス「・・・・・・」

 

サラ「ま、あたしは軍人じゃないし、命令が絶対だなんて言わない。ただ、Z組の担任として君達を適切に導く使命がある。それに意義があるならいいわ。二人ががりでもいいから、力ずくでも言うことを聞かせてみる?」

 

マキアス「・・・っ」

 

ユーシス「・・・面白い。」

 

知憲「ま〜待て。この勝負、俺が引き受けよう。」

 

一同「!?」

 

タイミングを見計らって姿をあらわせる俺。

 

サラ「マスター・・・」

 

知憲「悪いがサラ、その勝負俺が引き受ける。」

 

マキアス「貴方には関係ないでしょ!!」

 

知憲「確かに関係はないが、仮に、お前が自分の故郷をバカにされて黙ってられるか?俺は故郷がない。だからこそ、お前の言った事が許せんのさ。さっさとかかってきな!!!」

 

ガイアス「無茶だ!!武器も持たずに!!」

 

知憲「安心しな。後リィン!!お前も入れ。まとめて相手してやる。」

 

知憲「ハアァァァァ!!!」

 

ラウラ「やはりヴァイツェン殿は・・・」

 

サラ「凄い・・・」

 

知憲「そんじゃ、実技テストの補習と行くか・・・トールズ士官学院・Z組特別教官、ヴァイツェン・・・行くぞ!!!」

 

こうして、リィンを含めた3人との試合が始まった。

 

リィン「そこだ!!」

 

ユーシス「無駄だ!!!」

 

マキアス「ふん!!」

 

3人の攻撃をかわす。

 

知憲「そんなものか。なら、とっとと終わらせてやる。ボイスバズーカ!!」

 

3人「!?」

 

見事に命中してダウンさせる。

 

知憲「補習授業終了だ。」

 

リィン「くっ・・・はあはあ・・・」

 

マキアス「ぐうううっ・・・」

 

ユーシス「・・・馬鹿な・・・」

 

サラ「・・・(あの武器を使わない攻撃。3年前のあの人と同じだわ。でも・・・マスターがね。あの人サングラスとかかけたら恐そうだったし。・・・でも、もしかしたら・・・)」

 

エリオット「だ、大丈夫!?」

 

アリサ「あ、相変わらずとんでもないわね。」

 

ガイアス「・・・あれでも一応手加減したみたいだな。」

 

ラウラ「ふむ、いつ見てもどんな流派か皆目検討も付かないが・・・」

 

エマ「でも、これで・・・」

 

フィー「決まりかな。」

 

知憲「俺の勝ち♪これでサラに文句はないだろ?」

 

リィン「そ、そう言えば先程言ってたZ組特別教官って?」

 

知憲「ああ、本日付でZ組の特別教官に就任になったヴァイツェンだ。」

 

一同「・・・え〜!!!」

 

エリオット「ど、どう言うこと!?」

 

アリサ「サ、サラ教官!?」

 

サラ「わ、私に聞かないでよ!!マスター、一体どういう・・・」

 

??「わしから説明しよう。」

 

一同「学院長!!」

 

あらわれたのはヴァンダイク学院長だった。

 

ヴァンダイク「この度、Z組の特別教官に就任になったヴァイツェン君じゃ。なにせ人手が足りなくてな。君達の特別実習に、サラ君だけでは荷が重いと思ってな。」

 

サラ「・・・なるほど。」

 

ヴァイツェン「とは言っても、基本は特別実習の付き添いだ。後は、たまに実技テストにも顔を出す程度だ。」

 

ヴァンダイク「そう言うことじゃ。それでは、明日の特別実習も頑張りなさい。」

 

学院長はそう言い残して戻っていった。

 

知憲「んじゃ、明日は直接現地集合な。流石に朝早すぎるから、今日のうちに向こうに行っとく。」

 

俺は一足先に、バリアハートへと向かった。向こうについて、どこに泊まるか考えていると知ってる声で呼ばれた。

 

??「ヴァイツェンさ〜ん!!」

 

知憲「この声・・・もしかして。」

 

俺は後ろを振り返った。すると、案の定クレアがいたのだった。

 

クレア「珍しいですね。お一人でこちらにいらっしゃるなんて。」

 

知憲「ああ、明日も例の特別実習だからな。朝早いから俺だけ現地入りって訳だ。」

 

クレア「なるほど。それで、今は何をなさっているんですか?」

 

知憲「これから泊まる所に向かってるんだ。」

 

クレア「ど、どちらに!!」

 

知憲「えっと・・・」

 

??「私の別荘だ。」

 

いいタイミングであらわれたな。

 

知憲「ったく、遅いぞ。」

 

ルーファス「すまないな。だが、随分と久しいな。ヴァイツェン。」

 

クレア「ルーファス・アルバレア。何故あなたが・・・」

 

ルーファス「私とヴァイツェンは、平民と貴族ではなく、一人の人間として彼を尊敬している。」

 

知憲「って訳だ。すまないなクレア。また今度飯でも作ってやるからな。」ナデナデ

 

俺はクレアの頭を撫でて別れた。

 

知憲「何時ものように頼むよ。」

 

ルーファス「任されよ。父上は君を酷く嫌っているからな。せめて、私の別荘ではのんびりしてくれ。」

 

知憲「お言葉に甘えるよ。んで、明日弟に会いに行くんだろ?」

 

ルーファス「ああ。その時に一緒に連れていこう。」

 

知憲「宜しく♪」

 

ルーファスの別荘で、俺はのんびりと過ごした。そして翌朝。

 

知憲「お、いたいた。こっちだこっち。」

 

ルーファス「親愛なる弟よ。3ヶ月ぶりとは言え、いささか早すぎる気もするが。」

 

知憲「おいおいルーファス。別にいいだろ?」

 

ルーファス「そうだな。ルーファス・アルバレア。ユーシスの兄にあたる。ま、恥ずかしがり屋の弟の事だ。私と言う兄がいることなど、諸君には伝えてないだろうがね。」

 

ユーシス「あ、兄上!」

 

知憲「取り合えず俺達の宿泊先に向かおうか。」

 

ルーファス「そうしようか。」

 

俺達は表に止めてた車に乗り、宿泊先のホテルに向かった。

 

リィン「なるほど、今回の実習の課題を。」

 

ルーファス「ああ、父の代理として私の方で一通り取り揃えた。まずは受け取りたまえ。」

 

リィン「確かに。」

 

ルーファス「しかし、これも女神のお導きか。シュバルツァー経のご子息が、私の弟のキュウユウとなるとはな。」

 

リィン「父をご存知なのですか?」

 

ルーファス「ユミルの領主、テオ・シュバルツァー男爵。その昔、帝都近郊で開かれた鷹狩りでご一緒させてもらった。その折に、狩りの作法や心構えを一通り教わってね。もう10年前になるか・・・今もお元気で?」

 

リィン「はは・・・はい。相変わらずの狩り道楽ですが。」

 

知憲「だろうな。テオさんはなかなかくたばらんよ。」

 

リィン「!?ヴァイツェンさんも、父をご存知で?」

 

知憲「あの時は丁度テオさんが、ユミルを離れてた時に会ったからな。リィンが知らなくても当然だ。」

 

リィン「そうですか。」

 

ルーファス「さて、短い間だったが、諸君の宿が見えてきたぞ。」

 

ようやく俺達が世話になるホテルに到着した。

 

知憲「へ〜随分と立派なホテルだな。ま、やっぱりお前の別荘には負けるか。」

 

ルーファス「フフッ、そうでもないさ。さて、それでは私はこれから父の代理として帝都に向かわなければならない。」

 

ユーシス「そうですか。おきをつけて。」

 

そしてようやく特別実習の課題を始めることとなった。最初の課題は簡単に終わり、砦に向かう途中での魔物退治と、貴族の坊っちゃんの課題のみとなった。先に魔物退治の課題を済ませようと、魔物が生息する辺りにやって来た。辺りを見回すと、魔物はいた。

 

リィン「あれだな。」

 

マキアス「・・・今回は僕達をアタッカーに入れてくれ。いい加減にARCUSの使い方を極めなければ。」

 

ユーシス「せいぜい大船に乗った気分でいるがいい。」

 

知憲「大船ね〜・・・」

 

俺は何時ものように、戦闘には参加しない。そして見事に討伐依頼の魔物を退治した。

 

リィン「・・・手強かったな。」

 

エマ「え、ええ・・・でも何とかなりました。」

 

フィー「・・・ギリギリだったけど。」

 

知憲「お疲れ。と言いたいとこだけど、そこの二人。一体どういうつもりだ。」

 

マキアス「くっ・・・」

 

ユーシス「・・・・・・」

 

リィン「よ、よせよ!!」

 

マキアス「うるさい!!君達には関係ない!!!」

 

3人「・・・!?」

 

知憲「避けろ!!」

 

リィン「・・・ぐっ・・・」

 

エマ「リ、リィンさん!!」

 

知憲「テメェ〜!!!空気砲!!!ドッカーン」

 

リィン「・・・や、やったか?」

 

エマ「リィンさん!!!」

 

マキアス「お、おい・・・」

 

ユーシス「・・・大丈夫なのか?」

 

リィン「あ、ああ・・・何とか。」

 

知憲「リィン!!今すぐ傷を見せろ。」

 

俺はポーチから、お医者さん鞄を取り出して、リィンの傷に当てる。

 

鞄「キズノジョウタイチェックチュウ・・・カイセキカンリョウ。コノクスリヲヌッテシバラクアンセイ。」

 

知憲「取り合えず暫くは安静にしろ。」

 

エマ「そうですね。暫くはバックアップをお願いします。」

 

リィン「そうするよ。」

 

知憲「さて・・・おい、今回の結果は何で起きたか分かってるよな。」

 

ユーシス「・・・・・・」

 

マキアス「そ、それは・・・」

 

知憲「お前らが下らない争いのせいでこうなったんだぞ!!!わかってんのか!!!何が貴族だ何が平民だ!!どっち人間だろ!!!それを帝都といい貴族といい。下らない争いばかりして!!!結局俺がやった事は、ただ争いを送らせただけだったか。」

 

エマ「えっ!?」

 

マキアス「それはどういう・・・」

 

知憲「・・・この話終わりだ。急いでオーロックス砦に向かうぞ。」

 

一同「はい。」

 

エマ「リィンさん・・・」

 

リィン「ん?」

 

エマ「少し待ってください。・・・Lux solis medicuri eum」

 

リィン「えっ・・・委員長今のは?」

 

エマ「その・・・包帯を絞めただけです。」

 

知憲「・・・・・・」

 

あれは凄い魔法だな。

 

知憲「エマ、お前さん相当な魔法使いだな。」

 

エマ「・・・いえ、ヴァイツェンに比べれば、私なんて。」

 

知憲「そんなに謙遜するな。確かに俺は傷を治せるが、時間がかかる。」

 

エマ「それでもです。伝説の方と一緒でも光栄ですから。これからも宜しくお願いします。」

 

知憲「ああ、こちらこそ。それより、眼鏡を外してる方が綺麗だぞ?」

 

エマ「ええっ!?///」

 

知憲「俺達も行くか。」

 

エマ「ま、待ってくださいヴァイツェンさん!!い、今のは一体///」

 

真っ赤になってるエマをからかいながら、俺はリィン達の後を追った。オーロックス砦に到着し魔物退治の報告を済ませて戻ろうとした時、突然砦からサイレンが響き渡った。そして、俺達の遥か頭上を何かの飛行物体が通り過ぎた。町に戻った俺達は、最後の依頼を報告してホテルに戻った。

 

知憲「お疲れさん。少し休憩したら食事に出掛けるぞ。」

 

リィン「そうですね。」

 

すると、後ろにユーシスの家の車が止まった。中に乗っていたには、ユーシスの父でアルバレア公爵だ。

 

アルバレア「ルーファスにも言っているが、好きにすればよい。」

 

アルバレアは、一目俺を見てそのまま行ってしまった。そして近くの店で夕飯を済ませて、翌日の実習に備えて部屋に戻った。翌日・・・

 

??「ユーシス様。旦那様がお呼びになっておいでです。」

 

リィン「行ってきなよ。午前中の実習くらいはなんとかなるよ。」

 

ユーシス「・・・わかった。なら、昨日の店で合流するとしよう。」

 

ユーシスはそう言い残して、自宅に戻っていった。俺達は、午前中に依頼された課題をこなし町に戻る。すると、領邦軍の連中が集まりマキアスを連れていってしまった。

 

リィン「マキアスを捕まえたのは、知事であるレーグニッツ知事の取引のカードにするつもりだろ。」

 

エマ「で、でも・・・流石に傷付けたりは・・・」

 

フィー「どうかな?」

 

知憲「ああ、貴族派と革新派の対立はかなり深刻だ。」

 

リィン「・・・これも、特別実習の延長線上かもしれない。俺達で何とかしてみないか?」

 

エマ「はい。さすがに放ってはおけません。」

 

フィー「いいよ。」

 

知憲「その件については、俺も参加させてもらおう。」

 

リィン「ありがとうございます。後は、どうやてマキアスを助け出すかだな。」

 

知憲「それについては任せな。ある筋からいい情報がある。」

 

ある筋と言っても、トヴァルからの情報なんだがな。昨日ARCUSで連絡をもらった。トヴァルはオリヴァルトに2年前紹介してもらった。

 

リィン「ある筋?」

 

知憲「さっきあそこでマスターと話してた男がいただろ?アイツは遊撃士のトヴァルさ。」

 

エマ「その人が・・・」

 

知憲「ああ。そんじゃマキアス達を助けに行くぞ!!」

 

俺達は町の用水路に向かった。しかし、そこで問題が起きた。扉に鍵が掛かっているのだ。町中で技を出すわけにはいかないし。

 

知憲「何かいい道具あったかな?」ゴソゴソ

 

ポーチから中に入れる道具を探す。ん〜・・・

 

知憲「おっ!!あったあった。通り抜けフープ!!入るぞ。」

 

リィン「す、凄い道具ですね。」

 

エマ「・・・(私の出番が無くなっちゃった。)」

 

フィー「さすがだね。」

 

フープを抜けて用水路に入った俺達。中は結構入り組んでいた。

 

エマ「随分と綺麗ですね。さすが《翡翠の都》ですね。」

 

フィー「でも、面倒そうな魔獣が結構うろついてるみたい。」

 

リィン「目指すは西ー領邦軍の詰所に通じる区画だ。」

 

気合いを入れ先に進む。途中でユーシスと合流。どうやらユーシスもマキアスを心配してたようだ。その時に、魔獣が1体エマに襲い掛かった。他の連中は遠くて間に合わない。

 

知憲「仕方ない・・・ポイズンライフル!!」

 

毒を魔獣に放つ。魔獣に命中し見事にエマは無事だった。が、少し手違いが起きてしまった。俺の撃ったポイズンライフルが、エマにも当たってしまった。魔獣にしか効かないので、死ぬことはないが・・・代わりにエマの服が溶けてしまった。

 

エマ「キャアァァァァ!!!」

 

リィンとユーシスは、慌てて後ろに振り返った。そして俺は着ていた上着をエマに着せた。

 

知憲「その・・・なんと言うか・・・すまない。」

 

エマ「はうぅぅ///せ、責任とってください!!!」

 

知憲「・・・わかった。責任を取る。」

 

エマ「えと・・・これからも宜しくお願いします///チュッ」

 

男性人「「なっ!!!」」

 

フィー「エマ、大胆。」

 

こうして、3人目の責任を取る方が増えましたとさ。しかし・・・エマの胸はクレアやサラにも負けてないな。

 

リィン「と、とにかく先に急ぎましょう。」

 

ユーシス「あ、ああ。」

 

なんだかんだでようやく詰所の所までたどり着いた。しかし、ここでも問題が起きた。見ると扉にはノブどころか鍵穴すら見当たらない。

 

知憲「またこいつの出番か?」

 

フィー「問題ない。下がって。」

 

フィーはそう言うと、扉の5ヶ所に何かを張り付けた。もしかして・・・

 

フィー「起爆・・・」

 

ドーン

 

見事に扉の立て付けを爆破し、扉を倒した。

 

ユーシス「今のは、爆薬か。」

 

フィー「携帯用の高性能爆薬。可塑性もあるから、こういった工作に便利。」

 

リィン「・・・フィー、君は一体何者なんだ?」

 

フィー「・・・士官学院に入る前、私は《猟兵団》にいた。爆薬も銃剣の扱い方も、そこで全部教わった。」

 

リィン「なるほど。」

 

ユーシス「信じられん。死神と同じ意味だぞ。」

 

フィー「私死神?それに、そんなことならマスターだって。」

 

知憲「ま〜そうだな。俺もフィーと似たようなもんだな。しかしフィー、何時気が付いた?」

 

フィー「何となく前から。」

 

ユーシス「マスターが君と同じ?」

 

リィン「・・・・・・」

 

エマ「・・・・・・」

 

知憲「何時までも隠しててもいずれバレるか。ユーシスも聞いたことがあるだろ?伝説の話。」

 

ユーシス「ま〜それくらいは当然・・・まさか!?」

 

知憲「そ、その正体は俺だ。」

 

ユーシス「信じられん。」

 

知憲「ま、リィンもとっくに気付いてただろ?」

 

リィン「ええ、クレアさんに聞きました。」

 

知憲「あのお喋りめ。」

 

ユーシス「しかし、マスター・・・いえ、貴方があの伝説の方とは。」

 

知憲「その話は追々するとして、今は早くマキアスを助けるぞ!!」

 

一同「了解」

 

そのままマキアスを助けだし、急いで来た道を戻っていった。すると、地下牢から獣の声が響き渡る。

 

リィン「今の声は・・・」

 

フィー「もしかして訓練された獣かも。」

 

知憲「急いで戻るぞ!!」

 

慌てて走り出す。しかし、獣2体は物凄く早くしかも別々に追っている。

 

知憲「仕方ない・・・お前達はそのまま走れ!!後ろの奴は相手をしておく!!!」

 

リィン「わかりました!!」

 

エマ「お気をつけて!!」

 

マキアス「お、おい!!いいのか!!」

 

ユーシス「ふん・・・心配するだけ無駄だ。」

 

フィー「そうだね。」

 

マキアス「ええ!!」

 

俺はリィン達と別れて、2体のうちの1体を相手にする。

 

知憲「とは言っても、もう1体いるし、早めに終わらせて追うか。桃太郎印のきびだんご!!ほい。」

 

獣「パクっ」

 

知憲「伏せ!!」

 

獣「クーン。」

 

知憲「よしいい子だ。俺を後ろに乗せて追うぞ。」

 

獣「ワン!!」

 

そのままリィン達の後を追った。見ると領邦軍の連中に囲まれていた。

 

隊長「ふん・・・すぐにもう一人の奴も捕まるはずだ。一人であれに臨むとは、無謀だな。」

 

知憲「何が無謀だって?」

 

リィン「ヴァイツェンさん!!!」

 

エマ「よかった。無事だったんですね。」

 

隊長「貴様・・・いったいどうやってあれから逃げたんだ!!」

 

知憲「別に逃げてないぞ?出てこい。」

 

獣「グルルル・・・」

 

一同「なっ!?」

 

知憲「見ての通り、こいつは俺になついてるんでな。言えばすぐにお前らを襲うぞ。」

 

隊長「くっ・・・」

 

??「その必要はなかろう。」

 

知憲「遅いぞ。」

 

あらわれたのは、帝都にいるはずのルーファスだった。

 

隊長「ルーファス様!!」

 

ユーシス「あ、兄上!!」

 

知憲「何とか連絡が行ったみたいだな。」

 

ルーファス「ああ、お陰で助かったよ。また君に借りができてしまったな。」

 

リィン「所で、何故こちらに。」

 

ルーファス「彼から連絡をもらってね。君達の教官と一緒に来たわけだ。」

 

知憲「おいおい、サラも来てたのか。これはバレたな。」

 

サラ「ええ・・・それはもう。」

 

ルーファスの後ろからあらわれたサラ。いかにも不機嫌ですという顔をしていた。

 

知憲「ま、ま〜サラ。落ち着いて話を聞いてくれ。」

 

サラ「・・・・・・」

 

未だに黙っているサラに、俺は今まで感じたことのない恐怖を感じていた。

 

リィン「サラ教官、今まで見たなかで一番怖い感じがする。」ヒソヒソ

 

マキアス「それはそうだろ。」ヒソヒソ

 

フィー「サラは、今までずっとヴァイツェンの事を思っていた。たまに酔った時に話してた事がある。」ボソボソ

 

マキアス「と言うか、マスターが伝説の男とは知らなかった。」ヒソヒソ

 

ユーシス「それについては同意だ。」ボソボソ

 

リィン「けど、知ってるのはここにいるメンバーだけみたいだよ?」ヒソヒソ

 

エマ「ええ、本人が決して言わないでと言ってましたので。」ヒソヒソ

 

ユーシス「ふん、そのうち残りの連中にもバレるだろ。」ボソボソ

 

リィン達は、聞こえないように話していた。

 

サラ「・・・んで」

 

知憲「ん?」

 

サラ「なんで・・・生きてることすぐに教えてくれなかったんですか!!どれだけ・・・どれだけ心配したと!!!」ポロポロ

 

知憲「・・・悪かったな。」

 

サラ「絶対に・・・ヒグッ・・・許さないん・・・エグッ・・・だから!!グスッ」

 

サラは、俺の胸の中で泣きながら話した。そんなサラを、俺は泣き止むまで頭を撫でてやった。ようやく泣き止んだらサラだが、何故か俺の袖を摘まんでいて離れない。

 

知憲「あの・・・サラ?」

 

サラ「暫くこうさせて!!」

 

今まで見たことのないサラの行動に、リィン達は呆気にとられていた。そして翌日、俺達はトリスタへと戻った。列車の中で、サラが俺にベッタリもたれていたのは言うまでもなかった。

 

サラ「でも、今回は本当にお疲れ様。」

 

リィン「本当に色々ありました。けど・・・」

 

知憲「これからも起こることも、色々ありそうだな。」

 

サラ「それに関しては、当分心配しなくていいわ。君達はまだまだ学ぶ立場であるしね。今しか得られない何かがあると、私はそう信じているわ。」

 

一同「あはははっ」

 

サラ「ど、どうして急に皆して笑うのよ。」

 

エマ「す、すみません・・・仰ってることは、凄く感銘を受けたんですけど・・・」

 

リィン「何時もの教官とのギャップがありすぎてどうにも・・・」

 

フィー「ちょっとクサすぎ。」

 

サラ「ーああもう!せっかくいいこと言ったのに!!ヴァイツェン〜皆がいじめる〜!!」

 

知憲「はいはい。」

 

サラはそう言いながら俺に抱き付いてくるのだった。

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