IS‐インフィニット・ストラトス‐黒獅子と駆ける者‐ |
episode234 様々な思い出
バインドとの決戦から更に一週間・・・・
「・・・・」
その頃月の軌道上では、ハルファス、フェニックス、マスターフェニックスの三体が隼人の捜索を続行している。
今も尚隼人の捜索は続いているも、状況が状況である為に、実質上死亡していると言うのが決定付けられている。
しかし、それでも諦めない者達はこうして捜索を続けている。
「やはり、もっと距離を広げて捜索しないと見つかるわけが無い、か」
「そうだね」
「・・・・」
「でも、本当にいいの?私達と共に居ても」
ハルファスがマスターフェニックスに問う。
あの時の傷は完全に修復されているが、主力武器であったクロスバインダーソードは片方が損失しているので、今は一つしかない。
「俺にはもう戻る所も、行く所はない」
「・・・・」
「それに、俺はGシステムで生み出された存在だ。それが消えて尚俺だけは消滅しないまま、こうしている」
全世界中に広がっていたバインドはレイ・ラングレンとGシステムの消失によって砂の様に崩れてなくなっているが、唯一マスターフェニックスだけはこの様にして残っている。
その為、世界中にバインドの残骸は殆ど残ってないと言ってもいい。
「理由を知りたいわけではない。だが――――」
「でも?」
「・・・・俺は今出来る事をやるだけだ。今までの罪を償う事から始める」
「そう・・・・」
「・・・・」
「・・・・・・?」
と、ハルファスは何かを感じ取ると顔を上げる。
「どうした?」
「・・・・エネルギー反応?しかも、かなりでかい」
「こんな所で?」
「まさか、神風隼人か?」
「そんなのありえないよ。少なくとも木星辺りまで飛んで行ってるんだよ。しかもそこから爆発によってどこかに飛ばされているし、そこからここまで戻っては・・・・」
「じゃぁ、この反応は一体・・・・」
すると遠くの宇宙より、一点の光が現れる。
「あれは・・・・」
「金色の・・・・光・・・・?」
「まさか・・・・」
――――――――――――――――――――
その頃――――
「・・・・」
ヴィヴィオはIS学園の寮の屋上で、膝を抱え込んで座り込んでいる。
「お父さん・・・・」
悲しげな声を漏らし、空を見上げる。
姿は聖なる王へと覚醒した大人の女性のままであり、戻るのが遅かった為にもう幼い姿に戻る事が出来なくなっている(まぁこちらがある意味本来の姿ではあるが・・・・)
「・・・・」
そのまま俯くと、涙を流す。
「・・・・帰ってきてよ・・・・お願い」
泣きじゃくり、ただ言葉を漏らす。
「・・・・」
電気も付けず、真っ暗な部屋で、簪は布団を深々と被ってベッドに横になっていた。
どのくらい泣いたか覚えていないが、涙が枯れるぐらい泣き続け、枕には涙の跡が大きく残り、目は赤く充血し、瞳にはハイライトがなく、まるで死んだ魚の目のようであった。
「はや、と・・・・」
枯れた声で隼人の名を口にする。
「どう、して・・・・」
一瞬脳裏に、様々な事が過ぎる。
その出会いは偶然だったのか。それとも、運命だったのか・・・・
五年前の京都の清水寺にて、私は景色を見ようと身体を乗り出した所手を滑らせ、そのまま高いところから落下してしまう。
しかし、それを幼い頃の隼人が身を挺して守った事で、私はこうして生きているんだと思う。でもお礼を言う前に隼人は行ってしまった。
それから五年の月日が経って、とある倉庫に本音と共に迷い込んでしまった。倉庫の中の資材に隠れ、そこで話されていた内容は、恐らく聞いてはいけないものだと悟って、下手をすればあの時私は殺されていたかもしれなかった。
そこでバンシィを纏った隼人がISを纏った女性と一戦を交え、撃退した。事実上私は意識をしていなかったとは言っても、隼人に二度も命を助けられた。
その時もお礼が言えないまま、私はIS学園に入学した。まだ私の専用機は白式のせいで完成されていなかった。お姉ちゃんが一人で完成させたから、私にも出来ると思って一人だけでISを完成させようとした。でも、現実はうまく行かず、製作は難航した。
そんな時に、バンシィを整備しに来た隼人と再会を果たした。そして、私はこの間の事で隼人にお礼を言えた。
その後隼人は私とお姉ちゃんの関係をお姉ちゃんから聞いたようで、その事を私に聞いて来た。その時の私はお姉ちゃんの事が嫌いだった。だから、不機嫌にその場を立ち去った。
その後ちょくちょくと隼人は私の所にやって来て、ISの製作の手伝いをしてくれた。最初こそ正直鬱陶しかったけど、それでも隼人は優しく接して手伝ってくれた。
そのお陰で打鉄弐式は予想以上に早く完成させる事が出来た。
完全に完成したわけではないけど、私にとっては初の専用機を持っての戦闘となった学年別トーナメントでは隼人と組み、優勝を飾る事になった。
優勝したら隼人と交際出来るって生徒の間では噂になっていたけど、隼人自身は承認していなかった。でも隼人はある程度は私と付き合ってくれた。
隼人は私とお姉ちゃんとの関係を改善させようとしてくれた。最初は嫌だったけど、でも、改善しようと少しだけ思い出して、最初は手紙でやり取りをした。
次第にお姉ちゃんと距離は縮まってきたけど、でもまだ長い間に刻まれた深い溝は埋まらなかった。
そうして私は、隼人に立会人として、お姉ちゃんと一戦を交える事になった。隼人に打鉄弐式の改良を手伝ってもらい、鍛えて貰ったけど、無論生徒会長であるお姉ちゃんに勝つ勝算など無い。でも、勝つつもりは無くても、私が持てる限りの力を全てぶつけて戦いに挑んだ。
一歩手前までお姉ちゃんを追い込んだけど、詰めが甘く敗北した。結果は分かっていたけど、別に悔しくは無かった。それを境に、私とお姉ちゃんの間の溝は埋まった。
その後も色々とあった。学園祭での出来事、颯との出会い、キャノンボール・ファストでのバンシィの第二形態移行。
何より、驚いたのは、五年前、私を助けてくれた男の子が隼人であった事だった。偶然の出会いだったと思った。けど、私はまるで運命の出会いじゃなかったんじゃないかって思った。
気付けば、私は隼人に想いを寄せていた。少し前からそんな気がしたけど、これで確信を得た。
私は隼人の事が・・・・・・好きだと・・・・
でも、いつまでも私は隼人に気持ちを伝える事が出来なかった。大胆に隼人に近付くお姉ちゃんの事が、時より羨ましかった。
同時に、こんな性格の私が憎かった。
そうしていると、世界サミット防衛線で、隼人は亡国機業のナンバーズによって連れて行かれた。その時私は嫌な予感を感じた。でも、本当に連れて行かれたのは、驚きを隠せれなかった。
隼人が連れて行かれた事は悲しかった。まるで・・・・生きた心地がしなかった。でも、嘆いても隼人は戻ってこない。分かっていても、悲しかった。
そんな時に、私を含めた専用機持ちの一部がバインドによって誘拐され、隼人達と戦う事になってしまった。
そして私も、隼人と戦う事になってしまった。
隼人は命を掛けて、専用機持ちや、私を救ってくれた。これほど嬉しい事はなかった。
でも、ドイツ本土を奪還してIS学園に帰還中、ナンバーズと亡国機業の襲撃に遭い、そこで鈴さんが殺された。
隼人は怒り狂い、亡国機業のメンバー二人を殺害した・・・・そう聞いている。
その後隼人は別の何かに変貌し、みんなと戦う事になった。
みんなの努力もあり、隼人は元に戻って来た。
でも、私はあの時、助け出されたばかりだったから、どうなったのかは分からなかった。その後リインフォースさんから話を聞いて、衝撃を受けた。
そして隼人が一度死に、転生した事を伝えられ、みんながショックを受けた。
でも、私はそんな事は良かった。だって、隼人は隼人だから、それに変わりは無い。隼人に対する、想いだって・・・・
南極でヴィヴィオを見つけ、隼人は父親代わりにその子の面倒を見た。
正直、私と隼人の将来を想像したりした・・・・。すぐに頭を振るって考えを払ったけど。
その後、ヴィヴィオはバインドによって誘拐されて、それによって隼人は人が変わってしまった。私は政府からの招集でIS学園に居なかった。
そうして隼人は気が立っていた事が原因で、ある事件を起こして、隼人はIS学園から去ってしまった。
そして隼人は一人でヴィヴィオが居るバインドの秘密前線基地に向かった事が分かった。
私は命令に背き、事前にユニコーンが教えてくれた秘密前線基地へと向かった。
そうして隼人はヴィヴィオを救い出す事が出来て、元の隼人に戻ってくれた。
その後バインドは本格的に動き出し、私達は決戦に向けて準備を進めた。戻って来れるかも分からない決戦の前で、私はどうしても、隼人に伝えたかった事があった。
でも、こんな時でも、私の性格が裏目に出て言おうにも言えなかった。
どこか嫌な予感がして、どうしても言いたかったけど、隼人に止められて結局言えなかった。
でも、この後に本当にこれほど後悔した事は・・・・無かった。
隼人は私たちを救うために――――
―――――自らの命と引き換えに地球を救った。
多くの命が救われた。それは良き事かも知れない。
でも、私や仲間達は・・・・良くは無い。
私は最後まで、隼人に私の想いを伝える事が出来なかった。
これほど・・・・これほど自分の事が恨めしかった事は無い。
嘆いたって、隼人は戻ってこない。それは分かっている。でも、嘆かずには、居られなかった。
「・・・・戻って、来てよ」
簪は布団の中で泣きじゃくるも、もう涙は出ない。
「あなたがいない世界なんて・・・・・・生きても・・・・意味なんか」
「隼人・・・・隼人・・・・」
そんな時、簪の脳裏に何かが過ぎる。
「・・・・?」
簪はゆっくりと布団の中から起き上がると、ベッドからふらつきながらも立ち上がる。
まともに食事を取ってないせいでやせ細っており、涙を流した跡がくっきりと残っている。制服もよれよれになり、髪も寝癖が酷い。
ゆっくりとした歩みでベランダの窓を開け、外に出る。
「・・・・」
顔を上げ、ハイライトが無い死んだ魚のような眼で空を見つめる。
月が今日は出ていないので、夜空に輝く星がいくつもあった。
今の簪にはどうでも良い景色だった。
一緒に見てくれる人は・・・・・・もういないのだから・・・・・
「・・・・?」
星を見ていると、簪は何かに気付く。
輝く星の中に、一際目立つ光を放つ星があった。
「・・・・」
なぜかその光を見ていると、懐かしい感覚が現れる。金色に輝く、その光に――――
「・・・・」
首を傾げた瞬間、その光は突然落下し、IS学園がある人工島の近くに墜落する。
「っ!」
落下中の一瞬の間に見えた金色の光を見て、簪は何かを感じて、すぐに部屋を出る。
その瞳はさっきまでの死んだ魚の目ではなく、希望に満ち溢れ、光が灯っていた。
――――――――――――――――――――
時は遡る事一週間と数日前―――――
「・・・・」
隼人は目を覚ますと、目の前にはさっきまでの場所とは違う所であった。
「ここは・・・・」
顔を上げて前を見ると、見たことがある惑星が視界に入る。
(どうやら、ここは木星の周辺宙域のようだな)
「ノルン・・・・ってことは」
(あぁ。私たちは戻ってきたんだ。元居た次元に・・・・)
「・・・・」
(これも、神が成せる業、と言うわけか)
「・・・・かもな」
隼人は体勢を立て直すと、サイコフレームが作動して金色の輝きが戻ると、閉じていた背中のアームドアーマーXCが展開し、両腕にアームドアーマーBSとVNを展開して装着して武器を展開し、サイコフレームを作動させる。、
「帰ろう。地球へ」
(あぁ)
隼人はスラスターを全開に飛ばし、地球へと向かう。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! | ||
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