IS‐インフィニット・ストラトス‐黒獅子と駆ける者‐ |
episode235 帰るべき場所
それからサイコフレームに頼って飛行し、五日掛けて月軌道上までやって来る。
「しかし、こんな短時間でここまで来れたんだからな。本当にサイコフレームは凄い」
(だが、サイコフレームにはあの時の負担が大きい。何が起こるか分からない)
「あぁ」
隼人は一気にスラスターを一気に噴射し、地球へと向かう。
(だが、このままでいいんだろうか)
(・・・・?)
突然の隼人の呟きにノルンは疑問を抱く。
(・・・・あんな事を言って、このまま帰るのはなぁ・・・・)
(お前ってやつは。お前はバカか?)
(ぬっ?)
いきなり罵倒されて隼人はムッとする。
(お前は生きている。死んだと思われた者が生きて戻ってくるんだ。これほど嬉しい事は無いだろう)
(・・・・)
(正直に、普通に帰ればいいんだ)
(そういうもんかな)
(そういうもんだ)
(・・・・)
隼人は少し複雑な気持ちを抱きながらスラスターの出力を上げて飛び出す。
――――――――――――――――――――
そうして今に至る。
「あれって・・・・まさか、バンシィ!?」
そしてハルファスはその光の正体に気付く。
「・・・・冗談だろ。あの状況で生きているとは」
マスターフェニックスも驚きを隠せれなかった。
隼人はハルファスとフェニックス、マスターフェニックスの間を通り抜けて地球へと向かう。
「今のは・・・・?」
視線を向けれる範囲まで向ける。
(ハルファス達のようだな。お前を捜索していたのだろう)
「・・・・」
(お前がまだ生きていると信じている者は居るものだな)
「・・・・」
(このまま大気圏に突入する。サイコフィールドを前方に集中展開しろ)
「分かっている」
隼人はサイコフレームより発せられるフィールドを前方に集中展開し、大気圏に突入する。
「・・・・間違いない。神風隼人の・・・・バンシィだった」
「・・・・」
「ありえない。あんな状況で生きているなんて・・・・」
ハルファスとフェニックス、マスターフェニックスは呆然と隼人のバンシィ・ノルンを見送るしかなかった。
「っ!こうしちゃいられない!すぐにユニコーンに連絡を!!」
「は、はい!」
フェニックスは慌ててユニコーンへと通信を入れる。
「・・・・」
その頃、フェニックスの連絡前に、ユニコーンもそれに気付いて驚愕していた。
「そん、な。こんな事って・・・・ありえない」
モニターには、反応するはずが無い反応が現れたからだ。
――――――――――――――――――――
大気圏突入し、大気圏内に入った隼人はサイコフィールドを解除し、降下しながら地表を見る。
「本当に・・・・帰って来たんだな」
(あぁ。まさに奇跡だ)
ノルンの声には少し明るみがあった。
(お前には・・・・帰るべき場所がある。それだけでも、お前は幸せ者だ)
「・・・・あぁ」
少し不安はあるものも、隼人はIS学園へと向かおうと身体の向きを変える―――――
「っ!?」
すると突然バンシィ・ノルンがスパークし、各スラスターと各箇所より小さな爆発が起こる。
「な、なんだ!?」
とっさに被害状況を確認すると、ほぼ全身が赤く点滅している。
「オーバーロードだと!?こんな時に・・・・!」
(無理も無い。短時間で木星付近の宙域まで飛んで、更にここまで帰ってくるのに全速力で向かった。もう限界はとっくの昔に超えていたんだ。動いていたのは奇跡だ)
「くっ!」
隼人はとっさに体勢を立て直そうとするも、全く立て直せれなかった。
「PICまでダウンしているか・・・・!」
それが意味するのは・・・・・・死である。
(このままでは地表か海面に叩きつけられるぞ。そうなれば、ただでは済まん)
「ここまで来て・・・・くっ!」
隼人は必死になって身体をジタバタと動かすが、スピードは全く変化しない。
(隼人。このままでは海面に叩きつけられる。私が衝突直前にバンシィの装甲を使ってお前を守る。後は任せる!)
「お前はどうなる?」
(しばらくは修復に専念しないといけないな。だが、滅びやしない)
「ノルン・・・・」
そして、隼人は勢いよく降下し、IS学園がある人工島付近の海面へと叩きつけられる。
――――――――――――――――――――
「はぁ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」
息が上がり、簪は両手を両膝につけて息を整える。
「・・・・」
顔を上げて、波打つ海を見る。
墜落していく金色の光を見た瞬間簪は本能的に何かを感じ取り、考えるより前に身体が動き、海岸へと来た。
(こんな時にISが無いなんて・・・・)
打鉄弐式改は検査に回されている為、簪の手元には無い。
(墜落したのは・・・・あの辺りのはず)
見覚えのある光を思い出しながら海面を見る。
(間違いじゃなければ・・・・・・あの光は―――――
―――――バンシィの・・・・サイコフレームの光のはず・・・・)
本能的に感じ取ったもの・・・・・・
それは隼人のバンシィが持つ金色のサイコフレームが放つ独特の光。
(隼人。本当に・・・・隼人なの・・・・)
必死になって、見渡せる限り海を見る。
「・・・・」
すると、海面に一瞬金色の光が光り輝いた。
「っ!」
簪は考えるよりも先に身体が動き、海へと入って行き、跳び込んだ。
――――――――――――――――――――
(っ・・・・!)
海面に叩き付けられる際にノルンがバンシィの装甲を使って衝撃を相殺するも、全ては相殺しきれず頭に衝撃が走る。
とっさに体勢を立て直そうとするが、身体がうまく動かせない。
(くそ・・・・。頭が・・・・)
意識が朦朧とし始め、どんどん身体が海中に沈んでいく
(ここまで・・・・来て・・・・)
隼人は何とか、右腕を上へと上げる。
すると隼人の手を誰かが握る。
「・・・・?」
朦朧として、海中とあって視界はぼやけるが、顔を上げるとそこには一人の少女が隼人の手を握っている。
(かん・・・・ざし?)
ぼやけて顔は見づらかったが、それでも隼人には簪であると感じた。
簪は隼人を引き上げて海面に出ると、すぐに隼人を海岸まで引っ張っていく。
砂浜に引き上げられて、隼人は飲んだ海水を吐き出し、簪は砂浜に両手を付いて息を整えていた。
「・・・・」
隼人は仰向けになり、首だけを左に向ける。
「・・・・」
簪はこちらを見ている。
「簪・・・・」
「隼人・・・・」
二人はしばらく見つめ合う。
「・・・・簪。お、俺は――――」
隼人が半身を起き上げると、謝罪の言葉を言い終える前に、簪は隼人を抱擁する。
「いいの。隼人が謝らなくても」
「・・・・」
「隼人が・・・・こうして生きている。私はそれだけでいいの」
「・・・・簪」
「・・・・本当に・・・・本当に・・・・よがっだ」
簪は涙を流し、隼人を抱き締める。
「・・・・」
隼人も簪の背中に両腕を回して抱き締める。
――――――――――――――――――――
ユニコーンとバンシィはすぐに浜辺へと走って来ると、簪に支えられて歩いてくる隼人であった。
「ありえない。こんなのって・・・・」
ユニコーンは目を見開いて唖然としている。
「私でも、最後まで諦めないで捜索したけど・・・・私が導き出した計算じゃ・・・・0%だったのに・・・・」
「・・・・世の中、数字や机上の計算では表せない現象だってあるんだよ」
「・・・・」
「隼人君には、そういうのは無意味だって事かな」
「無意味、か」
すると隼人が二人に気付き、左手を上に上げて振るう。
「・・・・かもしれないね」
苦笑いを浮かべて、バンシィと共に隼人の元に向かう。
そして、隼人の帰還は残りの仲間達へと伝えられた。
説明 | ||
トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ! | ||
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