真・恋姫†無双 巡る外史と仮面の魔神 十六話
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その少女の初恋は一目惚れから始まった。

得体の知れない仮面の男の素顔に胸がときめく、鼓動が早くなる、顔が赤くなる。

なるべく見ようとしないでいるが、最初に見た時の顔を思い出してしまうのだ。

自分は主君一筋なのだ、こんなのは嘘に決まっている、自分が恋をしている筈がない。

……だが、今日もこっそり見てみようと後ろをつけてみよう。

いざとなったら罵声を浴びさせればいい。

自分はお前なんか嫌いなのだと言ってやればいい。

そう胸に決めて、自分の心を偽って、

 

――――陳宮は平沢梨斗の後をつける。

 

 

 

 

「はあっ!!てやっ!!」

「踏み込みが甘ぇ!!もっと前進して突け!!」

「はい!」

凪が弟子になって三日……闘技場でリトと凪は修行をしていた。

リトは逆鬼至緒モードになっており、今は空手を教えている。

凪に教える武術は空手とムエタイを中心に中国拳法と柔術を少々。

凪の特性を生かしている修行だ。

 

「凪ちゃん頑張ってるの〜!」

「ほんまやなぁ」

 

ちなみに帰ってきた後に、沙和と真桜の真名は預かった。

まあ、理由としては親友が預けたからだそうだ。

なんだかんだ言って、リトの事を気に入っているっぽいし。

特におしゃれと発明関係で話してくる。

そして、見ている人がここにもう一人。

 

「……………(じー…)」

(あの、パンツ見えるよ…その格好)

 

体育座りで修行風景を見ている呂布だ。

修行を始めた初日からずっと見られている。

しかもスカートを履いて、体育座りしているのでパンツが見えていた。

とりあえずリトは見ないように凪の方をずっと見ている。

 

「…うし、じゃあ休憩するか。沙和、水持ってきて!」

「はーいなの♪」

「ひゃー…今日も激しかったなぁ…」

「て言っても、凪の長所と短所を見極める為にやってるからな。まだまだこれからだ」

「はい!よろしくお願いします、師匠!」

 

沙和から水筒と汗ふき用の布を貰っている凪の目はキラキラしている。

例えるなら、これから遊んでもらえる寸前の子犬。

かなり可愛い……リト達がなんか和んでいる。

すると、とうとう気になったのかリトが呂布の所に行って話始めた。

 

「なあ呂布。俺達の誰かに用があるのか?」

「…………ん(ふるふる)」

「ただ見てるだけ?」

「…………ん(コクコク)」

「おもしろい?」

「…………ん(コクコク)」

「今日は一人?」

「…………ねねを誘ったけど、断られた」

 

ねね…陳宮のことだろう。

リトはその事に気付き、少し顔を暗くさせる。

何か嫌な事があったのか……呂布はリトに訪ねた。

「?………どうしたの?」

「いや、ちょっとさ……そっくりなんだよ、陳宮が。俺の世界にいる……女の子に」

「ん?誰やそれ?」

「俺の世界でさ、ちょっと大きな戦いがあって…そのときに俺が救えなかった母親の子供が陳宮そっくりなんだよ」

「救えなかった…!?師匠がですか!?」

「その時俺は今より強くなくてさ。体力がつきかけてる時に目の前でグサリ、だよ。俺もその子も見てた」

「酷いの…」

 

いつの間にか三羽烏も集まり、話を聞いている。

リトは空を見上げながら、寂しそうに…悔しそうに話を続けた。

 

「俺…さ…。その子が今どうしてんのか分かんないけど、恨んでんじゃないかと思うんだ」

「そんな……師匠は確かにその母親を救おうと…」

「でも、できなかった。俺が弱かったから、俺の手が届かなかったから…俺は救えなかったんだよ」

「せやけど、会ってないんやろ?だったらまだよう分からんし、大丈夫なんやないか?」

「そうなの!リトさんが誰かの為に頑張ったのは知ってるはずなの!」

「そうだとしてもさ、これっきりじゃないんだよ。俺が救えなかった人達は…まだまだたくさんいる」

 

平沢梨斗は思い出す。

別世界での、自らの悲痛な過去を。

自分は他の世界の物語を変える事はできない。

誰かの死を、悲劇を、崩壊を、止める事はできないのだ。

逆に言えば、物語が終了した後ならば変えられるがそれは無意味。

リトには誰かを生き返らせる方法がない。

特殊なやり方は知っているが、それをやるにしても遅すぎる。

 

リトが救えなかった人物の一人には、友達の義兄がいた。

処刑される所を、自らが所属する海賊団に、その友達に助けられた。

…だが逃げる途中に、その兄が殺された。

目の前にいた筈なのに、手を伸ばしたら届く筈なのに、銀色のオーロラが邪魔をする。

その兄の最後の言葉は、『愛してくれて、ありがとう』。

満足そうに兄が眠った後には、戦場の騒音と、友達の絶叫…そして、リトの涙だけが残った。

 

この他にもたくさんいるのだ。

そのなかでも、ほんの少しだがリトを批判する者もいた。

友を、家族を、恋人を…何故守らなかった、何故庇わなかった。

お前のせいだ、お前が何もしなかったから、

 

――――死んだんだ。

 

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今思うと…リトの人生は後悔だらけだ。

だからこそ、魔神を名乗り、魔神を越えようとした。

神を超え、悪魔を倒す……つまりは神の定めた運命を変え、悪魔が起こす焚災を打ち砕く。

そんな存在になろうとした、だがそれはできなかった。

現に、この外史の戦争を止める事はできなかったし、人も全て救えてはいない。

 

「――――だから俺は弱い男だ。全てを守ることも、救う事もできやしない無力な男なんだ…」

「……………ごめんなさい」

 

振り返っていたリトの呟きを聞いていたのか、呂布が謝った。

何故だろう、そんな顔をしながら呂布に聞き返す。

 

「何で呂布があやまんだよ?」

「……………恋、いっぱい人殺した。だから…ごめんなさい」

 

どうやらリトが救えなかった人に自分の殺した相手も入っていたと思ったのだろう。

呂布は目を伏せている。

 

「謝るなって。そう言うご時世だ、謝ってたらきりがない」

「……………でも」

「それに、同族殺しなら仮面ライダーも一緒だからな」

「仮面ライダーも?」

「何でなの?」

「最初の仮面ライダーは怪人と同じ改造人間。違うところは脳改造をされていなかったこと。仮面ライダーは人間の自由を守る為に戦ったんだがな、それは地獄でもあった」

「地獄?」

「誰かを守るためとはいえ、仮面ライダーのやったことは人殺し。そうじゃなくても同族殺しだ。いつも仮面ライダーは脳改造される筈だった自分と戦っていたんだよ。そこに仲間を求めてはいけないんだ」

 

でも、と少し思い出しながら繋げるリト。

彼は思い出しているのだ、自分と同じ…仮面ライダー達の事を。

 

「結局は増えてしまった。ある者は偶然で、ある者は復讐で、ある者は使命で、ある者は敵討ちで、ある者は恩返しで。悔やんでたよ、道連れにしてしまったってな」

「………………」

「前に曹操に何故仮面を着けるのか聞かれた事があってさ。曹操の答えは顔を隠すため。それだけだと、半分だけ正解なんだよ」

「半分だけ…ですか?」

「そう、もう半分は…」

 

いいかけた、瞬間だった……町の方で大きな爆発音がする。

その場にいた全員が振り返り、リトはとっさに指示を出した。

 

「凪、今から手の空いてる兵を連れて町に行け!そして住民の避難を!」

「は、はい!」

「沙和は曹操達の所に行って、この城の中に避難してきた住民を入れるようにしてくれ!もちろん、安全にな」

「分かったの!」

「真桜は自分の部隊を連れて、凪と一緒に町に行ってくれ!時間稼ぎかなにかは作れるだろ?」

「おうさ!」

「それで呂布は…」

「…………恋…もういく」

 

そう言うと、呂布は走りだし町の方へ行く。

リトは仕方ないと言わんばかりの顔になるが、その後を追った。

 

「あー、もう!俺も行く!あとはよろしくな!」

 

 

 

 

――――、数分前

 

 

 

 

陳宮はこっそりとリトが凪を稽古している所を見ていた。

だが、その後の話を聞いて逃げ出して来てしまったのだ。

自分と同じ顔の少女に恨まれているのではないかと言ったリトの顔を見て、悲しくなってしまった。

まるで自分と会いたくないように思えて、自分が目の前にいるのが辛いと思えて…

目尻に涙が溜まる…決して泣かないように我慢する。

 

「…ぐすっ…!…ひっく…、…?」

 

しばらく歩くと、周りの雰囲気が変わり始めた。

どこかで感じたことのあるような空気。

――そして次の瞬間、目の前の地面が黒く渦巻いた。

それと同時に陳宮は思い出した……これは怪人が出たときと同じだ、と。

得体の知れない何かに怯える住民に陳宮は素早く逃げるように叫んだ。

 

「ひぃ…!な…なんだぁ!?」

「み、皆逃げるのです!ここは危ないのですぅっ!!」

 

狼狽えている所に叫んだとしても、あまり効果は見られない。

そうこうしている内に、渦の中から怪人と思われる者が出てきた。

それはこの前に出てきた数の比ではなく、あっという間に十数体が出てくる。

しかも、その後ろからは戦闘員もちらほら出てきた。

 

「「「イーーーーーー!!」」」

「「「うわぁああーー!?」」」

「ま、まずいのです!」

 

住民達は一目散に逃げていき、戦闘員達はそれを追いかける。

途中、見廻りの兵が対抗しようにも数で圧されてしまった。

戦う力がない陳宮はこの事を他の誰かに知らせようとするが、他人の波でうまく進めない。

 

「うわぁあああ!うわぁぁあああああ!?」

「ひぃぃぃぃ!?」

「ど、退いてくだされ…!」

「―――シャァァアアア!!」

 

困っている中、マシンガンスネークが腕のマシンガンを放つ。

その凶弾は建物を壊し、地面を抉り……数人の住民の命を奪う。

背の低い陳宮は当たらないでいたが、目の前で人が死に腰を抜かしてしまった。

ゆっくりとした足取りで歩いてくるマシンガンスネークから逃げようとするが、うまく動けない。

そして、マシンガンが陳宮に向けられた。

 

「あ……ああ…!」

「シュルルル…」

「たす…助け……恋殿…たすけて…」

「シャァアアア!」

「誰か……助けて…っ!」

 

「ゲッタァァァァァッ!!トマホォウゥゥゥックッッ!!」

 

その瞬間、助けを求める声が届いたかのようにトマホークがマシンガンスネークを真横に切断する。

そしてそれに追い討ちをかけるように、一人の少女がマシンガンスネークの上半身を縦に切断した。

マシンガンスネークは爆発し、その爆風を陳宮から守るように立つのは、呂布。

 

「……………ねね…大丈夫?」

「れ、恋殿ぉ〜…!」

 

陳宮は目の前に自分の主人が現れた事に感涙し、抱きつく。

そうしていると、戻ってきたトマホークを手にとったリトがやって来る。

何か悪口を言わなくては…リトが来て慌ててそう思った陳宮であったが、リトの雰囲気がおかしい。

いつもの軽い感じではなく、まるで何かを別の何かで打ち消そうとしているようだ。

そして、リトはもう動かなくなった住民達の側に行って手を合わせた。

 

「…ごめん、もっと早く来れれば…あんた達を死なせなかった…」

「…………?」

「―――全体、なが槍構え!」

 

どこからか曹操の声が聞こえてくる。

すると、戦闘員達がいる場所に曹操の率いる隊がなが槍を持って立っていた。

その後ろには弓隊が矢を構えている。

そして合図と共に、戦闘員達を攻撃していた。

いつの間にかリト達の方にも凪達三羽烏、そして他の将数名も集まっている。

怪人達の一部は、ゆっくりと隊の方に行き、攻撃しようとした。

他の怪人達は呂布と陳宮の元に歩いて来て、呂布は武器を構える。

――そうしていると、手を合わせていたリトが呂布の前に立って喋りだした。

 

「…凪、さっき言ったもうひとつの答えは、感情(キモチ)を隠すためだよ。敵対する怪人が、自分の友人や親しい人だとしても、倒さなければならない。そんな悲しみを、助けられなかった虚無感を、組織に対する怒りを、全部仮面の中に閉じ込めて戦うのが、仮面ライダー…」

「え…師匠…?」

「たとえ、一人でも、敵が強大だとしても…たとえ、自分の幸せと引き換えにしても…それでも戦い続けるのが仮面ライダー…。俺は、そんな宿命を背負っていかなきゃならない。仮面ライダーを名乗るのは、そう言うこと…」

 

目の前の死体を見つめ、怪人達を睨み付ける。

救えなかった悲しみを、怪人に対する怒りで打ち消そうとしていた。

 

「俺は助けられなかった!でも、俺は戦う……一人でも多く、俺の持てる力で…戦う!」

「……………」

「今は、こいつらを倒す!全部は無理かも知れない、一人でも、圧倒されても!それでも、俺は…」

「…………一人じゃない、恋もいる」

 

いつの間にか握っていたリトの拳をそっと包んだのは呂布。

心配そうに見つめる彼女の瞳は、この状況に合わないほど綺麗だ。

 

「呂布……」

「……………悲しそうにしちゃだめ。恋も一緒にやっつけるから……寂しそうにしないで」

「……分かったよ、一緒に…戦ってくれるか、呂布?」

「………ん」

 

頷く呂布の返事は、いつもより少し早い気がする。

リトは填めてある真ボンゴレリングに炎を灯すと、その炎が縮小……金色のパスに変わる。

すると、今まで黙っていた陳宮が騒ぎだしていた。

 

「だ、だめなのです!恋殿はお強いのですが、死んでしまうのです!」

「…でも、戦うよ。呂布もだけど、俺は君の事を守りたい」

「ふぇっ?」

「守れなかった人達の代わりじゃない、君を守りたいんだ。一人でも多くの命を守るには、まず目の前の人から守る。誰の笑顔も消したくない…いや、消させやしない」

 

だから、といって呂布にパスを渡す。

少し困った笑みで陳宮を自分の肩越しで見つめるリトは、誰よりも頼もしいように思える。

 

「俺を、俺と呂布を…信じて、見守ってくれないか?」

「……はい、なのです……」

「ありがと…呂布、その使い方はそれが教えてくれるはずだ。心配ない」

「…………ん、分かった」

 

そう言うとリトは腰に窪みのある青いベルトをつけ、その窪みに緑のメダルを入れる。

すると、そのベルトは変化し、風車のついた赤いものに変わった。

呂布はどこから取り出したのか、金の装飾がついたベルトを腰に巻き付け、ボタンを押す。

パイプオルガンのような待機音が鳴り響くなか、リトは特殊なポーズをとり、呂布はパスをベルトに近付けた。

 

「ライダァー…変身…ッ!」

「……………変身」

『Gaoh form』

 

瞬間、風車から風が溢れだし、ベルトから半透明の何かが出てくる。

風はリトの周りを覆い、風が晴れた瞬間その姿を変える。

半透明の何かが呂布の体につき、別のものに変えた。

さらに、自分のオーラをアーマーに変えて装着すると、最後に頭部にワニの頭のような者が出現。

それが複雑に変形すると、呂布は『変身』した。

 

「いいか、怪人ども!!これが最初の仮面ライダー……」

 

バッタをイメージするような仮面、赤いマフラー…銀の手袋にブーツ。

全体的に銅色の、ワニをイメージしたような姿。

 

 

「仮面ライダー1号だ!」

「……………仮面ライダー…ガオウ…。お前たち、噛む…!」

 

 

二人の仮面ライダーは、怪人達に名乗りあげた。

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XXX「作者と!」

一刀「一刀の!」

X一「「後書きコーナー!」」

 

一刀「………まあ、良そうついてたよ。ねねが好きだってな」

XXX「だってイモねねやってたし…」

一刀「で、恋も一緒だと」

XXX「あの二人はセットでしょ」

一刀「て言うか、今回怪人多くするわけ?」

XXX「うん、まあ知っての通り呂布変身したからね。色々無双するつもりだったんだけど、長くなりそうだから次回に引き継ぐわ」

一刀「そうだ!何で恋ガオウに!?」

XXX「呂布=大食いって言うのが頭に浮かんで。ちなみに背丈は呂布を少しだけ大きくした感じだよ」

一刀「でもイメージ的に悪役っぽい…」

XXX「知ってるか?呂布って正史じゃ裏切りの鑑だったらしいぜ?」

一刀「オーマイガ!!」

XXX「…あ、それと次回からこの小説3日か四日置きに投稿します。なんか早く終わりそうになるし」

 

一刀「まだ納得が…!…次回、真・恋姫†無双巡る外史と仮面の魔神十七話は」

XXX「仮面編 “近所のお兄ちゃん”」

一刀「なにそれ平和なタイトル!?」

XXX「戦闘後のセリフです」

 

再見ΟωΟノシ

説明
仮面編

それでも戦い続ける
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コメント
刃さん イメージがそんな感じで決めました(XXX)
nakuさん 怪人相手にはやるんすけどね?あと可愛いのには超同感!!(XXX)
1get&復活\( 'ω')/ウオアアアアアア!!、xxx様恋がガオウって・・・カッコイイやないかいΣd=(´∀`*)。(黒鉄 刃)
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