アーカーシャ・ミソロジー外伝1 |
第?話 邂逅
やれやれ、俺の事が知りたいって?
俺の名前は、ヘテロ。しがない、フリーターさ。
まぁ、自慢じゃないが、結構、修羅場をくぐって来たんだぜ。
そう、戦争の-まっただ中に巻き込まれちまったんだからな。
何?なんの戦争かって?
おいおい、あんた、何処の出身だよ。ラース-ベルゼ国の
軍事侵攻を知らないとは言わせないぜ。
って、知らないのかよ。
はぁ・・・・・・あんた、金髪だし、ヤクトの生まれじゃ無いな。
まぁ、いいや。これも縁だ。せっかく、我が祖国、ヤクトに
来たんだからな、知っといてくれよ。
まぁ、元々、ラース-ベルゼ国との仲は悪かったんだがよ、
それでも、戦争の気配なんか全く感じなかったんだよ。
しかも、平和条約-的なのを結んだからさ、いっそう、まさか
戦争が起きるなんてな。
まぁ、そこの隙を突かれたんだろうな。
まぁ、それで、我等がヤクト軍は不意打ちで半壊状態に
陥っちまって、北半分をラース-ベルゼ国に奪われちまっ
たんだよ。
そう、この首都エデンも、真っ先に占領されちまった。
その時、俺も、ここに居てさ。
ほんと、災難だったよ。
良く生き残ったと思うぜ。
数え切れないほど、死んだからな・・・・・・。
まぁ、俺は元々、田舎の出で、上京したばっかで、知り合いが
ほとんど居なかったから、あんまし身近な奴は死んでないんだけ
どさ。
それでも、川という川に、そう、焼死体がプカプカと流されて
いってたぜ。
しかも、ひどい火傷を負った人達が、水を求めて川に近づいて
くんだ。
え?そういう時、水を飲んじゃいけない?
ああ、そうみたいだな。
だから、水を飲んで、一瞬、安らかになって、死んでいってたよ。
中には、母親と小さな子供とかも居たな。
あれは忘れられない・・・・・・。
やめだ、やめだ。暗い話を外人さん-にしても、しょうがない。
それで、俺は必死に首都から逃げたんだよ。
まぁ、敵軍の検閲が、あちこちに敷かれてたんだけどさ、
上手く、下水道を通って首都を脱出したんだ。
それから、森の中で身を潜めたんだ。
幸い、同じ事を考える奴等と一緒になれてな、それで、
森の奥で集団で隠れ続けてたんだ。
その時のリーダーがリオルっていう女の人でな。
高校の教師らしくて、テキパキとしてたよ。
彼女が居なかったら、もっと大変な事になってたかもな。
まぁ、その後、レジスタンスに参加して、亡くなったんだ・・・・・・。
彼女の夫のダコスとは今でも時々、会ったりするよ。
二人は新婚だったらしくてな・・・・・・ひどい話さ。
ダコスも、相当、苦しんでたな・・・・・・。
まぁ、でも、今じゃ、元気、とまでは-いかなくても、
それなりにしっかり-やってるみたいだ。
・・・・・・。辛気くさくなっちまったな。話を変えるか。
良く考えたら、あんた、エデンでのオリンピックに来たん
じゃないか?え?違うって?
じゃあ、何しに来たんだ?
シ、シルヴィス・シャインに会いに来たってッ!
おいおい、あの方は・・・・・・って、冗談かよ。
びっくりしたなぁ。
まぁ、しかし、あの方も相当に、辛かったんだろうな。
噂だけどな・・・・・・。
とはいえ、こうして、無事にヤクトは復興し、そして、
オリンピックを開催するに至った。
色々と-きな臭い情報は入ってるけど、まぁ、ヤクトの公安は
優秀だからな、何とか-なるだろう。
え?その情報だって?
いや、噂だぜ。というか、情報屋の友達からの話なんだけどさ。
汚染物質が処理場から盗まれたらしい。
ほら、戦争時に、ロータ中尉ひきいる第4戦竜中隊が戦った
だろ?
その時、ロータ中尉の部下が命を懸けて、汚染物質を石棺で
閉じ込めたんだよ。
すさまじい戦いだったそうだぜ。
放射性物質と汚染波動を含んだ黒い液体が、竜の形と成って
周囲を飛び回ったらしい。
聞いただけで寒気がするぜ。
ロータ中尉も-その戦いの後遺症で、血液に癌が出来たとか
言う話だけど、大丈夫なのかねぇ?
で、その汚染物質を閉じ込めた石棺が外部から破壊されて、
中の汚染物質が取り出されたらしい。
それで、犯人と見られる大男が、急性-放射線-障害で死亡
しているのが見つかったらしい。
高速道路のパーキング・エリアだってよ。
ほら、山から硫黄ガスが出たとかで、イルクの周辺が、
封鎖されてるって、ニュースで-やってただろ?そこら-だってさ。
え?オリンピックの開催に支障は無いかって?
そりゃあ、あるだろうなぁ。
とはいえ、今更、止めるワケにも-いかないだろ。
まぁ、海外の選手団が到着するのも、まだ時間が-あるし、
それまでに解決できるかって話だな。
ん?ああ、もう行くのか。
やれやれ、あんた結局、俺に何が聞きたかったんだ?
それに対し、その青年とも少年とも見える金髪の男は、
何も答えず、薄く笑った。
ヘテロ「あ、そうだ。これも縁だ。メール・アドレス、教えて
くれよ」
「持ってないんだ。携帯」
ヘテロ「そうか、それに良く考えたら、海外に携帯を持ちこむ
のも面倒だろうしな。あんた、いつまでヤクトに居る
んだ?」
「しばらくは。運命が変遷するまでは」
ヘテロ「良く分からないが、オリンピックが終わるまでは居る
んだろ?」
「多分、ね」
ヘテロ「そっか、じゃあ、また会うことも-あるかもな。
あ、そうだ。あんた、名前は?」
「フェイキオス」
と、その男は答えた。
ヘテロ「そうか、じゃあ、フェイキオス。また、どこかで」
そう言って、ヘテロは手を振って去って行った。
ニュースの音が、かすかに響いた。
ニュース『ラース-ベルゼ・・・・・・抑止力・・・・・・ウイルダ・・・・・・
保守派…革新派・・対立・・・・・・・・・・・・・ラゼル・・・・・・』
「新たな王の出現・・・・・・ソウル・フォン・トゥルネス・・・・・・。
来ているんだね。君も、このヤクトに・・・・・・」
と、つぶやき、フェイキオスは、空を見上げた。
『見つけた・・・・・・地球の情報-思念体・・・・・・』
との女性の声のみが響いた。
そして、フェイキオスの周囲の時空間が歪み出した。
「空間操作能力・・・・・・。だけど」
次の瞬間、構成されつつあった亜空間が砕け散った。
「この距離では僕を捕らえる事は出来ない・・・・・・」
と、フェイキオスは告げるのだった。
すると、サイレンが鳴った。
放送『魔力反応を探知しました。至急、商店街より避難して
ください。繰り返します・・・・・・』
とのスピーカーの声を聞き、フェイキオスは煙のように姿を
消した。
『逃げられちゃったか・・・・・・』
との女性の声が宙に響いた。
すると、武装警察が早くも到着しだした。
『優秀だねぇ・・・・・・ヤクトの警察さんは・・・・・・。それに比べて
ウチの警察と来たら・・・・・・。まぁ、退散しますか・・・・・・』
そして、女性の声は消え、その精神体は遠く-リベリスにある
本体へと戻っていった。
遠くリベリス合衆国、トレス高速増殖-魔導炉より数キロ離れた
地下施設にて。
その地下施設の、地上より数百メートル下にある部屋では
異様な実験が-おこなわれていた。
一人の女性が全身を拘束具で縛られていた。
それを、数十メートル上から研究員達が、厚い防弾ガラス越し
に見ていた。
所長「・・・・・・共鳴-結界値を上げろ」
研究員A「共鳴-結界値、9000を記録、依然、反応なし」
研究員B「閾値(しきいち)には、未だ、到達していないようですね」
所長「・・・・・・のようだな」
すると、女性の念話が響いた。
『ねぇ、しきいち、って何?どんな意味なの?ねぇ?』
との声が研究員達の脳裏に直接、響いた。
研究員A「馬鹿なッ、向こうとは完全に遮断されているハズ
だというのにッ!」
『えぇ?この程度のガラスで、私の思念を遮断できると思って
いるなら、大間違い-なんだけど』
との女性の声に、研究員達は震えだした。
所長「フム・・・・・・という事は、君は、私達に精神攻撃をする
事が可能なワケだ。しかし、それをしない。何故だ?」
『えぇ?だって、そんな事したら、私、殺されるでしょ?
さすがに、リベリスのレベル7能力者を全て相手にして
勝てる自信は無いなぁ』
所長「賢明な判断だ」
『でしょ、でしょ。ホルン所長は、話が早いから好きよ』
との声に、所長のホルンは苦笑した。
ホルン「それで、何が望みだ?単に話が-したかっただけ
なのか?数年ぶりに、反応を見せたワケを聞か
せて-もらいたい」
『それはねぇ、いい加減、外に出たいなぁと思って』
ホルン「それは出来ない相談だ」
『どうしても、駄目?』
ホルン「駄目だ。それは出来ない」
『殺すよ?』
ホルン「殺せばいい。君を逃がしても、私は政府に消される
だろう」
『フーン、辛いねぇ。まぁ、いいや。殺すってのは冗談だし。
それに、あなた達は私を外に出さねば、いけなくなる。
その日は近い。まぁ、もしかしたら、その前に、上手く
脱出できる-かもしれないけど』
ホルン「君を外に出さねば-いけなくなる、とは、どういう事
かね?」
『あ、気になる?気になっちゃうよね。ヴァイアス・・・・・・
リベリス最強の能力者・・・・・・彼は-いずれ暴走するわよ。
そして、リベリス国内で-それを止められるのは私だけ」
ホルン「つまり、君がヴァイアスに対する抑止力になる、
という事かね?」
『そう。その通り。私の力は抑止力そのモノ。私の力が
無くなれば、リベリスには大きな災いが起きるわ。
ラース-ベルゼという社会主義から解放されたウイルダ
において、ゼーア神教の保守派と革新派が激しく対立
を始めだしたように』
ホルン「ずいぶんと、世界の情勢に詳しいのだね」
『ずっと、見ていたから』
ホルン「フム・・・・・・まぁ、確かに、君の力はリベリスには必要
なのだろう。とはいえ、君の力を解放させるワケには
いかない。つまり、現状維持が私に出来る精一杯という
ワケだ。それで我慢してくれないかね?」
『・・・・・・なら、生け贄を捧げてよ。たまには、戦わないと
勘が-にぶっちゃう。本気で戦わせてよ』
ホルン「しかし、君が本気になれる相手など、それこそ
ヴァイアスくらいだろう」
『ハンデをあげるから・・・・・・』
ホルン「フム・・・・・・なら、丁度いい。先日の暴走能力者の件は
知っているかね?」
『ええ。武装警察に射殺されたって報道だったけど、実際は
この施設に居るわよね』
ホルン「そう。彼と戦ってみたまえ。まぁ、彼なら、死んでも
問題は無かろう。何せ、実際は、能力の暴走では無く、
単に殺人衝動を抑えられなく成った-だけなのだから」
『みたいね・・・・・・フフ、でも、彼、けっこう、強そうよね』
ホルン「まぁ、優秀な兵士だったからな・・・・・・。さぁ、用意を
しろ。試験体012098を試験体オメガの元へと移送す
るんだ」
とのホルンの言葉に、研究員達は従った。
そして、手錠を付けた男が連れてこられた。
男『クソッ、何なんだよッ、これはッ!弁護士を呼べッ!
おいッ!聞いてんだろッッッ!』
と、男はホルン達をガラス越しに見て、叫んだ。
ホルン「試験体012098、良く聞きなさい。今から、君の
目の前に居る女性と戦ってもらう。君に拒否権は
無い。生き残りたくば、戦いに勝利する事だ。
もし、勝利できたら、君をここから解放すると、
約束しよう」
と、ホルンはマイクで告げた。
研究員A「しょ、所長ッ?」
ホルン「いいんだ。・・・・・・さて、試験体012098、どうする?
君の意思を尊重しよう」
男『・・・・・・チッ、いいだろう。釈然としねーが、やってやるぜ』
ホルン「よし、では、今、手錠を外そう」
男『必要ねー』
そう言って、男は魔力を高めた。すると、次の瞬間、金属で
出来た手錠は砕け散っていった。
ホルン「・・・・・・やれやれ、もう少し良い拘束具を用意した方が
よさそうだな」
男『さぁ、俺は-いつでも戦えるぜッ!』
ホルン「試験体オメガの右腕部の拘束を解け」
研究員B「試験体オメガ、右腕部・拘束具、パージ」
そして、煙と共に、女性の右腕の拘束具が外れた。
女性は右腕を適当に振り、感覚を確かめていた。
ホルン「さぁ、始めたまえ」
男『おいッ、本当に-いいのか?右腕だけで、俺の相手になる
ワケねーだろう』
ホルン「いいから、始めたまえ。君にとっては有利な条件だろう?」
男『チッ、人を馬鹿にし腐りやがって・・・・・・』
すると、女性は指をクイクイっとして、挑発した。
男『テッメーッッッ!』
次の瞬間、男は魔力を全開にして、女性に殴りかかった。
しかし、男の拳は、軽々と女性の右手で止められていた。
そして、女性はニヤリと笑みを見せた。
それを見て、男は一気に、後方へと下がった。
男の前身からは冷や汗が噴き出していた。
男「お、お前は・・・・・・お前は・・・・・・何だ?」
女性『化け物・・・・・・かな』
男「フッ、ハッハッハッ、アッハッハッハッ!最高だ。今、
俺は生きている、生きて居るぞッ!これだ、この感覚
だッ!生と死のギリギリの狭間での殺し合い、それを
俺は-ずっと望んでいた。望んでいたのさッ!」
女性『ご託は-いいから、かかって来なさい』
男「ああ・・・・・・」
次の瞬間、男の姿は消えた。
そして、男は女性の背後から攻撃を仕掛けた。
その時、男と女性の間に、白い球状に近い何かが出現し、
男の攻撃を阻んだ。
女性『エッグ・・・・・・』
次の瞬間、その卵形の何かはヒビ割れ、中から白い闇が
男に向かって噴き出した。
男は一瞬で、後方に避けようとしたが、白い闇は男の全身に
まとわりついていた。
男「チクショウッ!何だ、これッ!何なんだッッッ!」
すると、白い闇の付いた部分が、男の皮膚ごと-ヒビ割れて
いった。
ホルン「勝負あったな・・・・・・」
と、所長のホルンはガラス越しに-つぶやいた。
女性『今の君は卵そのもの。簡単に割れてしまうわ』
男「クソッッッ!死ね、死ね、死ね、死ねーーーーーッッッ!」
男は最大級の魔力を女性に向かって放った。
しかし、次の瞬間、閃光のような魔力が-それを貫き、男に
直撃した。
そして、周囲は-爆風による煙で、覆われた。
そんな中、歌が紡がれていた。
『 [The egg] Humpty Dumpty sat on a wall,
(卵のハンプティ・ダンプティー、壁の上)
[The egg] Humpty Dumpty had a great fall.
(卵のハンプティ・ダンプティー、落っこちた)
All the king's horses and all the king's men
(王様も騎馬も騎士達もみんな、みんな)
Couldn't put Humpty together again.
(ハンプティを治す事は出来なかった) 』
と、その女性、試験体オメガは軽やかに歌うのだった。
その歌と呼応するかのように、男の体には-どんどんと亀裂が
走っていった。
男「お、おい・・・・・・ちょっと待て」
女性『駄目』
との声と共に、女性は指を鳴らした。
次の瞬間、男の体は音を立てて、崩れていった。
勝負は完全に着いていた。
しかし、そんな中、女性の紡ぐ、ハンプティ・ダンプティの
歌は地下施設・一帯に響くのであった。
To be continued in “Akasha MythologyU”.
アーカーシャ・ミソロジーU (ソウル編)にて
《ホームページ版はイラストが多く付いています》
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オリンピック開催を目前としたヤクト国を奇妙な男が訪れる。 一方で、遠くリベリス合衆国の地下施設では一人の女性が覚醒 しつつあった。 両者の邂逅は、つかの間のモノだったが、世界を大きく揺るがしていく 事となるのであった。 詳細は、こちら。http://keel-akasha.com/ |
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