シャドウ・エイジ外伝(アーカーシャ・ミソロジーU)
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第?話  墜ちし禁断の兄妹

 

 悪霊達が-まとわりついてくる。

 それを仮面をかぶった男が次々と、叩き斬っていった。

 それに対し、女は守られるだけだった。

そして、その男に恐れを成し、悪霊達は退散していった。

ソウル「マナ・・・・・・、大丈夫だ。あと少し、あと少しで、

    次の教会だ」

 と、その男ソウルは、妹のマナに言うのだった。

マナ「兄・・・・・・さん・・・・・・。ごめんなさい・・・・・・、

   ごめんなさい・・・・・・私のせいで・・・・・・」

 と、かぼそく-呟くばかりだった。

ソウル「いいんだ。ほら・・・・・・見えて来た。丘の上の教会」

 と、暗雲たちこめる-影の世界にて、ソウルは教会を

指さすのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

ソウル「誰か・・・・・・誰か、居ませんか?」

 ソウルは扉を開き、尋ねかけるのだが、自身の声のみが

 反響するばかりで、返事は無かった。

 その教会は老朽化しており、ホコリとサビに-まみれていた。

ソウル「・・・・・・ハァ・・・・・・変だな?この教会を管理する人が

    必ず居るはず-なんだが・・・・・・。ともかく、腰をかけ

    させてもらおう、な、マナ」

 とのソウルの言葉に、マナは無言で頷いた。

 そして、二人は-しばらくの間、礼拝堂で人が来るのを待ち続けた。

 すると、奥の扉が開き、中から一人のシスターが出てきた。

 

 

ソウル「あの・・・・・・今晩、泊めて欲しいのですが」

シスター「・・・・・・分かりました。どうぞ、こちらへ」

 そう言って、シスターは小さな部屋を案内した。

 そして、ソウルとマナはそれぞれベッドに転がった。

ソウル「やれやれ・・・・・・しかし、今日も生き残る事が出来たな。

    いや、俺達は死んでるんだから、その表現も変か」

 と、ソウルは自嘲気味に言うのだった。

マナ「ごめんなさい・・・・・・兄さん・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

 と、マナは壊れたレコーダーのように、ただ謝り続けた。

ソウル「マナ、マナ、お前は悪くない。悪いのは俺だ。全て、

    悪いのは俺なんだ」

マナ「・・・・・・兄さん」

 うつむきながらマナは答えるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

外では雨が降り出していた。

マナが眠っているのを確認し、ソウルは立ち上がり、

服を着た。

ソウル(少し、見回っておくか・・・・・・)

 そして、ソウルは教会内をうろついた。

 すると、雨だというのに、子供達が庭で遊んでいた。

ソウル「お前達、あまり外に出るなよ。この時間帯は、魔が

    はびこってるからな」

 と、ソウルは窓から言った。

 すると、子供達はソウルの方へと駆けて来た。

少年A「お兄ちゃん、誰?」

ソウル「俺か?俺はソウルって言うんだ。お前達こそ、何で

    こんな所に居る?もっと、都市部に行った方が安全

    だろう」

少女B「私達、都市に住めないの」

ソウル「どうしてだ?」

少年A「だって、魂が穢(けが)れてるから」

ソウル「そんな事、誰が言ったんだ?」

少年C「炎の女神ヴェスタ様」

ソウル「ヴェスタ・・・・・・」

少女B「だから、魂が清まるまで、この教会に居なきゃいけないの」

ソウル「そうか・・・・・・。早く、清まるといいな・・・・・・」

少年A「うん、あ、お兄ちゃんも-やる?」

 そう言って、少年Aはゴムまりをソウルに見せた。

ソウル「いや、お兄ちゃんは、ちょっと疲れてるんだ。もう

一眠りしたら、混ぜてもらうよ」

少年A「うん、約束だよ」

ソウル「ああ。約束だ」

 そう言って、ソウルは手を振り、部屋に戻ろうとした。

 すると、背後からシスターが見ていた。

ソウル「やれやれ、何か用かい?」

シスター「いえ、子供が-お好きなのですか?」

ソウル「嫌いじゃない。むしろ、好きなのかも知れない」

シスター「お連れの方は伴侶様ですか?」

ソウル「・・・・・・いや、妹だ」

シスター「そうなのですか」

ソウル「それより、あんたが、あの子供達を引き取っているのか?」

シスター「はい」

ソウル「無償で?」

シスター「はい。それこそが、神のご慈悲では無いの

     でしょうか?」

ソウル「・・・・・・神・・・・・・か。あんたは、こんな暗闇の世界に

    来ちまったってのに、未だ、神を信じるのか?」

シスター「ええ。黙示録の時、来たれり・・・・・・と、各地で

     言われておりますし」

ソウル「あんた、黙示録の意味、分かって言ってるのか?」

シスター「え?はい・・・・・・」

ソウル「なら、いいさ。だがな、世の中、都合の良い救済

    なんてありはしないんだよ。救いを待ってるだけじゃ、

    救いなんて訪れない。

    ただ、抗い続ける事なんだよ。俺達がするべき事とは

    な。まぁ、あんたは立派な人だとは思うけどな」

シスター「・・・・・・あなたは、お強いのですね。ですが、人は

     弱いのです。原罪に押しつぶされそうになるのです。

     救いを求めては-いけませんか?」

ソウル「・・・・・・さぁな。俺とあんたは違う。違う人間は、

    違う生き方をするだけさ」

シスター「そうかも-しれませんね」

ソウル「少し、疲れた。部屋で休ませて貰う」

シスター「ええ。食事を用意しておきます。いつでも、お目覚めになってください」

ソウル「悪いな。これは、ほんの少しばかりだが」

 そう言って、ソウルは魔石の欠片をシスターに渡した。

シスター「こんなに・・・・・・」

ソウル「子供達の分だ」

シスター「ありがたく頂戴させていただきます。あなたに神の

     祝福が-あらん事を」

ソウル「だと、いいけどな・・・・・・」

 そう言い残して、ソウルは部屋に戻っていった。

 

 ・・・・・・・・・・

 雨が降り続いていた。

 談話室でソウルは子供達と人形のオモチャで遊んでいた。

 それをマナは-うつろな目で見つめていた。

ソウル「マナ?一緒に遊ばないか?」

 とのソウルの言葉に、マナは首を横に振った。

ソウル「そうか・・・・・・。まぁ、いいさ」

 そう言って、ソウルは微笑み、子供達と遊びだした。

 

 ・・・・・・・・・・

 雨が降り続いていた。

 談話室でソウルは子供達と話をしていた。

ソウル(しかし、何だ?俺は・・・・・・いったい、ここに何日間、

    居る?妙な感覚だ。精神攻撃を受けているのか?

    いや、それは無い。流石に今の俺に、気付かせること

    無く、精神攻撃をかける相手なんて、こんな辺境に

    居るワケが無い)

 と思いつつも、ソウルは背筋に悪寒を覚えていた。

 

 ・・・・・・・・・・

 雨が降り続いていた。

 ソウルは子供達と遊んで居るも、急に動きを止めた。

ソウル「悪い、ちょっと、頭が痛い。部屋に戻らせてくれ」

 そう言って、ソウルはマナと一緒に部屋に戻った。

 部屋に戻り、能力で盗聴されてないかを調べ、ソウルは

口を開いた。

ソウル「マナ、何が起きている?時間の感覚が無い。俺達は

    精神攻撃を受けているのか?」

 その言葉に、マナは何も答えようとしなかった。

ソウル「マナ。頼む、答えてくれ。こういう事は、お前の

    方が敏感だろう?」

 とのソウルの言葉に、マナは仕方なしに口を開いた。

マナ「兄さん・・・・・・。気付いてないの?」

ソウル「何をだ?」

マナ「この場所に留まっているのは兄さんの意思よ。ただ、

   それだけなの」

ソウル「・・・・・・馬鹿な」

マナ「兄さんが、あの子達と遊びたくなくなったら、自然と、

   外に出れると思うわ」

ソウル「俺は・・・・・・安息を求めてしまったというのか?」

マナ「かもしれない・・・・・・。私は-ここで良いよ。兄さんと

   一緒だったら、永遠に-ここで過ごしても問題ないん

   だよ・・・・・・」

 とのマナの言葉にソウルは考えこんだ。

ソウル「・・・・・・不思議なモノだな。俺がおかしくなりそうな

    時にマナは冷静で居てくれるなんて」

マナ「私は・・・・・・ここの空気が好き。よどんで、ホコリっぽく

   て、良い言い方をすれば、古書店の本の匂いのような、

   そんな雰囲気が・・・・・・」

ソウル「そうか・・・・・・なぁ、マナ。ここに居れば、俺達は安全

    なのかな?」

マナ「分からない。でも、ここの空間も腐臭が-かすかにする。

   それと淫乱な臭いが」

ソウル「淫乱?」

マナ「ええ・・・・・・。それだけ・・・・・・。でも、ただちに影響は

   無いと思うわ」

ソウル「そうか・・・・・・」

 と、ソウルは答えるのだった。

 

 ・・・・・・・・・・

 雨が降り続けていた。

 その日、シスターの姿は見えなかった。

 そんな中、ソウルは子供達と部屋で遊んでいた。

 すると、少女が泣き出した。

ソウル「どうした?」

少女「ヒック・・・・・・ヒック、ごめんなさい、ごめんなさい」

 と泣きじゃくった。

ソウル「なんで泣いてるんだ?」

少女「だって、だって・・・・・・」

少年「・・・・・・ソウル兄ちゃん、ごめんなさい。僕たち-なんだ。

   僕たちがソウル兄ちゃんに、ずっと居て欲しいから、

   雨が降り続けてるんだ」

ソウル「・・・・・・そうだったのか・・・・・・」

少年「だから・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」

ソウル「・・・・・・そうか」

 と、ソウルは答えた。

ソウル「お前達は俺に、どうしてもらいたい?」

少女「ずっと一緒に遊んで欲しい・・・・・・でも・・・・・・ソウル

   お兄ちゃんは、やらなきゃいけない事があるんでしょ?」

ソウル「・・・・・・ああ。そうだな。それに、多分、ここには居続け

    られない。追っ手が、いずれ俺達を見つけるだろう-

    からな。分かってたんだけどな・・・・・・」

少年「ソウル兄ちゃん、なら・・・・・・墓地に行って。そこに

   地下室があるから・・・・・・」

ソウル「地下室?」

少年「うん・・・・・・そこで、壁を壊して。そうすれば、結界は

   壊れるから」

ソウル「結界・・・・・・分かった。すぐに行った方が-いいのか?」

少年「うん・・・・・・今なら、間に合うから」

ソウル「分かった。・・・・・・じゃあな、みんな」

 そう言って、ソウルは子供達の頭を全員分、撫(な)でた。

ソウル「行ってくる」

 と言って、ソウルは身を翻(ひるがえ)した。

『ばいばい・・・・・・』

 との声が、その背に掛けられた。

 

 ・・・・・・・・・・

マナ「兄さん、行くんですね」

ソウル「ああ。行こうマナ。俺達に安らぎは似合わない」

マナ「・・・・・・ですね。私も、大分、落ち着きを取り戻しました

   し、今なら役立てると思います」

ソウル「ああ。手を」

 そう言って、ソウルはマナに手を差し伸べた。

 マナはソウルの手をぎこちなく取った。

 そして、二人は手を繋いだまま、墓地へと歩いて行った。

 

 雨の墓地を二人は傘も差さずに歩いた。

 そして、一つの大きな墓標にて、隠し階段を見つけた。

ソウル「行こう」

 とのソウルの言葉にマナは無言で頷いた。

 

 湿った空気の中、ソウル達は地下へと降りていった。

ソウル「なる程、腐臭に淫靡(いんび)な臭いが立ちこめて来て

    やがる」

マナ「兄さん、気をつけて」

ソウル「ああ・・・・・・ただ、極力、戦闘は避けたい」

マナ「・・・・・・ええ」

 そして、二人は廊下を歩いて行った。

 音が聞こえだした。

 それは女性のあえぎ声と、獣のような声と、粘着音

だった。

 そして、ソウル達は扉の前に立った。

 それから、ソウルは勢いよく扉を開いた。

 それと共に、音が止まった。

 中では、腐った男のゾンビ達と、一人の女が全裸で、交わっていた。

ソウル「何やってるんだ、シスターさん?あんた、処女じゃ

    ないんだな」

 と、その女に向かってソウルは、皮肉げに言った。

シスター「ど、どうして、ここが・・・・・・」

ソウル「まぁ、偶然な。それよりも、シスターが純潔を守らなくていいのか?」

シスター「わ、あ、私は・・・・・・しょ、処女です。処女です

     とも。確かに、膣以外での性行為は楽しんで

     居ますが・・・・・・」

ソウル「・・・・・・そうかい。なら、好きにしているといい。

    俺にはやるべき事がある」

 そう言って、ソウルは片手で剣を抜き、壁を叩き斬りだした。

シスター「や、やめッ!やめなさいッ!あ、あんた、なんて

     事をッ、やめろって言ってッ!」

 次の瞬間、壁が崩れていった。

 そして、中から、小さな白骨死体が出てきた。

 それは赤子の骨だった。

 それが、いくつも-いくつも出てきた。

ソウル「・・・・・・そういう事か」

 と、ソウルは呟いた。

マナ「かつて、中世の暗黒期、ミズガルドでは教会にて売春が

   行われていたとされます。しかし、表向き処女であらね

   ばならないので、孕んでしまった場合、赤児を殺し、壁に

   埋めたと・・・・・・。教会の壁からは、よく白骨の死体が

   出てくると言いますが、これは・・・・・・」

 とのマナの言葉にシスターは笑い出した。

シスター「だから、何?私、私はねぇ・・・・・・なりたくて、

     シスターになったワケじゃない。口減らしと

     して送られて来たんだ・・・・・・。それで、売春を

     やらされ・・・・・・最後、梅毒で死んじゃったん

     だよ。その結果がこれ・・・・・・」

 と言って、シスターは自嘲気味に笑った。

シスター「でも、でも・・・・・・この世界は良い。現実の世界じゃ

     女は腕力では男に勝てなかったけど、この霊なる-

世界では、私、今まで私をゴミのように扱ってきた

男達を、ほら、お人形のように操れる」

 そう言って、シスターは指を妖しく動かした。

 それと呼応するように、腐ったゾンビ達は動き出した。

ソウル「一つ聞きたい」

シスター「何?」

ソウル「この教会に居る子供達、あれは生前に、あんたが-

産んで、殺し、そして、この壁に埋め込んだ赤児達

の育った姿か?」

 とのソウルの問いに、シスターは顔を歪めた。

シスター「・・・・・・そう、その通りさ。この世界は何なんだろう

     ね?生前の世界と似ているけど、違う」

マナ「記憶世界。物理世界の記録を保存している世界・・・・・・」

シスター「・・・・・・それで、仕方なく、あの子達を育てたのさ。

     というか、私も、この教会の外に出れなくてね。

     まぁ、世話をする必要も無かったから、楽だった

     けどね」

ソウル「あんた・・・・・・子供達と遊んであげた事があるか?」

シスター「あるワケないでしょ?あれは、道具なの。私が

     いい人である為の道具。男達はホイホイと引っ

かかる」

ソウル「そうか・・・・・・。もう一つ聞きたい」

シスター「何?」

ソウル「ここから出して欲しい。俺達は外に行かねばならない」

シスター「・・・・・・外?外に何があるの?あんた、実は結構、

     私の好みなんだよ。だからさ、ずっと、ずっと、

     ここに居れば良い。そっちの妹さんも。ずっと、

     怠惰に、終末を待てば良い」

ソウル「・・・・・・あんた・・・・・・寂しいんだな」

シスター「何・・・・・・ッ?」

 シスターは声を震わせた。

ソウル「あんたは寂しいんだ。だから、体を重ねるんだ。

    そうすると、一瞬、温かくなるからな。でも、

    それは-まやかしなんだ。あんたの心は決して、

    満たされない」

シスター「ッ、黙れッ!黙れ、黙れ、黙れッッッ!お、

     お前に何が分かる。若造がッ!私は-どれ程

     長い間、この世界に居たと思う?わ、私は」

ソウル「結界を解け。そもなくば、殺す」

 そう言って、ソウルはシスターに剣を向けた。

シスター「やれッ!」

 とのシスターの声と共に、ゾンビ達はソウルとマナに

襲いかかった。

 しかし、次の瞬間、ゾンビ達はソウルの剣に切断された。

 さらに、ソウルが剣を掲げると、斬られたゾンビ達の体から

魂が抜けて、ソウルへと吸収されていった。

 ソウルは剣をシスターに突きつけていた。

シスター「き・・・・・・聞いた事がある。女神ヴェスタが血眼に-

     なって探している兄妹が居ると・・・・・・。その者達は

     魂を喰らう-と。そして、その者達の名は・・・・・・」

ソウル「ソウル・フォン・トゥルネスと

マナ・フォン・トゥルネス。

それが俺達の名であり、その名だ」

シスター「ま、待ってッ!なら、なおさら、外に出るなんて。

     ここは女神ヴェスタの領域に近い。外に出たら、

     いくら-あんたらでも、すぐに殺されてしまう。

     い、いや、すぐに捕らえられ、何度も何度も

     殺され、復活し、殺されを繰り返す事となる」

ソウル「かもな。だが、女神だろうと、何だろうと、知った

    事か。俺は-もっと強大な相手を知っている。

    かつて、俺が敗北した相手。

    そして、恐らく、永久に倒す事の出来ない相手。

    彼女は・・・・・・そう、シルヴィス・シャイン。

    あいつだけだ。あいつだけが、俺に畏(おそ)れを感じさせた」

シスター「と、ともかく、外に出せば、いいんでしょ?」

ソウル「そうだ」

シスター「はい。はい。今、結界を解いたから。そこの壁から

     出てけるから。ほら、壁がゆらめいてるでしょ?

     そこの空間が外に繋がってるから」

ソウル「そうか・・・・・・行くぞ、マナ」

マナ「ええ」

 そして、二人は白骨の死体が埋め込まれた壁に手を当てた。

 その部分はゼリーのように、揺れており、明らかに通常の

壁とは違った。

 ソウルとマナは-ためらいなく、壁の中に入っていった。

 そこは白い亜空間だった。

ソウル「やれやれ・・・・・・」

マナ「騙されましたね」

ソウル「みたいだな」

 すると、巨大なシスターが現れた。

シスター『お前、お前達・・・・・・許さない・・・・・・この空間で

     埋められてしまえ』

 そして、空から、白い聖十字が大量に降ってきた。

 聖十字は地面に落ちると溶けて、辺りを塗り固めだした。

 ソウルとマナの両足も固められていた。

シスター『あはははは、ざまーみろ。私を馬鹿にした罰だ』

ソウル「それだけか?」

シスター『え?』

ソウル「お前は・・・・・・俺達を馬鹿にし過ぎだ」

 そして、ソウルはマナの方を見た。

ソウル「マナ」

マナ「ええ」

 そして、二人は口づけを交わした。

 次の瞬間、マナの体は魔力と化し、ソウルにまとわれた。

 黒い鎧をまとったソウルは、咆哮をあげ、周囲に波動を

放った。

 次の瞬間、亜空間はソウルとマナの黒い波動により、

砕けていった。

 

 ソウルとマナの二人は地下室に戻っていた。

マナ「・・・・・・結界が解けたようですね」

ソウル「みたいだな」

 一方で、シスターは亜空間を砕かれたフィード・バック

(はね返り)で血まみれになっていた。しかし、既に死んで

いる彼女は、これ以上、死ぬことも出来なかった。

ソウル「辛いだろう。その魂、魂を喰らってやる」

 そう言って、ソウルはシスターに向け、手の平を掲げた。

シスター「た、たすけ・・・・・・・」

ソウル「散れ」

 そう言って、ソウルはシスターの魂を吸収しだした。

 シスターは声にもならぬ絶叫をあげた。

ソウルは-その様子を見て、笑みを浮かべた。

その時、声が響いた。

『ソウル・・・・・・・駄目だッ』

 次の瞬間、ソウルは動きを止めた。

 解放されたシスターは荒い息をして、震えていた。

マナ「兄さん?」

ソウル「今、今・・・・・・クオンの声がした気がした。そんなワケ

    無いのにな。あいつは、こんな所に居るワケ無いのにな・・・・・・」

マナ「でも・・・・・・クオン皇子なら、きっと、彼女を殺さない

   でしょうね。子供達の面倒を、まがりなりにも見る人

   が必要でしょうし」

ソウル「・・・・・・かもな。幼い子供に母親は必要だろうな」

 そう言って、ソウルは-ため息を吐いた。

ソウル「おい、お前」

シスター「ヒッ、ヒィィッ、た、助けて下さい。た、助けて」

ソウル「見逃してやる」

シスター「え?い、いいんですか?」

ソウル「お前の魔力は吸収した。お前はもう能力は使えない。

    残った時間を子供達と過ごすことに費やせ。もし、

    子供達をないがしろに-していたら・・・・・・お前を殺しに

    戻って来るからな」

シスター「は、はいッ!分かりましたッ、はい。あ、ありがとうございます」

 と、シスターは半泣きになって答えた。

ソウル「行こう、マナ」

マナ「ええ、兄さん」

 そして、二人は地下室を出て行った。

 外は-いつの間にか、雨が止んでいた。

 しかし、それでも辺りは薄暗く、影は濃かった。

ソウル(行こう、この影の世界を。俺達は影を、

    シルヴィス・シャインは光を、それぞれ

    進めば良い。でも、いつか、いつか、

    それぞれの道が交わる事があるのだろうか?)

 と、ソウルは空を見上げながら、考え込んだ。

マナ「兄さん?」

ソウル「ああ、行こう」

マナ「子供達に別れは言わなくていいのですか?」

ソウル「また、来るさ。その時でいい」

マナ「ですね。行きましょう、兄さん」

 そう言って、マナはソウルの腕に、手を絡ませた。

 それにソウルは苦笑し、歩き出した。

『バイバイ、お兄ちゃん達・・・・・・また、来てね』

 との声がソウルには聞こえた気がした。

ソウル「ああ・・・・・・約束だ」

 振り返りながら-そう言い、ソウルは前を歩き出すのだった。

 

 

 

  To be continued in “Akasha MythologyU Shadow Age”

 

アーカーシャ・ミソロジーU《シャドウ・エイジ》にて。

 

 

《ホームページ版はイラストが多く付いています》

 

説明
影の世界へと墜ちたソウルとマナの兄妹は、
切ない愛の中、旅を続ける。
詳細は、こちら。http://keel-akasha.com/
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