義輝記 伏竜の章 その五
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【 軍議?の件 その弐 】

 

?その日の夜 大将軍何進の大天幕にて?

 

何進「…………………」

 

武官「将軍、将軍閣下! ……大将軍閣下!!」

 

何進「…は! そうだ、私は大将軍だ! こんなところで惚けている暇などない! 軍議を始める!!」

 

先程までの騒乱が、嘘のように収まり軍議が始まる。

 

何進大将軍配下の情報収集結果で、敵の情報が示された。

 

《黄巾賊………約七万人。 丘の上に天幕を張り十日程動かず。

 

環視する兵の報告では、付近の盗賊、他の黄巾賊が数十、数百人と

合流を重ねているとの事。 賊の人数は更に増すと予想。

 

時折、音楽と、罵声とも怒声とも思える大声が聞こえるとの報告もあり、士気を高める宗教儀式だとかんがえるのが濃厚だと思われる。

 

 

官軍……大将軍何進が率いる討伐軍

 

袁本初……約二万人、曹孟徳…八千人、袁公路代理孫伯符…約五千人、董仲穎…約一万人、劉玄徳…約三千人、大将軍何進…約三万人 計…約七万六千人。

 

数の上では殆ど互角。 だが、兵の鍛え方や用兵の巧さ、地理により勝敗は容易く覆す事になる》

 

何進「今の現状は、このような状態である! 意見があれば遠慮なく申し出て貰おうか。 この大将軍を感嘆するような策があれば採用してやってもよい!! 」

 

袁「…なら、この袁本初に、先陣を切らしていただければ、華麗に往々しく優雅に、敵を殲滅してご覧にいれますわ!」

 

曹「その意見には、反対致します! もし、袁紹軍が打ち破られ、他の軍勢に流れた場合、激しい混乱は間違いない。 そうなれば、我らの戦力がかなり減り、負け戦になる可能性が高いでしょう!」

 

何進「ふむ、確かにあの軍勢を袁紹軍のみで相手にするは、些か無理だ。 何かしら策を弄しなくては……」

 

孫「では、私の配下の者に潜入の得意の者がいますので、その者に中で火を付けさせ、混乱させてから討ち取りましょう!」

 

董「ボソ(天城様、何か策はありますか?)」

 

天城「ボソ(俺でしたら、こんな具合に………)」

 

董「わ、私も提案させて下さい!」

 

何進「む? 何かあるのか?」

 

董「我が子房が言うには、火を放つのは同じやり方。

 

ただその前に左右に頑丈な長い柵を作り上げ、敵の退路を前後しか行けないようにします。 中央部分は、火計を行うための部隊の入り口を配置。勿論、扉を付けて出入りを制限します。

 

そして、更に出口に柵の壁を作り、通路をまた左右に固定します。

 

敵は勢いを殺され、少数で多数を相手にすることになるため、かなり私達が有利になるはずです!」

 

月様が、地面に描いて説明をする。

 

曹「…………成る程。我らで賊のいる場所を『死地』に変えると言うのね。 多人数を相手にする場合は、狭隘の地を利用するのは、当然の事。だけど、簡易とはいえ、実際に作り出す策なんて………」

 

孫「それに、火計と勢いを削ぐ計略をも合わせて……?」

 

袁「?????」

 

董「それだけではありません! 子房曰わく『柵の間から適度の攻撃を行えば、敵の戦闘力は奪え、士気は下がる、味方は安全に攻撃できるし、士気も上がるはずだ』と、献策してくれました!」

 

曹「!!」  孫「!!!」  袁「???」 劉「………」

 

何進「何とも凄まじい策だ! わかった! その策を実行せよ!」

 

一同「「「「   はっ!   」」」」

 

ーーーーー……ーーーー………

 

軍議が纏まり、外へ出た。 いや〜〜〜物凄く恥ずかしい!!

 

月様! なんであんな場所で曹孟徳の『我が子房』の故事を使うんだ? いや、故事まだ出ていないじゃないか! って、俺が故事の元?

 

月「天城様!!! 素晴らしい献策でした!!」

 

月様が普段見たことが無いくらい、興奮している! 凄い、凄いと言いながら、俺の手を握りしめて自分の事のように喜んでくれた。

 

道雪「月様! 皆が待っていますから、陣に早く行きましょう! 颯馬殿の献策に添って、策を完成しなけれはなりません!」

 

どことなく不機嫌に思われる道雪殿に、月様は心配そうに語る。

 

月「道雪様? 何かありましたか? 些かご機嫌が斜めになっている気が……………? 体調がおわるいなら休まれて………」

 

道雪「えぇ、大丈夫です…。 宗茂、信廉殿も、宜しいですか?」

 

宗茂「…はう、兄様凄いです〜!」

 

信廉「………よし! これで書けました!!  …あ! すいません! 今、参りますので!! 」

 

★★★★★★★★★

 

華琳「……………………………」

 

春蘭「か、華琳……様?」

 

秋蘭「どうされました、華琳様?」

 

華琳「…貴女達は、どう思う? 董卓軍の策は…?」

 

秋蘭「私は、正直驚いています…。 材料、人手、勝敗、名声、負担全部を考えても、これ以上の策は思いつきません! 」

 

春蘭「私は………策謀とは無縁ですので、わかりませんが…、何かに似ているような気がしてならないのです」

 

華琳「何か…と言うと?」

 

春蘭「そうですね……川の流れに似ているような…」

 

華琳「 ! …ありがとう、春蘭。 ご褒美、期待していていいわよ。 秋蘭! 桂花を呼んで頂戴! あの子と協議しなければいけないわ。 大至急よ! 」

 

秋蘭「はっ!」

 

★★★★★★★★★

 

雪蓮「どう思う、冥琳?」

 

冥琳「策としては完璧だが、些か納得がいかない所があるな…」

 

雪蓮「何が? 策が完璧なら大概の戦は勝敗は決まったようなモノよ? 相手は正規な軍勢じゃなく、ただの賊。 心配する事も…」

 

冥琳「……私が心配する所は、そこじゃない。 いい、雪蓮? 策で強制的に作られた出口は四カ所。 配置が何進、袁本初の二陣営と補佐で他の二陣営が入る。 後一陣営が柵の周りを囲み敵の戦力、士気を落とす。 ここまでは分かる?」

 

雪蓮「それが、策の内容だから分かるわよ! どこも、おかしくないじゃない?! 相手を分断して、多人数で攻める凄い策よ」

 

冥琳「私が言いたいのは、策の内容ではなく、董卓軍の目的さ…!」

 

雪蓮「………どういう事?」

 

冥琳「策を献策したのは、董卓軍。 ならば自分達を献策した事を理由として、戦果が挙げやすい四カ所の出口の一カ所を取るだろう。 

 

だが、あえて実行せずに、一番戦果が挙げにくい柵周りを固めた…。 それが腑に落ちないのだ! 何の目的があるのか掴んでみたいが…………!」

 

雪蓮「じゃ! 直接颯馬に聞いてみましょう?!」

 

冥琳「…そんな重大な事、教えてくれるものか。馬鹿も休み休み言え!!!!!! 」

 

雪蓮「むぅぅぅぅ! 冥琳の馬鹿!! 」

 

★★★★★★★

 

麗羽「ほーほっほっほっほっほっ! 流石、董卓軍の軍師さんですわね! 賊が出てくるところは、我が軍と大将軍に任せてくれるなんて! 我が軍の華麗で優雅で絶大な威光を示しながら、袁本初の名声を高めるため、皆さん奮起して下さいな!! 」

 

袁家将兵「 オオオォォォォォォ!!! 」

 

猪々子「おおぉぉぉ!! って、ノリ悪いな斗詩…。どうした? 体調でも悪いか? 言ってくれば寝台まで入って看病するぞ?!」

 

斗詩「……………………そんなんじゃないの!! 少し黙っていて文ちゃん!!! それに、体調はどこも悪くないから!!!」

 

猪々子「ご機嫌斜めだな斗詩…。 あっ! まさか、董卓軍の軍師や天の御遣いの兄ちゃんに惚れたとか言う気か? と、斗詩、駄目だ! アタイを捨てないでくれよーーーーー!!」

 

斗詩「全然違うの! 私はこの策があまりに上手く出来過ぎているような気がして仕方ないの。 完全に天城さんの手で踊らされているような気がして…………」

 

猪々子「それは大丈夫! アタイが斗詩を守り抜くし、姫の威光の前には、どんな策がきてもヘッチャラだから、安心だぜ!」

 

斗詩「う、うん。……本当に大丈夫かな………?」

 

☆☆☆☆☆☆

 

桃香「う〜ん、朱里ちゃん! 雛里ちゃん! どう? この策の具合………。 私はこういう事苦手だから…………」

 

朱里、雛里「…………………………………」

 

一刀「どうしたの、二人共? 」

 

朱里、雛里「……………………………………………」

 

愛紗「こらっ、 二人共! ご主人様と桃香様が声をお掛けしているのに無視するとは、何事か!! 」

 

朱里「す、すいましぇぇぇぇんん!! 」

 

雛里「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!」

 

星「で、二人は何を固まっていたのだ?」

 

朱里「だって、だって、この策が余りにも出来が良すぎて見入っていたものですから! ぜひ、董卓軍の軍師さんにお話聞きたいです!」

 

雛里「私も朱里ちゃんと同感です。 私達二人で考えても、似た策はできるでしょうが、ここまでの完成度は、出来るかどうか……」

 

一刀「そうか……。 よし! 確か、俺達の役目は、董卓軍の補助だったな。 俺が例の件、直接頼み込んでみる! 」

 

愛紗「ご主人様、余りにも危険が大き過ぎます!! それに、我らの目的を知られたら、私達は兎も角、兵にも波及する事も!」

 

一刀「………その時は、愛紗。 俺を董卓軍の軍師の前で殺せ。 そうすれば、俺一存の考えで行ったものとして判断され、皆に迷惑は掛ける事は無「本気でそのような事を命じるのですか!!!」い……」

 

愛紗「本気で、本気で………そのような、私が絶対したくない命令を下すのです…かぁ!!! 貴方はーーー!!!!」

 

桃香「………愛紗ちゃん、落ち着いて。 ね? ………ご主人様、私も反対です。 いくら貴方の命令でも、そんな事はさせません!!」

 

星「主よ。もし、私に命を下しても応じませんよ………。もし、応じたとしても、その時は、主を殺した後、私も後を追いましょう!!」

 

朱里「 グスグス、ご主人様、そんなの駄目で〜すよ〜!! 絶対、絶対、絶対にさせませ〜ん!! ウワ〜〜ン!!」

 

雛里「グス、ど、どうしても、行くつもりでしたら、わ、私が付いていきます! 必ず、必ず説得してみせますから…………!!」

 

部隊長「………………誠に、不躾ながら申し上げます。 我ら兵一同、皆御遣い様を信じ付いて来ております!! どのような結果になろうとも、我らは恨みませぬ……。 ご心配をお掛けしてありがとうございます。 ですが、我らも御遣い様が大事である事をお忘れなきように…………。 失礼致しました!」

   

一刀「………………皆、すまない! 俺の独り善がりだったようた。では、護衛で星、軍師で雛里。 一緒に来てくれ! 」

 

星、雛里「御意(ハイ)!」

 

一刀「それじゃ、行ってくるよ。 また、ここに帰ってくるからね。皆と共に…!」

 

桃香「必ずですよ? 必ずですからね!!」

 

◇◆◇

 

【御遣い同士の対峙の件 その壱】

 

 

月「天城様、この後、どう行動いたします?」

 

颯馬「えーとですね………」

 

タッタッタッタッタッ!!

 

兵「申し上げます! 劉備軍配下の天の御遣い様一同三名、面会を求めておいでです。 どうなさいますか?」

 

俺は月様に縦に首を振る。

 

月「わかりました。お通し下さい!」

 

兵「はっ!!」

 

ーーーー…………………………

 

 

一刀「謁見の場を整えて、いただき、感謝します。 お、俺、いや、私は、『北郷一刀』と名乗ります! 姓が北郷、名はー刀、字や真名はありませんので、北郷でも、一刀でも好きなように、お呼び下さい。 横にいる者が我が護衛、『趙 子龍』ありがとうございます(ペコ…)、え〜、後ろに居るものが『鳳 士元』(ペコペコ!)と、申します!」

 

俺の前に、天の御遣いを名乗る『北郷 一刀』殿がいる。脇に佇む白い意匠の服を着た将が『趙 子龍』殿、不思議な意匠の帽子を被る女の子が、あ、あの、臥竜鳳雛の『鳳 士元』殿か? む、無性に緊張が走るーーーーーー!!!

 

月「ご紹介、ありがとうございます。私は、既にご承知でしょうが、姓が董、名が卓、字が仲穎と申します。 私の傍で護衛している者が

『華雄』(ペコ)と申します。

 

こちらに控えている方々が『伏竜の軍勢』の軍師『天城 颯馬』、将

の『武田 信廉』、『武田 信玄』『立花 宗茂』、『立花 道雪』、『村上 義清』、『風魔 小太郎』となります。この方達は、私、いえ、この地を救ってくれるために降り立った『天の御遣い』です。私自身、天城様が降り立った所を目撃しており、この場にいる方々に誓い、嘘を申しません!」

 

天の御遣いを名乗る北郷殿が驚愕の顔を表し、控える二人の将が険しくなる。 自軍に居る御遣いが真の御遣いだと信じているため、険しい顔になっても当然だ。 だが、北郷殿は驚きながら質問をし、逆にこちらが驚愕するハメになった!!!

 

★★★

 

一刀視点

 

おい、おい、おい!!!!

 

なんだ、この豪華メンバーは!!! …………落ち着け、『素数』を数えて落ち着くんだ……! …2、3、5…7…………って、無理! 

 

某神父みたいに出来るわけないだろう! 普通に深呼吸! 

 

スーハー、スーハー………………………よし!

 

一刀「天城様にご質問したい! 「許可いたしますよ」ありがとうございます! ………もしかして、武田様方、村上様は、甲斐と信濃の出身、立花様方は豊前の大友家の重臣、風魔様は関八州、北条家の忍びの方ですか? 」

 

信玄「…」 信廉「!」 義清「なっ!」 

 

道雪「むっ!」 宗茂「えっ?」 小太郎「?!?!」

 

天城様や他の女性の将達の様子が、明らか狼狽している!

 

俺の推測は当たっていたんだ! だけど、なんで有名武将が女性なんだ? いや、そう思わせて、実は『男の娘』って可能性がある!

 

一刀「え〜と、また質問ですが、「その次に私から質問をさせて下さい」は、はい! 宜しいですよ!」

 

一刀「不躾で申し訳ないですが、重要な事なんです。天城様以外、全員女性ですか!!」

 

      ………………………………………………。

 

 

星「主よ、このような席に来てまで、女を口説こうとは、見損ないましたぞ! 愛紗や桃香殿が知ればどうなることか………!」

 

雛里「ご主人様…………不潔です!」

 

一刀「違っ、違うんだって。俺の世界では、日本の戦国武将は、男が主で、今の名前の方は、全員男だったから聞いたんだ!」

 

★★★

 

颯馬視点

 

颯馬「……北郷殿は、我らの事を存じているのですか?」

 

俺は、胸の鼓動を聞きながらも、北郷殿に問い掛ける。

 

御遣いと名乗るだけある…な。 どこまで知っているのか? それと同時にここに来た理由が気に掛かる。もし、こちらの目的を知っての行為なら、とても喰えない御仁だ!

 

一刀「俺の世界では、有名な武将達です。 ……ですが、全く同じではないようですね。 この世界と同じ女性になってますし、年齢も同世代に近い。 それに、私は戦国時代が好きで色々読んだけど『天城颯馬』様の名前は、一度も見た事がありません。」

 

颯馬「……もう、一つ聞きます。貴方の世界で天下統一を成し遂げた者の名は?」

 

一刀「『徳川 家康』が統一して、幕府を開いたそうです」

 

颯馬「私の世界では、『足利 義輝』様だ!」

 

多分、今の一刀殿の驚いた顔は、俺の驚いた顔に重なるのだろう。

 

『俺の居た世界とまた違う世界、そこから遥か先の刻をから来た天の御遣い』……………俺はそう理解した。

 

北郷殿は、あの戦いに満ちた修羅の世を、『戦国時代』と自分達の時代とは違う過去を指す言葉を使ったこと。

 

北郷殿は、戦国時代の出来事を『読んで知った』とような物言いをした。

 

後、性別が逆転していたとか天下統一した者が違う事も。

 

まぁ、俺の名前が無くても不自然は無い。無くて当然だ。

 

あの天下統一は、義輝様が主体となり皆の力で出来たのだ。

 

俺の力など些細なもの………。

 

これらで推測し最後の質問で決定的だった。

 

颯馬「北郷殿、貴方の世界は、戦国時代からどれほど経っているのだろうか?」

 

一刀「………およそ、四百年。 もしかすると五百年いくかも…」

 

颯馬「…………………」

 

理解出来る範囲を超えている。 あれから四百年以上経過した先の御仁だったのか。 と、とんでも無い相手だ。 

 

月様達を守るため、この御仁を害する必要があるかとも考えたが、ふと俺が少し前に貂蝉が言った言葉を思い出す。

 

『御遣いが来る後漢時代』の話。 「くっきー」、「日本酒」、「冥土服」の知識導入者。

 

…………貂蝉に聞かないと、わからないな。

 

もし、この者であれば、害する事で本来の流れが変わる所か、俺達が帰れる保障もなくなる。 あくまで、俺達の役目は『戦乱を平定する事』だから。

 

そんな事に思考を沈めていた時、北郷殿が口を開く。

 

一刀「天城様、もしかすると………貂蝉をご存知で?」

 

俺の背中に寒気が走る! 董卓勢全員、驚愕の顔を浮かばせる!!

 

月「もしや、貴方が「おば様」が常々申していた『ご主人様』ですか……………?!」

 

一刀「………「おば様」???? 本人は漢女と言ってましたが?」

 

颯馬「筋骨隆々、肌浅黒く、大柄、下履き一枚の服装の……!」

 

一刀「髪はもみ上げを伸ばし、リボンを付け、オネェ言葉を話す!」

 

颯馬、一刀「………変態!!!」

 

??「…………だあぁぁれえぇぇがあぁぁぁ、妖怪物化物化生としりとりができる得体の知れない者だと言うのよ!!!」

 

颯馬、一刀「「 誰もそんな事、言っていない!!」」

 

月「おば様!!」

 

俺と一刀殿が口会わせしたように、正体丸分かりの人物の言葉を不定をし、月様が喜びの声色で叫ぶ!!

 

貂蝉「あらぁぁぁぁんん、お久しぶりね! ご主人さまぁぁん〜!」

 

月様と俺には、片目を瞑り軽く挨拶したかと、思うと北郷殿へ一足跳びで近付く! ………でも、護衛の子竜殿の技量か毎度の事で馴れているのか分からないが、あの突進を阻止した!

 

貂蝉「ん〜もぉぉ、相変わらず恥ずかしがり屋さんなんだから〜ご主人様は〜〜! でも、そこが素敵、憧れる!!」

 

月「……おば様、お教えください! 北郷殿は、おば様の仰っていた『御遣い様』なのですか? 私達の傍で活躍して下さった皆様方…天城様は…………『御遣い様』では、無いのですか?」

 

貂蝉「………………月ちゃん。 もし『伏竜の軍勢』が御遣いでなかった場合、貴方は手放す? 」

 

月「馬鹿な事を言わないで下さい!!! 天城様達は…、天城様は…本当に頑張って下さいました! これからも、我が董卓軍を助けてもらいたいのです!」

 

颯馬「…………………………………………………」

 

貂蝉「いい返事ね! 結果的に言えば颯馬ちゃんとご主人様は、両方とも『天の御遣い』と考えていいわよん。 だけど、颯馬ちゃんやご主人様も気付いたと思うけど、二人の出身世界は別々なの。似た世界なんだけど…………」

 

一刀「そうすると、この世界と同じ『女性だらけの戦国時代』と言う訳か? 「そうよん!」………ハハハ、俺の憧れだった信長が女性にか…………見たいような見たくないような…………」

 

颯馬「…………………」

 

………俺の陣営に居るぞと思っいきり言いたいが、止めておこう。

 

まだ、敵になるか味方になるか分からないのに、陣営の顔ぶれを教えてため得にはならない。 様子を見るべきだな。

 

◇◆◇

 

【御遣い同士の対峙の件 その弐】

 

月視点

 

私は、おば様より聞いた言葉を頭に反芻する。 

 

《 …両方とも『天の御遣い』と考えていい… 》

 

すると、天城様達は勿論、先に居る北郷殿も『天の御遣い』。

 

天城様達のように戦慣れしていないが、将達や兵達にも慕われると聞いているので、『天の御遣い』の肩書きだけの将ではなさそう。

 

その志は、何を持つのか、見極めさせていただきます……。

 

華水母様、おば様、数多の平和を求め私を信じてくれる方々、そして

私に力を貸してくれている天城颯馬様のためにも………………。

 

月「コホン、…北郷殿、用件を伺わせてもらいますが、宜しいでか?」

 

私は、出来る限り威厳を持って、北郷殿に対する。

 

私の容姿は儚げで、物凄く優しそうだとよく言われる………から。

 

へうぅぅぅ、私だって好きでこの容姿になったわけじゃないのに…!

 

詠ちゃんとお茶を飲んでる時に、私が『おば様みたいな容姿だったら、風格も威厳も出て良いんだろうね』って詠ちゃんと話したら、

『馬鹿な事考えないで!!』って泣きながら怒られたっけ…。

 

一刀「俺達は、首謀者張角達を助け出したいのです! 張角達は、ただの旅芸人だと情報を集め真実を知りました! ですが、俺達は弱小の義勇軍。人手も資金も無い状態! だから、手助けをお願いしたいのです!! どうか、力を貸して下さい!」

 

……へぅ、天城様に似た雰囲気がありま…ぶんぶん! 駄目、月!!

しっかりしなければ……。確かに、罪の無い方を救い出しに行く行為は立派です。大勢力に依存するのも手の一つ。 しかし、こうなった場合、貴方方はどうされますか………?

 

月「…なるほど、用件はわかりました。 ですが、貴方は私達にどんな対価を用意してくれるのですか?」

 

一刀「! 俺達は、弱小勢力だと話を…」

 

月「確かに、貴方は御自分達の軍勢を弱小と蔑んでいました。そして御自分達より強き軍勢と言う事で董卓軍を選ばれたのでしょう? その決断に間違いはありません。…だが、貴方は忘れていませんか?」

 

一刀「何を……?」

 

士元殿が、真っ青な顔で俯いて、子竜殿が緊張に満ちた顔でこちらを見詰める。 北郷殿は……残念だけど分からない様子。

 

天城様にそっと顔を向けると、天城様は軽く縦に首を振って下さいました。 もしかすると、北郷殿達に軽蔑されるかもしれない。…敵となり対峙する事になるかもしれない………この指摘を……。

 

で、でも! 私は、私の持てる覇気を全面に押し出し訴えます!!

 

この天の御遣いに、更なる成長を促すために!!!

 

月「……貴方方を手伝えば、私達の策、資金、軍勢に負担が掛かります! 私達の殲滅の策を救出の策に変えれば、何進閣下の献策した策の急な変更で刻が無駄になり、余分な事をすれば兵糧や武器を使い費用は掛かり、策変更で倒れなくてもよい兵士が倒れてしまう…。

 

貴方の手伝いを行うと言うのは、このような結果を残す事になるのです!! それを分からず、ただ手助けを求めるなど愚の骨頂!!

 

…お話にもなりません! 早急に陣営にお戻り下さい。 私達も行わなければならない役目がありますので!」

 

北郷殿は、ゆっくりとおば様に目を向けました。…多分おば様に助けを求めるためだと思うけど、おば様は悲しそうな目を向けるだけで、微動だにせずに、その場所に居てくれました。

 

……ありがとうございます、おば様。

 

………北郷殿は、呆然自失のまま。傍で控えていた二人は、挨拶もそこそこで北郷殿を連れ、自分達の陣営に戻って行きました………。

 

☆☆☆☆

 

颯馬「……………月様、辛い役目、ありがとうございます!!!」

 

俺は、正直面食らった…。いや、俺だけではなく、他の将達も驚いている。普段あんなに優しい月様が、覇気を押し出し北郷殿に鋭敏な舌鋒を飛ばすとは…………。

 

月「天城様……。 これでいいんですよね? もし、あの『天の御遣い』が、人を頼る事ばかり覚えてしまっては…成長が止まってしまい、周りの人達まで巻き込んでしまいます。 

 

私は、そんな『天の御遣い』北郷殿が許せなかったんです。

 

天城様のように自分の力を高めて、尚且つ、自分を犠牲にしてまでも、人々を救おうとする貴方の生き方を不定するようで…………」

 

そう言われ、簡易の玉座より立ち上がると、体が傾く…!

 

颯馬「危ない!」

 

  タッタッタッ! ポスッ!

 

俺が急いで、月様の傍に駆け寄り、体を抱きしめると、目から雫が零れた……。 お顔を見れば、安らかに目を閉じ寝息を立てている。

 

颯馬「月様、本当にお疲れ様でした。 後の作業は俺達で行いますから、ゆっくりして下さいね……」

 

月様の寝顔が、少しだけ笑顔になった気がした。

 

◆◇◆

 

【 教えは届かず…の件 】

 

? 劉 玄徳陣営 ?

 

桃香「ご主人様ーーー!!」

 

数刻後、星ちゃんと雛里ちゃんがご主人様と共に帰ってきた!!

 

でも、何だか魂を抜き取られたように、呆然としている?

 

慌てて、朱里ちゃんと鈴々ちゃんが、ご主人様を寝床に寝かして様子を見守ってもらっている。

 

愛紗「 星、雛里!! どういう事だ?! これは!!」

 

雛里「……じ、じじじ、じつあわわわわ!!」

 

星「愛紗、私が話そう……。まず、董卓軍に加わっている『伏竜の軍勢』は、主の推測通り『戦国武将』の将らしい。だが、主の居た天と別の天のようだ。 何人か見たが、実力は少なくとも私並み、腕試ししたくてウズウズしたがな……」

 

愛紗「お前の見解なんぞ、どうでもいい!! ご主人様は、どうしてこうなったのかを聞いているんだ!!!!」

 

星「……では、主からだ。主は董卓殿の覇気による気当たりで少し意識を混濁させている。明日の朝には元に戻るさ。 そして、肝心な張角姉妹救出の手助けは、断られてしまったのだ………」

 

愛紗「な、何故!! 張角殿は周りの者達より祭り挙げられたら御輿の状態。罪は、張角殿の周りの者共! 天水で善政の名を挙げる太守とはおもえぬ行動…。 まさか、『伏竜の軍勢』が裏で董卓殿を操っているのではないのか?」

 

星「……確かに、傍に『伏竜の軍勢』軍師、『天城颯馬』殿が居たが………」

 

愛紗「……やはり。 きっと我らの事の讒言を董卓殿に吹き込み、この戦に参加出来ないようにしたに違いない!! おのれ! 天城颯馬! この関雲長の正義の刃、得と味合わせてやる!!!」

 

星「………………………」

 

桃香「…愛紗ちゃん、その報復、まだ待ってもらいたいの……!」

 

愛紗「桃香様、何を言われます! このままでは、董卓殿が張角殿を間違いなく殺してしまいますよ!!」

 

桃香「だって、まだご主人様の体調だって戻っていないし、会見の内容も聞いてないのに、即悪者は短絡過ぎだよ? まだ、時間はあるし確たる証拠を確かめなきゃ………!」

 

愛紗「………むぅぅ。 わかりました! しばし様子を見てから考えましょう。しかし、もしハッキリしましたら、私は奴を成敗致します!」

 

雛里「せ、星さん! ど、どどどうしましょう?!」

 

星「…今は黙っていればいい。……我らが言葉を尽くそうが、あの頑固者には届かない。機会を待つしか…………」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー

 

あとがき

 

まず、簡単ながら月が書いた図の説明を。

 

下に出ています図が、それになります。

 

※…黄巾賊の天幕 ┃、ー…柵 ◆…官軍 ◎…董卓軍

 

?…が黄巾族 進行方向  

 

 

   ◆     ◎   ◆

  ┃ ーーーー………ーーー ┃

  ┃?    ※※?? ?┃ 

  ┃? ?? ※※   ?┃

  ┃  ーーー………ーーー ┃

   ◆         ◆ 

 

 

それと、今年最後になるかもしれないので、御礼の言葉を。

 

毎回、コメントいただきます、雪風様。

ありがとございます。 毎回励みとなっています!

 

naku様、禁玉⇒金球様、前作でのコメント生かして小説書いて

みましたが、自分の実力ではこんなものでしょうか?

 

お二人のコメントなければ、そのまま仲良しのままで終わる回でしたが、かなり波乱が生まれそうです。でも、反董卓連合までです反目させて、仲直りさせようかなと。

 

後、前作以前に他にコメントいただいた方 ありがとうございます。

 

そして、最も御礼を言わないといけない、自分の作品に一番最初に支援を入れていただいた方、多分毎回入れて下さると予想していますが

本当にありがとうございます。

 

勿論、支援入れていただいた方、ありがとうございます!

一つの差で、小説の出来も変わりますので。

 

最後に、この作品をここまで読んでくれた方に感謝を!!

 

今年中に、次回の小説が書き上がるかわかりませんが、

また、次回も良ければ読んで下さい。

 

 

 

 

 

 

説明
義輝記の続編です。前回のコメントいただいて、最後のところを少し変えてみました。この結果が良いのか悪いのかわかりませんが、 良ければ読んで下さい。
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コメント
他の方からコメントいただいて、これは!と閃き次第取り込ませてもらってますので。前のコメントのおかげで、自分の作品は物語に厚みができました。改めて感謝させて下さい!(いた)
naku様 再コメントありがとうございます! ですが、謝罪は不要ですよ? 自分としてはとてもとても感謝しております! 因みに、この作品にプロットという物は、基本ありません。投稿しては考えての繰り返し。最後はこんな具合にと考えているだけなんです。(いた)
雪風様、再コメントありがとうございます! 騎馬隊は、武田、上杉で間違いないです。織田、明智はまだ不明。 発起人は…上手く表現出来るか分かりませんが、予定では劉備達にしようかと。(いた)
史実だと曹孟徳・主な外史だと袁本初・この外史の欠片だとどうか・・・・。伏龍軍の編成で騎馬メインって武田衆・上杉かな。鉄砲が作成できれば鉄砲集は織田・明智?(雪風)
雪風様 コメントありがとうございます! 雪風様のコメントを読んで閃きました。反董卓連合の発起人を他の人に変えようかなと。(いた)
約400年と言う歴史・知識等の差・・これを如何にするか・・伏龍軍の運命が定まるかもね。名だけの天御使いになるかならないかは一刀の心次第か?・・そして交渉事には常に利害関係そして対価があるのよ・・一刀よ・・(雪風)
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