真恋姫†夢想 弓史に一生 特別編
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〜一刀side〜

 

 

とある冬の日の広陵での出来事。

 

この日俺は、聖と二人で執務室で仕事をしていた。

 

 

 

「クリスマスだ???」

 

「そう、クリスマス!!!! 広陵の町もこんなに発展したんだし、やっぱり祭りの一つもするべきじゃないかって話しあっただろ??」

 

「あぁ。やっぱり、発展した分、祭りとかそういうので町の皆に還元しつつ、あまり触れ合うことの無い城の人と町の人との交流っていうのを実現したいって案はあったな。」

 

「だろ!!!! だったら時期的に冬なんだし、クリスマスをするしかないでしょ!!!!! 町を飾り付けしたり、サンタの格好をして子供達にプレゼントを配ったり、町の人たちを呼んで宴したり……。」

 

「何の話ですか〜????」

 

 

聖に熱弁をふるっていると、戸を開きながら芽衣さんが入ってきた。

 

 

「どうした? 何か報告か??」

 

「いえ〜。あちらの方が落ち着いてきましたので、こっちの方をお手伝いに来たのですが〜…。」

 

「そうか。じゃあ、よろしく頼むよ。」

 

「はい〜。ところで、さっきは何の話をしていたんですか〜???」

 

「クリスマスをしようって話なんだけど、芽衣さんはどう思う??」

 

「くりすます????」

 

「俺らの国だとそういうお祭りがあるんだよ。」

 

「町を飾り付けしたり、サンタの格好をして子供達にプレゼントを配ったり、町の人たちを呼んで宴したりするんだよ。」

 

「さんたとは何ですか??」

 

「子供達に無償で贈り物をする奇特なじいさん。」

 

「聖…。それは夢が無さ過ぎるだろ…。良いかい?芽衣さん。子供にとってサンタとは、クリスマスとは夢のようなものなんだ。豪華な食事、煌びやかな飾りつけ、お祝いのケーキ、そして次の日の朝、起きたら枕元に置いてあるプレゼント……。それはもう、至極のようなお祭りなのさ!!!!」

 

「う〜ん……。天の言葉が多くていまいち全てを理解してはいないのですが……話を聞く限りではとても面白そうなお祭りですね〜…。」

 

「そうでしょ?? ほらっ、芽衣さんもああ言ってるんだから、やろうよ!!!!」

 

「あぁ〜………。まぁ、今回くらいはお前の我侭を聞いてやるか…。」

 

「マジで!!!!?? やったぁぁ〜〜〜!!!!!!!!!」

 

 

頭をかきながら、しぶしぶ承諾する聖。

 

でも、これで言質は得た。

 

 

「だが、これは初めての事だからな。お前に担当主任を任せる。きちんと企画を立てて案として提出しろ。良いな??」

 

「勿論!!!! クリスマスのためならそんな仕事くらいやってやるって!!!!」

 

「…………普段からそのくらい頑張ってくれればもっと捗るんだがな…。」

 

「そうだ!!! 俺、お城の皆に伝えてくるよ!!!! 皆も知っておいた方が楽しめるだろ!? じゃあ、行って来る!!!!」

 

「あっ!! おい、一刀!!!!  ……………行っちまいやがった。」

 

「……しかし、よろしかったのですか聖様??」

 

「まぁ、問題は無いと思うが………お触れを出して、広陵の町の住民には知らせる必要があるな…。」

 

「では、その手筈でも整えて置きますね。」

 

「あぁ。頼む。」

 

 

 

 

 

 

 

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その後、城の中を駆けづり周りながら、色々な人に会ってはクリスマスの話をした。

 

皆、初めはキョトンとした顔をしていたが(雅を除く)詳しく話すと、面白そうだと随分と乗り気であった。

 

そして、城下町にはお触れが出され、クリスマスのお祝いを正式に広陵の町全体で行うことが決定され、町は来るクリスマス当日に向けて活気を帯びていく。

 

俺も、聖に急かされながらも必死に企画書類をまとめ上げ、準備は着々と進んでいくのだった。

 

 

 

 

しかし、クリスマスイブを三日後に控えた日に事件は起こった。

 

 

 

「えっ!!!?? 賊が各地でいきなり横行し始めた!!??」

 

「あぁ。分かってる限りで四箇所ほど同時にだ…。その討伐に向かうため、多くの者が城を空けることになるから、お前はこの城を本郷隊を用いて賊から守ってくれ。」

 

「そんな………皆、帰ってこれるんだよな??」

 

「……………正直、難しいところだろう…。現地まで急いで行っても一日半、賊の討伐も含めたら四、五日かかるのは目に見えてる。三日で帰ってくるって言うのは実質不可能に近いだろうな…。」

 

「じゃ…じゃあ、クリスマスは…。」

 

「…………中止だな。」

 

 

聖の残酷な一言で、俺の楽しみも努力も全てが水の泡と消えた。

 

しかし、聖を恨むことはお門違いであり、賊を恨むこともまた然りである。

 

これが、俺が居た現代とこの時代との差なのだと理解するしか、自分を慰める手段は無さそうだった。

 

 

 

 

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それから直ぐに、聖を先頭に賊の討伐隊が城を出発した。

 

同時に町にはクリスマス中止のお触れが出され、町の人たちの落胆の色が窺える。

 

子供に夢を……この町の人たちに希望を見せてあげることが出来ないのが、途轍もなく心残りだ…。

 

 

 

 

そして、クリスマスイブ。

 

 

いつもの様に書類仕事をしているが、どこか気持ちは上の空。

 

仕事に集中出来ていないのは、今日起こったミスを考えれば明らかだった。

 

心のどこかでは今すぐにでも聖たちが帰ってきて、クリスマスの準備を始めるという願望があるのだが、しかし残酷にも刻一刻と時間だけが経過していき、気付けば夜の帳が落ちている。

 

自室に戻って寝る格好に着替えたところで、寝台の端に自分の靴下を下げてそこに一枚の紙切れを入れる。

 

今この年になって、サンタを信じるわけではないけれど、もしサンタが居るというのなら、この願いをどうか叶えてください……。

 

 

祈りを込めるように合掌をした後、彼は夢の中へと旅立っていった。

 

 

 

 

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声が聞こえる。

 

 

 

“君はクリスマスを楽しみにしていたんだね…。でも、君はクリスマスを行うことが出来なかった。私はね、人の悲しむ顔というのが嫌いなんだ。悲しみは悲劇を生み、また新たな悲しみしか生まないからね…。君は優しい人間だ。自分の願いではなく、彼らが無事に帰ってきてくれるように願っているなんて泣かせるではないか。よろしい、では君の為に、取って置きのプレゼントを用意しようではないか。”

 

 

 

 

その声はとても優しくて、とても温かくて……。でも、どこか知らない人の声だ…。

 

あなたは…………もしかして……………。

 

 

 

 

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目が覚めると、既に日は上がっていた。

 

眠たい目を擦りながらも、昨日の夢は何だかどこか現実的だったなぁと思う。

 

そして、そこで気付いた。

 

靴下の形が手紙型になっている。

 

慌てて中から取り出した手紙には、“外に出てごらん”と一言だけ書いてあった。

 

 

着替える間も惜しく、そのままの格好で部屋から飛び出すと、慌しく走り回る城の人たちが目に映った。

 

彼等は必死に何かを運んでいるようだ。

 

 

「おっ…。ようやく起きたか、実行委員長。お前が指揮取らないと、祭りが始まんねぇぞ。」

 

 

不意にかけられた声は、今ここに居るはずの無い……討伐に出ていたはずの聖の声であった。

 

その様子に驚いて声が出ない…。

 

 

「何だよ、その顔は…。幽霊でも見たような顔してるぞ??」

 

「あっ……ひ……聖なのか……??」

 

「あぁ?? お前は仕える主人の顔まで忘れたのか??」

 

「で……でも、五日位かかるから、今日には帰って来れないんじゃ……。」

 

「その予定だったんだがな……。思ったより早く賊の討伐が完了して、昨日の夜にこの町に帰って来れたんだよ。だから今日は予定通りクリスマスを実行!!! 朝からみんな大忙しって訳だ。分かったら、お前も早く準備して手伝え…。俺もやることが一杯あるんだよ…。」

 

 

そう言って手を振りながら去っていく聖の後姿を見ながら、頬をつねって痛いことを確認する。

 

良かった夢じゃない。俺は今日、クリスマスをすることが出来るんだ!!!!

 

 

 

 

それから先は、大慌てで準備を行った。

 

町の飾り付けから、住民へのお知らせ、城での宴の準備、催し物の準備などなど……。

 

予てより計画だけは出来ていただけに、順調に物事は進み、夜になると盛大に宴は始まった。

 

町の人たちは初めて見る城の中の景観や雰囲気に緊張しているように見えたが、聖があの調子なのだから、直ぐに緊張もほぐれ、今では楽しそうにお酒を飲み、料理に舌鼓を打っている。

 

城の人たちも、皆楽しそうにしている姿を見れば、やはりこの企画をやってよかった。

 

もしかしたら、クリスマスの願い事がサンタに通じた……のかな……??

 

 

 

「皆さ〜ん!!!! くりすますけーきが出来ましたよ!!!!!!」

 

「…………………出来たよ〜…。」

 

 

そう言って、大きなケーキを運んできた麗紗ちゃんと蛍ちゃん。

 

その上には、見慣れたサンタの格好をした物が乗っていた。

 

 

「聖……あれって……??」

 

「あぁ。俺が作ったサンタさんだよ。砂糖菓子で出来てるから食べられるぞ??」

 

 

そういう聖を見れば、彼も嬉しそうで、自分の心が満たされていくのを感じる。

 

 

「聖……。ありがとうな……。」

 

「あぁ?? 何だよ急に…。」

 

「なんでもない!!!!」

 

 

そう言って微笑んだ一刀の笑顔は、その日一番の顔をしていたという。

 

そして、それと同時に、ケーキの上のサンタも少し笑ったような気がした。

 

 

 

 

 

後日談ではあるが、一刀が芽衣たちに「クリスマスは欲しいものを紙に書いて枕元に置いておけば、次の日の朝には枕元にそれがあるんだ!!」と伝えたことで、彼女達は現実にそれを実行。

 

 

しかしそこには、

 

「聖様」『お頭』[先生](お兄ちゃん){ひ〜ちゃん}〔兄ちゃん〕[ご主人様]などなど…。

 

流石にそれを聞いた聖は不憫に思い、彼女達に10分の1スケールの聖君人形をプレゼントしたという。

 

 

 

 

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弓史に一生 特別編   一刀のクリスマス   END

 

 

 

 

 

 

 

 

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後書きです。

 

 

時期が時期だけに、クリスマスネタを投降してみました。

 

皆さんメリークリスマス!!!!!!

 

そして、一人身の方は、シングルヘルな日ですね…。

 

 

作者は………当日にこの小説を書いてることから察してください。

 

世間の皆さんはクリスマスを十分に堪能してくださいね!!!!

 

 

 

さて、この内容自体は去年に既に考えてあったのですが、何分去年は文才皆無だったものですから……今年にもって来ました。

 

今回みたく、また時期ネタを入れることがあるかもしれませんが、その時は楽しんで読んでいただければなぁと思います。

 

 

それでは皆さん、Merry Christmas!!!!!!!!

 

 

 

説明
どうも、今日は特別編も投降します。

時期が時期だけにクリスマスネタを放り込みました。

時系列が少し分かりにくいかもしれませんが、蓮音様が亡くなる前だと思っていただければ理解しやすいかと……。

それでは、お楽しみください。
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コメント
>chimieさん コメントありがとうございます。 本当ですね!!? 修正しておきます。ご指摘ありがとうございます。(kikkoman)
2ページ目の上の方 族が横行してる 賊じゃないですか?(chimie)
>劉邦柾棟さん  コメントありがとうございます。 些細なことでも、一瞬で現実を見てしまうのが怖いところですよね……。子供の夢を守るのも大人としての責任なのかもしれませんね……。(kikkoman)
一気に現実的になったんだものwwwwwwwwwwwwwwww!?(ノД`)(劉邦柾棟)
クリスマスと聞くと「赤松健先生」の『いつだって Myサンタ』を思い出す俺がいる・・・・・・。  「ソリ」に「ナンバープレート」付きを初めて見た瞬間……『夢』が崩れた音が聞こえた。(´;ω;`)(劉邦柾棟)
>nakuさん  コメントありがとうございます。  その解釈は作者には無かった……。とある会社の実際にあったクリスマスサプライズが印象的で、作者は憧れますが、流石外国だと思います。(kikkoman)
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