模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第11話 |
果てしなく続くクレーターだらけの大地、月。そこを低空飛行しながら突っ切る一機の機影があった。ナナのエールストライクガンダムだ。
「どこに行ったの!?」
ナナはモニターを見廻しながら呟く。と、直後月面に堂々と立っている一機の機体を見つけた。
『ガンダムAGE』に登場したガンダムAGE2の改良型、『ダークハウンド』本来は黒い機体だが、映ってるのは白く塗装された改造機だ。
見つけたとナナはビームライフルで狙撃、
白いダークハウンドは難なくかわすと手に持った槍、ドッズランサーをストライクに向ける。下部に設けられたビームガトリングが火を噴いた。
「わわっ!」
足元に跳弾する弾丸に驚くナナ、だが白いダークハウンドに敵対していたのはストライクだけではなかった
「もらったぜ!」
上空からダークハウンドにロングライフルを向ける深緑の機体、アメイジングレジェンドガンダム。ダークハウンドめがけて二丁拳銃を放つ。
ダークハウンドは上を向くと横に軽く移動、回避された弾丸は地表に突き刺さる。直後真上にダークハウンドが飛び上がった。
ダークハウンドは左腕に装備された大型の刃・レイザーブレイドを振りかざしレジェンドに斬りかかる。
「うお!?」
レジェンドはヒートナタでその刃を受け止めた。下からとはいえ凄まじいパワーだ。このままじゃ押し切られるとレジェンドに乗ったコウヤに焦りがよぎった。
と、同時にGポッドにアラームが鳴り響く、同時に正面のモニターに『TIME UP』の文字が浮かび上がりGポッドは暗転した。
「え!?もう終わり?!」
暗転したGポッドの中でナナが拍子抜けといわんばかりに言った。
「これからだったのに……」
Gポッドから出たナナは残念そうに呟いた。
「俺はこれからやられる所だったよ……」
続けてGポッドから出てきたコウヤが呟く。彼の脳裏には先程のダークハウンドの姿が焼きついていた。
「そうでもないよ。皆どんどん動きとか良くなってるし」
アイがそう言いながらGポッドから出てくる。その手には先程の白いダークハウンドが握られていた。
それこそ対コンドウ用のアイの切り札『AGE2E フェンリル』
今三人はガンプラバトルを通じての特訓中だった。二人とも徐々にではあるが動きは良くなってきている。
「そういうアンタも随分いいのが出来たんじゃない?」
「そうでもないよ。まだ使いこなせてる自信ないし」
「あの、ヤタテ・アイさんですか?」
丁度その時アイに声をかける人がいた。見るとパイロットスーツを着ている二人の青年がいた。
「?何ですか?」
「大会の特訓をしたいんですが、バトルしてくれませんか」
バトルを通じての訓練の頼みだった。大会が近づくにつれガンプラバトルの特訓をするビルダーが増えてくる。
こういった時アイ等強いビルダーはよく相手に誘われる。
「もちろん!よろしくお願いします!」
快く受けるとアイはナナ達に断りを入れる。そしてGポッドに入った。アイ自身も早くフェンリルに慣れようと必死だ。
……
ステージは再び月面、相手は片刃の対艦刀・シュベルトゲベールを持った機体、ソードストライクガンダムと
大型ビーム砲・アグニを持ったランチャーストライクガンダムだ。いずれもストライクの装備バリエーションだ。そして両機ともRGだった。
「本気で来てくださいよぉ!!」
始まるや否やソードストライクガンダムはフェンリルに突っ込み対艦刀を振り上げる。ランチャーストライクもアグニを撃ち援護する。
アイはアグニをかわしながらソードストライクの懐に突っ込み、振り上げた体勢のソードストライクにドッズランサーを突き刺した。
「な!」
「いきなり大技すぎます!!」
アイが言ったと同時に、腹部を貫かれたソードストライクは背中から倒れ込んだ。
「よくも!!」
敵討ちと言わんばかりにランチャーストライクの射撃間隔が早くなった。アグニを撃ちまくってくる。
遠距離用の装備がないアイのフェンリルは相手に接近するしかない。
「やってみるか……」
アイはフェンリルにブーストをかける。猛スピードでランチャーストライクに迫るフェンリル。
「は!早い!」
アグニの砲撃の中を突っ込んでくるフェンリル、直後、ランチャーストライクの腹部にドッズランサーを突き刺した。これにより決着がついたかに見えた、が……
「チッ!浅い!」
アイが舌打ちをすると同時にランチャーストライクは右肩からバルカン砲を撃ってくる。当たったのはわき腹だった為まだランチャーストライクは生きていた。
「クッ!」
至近距離で肩のバルカンを受けては面倒だ。左腕のレイザーブレイドを盾代わりにしバルカン砲を受けるアイ。
そのままレイザーブレイドでランチャーストライクの右肩の付け根を切り落とした。
「!?」
「はぁぁっ!!」
すかさずドッズランサーから右手を離し、両腕のレイザーブレイドでフェンリルはランチャーストライクを左右から切り裂いた。
「いやはや、バトルありがとうございました。あっという間にやられちゃいましたけど、自分達のコンビネーションを改良する機会になりましたよ」
やられてもなお、悔しさを表に出さずに握手を求める相手のビルダー。アイは「こちらこそ」と笑顔で握手に応じるも、彼女の心にはしこりが残っていた。
二人はその後また特訓として別の対戦相手を探しに行くのだった。
「いやぁ、本当強いわねアイ。見ててほれぼれしちゃった」
二人を見送ったアイに休憩していたナナが話しかける。
「うん……ありがとう」
「?何か浮かない顔してるけど」
「使いこなしてる自信ないんだろ?」
今度はコウヤが話しかけてきた。彼はバトル経験もナナより多い為アイの不安を察したようだ。コウヤは普段考えなしな為直観的に。
「うん、よく分かったね」
「まーな、ランチャーストライクの時一撃で仕留め切れなかったし、なんかそんな気がしたのよ」
「相手にはコンドウさんがいるからね、中途半端で勝てるとは思えないもの」
フェンリルは増設したブースターや軽量さから相当の機動力を誇る。だが問題がある。軽量かつ高機動な為余計な勢いがつきがちだった。
特にブーストは早いが小回りが利きづらく射撃の狙いも定め辛い。更にオーバーヒートにもなりやすい。
その勢いは速く動くだけでなく、コンドウの重い斬撃を勢いで相殺して受けるという目的もあった。
以前コンドウと戦った時、自分が使用した『AGE2Eナイトメア』をヒントに考えた物だ。
コンドウと戦う事を考えるとどうしても重量を増やす事もこのまま使いこなせなくてもいいともアイは思えなかった。
コンドウの射撃精度を避けるとなるとあれ位の速度は必要だと思ったからだ。
「でもあれだけ強かったんだし大会でも別にあのままでいいんじゃない?」
「……俺としては正直それは勘弁して欲しいけどさ」
コウヤが不満の声を上げる。
「ヤマモト?」
「誘ってくれたのは嬉しいよ。でもさ、結果的に部をほったらかしにしちまった俺としては、コンドウさん達に勝ちたい。正直中途半端は困るぜ」
打倒ウルフはコウヤ達模型部の悲願でもあった。部長のコナミの所為でやり辛さを感じていたコウヤは今の状況をありがたく思っていた。
しかし打倒ウルフは部全員が掲げていた悲願。自分だけがやり易い環境に移った事に多少なりとも後ろめたさと責任を感じてはいた。
そして、せめて出るからには何がなんでもウルフに勝ちたい。勝利を模型部の土産に持ち帰りたかった。
「解ってるよ。大会まで後三日、それまでに使いこなさないと……」
アイはどうすればいいかと額を抑えた。
「……駄目だった……」
自室のベッドで仰向けに倒れながらアイは呟いた。あの後バトルを何回かしたが結局使いこなすには至らず、家に帰ることになった。
結局どう使いこなせばいいんだ。色々考えているけど答えは見えない。
考え過ぎた為か頭がしびれる。普段ここまで考え込まないからまるで脳が筋肉痛にでもなったかの様だ。
――やっぱりナナちゃんの言う通りあのままで挑むしかないの?――
そう考えていた時だった。スマホに着信が入る。誰だろうとディスプレイを見るとナナからだった。
「もしもし?ナナちゃん?」
「アイ……助けて……」
声が沈んでいる。何かあったのだろうか。
「どうしたの?何かあったの?」
「ストライク……アタシのストライクが……」
スマホ越しに聞こえる声はいつもの強気な声でなく若干涙声だった。ガンプラ抜きにしても只事じゃないとアイは思った。
「今行くから!どこにいるの!」
「アタシの部屋……」
……
「うわぁ……こりゃまた派手に……」
ナナの部屋で1/144ストライクを見ながらアイは呟いた。首から下をビルドストライクに挿げ替えた疑似HGCEエールストライクだった。
ナナもまた大会への準備をしてなかったわけではない。HGエールストライクを完成度の高いビルドストライクを移植し
可動範囲や完成度を上げたこのストライクを作っていたのだ。加工や工作が必要な部分は全部アイがやったのは内緒だ!
(ちなみにHGCEエールストライクを使わなかった理由は、ナナが愛着のあるHGストライクで戦いたいから、という物だった)
話を戻そう。そのストライクは色がついた部分が全部真っ白になっていた。白く塗ったわけではない。色の部分がまるで冬の朝、霜が降りたかのように白く曇っていたのだ。
近くには水性トップコート(つや消しクリアー)というスプレー状の透明塗料が置いてあった。
「アイから借りた模型の本とか読みながらやってたんだけど……こんな風になっちゃって」
「外で塗ってたの?」
「うん、今日風もなかったし……」
元気なくナナは答えた。水性トップコート、これは無色透明の水性スプレー塗料で、『光沢』と『半光沢』、そして『つや消し』の3種類が存在する。
これを仕上げに吹き付ける事により質感に違いが出てくるのだ。ナナは真冬の夜のベランダで、つや消しをストライクに吹き付けていたら白く曇ったというわけだ。
これは『かぶり』という現象でベテランモデラーさえも悩ます憎き現象だった。
「本とかじゃ修正方法とかないしどうすればいいのか解らなくて……」
「まぁ普通は修正方法までは載ってないからね」
「えぇ!?じゃあもう直せない?!」
泣きそうになるナナ
「大丈夫。とりあえず私の部屋に運ぼう」
そして二人はストライクを持ってアイの部屋に移る。準備として部屋を暖房で温める。
机の上に新聞紙を敷き、その上に上部を一部切り取った大型ダンボールを置く。
そして開けてない窓には換気扇の代わりに扇風機、
二人の手には百均の使い捨てポリ手袋。口には同じく百均の防塵マスク。
そしてもう一つ、お湯の入った桶にアイは自分の水性トップコートを入れていた。種類は『半光沢』だ。
「修正といっても基本的な事は変わらないよ。まずは三分位よく振って」
アイはお湯の中からトップコートを取り出しよく振る。吹き付ける量のムラをなくす為だ。スプレー容器の中に入っている攪拌玉がカラカラと音を立てた。
「そこはアタシも注意したけど……」
「で、ここからがポイント、吹き始めは吹きつけたいガンプラにはかけないで。ガンプラの隣から出す事」
「え?かける物がすぐそこにあるのに?」
「吹き始めって言うのはどうしてもスプレーの粒子が固まって出やすいからね。そしたら吹きっぱなしでかけたいガンプラを通り過ぎる感じで……
それを二回か三回繰り返す。距離は20pか30p」
アイはかぶりを起こしたストライクにスプレーを吹き付ける。
「これを一時間乾かしたらまたやるの。かぶったつや消しの修正は上から半光沢か光沢を拭きつければ結構中和出来るから、
下につや消しがある分つや消しっぽく残るからね、またつや消しを吹き付ける必要はないよ。
一気にやろうとしないで少しずつ進めるのが重要だよ。まぁどうしても重ねた回数上多少厚ぼったくなっちゃうんだけどね……」
「わ!ありがとう!でもさ、なんで白く濁っちゃったわけ?一応湿度とか調べたけど……」
ナナが見た本は湿度の高い日にやってはいけないと書いてあった。そして今の時期は空気の乾燥した冬の夜、条件は良かったはずだ。
「スプレーが冷えていたんだと思う。冷えてると吹き付ける粒子も固まって出るんだ。だからこうやって白くかぶっちゃうの。もともとつや消しはかぶりやすく出来てるからね」
その為アイはスプレーをお湯で温め、部屋の温度も上げていたわけだ。
「振る回数、気温、スプレーの温度、湿度、吹き付ける量、これらに気をつければ大丈夫」
「い、意外に多いわね」
「晴れた昼間ならある程度は楽かな」
「でもよかった……一時はどうなる事かと思ったわ。本当ありがとう。でも……」
水性とはいえスプレー塗料独特の匂いが充満する。
「なんか……気分悪くなってくるわね」
「仕上がったら換気すればいいよ。その為に扇風機を換気扇に使うんだから」
「ゴメンね……自分の部屋なのに」
「慣れてる匂いだから大丈夫。耐性ついちゃってるから」
笑いながら答えつつ、アイは思った。
――かぶりもこうやって修正する方法がある。自分も諦めなければきっとフェンリルを制御するコツを見つけられるハズだ。頑張ろう。――と……
翌日、ガリア大陸、明日はここのGポッドを大会会場の市民体育館に運ぶ。故に今日がフェンリルの練習が出来る最後のチャンスだった。
気合入れて行こう。と二階に上がるアイ、と、上からギャラリー達の歓声が聞こえる。なんだろうと上がった瞬間。モニターにコンドウのゼクが映っていた。
「コンドウさん!?」
「いや、コンドウ君はここには来てないよ」
アイが叫ぶ直後、雇われ店員のハセベ・シロウが駆け寄ってきた。
「え?でもあれってコンドウさんのゼク・アインですよね」
「大会も近いからね。コンドウ君の戦闘データを利用して、似せた対戦NPCを作ったってわけさ、コンドウ君監修だよ」
「コンドウさん監修……やります!是非あのゼクとバトルやらせて下さい!」
アイとしては願ってもないチャンスだ。アイはガバっとハセベに掴みかかった。
「わわっ!!ちょっと待って!順番を守ってね!!」
そしてアイに順番が回ってきた、アイはバトルへと突入する。ステージは以前コンドウと戦った時と同じ『テキサスコロニー』
砂漠と混じった荒野にフェンリルとゼクは、向かい合うや否やぶつかり合う。ドッズランサーは振り下ろされたガーベラストレートをしっかり受け止めた。
「よし!」
ゼクはドッズランサーを払いのけようと力を込める。単純なパワーではゼクには勝てない。
そうはさせるかとアイは左腕のレイザーブレイドでゼクめがけて斬りかかる。
すかさずかわし離れるゼク・アイン
「ここまではうまくいってる!」
距離を置いたゼクはフェンリルめがけビームライフルを撃ってくる。アイはゼクの周りをブーストで大きく旋回しつつ
ドッズランサーのビームマシンガンで応戦する。ゼクはホバーで器用に動きビームマシンガンを回避。
アイもまたナイトメアの時は避けられなかったビームライフルを避けていた。
「これなら!!」
コンドウに勝てるかもしれない。アイがそう思った時だった。Gポッドに警告音が響く。
「!?」
前方を見ると目の前に岩山が広がっているのが見えた。このまま直進すればぶつかってしまう。
「しまった!!」
バーニアを逆噴射させ急制動をかけるアイ、だがフェンリルの勢いは中々止まらない。その時だった。横からビームが襲ってくる。
「!」
コンドウのゼク・アインだ。スピードを緩め当てやすく、かつ無防備になった瞬間を狙って来たのだ。肩部のシールドで受けるも前方の岩山に衝突する。
しかしスピードを緩めていた為自滅には至らなかった。
「ぐぁっ!!」
これじゃ前と同じだ……アイは岩山に機体をめり込ませながら毒づいた。前と違うのはゼクがビームライフルで追い打ちをかけてきている事。
アイは機体を起こすと同時に、攻撃に出ようとするがゼクは容赦なく撃ってくる。それをシールドで受けるが何度ももちそうにない。
――結局駄目なの!?私じゃコイツを使いこなせないの?!――
アイがそう思った時だった。Gポッドのモニターに『挑戦者が乱入しました!』と表示される。
「!?」
こんな時に!?アイがそう感じた時、ゼクの背後からレールガンが飛んでくる。ゼクは振り向くとレールガンをガーベラストレートで受け止め防いだ。
「アイ!大丈夫!?」
「ナナちゃん!?」
撃ったのはナナのストライクガンダムだ。それも昨日かぶりを修正した奴でほとんど曇りが消えていた。
今回のパックは大会用に用意していたI.W.S.P.。全てのパックのいいとこどりのストライカーパックだった。(ちなみにまだ製作中で素組みの状態)
「いや!順番どうしたの!?」
「割り込みしてはいっちゃった!」
「えぇ!?それマズイよ!」
「……見てられないんだもん!ガンプラとはいえアンタのあんな思い詰めた顔!」
「……ナナちゃん……」
「とにかくオッサンのコンピューターの相手はアタシに任せて!」
「待ってよナナちゃん!分が悪すぎるよ!」
「大丈夫!このストライクは大会用に作った物だもん!アイに習ったようにスプレーを細かく何度も吹いて最高の出来よ!」
「でも相手は!……細かく!?」
その時、アイの脳裏にナナの言葉が突き刺さった。
「はあぁっ!」
ナナは両手に片手サイズの対艦刀を持ちゼクに斬りかかる。ゼクは大振りのガーベラストレートでストライクを真っ二つにしようとするが
ナナは二本の対艦刀で受け止めた。
――つっ!なんて力!?アイの奴こんなのと戦っていたの?!――
ゼクは刀を振るう。その勢いでストライクは後方に吹き飛ばされる。
「あぅっ!」
そのストライクを背中からアイのフェンリルが受け止めた。
「アイ!?」
「後は任せて!ナナちゃん!」
そう言うとアイはストライクの前に躍りだし、ブーストでゼクに迫った。ゼクはそのままフェンリルめがけビームライフルを撃つ。
ビームが迫る中、アイはブーストを止めた。
「え?」
ナナがその行動に理解出来ない一瞬、迫るビームがフェンリルに当たると見ていたギャラリーは思った。
だが次の一瞬でフェンリルの体が横に移動、ビームをかわす。
「避けた!?」
さっき観戦モニターで見ていた動きとは違う。何が起こったと思うナナ。
そしてフェンリルは動く、なおもビームライフルでフェンリルを撃つゼクを
ジグザグにブーストを使いゼクの攻撃をかわしているのだ。
ナナは思った。さっきは大味な、直線的なブーストばかりだったのに今度は細かい動きが出来てる。
――あれって……そっか!ブーストを細かく何度も使って動きやすくしているんだ!――
ナナが心で叫んだ直後、ゼクのガーベラストレートが握った左腕ごと中に舞った。ドッズランサーに手首を貫かれたのだ。
ゼクは形勢不利とみると後方に下がりながらビームライフルを撃つ。
アイも追いかける。ゼクとフェンリルが並行しながら撃ち合った。ビームマシンガンをくらいながらも耐えるゼク
アイのフェンリルは軽やかにブーストでビームライフルをかわしていた。
「アイ!凄いよ!」
「……」
ナナが叫ぶもアイの耳には届いていない、それ程までにアイは集中していた。
そしてゼクのビームライフルはフェンリルのビームマシンガンを受け破壊、一気に勝負をつけようとゼクに直線的ブーストをかける。
だがゼクは無事だった右手で肩部のビームサーベルを抜き迎え撃とうとする。
「……!」
なおも直線的に迫るアイ。至近距離に入った時。ゼクは横一閃にビームサーベルを振るった。
「アイ!」
斬られた。ナナはそう思った。が、ゼクがビームサーベルを振るう瞬間にアイはブーストを止め、身を屈ませる。
そしてただちに再びブーストをかけゼクを追い越す。ほぼ同時にドッズランサーを地面に突き立て支点にし、グルッと周り右腕のレイザーブレイドを思い切りゼクの背中に斬り落とした。
勢いをつけたレイザーブレイドによってビルダーなき人形の上半身は切り落とされた。
「フェンリル……!アイ……勝ったんだ!」
「……やった……やったんだ!」
集中の糸が切れたアイはフェンリルを使いこなす糸口の発見に、そして勝利を掴んだ事に喜びの声を上げた。
「やったじゃんアイ!完全にこれでフェンリルも物に出来たわ!」
アイに駆け寄るナナ。
「なんか、NPCとはいえ勝ったのが不思議だよ」
「そんな事ないよ。これでオッサンとも充分戦えるし、むしろアタシが格好悪いかな?すぐやられそうになっちゃったし」
「そんな事ないよ。ナナちゃんいなかったら私がやられてたし、有難うナナちゃん」
バツを悪そうにするナナに笑顔で返すアイ、予期せぬ反応にナナは照れる
「え?ぁ、まぁ結果的にアンタがそう思うんだったら悪い気はしないわね」
「でもまだまだだよ。今日は完全に物にするまでバトル続けるからね私」
「あ、だったらアタシもストライク使いこなすまでつき合うからね」
「フフ……今度は順番守ってね」
「う……それ言わないでよ……」
アイの顔にはもう迷いはなかった。アイ達はこれで万全の体勢で大会に望めるだろう。だが……
同時刻、某ゲームセンターにて
「うわぁぁ!!」
縦真っ二つに斬られた1/144HGサイコガンダムが爆発する。Zガンダムに登場したその機体は通常のガンプラの倍はあるサイズだ。
自分の倍はある敵を切り裂いた機体は紅く怪しく輝いていた。
「凄いものだなコンドウさん、サイコガンダムを真っ二つか……」
「あぁ、いいものが出来たよ」
感心するツチヤ、そしてGポッドから出てくるコンドウも満足げに答えた。
「これで大会も優勝は俺達の物ッスね」
「俺個人は優勝には興味はないよソウイチ」
「何言ってるんスか。俺たちは立場ある『ウルフ』ッス。勝利という結果を皆に見せつける義務があるッスよ」
「コラコラ、頭固くなりすぎだぞソウイチ。まぁ俺も次の大会、妥協する気なんて一切ない。その為にコイツを完成させた」
コンドウは手に持った赤いガンプラを眺める。
――恐らく君は全力で来るだろうヤタテ、そして俺も全力で応えよう。この『ミブウルフ』で!!待っていろ!!――
決戦の時は刻一刻と近づいていた……
これにて第十一話終了となります。
ブースト制御のきっかけまんま某愚連隊になってしまいました。しかしこれしか思いつきませんでした。申し訳ない。
ガンプラ作っていていまだにつや消しのかぶりが起こる事があり、その時の体験でつや消しのくだりを思いつきました。
アイの言っていたのはあくまで自分なりに研究してきた方法なので
いい方法や突っ込みどころを知っている方がいらしたら、指摘して頂けたら嬉しいです。
今回の登場ガンプラの再現です。
フェンリル
http://www.tinami.com/view/648121
ストライク
http://www.tinami.com/view/648109
見て頂いたら嬉しいです。
※十話の設定ですが、また一部『コナミの入部した時期』や細かい部分の設定を変えました。
度々読んで頂いた方を裏切るような真似をしてしまい申し訳ありません。今後こういった事がないよう努力します。
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第11話 「宇宙翔ける白狼」 紆余曲折ありコウヤをチームに加えたアイ達、アイ達は大会への準備を進めていた。そしておよそ十日近くが過ぎた… |
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mokiti1976-2010さん 有難うございます。決戦は今までで一番派手にいくつもりです。(コマネチ) 挑む方も挑まれる方も順調にレベルアップして良い感じですね。決戦の時が楽しみです。(mokiti1976-2010) |
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