…ある晴れた日

「おーい狐燐はおるかー？」

ガチャ

「…なんじゃ、居らんのか。ん？なんじゃこれ」

狐燐と鍛錬でもと部屋を訪ねた祭だったが部屋には狐燐は居らず、代わりに机の上に置かれた球を見つける。そしてそれは、最大の事件を引き起こすことになる。

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「あっれ〜？どこにもない…」

狐燐はそんな独り言を繰り返しながらあるものを探していた。

昨晩、非殺傷用にと((制限|リミッター))を掛けた((宝貝|パオペエ))、((五光石|ごこうせき))である。なぜそんなものを用意していたかといえば、理由はいくつかあり、一つは宝貝がそもそも総じて殺傷能力が高すぎて警邏中などで事件があったときに街中では危険すぎること。もう一つは五光石に『一投必中』の能力が備わっていることだが、当然宝貝が使える者に限っての話であり普通の人間が使ってもそんな使い方はできない。

だが、狐燐が必死に探しているのは別の理由…宝貝としての能力とは関係なく危険な『おまけ』の方が問題だった。

「狐燐。すこしいいか？」

「あっうん。今開けるよ」

冥琳に呼ばれたため探索を一時中断して扉を開ける。そして冥琳を見た瞬間に狐燐は絶句する。

―――冥琳は、五光石の犠牲になっていた…

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「あはははは！」

「め、冥琳さｍ…ぷふっ」

急遽、狐燐の呼びかけで祭以外が集まった部屋の中で冥琳の顔を見た雪蓮は腹を抱えて笑い転げ、穏も堪えきれずに吹きだしていた。そして冥琳は眉間にシワを寄せて完全にお怒り状態である。

「ゴホッゴホッ…で冥琳のその顔は一体どうしたのよ。プッ」

「雪蓮笑いすぎだから。簡単に説明すると祭さんが僕の宝貝を持ち出しちゃったみたいなんだ。で、冥琳はその被害者ってこと。」

そう狐燐は説明する。冥琳の顔…それこそが五光石の『おまけ』により被害に遭った事を物語っており現在、冥琳の顔は『くどく濃ゆい』顔になっていた。

「でも、宝貝って誰にでも使える物じゃないんでしょ？なｎプッ…何でこんなことになってるの？」

「『これ』自体は五光石の『おまけ』で宝貝の能力と関係ないんだよ。当たったらこうなる」

「はた迷惑な宝貝ね。まあいいわ。とりあえず祭を捜せばいいのね？」

「うん。とりあえず三人は城の中をお願い。僕は上から捜すから」

三人が部屋から出て行くのを見送り、狐燐も部屋を出て上空へと舞い上がる。

地上で三人、空から一人。その中で最初に祭を見つけたのは雪蓮だった。

「祭！ちょっと待ちなさい！」

雪蓮が走りながら呼び止めようと試みるが祭はとまることなく逃げる。

今の祭は冥琳の説教から逃げる為に必死で止まるつもりは無かった。偶然とはいえ冥琳にぶつけただけでも怖いのに、さらにはあの顔である。確かに見ていて面白かったが同時にばれた時が怖くさりげなく戻そうとしたがその時にはばれてしまった後で、結果逃げているわけである。

「祭様〜止まって下さい〜」

祭の逃げる先に穏が両手を広げて立ち塞がる。が、

「甘いわ！」

スコーン…

祭は持っていた五光石を穏に向かって投げつけ穏はモロにそれを頭に喰らってしまい蹲る。その隙に祭は穏の隣をすり抜けて走り去る。

「穏！大丈ブフッ…」

後から来た雪蓮は穏の顔を覗き込んで足を止めてしまった。それを見ていた狐燐は傍に落ちていた物に気付き叫んだ。

「雪蓮！((五光石|それ))を祭さんに向かって投げろ！」

狐燐の指差す先…そこに落ちていた五光石を拾い狙いを定めて投げつけた。

「いっけぇー！」

投げられた五光石は真っ直ぐに祭に向かって飛んでいく。だが、それくらいは祭も予想しており、すぐに回避した。

「ははは、策殿。弓兵をなめてもらっては困りますぞ」

――クンッ

「へ？」

スコーン…

回避したはずだった。が、祭の誤算は雪蓮が『使える側』の人間だったことと五光石の『一投必中』の能力だった。

結果、五光石は無事狐燐の手に戻り。祭はその晩夜が明けるまで冥琳に説教を受けていた。後に祭は「あの顔で説教をされるのは二度と御免だ」と言っていたとか。