Vの追跡/啜られる血と涙
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「お?い、千冬姉やーい。」

 

「織斑先生だ、馬鹿者。何だその前時代的な呼び方は?まあ、良い。どうした?」

 

「新聞部に行きたいんだけど、部室どこ?」

 

「これを見ろ。」

 

千冬はデスクに入ったPDAを取り出すと、スクリーンにあるアイコンをタップして三次元の地図を見せた。

 

「成る程・・・・・・オッケー分かった。ありがと。」

 

「一夏。」

 

「ん?」

 

「カステラの事だが、その・・・・・・美味かったぞ。」

 

「そりゃ良かった。後、部屋のゴミ出しお願いね?最初に来た時はまるで腐海を見ているかの様だったよ。」

 

「余計なお世話だ。」

 

うっすらと赤めた目元が更に赤くなり、一夏の額にデコピンを食らわせた。

 

バチン!

 

「アグッ!?いっててててて・・・・・へ?い。」

 

「とっとと行って来い。 馬鹿者めが。」

 

だが、額を抑えて踞る一夏の頭を優しく撫でてやると、書類整理を再開した。

 

「新聞部、新聞部っと。ここか。頼も?、黛薫子女史はいずこに??」

 

「おー、織斑君!良く来てくれたね。ってか良くここが分かったね。迷わなかった?」

 

「地図があったんで、大丈夫でした。で、名刺の事を聞きたいって言ってましたけど具体的に何を?」

 

周りにはまだ部員が何人かいるので、別室に通し、薫子の表情は真剣な物に変わった。

 

「鳴海探偵事務所って、ガイアメモリに関係する事件の駆け込み寺だったんだって?」

 

一夏はガイアメモリと言うあまりに聞き慣れ過ぎた単語に怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「どこで知ったんですか、それ?」

 

「私、何年か前に風都に行った事があるんだ。その時ラジオで都市伝説みたいな事聞いたり、新聞で、その・・・・・ドーパントが見出しにあったりとか。」

 

最後の部分だけ声を潜める薫子。

 

「なるほど。」

 

「で、どうなの?」

 

「はい、まあ。その時はまだ助手じゃなくて知り合いだったんですけど。でも、今となっちゃ立派な助手ですよ。お悩み相談室も、探偵の真似事で心のケアの一環って事で。只の背伸びです。」

 

「その割にはハードボイルド垣間見えるんだけどね。」

 

「そりゃどうも。ていうか、何でそんな事を聞くんですか?」

 

「お姉ちゃんがそこに依頼をしに行ったのよ。ほら、知ってるでしょ?最近頻発してるストーカーとか痴漢事件?」

 

「ああ。(あの事件がドーパントがらみなのか。まあ、後で聞いてみりゃ良いか。)事件解決するまで、そこまで時間は掛からないと思いますよ?俺の事務所と風都署にいる俺の上司兼師匠は優秀ですから。そうですねえ・・・明日か、明後日の風都の朝刊を読めば分かりますよ。ドーパントか仮面ライダーが絡んだら大抵は一面飾りますから。まあ、何かあったら電話下さいね。んじゃ、俺はこれで。」

 

「うん、ありがとね。あ、後、これお姉ちゃんの名刺。もしかしたら仕事のお誘いがあるかもしれないから。」

 

「仕事?黛渚子、インフィニット・ストライプス副編集長。もしかしなくても、モデルの仕事ですか?」

 

「うん。だってほら、織斑君って服とか色々着こなしてるし、ファッションセンス抜群じゃない?絶対良い写真が出来るよ??」

 

「まあ、考えときます。」

 

とりあえず差し出された名刺を受け取ってポケットにしまう。

 

「んじゃ、俺はこれで。それじゃ。」

 

(まあ、実際は誘う様にもう言っちゃったんだけど、別に良いよね?)

 

 

 

 

 

 

日が暮れ、夜が訪れ始める。マンションの前に一台の赤いドゥカティが停車していた。竜はバイクに凭れ掛かりながら辺りを回る。

 

『照井課長、本当にやるんすか?ストーカー被害なんて被害妄想なんじゃないスかねえ?前にも被害届を出されて暫くは張りましたけど、何も無かったじゃないスか。』

 

耳に付けたトランシーバーのイヤホンに真倉の欠伸混じりの気怠そうな声が飛び込んで来た。

 

「真倉。それだからお前は左達にナマクラだのマッキーだのと呼ばれて嘗められるのだ。今度からは皆にそう呼ばせた方が良い様な気がするのは俺だけだろうか?」

 

『ちょちょちょ、ちょっと課長、そりゃ無いですよ。分かりました、やります、やらせて下さい。』

 

「ドーパントである事は左達が確認してくれたから間違い無い。集中しろ。」

 

『了解です。でも、妙にやる気満々ですよね?』

 

竜のこめかみに一筋だけ細い青筋が立った。トランシーバーの向こう側で憎たらしいにやけ面をしている刃野を容易に想像出来るからだろう。左手に持った空の缶コーヒーが凄まじい握力によって粘土の様に拉げて潰れる。

 

「所長が調査をしてくれと頼んだ以上、俺はやるだけだ。調書の写しも彼女の手で事務所の方に届くだろう。刃野刑事、上を警戒しろ。左達が調べた所、このドーパントは夜行性で空を飛べる。」

 

『分かりました。』

 

「二人共、連絡を怠るな。」

 

超常犯罪捜査課の三人は所轄の私服警官を何人か連れて被害者四人のアパートを張っていた。カバー出来ないもう一つの建物は翔太郎が前もって連絡し、そこに張り込んでいる。

 

「んー・・・・」

 

と言っても、翔太郎はバットショットが中継する景色をスタッグフォンで見ているだけなのだが。竜が張っている建物の屋上には念の為(本音は竜の側にいたいだけ)と言う事もあり、亜樹子がデンデンセンサーと竜から拝借したビートルフォンで辺りを見回し、警戒している。

 

『ビービービービー!!!!』

 

突如デンデンセンサーが警報を発する。

 

「う、うわぁ?????!!!」

 

情け無い悲鳴を上げながら逃げ惑い、震える手でビートルフォンにギジメモリを差し込んだ。

 

『Beetle』

 

ライブモードのカブトムシに変形したビートルフォンはデンデンセンサーが触覚から放つ光に向かって回転しながら突貫した。

 

『目障りな虫がよぉ??!!』

 

闇の中から悪魔を彷彿させる黒いしなやかな一対の翼を持つヴァンパイア・ドーパントはビートルフォンを鬱陶しそうに弾き飛ばし、亜紀子を掴んで噛み付こうとしたが、

 

『Trial!』

 

ビルを垂直に走って来たのか、雲に隠れた朧月をバックに、青きアクセル、アクセルトライアルが上空からのキックでヴァンパイア・ドーパントを蹴り飛ばした。

 

『ンゴァッ!?』

 

仮面の奥なので幸い見えないが、竜は今凄まじい形相を浮かべている。もしそのまま素顔を晒していたら大抵の人間は泣いてしまうだろう。

 

「りゅ、竜く?ん・・・・!!」

 

「所長、逃げろ。さあ、振り切るぜ!」

 

『仮面ライダーだと・・・・!?ちっきしょう!!邪魔すんな!』

 

「断る。」

 

ヴァンパイア・ドーパントの鉤爪を持ち前のスピードで回避し、引っ下げたエンジンブレードの刃を上段から叩き付けた。

 

「貴様の罪状はストーカー行為、器物損壊、吸血による殺人未遂、そして婦女暴行罪だ。メモリを捨てて大人しく逮捕されれば良し。でなければ貴様を徹底的に痛めつけて、絶望と呼ぶのも烏滸がましい程の絶望 じごくを見せてやる。」

 

『ざっけんじゃねえぞ、てめえ!』

 

今度は空中からの急降下でアクセルトライアルの肩を鉤爪が捉える。が、今のアクセルは怒りでとんでもない量のアドレナリンを分泌している為か、痛がる素振りすら見せない。

 

「人の妻に手を出す貴様のゴールは絶望ではない。地獄の、最下層だ!!」

 

そう言いつつ、アクセルトライアルは地面と垂直になる程打点が高い蹴りを放ち、その蹴りは男では当たってはいけない急所を足の甲が的確に捉えた。

 

『オブゥッ・・・・くぅ、ぅおぉ・・・・・グッ・・・・」

 

アクセルトライアルはスピードに重きを置いている為、一撃の威力は低いが、ヴァンパイア・ドーパントを痛みに身悶えさせるには十分な威力を秘めていた。愛と怒り故のパワーである。

 

「確か、ヴァンパイアは日の光を浴びれば死ぬんだったな。流石にそれは出来んが、代わりにコイツをくれてやる。」

 

顔を踏みつけ、ヒンジから二つに折れた事で現れたエンジンブレードのスロットにメモリを差し込んで閉じると、グリップのトリガーを引いた。

 

『Engine! Electric!』

 

そして今度は放電するエンジンブレードの峰を頭に叩き付ける。

 

『ウギャアアアアアアアアア!!!』

 

「まだだ。」

 

『Steam!』

 

今度は摂氏数千度の蒸気を刃先から発射し、体中に浴びせた。

 

『アチャチャチャチャ、アチャッ!お前只の鬱憤晴らしだろコレ!?』

 

『Accel!』

 

図星なのか、無言でトライアルメモリをアクセルメモリと交換し、バイクハンドルを模したアクセルドライバーのパワースロットルを捻った。青かったスリムな体が再びゴツく、赤い色に変わって行き、仮面のフェイスフラッシャーもオレンジから青に戻る。

 

「俺に、質問するな。」

 

そしてマキシマムドライブを発動。

 

『Engine! Maximum Drive!』

 

「貴様の劣情塗れの心臓を貫く杭だ。じっくりと味わえ。」

 

そして至近距離からのエースラッシャーでメモリブレイクを決めた。

 

「先程も言ったが、絶望ではなく地獄の最下層がお前のゴールだ。」

 

そう言いつつ、変身を解除するとドーパントだった男を手錠で欄干に縛り付けた。よく見ると、警察官の制服を着ている。

 

「お前・・・・警官だったのか・・・・?!」

 

男はやせ細った青白い不健康そうな男で、竜の(八割は個人的な恨みが理由の)制裁を受けた所為で制服がボロボロになっているが、間違い無く制服警官の服装をしていた。

 

「くそぉ・・・・糞糞 糞糞 糞糞 糞糞 糞糞 糞糞 糞糞 糞糞!!!!!!何でだよ!!」

 

顔を涙と鼻水と顔を踏まれた所為でひん曲がった鼻から流れる血で顔をぐしゃぐしゃにしながら悪態をつき続けた。

 

 

 

 

 

「道理で警察が捕まえられない訳だ。内部の犯行だったら、情報も筒抜けだしな。まあ、可哀想だが動機があまりにも不純過ぎるよなあ。幾らお見合いで連戦連敗だからって・・・・」

 

報告書を自前のタイプライターで打ち終わった翔太郎はビリヤードに興じながらそう零す。竜は自分の番を待ちながらボールの位置と次の標的を見定める。

 

「確かに、根も葉も無い逆恨みだねえ。だが、彼は元々人付き合いが苦手らしい。第一印象が最も大事なお見合いなんて上手く行く筈も無いさ。それに、残念ながら彼の顔はあまりにも貧相過ぎる。同情の余地は充分あると思うけど。」

 

フィリップは本のページを捲りながらボードに向かってダーツを投げつける。どれも寸分違わず20のトリプルに命中した。

 

「だが、あいつの所為で警察のメンツはかなり潰れてしまった。法の番人である警察官がガイアメモリで犯罪を犯すなど・・・・」

 

竜は残ったボール四つとキューの角度を調整しながらそう吐き捨てた。

 

「断じて許さん。所長も後一歩で殺される所だったぞ。」

 

「確かにそうだが、あれはやり過ぎだろう流石に?あいつの顔見たか?鼻が拉げてたぞ?お前、絶対顔踏んだろ?」

 

翔太郎がそう言い終わるのと、残り四つのボールがポケットに沈むのはほぼ同時だった。

 

「イヤッホ???イ!!報酬ゲ???ット!大漁じゃ大漁じゃ!!流石は太っ腹、言い仕事したって感じ。」

 

静かで渋いムードをぶち壊す大阪弁で亜樹子が扉をバンッと開いた。右手に万札がかなり入った封筒を握り締めながら。

 

「亜樹子ぉ??!!てめえ空気を読みやがれ!今スッッッゲええシリアスな空気だったんだぞ?!ぶち壊す奴があるか!」

 

「左、勝負は俺の勝ちだ。約束通り、次回バイクの給油をする時は支払いはお前が持て。」

 

「な、何?!あ”???????!!おい待て、照井、まだだ。三回勝負だ!!!!」

 

何か最後の最後まで色々と散々な翔太郎である。

 

「フッフッフッフ??、いっくん、待っててね。もうすぐプレゼントが届くからネ♪」

 

一方、リボルギャリ?の格納庫では、束が完成した新しいガジェット、複製したメモリ、そしてシャッフルメモリが幾つか入った袋を持たせて外に解き放とうとしている所だった。

 

『Ptera』

 

白いギジメモリからウィスパーが鳴る。

説明
今回は照井課長が大暴れします。今回はギャグありです。では、どうぞ。
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インフィニット・ストラトス 仮面ライダーW 一夏チート エターナル ヒロインは更識姉妹 白式はナシ オリジナル展開 オリキャラ 性格改変 

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