真恋姫無双〜年老いてContinue〜 序
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作られた外史──。

それは新しい物語の始まり。

終端を迎えた物語も、望まれれば再び突端が開かれて新生する。

物語は己の世界の中では無限大──。

そして閉じられた外史の行き先は、ひとえに貴方の心次第。

 

さぁ。

 

外史の突端を開きましょう──。

 

そう、終焉を迎えたその物語も、望まれれば、再び・・・。

 

この声、俺が死にかかったあの時に聞こえた声。

華琳を助けようと心に決めるきっかけになった声。

そして、ようやく思い出した。

俺が、目が覚める前に。

あの世界に行く前に聞いた声…。

 

 

「ご主人様は、最後の最後に望んだわん、あの外史に留まりたいって。

 だからまだ、閉じてはいないのよん。」

 

その声の主が近くにいる。

俺を、あいつらにあわせてくれた、その主が…

 

「でも寝坊はだめなんじゃなぁい?

 起きない王子様には姫の接吻が…」

 

全身を悪寒が貫いた。

まずい気がする。

というかまずい。

早く起きないと…

 

すべての意識を動員して、重たい瞼を開いた。

 

目の前には、筋肉の化身が降臨していた。

 

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………

………………

 

「俺は、北郷。それは大丈夫。

 あの時に別れを告げた。それも大丈夫。

 じゃあ疑問点。ここはどこで、あなたは…だれ…でしょうか?」

 

北郷は思わず敬語で、その筋力の権化と言わんばかりの男に

 

「失礼ねぇ!漢女を捕まえて男だなんて地の文だって容赦しないわよん!!!」

 

漢女に聞いた。

 

「そうそう、それでいいのよぅ。

 私は貂蝉。有り体に言えばこの空間の管理人みたいなもんねぃ?

 そしてここは世界の狭間。思いを遂げた外史の麓。

 ご主人様の世界と、あの世界の間にあたるわね。

 それにしても、今回のご主人様はまた一際男前ねぇ…落ち着きが違うとこうまで違うのね?

 やっぱり他のご主人様もこれくらい…いやいや、ダメよ貂蝉!浮気なんて乙女のすることじゃないわ!」

 

北郷は、混乱している。

 

「混乱するのも無理ないわね。私とご主人様が最後にあったのはご主人様がこの世界に来るちょっと前なんだから。」

 

北郷は、まだ混乱している。

 

「まぁそれはそうとして、いそがなくていいの?

 運命の女神なんて胡散臭い女のことなんか信じていていいの?

 あの扉、すぐに閉じちゃうわよ?」

 

北郷は、混乱している。

しかし、やるべきことはわかった。

 

「そうか。まだ混乱して…いや、思い出した。

 お前があの世界に連れて行ってくれたのか。

 そして・・・あそこに戻れるのか。」

 

「ちょっと違うわ、ご主人様。あの外史はあなたが望んだ世界なの。

 全部とまでは言わないけれど、きっかけはご主人様の望みから。そして、その行く末も。

 あの結末も、ご主人様が望んだ形に近かったでしょ?

 もちろん、全部が全部望みのままではないわ。そんな都合のいいものではないんだけどね。

 でも、戻れる。ご主人様は戻れる。

 閉じた外史の修正も、最後の最後でぎりぎりセーフだったわん♪

 滑りこみも滑り込み、それでも間に合ったことには変わりないわ。」

 

「・・・ふむ。ってことは、俺が最後にあんたにあったのはそこじゃないだろ。

 最初に死に損なったあのときに、一度あってる。

 たすけてくれてありがとうな。」

 

目の前には、目のくらむほど真っ暗な道があった。

 

「…ご主人様、その道の先に、後悔はない?」

 

「俺がなんであんたのご主人になったのかはわからないけど。

 そもそもの話、あんたの口ぶりからして、あの世界を始めたのも、あの結末を一度願ったのも俺で、その続きを選ぶのも俺なんだろう?

 じゃあ、いって後悔しても、俺の責任だけどさ。

 約束守れなかった俺なんかが、行く前からそんなこと考えたら。

 勝手に消えてごめんなさいじゃ、あいつらに怒られちゃうよ。」

 

振り返らずに、答える。

 

「…そう、それで正解よ。でも、ごめんなさい。あの日のあの場所に戻してあげることはできないわ。

 そして、いつ頃戻れるかも定かじゃないの。

 ご主人様をこれからあの世界にかえしてあげるけど、あの子たちと同じだけの時間を過ごしてもらうわ。

 でも、今回のご主人様ったらちょっとカッコいいからおまけもつけてあげる。

 ちょっと修正が間に合わなかったお詫びだと思って受け取ってちょうだい。

 そのまま振り返らずにいくことよ。あの子を…笑わせてあげて。」

 

「上出来じゃないか?ありがとうな、貂蝉・・・だっけ?

 勝手に消えて、ごめんなさいじゃ、みんなに殺されちゃうよ。

 謝る機会をくれたんだ。感謝こそすれ恨みはしないさ。

 俺の世界じゃ貂蝉っつったら絶世の美女らしいけど。

 なるほど、国が傾くほどの気遣い漢女じゃないか。あんたの本当のご主人にもよろしくな。」

 

そのまま、真っ直ぐ、歩きだした。

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その背中を見送る漢女は、誰ともなしにつぶやく。

 

「あの子を。あの子たちを。ずっと笑わせていたい。

 それがご主人様の望んだものでしょう。

 すぐに返せない理由はついたらわかるとおもうけど。

 だって、あんな別れ方してすぐに戻ってしまったら格好つかないじゃない?」

 

外史の扉は、再び開かれた。

 

 

説明
このお話は、あのお話のいわば後日談。
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コメント
>スターダストさん コメントありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。引き続き、よろしくお願いします。(たくましいいのしし)
>nakuさん コメントありがとうございます。そこまではいかないかな、と。引き続き、よろしくお願いします。(たくましいいのしし)
>げんぶさん コメントありがとうございます。もう少しだけ続きます。よろしくお願いします。(たくましいいのしし)
続編!?うれしいじゃねえかよwwww(スターダスト)
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