インフィニット・ストラトス 受け継がれる光の絆 Episode.24 再戦 −リベンジ−
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「・・・ここは?」

「気がついたか」

ラウラは見覚えのない天井を見上げていた。ここは保健室であり、自分が寝ているベッドの横には千冬が丸イスに座っていた。

 

「何が・・・起きたのですか?」

ラウラは千冬の方に目を向ける。答えてもらえるようにしっかりと目を見る。

「一応、重要案件である上に機密事項なのだがな」

 

少し考えてから千冬は話し始めた。

 

「VTシステムは知っているな?」

「はい・・・。正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。過去のモンド・グロッソの部門受賞者の動きをそのままトレースするシステムです。しかし―――」

「そうだ。IS条約でその研究・開発・使用、全てが禁止されている。それがお前のISに積まれていた」

「それは・・・本当ですか?」

「巧妙に隠されてはいたがな。それが何かの原因で発動した」

「原因・・・」

ラウラはファウストの事を思い出した。

「私が・・・望んだからですね」

 

自分が千冬のように強くなりたいと願ったからである。そのせいで闇に飲み込まれてしまったのだ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ」

「はい・・・」

「お前は誰だ?」

「え?わ、私は・・・」

 

いきなりの質問にラウラは答えることができなかった。

 

「誰でもないのなら、ちょうどいい。お前は、これからはラウラ・ボーデヴィッヒだ。お前は、お前でしかない」

「え?」

 

千冬が、自分を励ましてくれていることが意外だった。あまりにも意外で、何も言えなくなってしまった。そして千冬はイスから立ち上がり、保健室を去ろうとする。

 

「ああ、それから」

 

ドアに手をかけたところで、何かを言おうとする。その横顔は、やはり何かを心配しているような顔だった。

「お前は私になれないぞ。あいつは、あいつ自身だからな」

 

千冬はそう言って保健室を後にした。

 

「・・・・」

ラウラは顔を窓の方に向け夕日を見た。とても綺麗な夕日だった。ラウラは自然に手を夕日に伸ばした。

『諦めるな!』

一夏の言った言葉が蘇った。

「あいつは闇の中ら私を救ってくれた・・」

ラウラは自分の手を見た。彼女の今の心の中には闇は存在しなかった。

 

「フフ・・・」

 

急に笑いがこみ上げてくる。とても清々しい気分で、とても心地よかった。

 

 

廊下に出た時、通信端末が鳴り千冬は端末をONにした

『織斑先生』

真耶が連絡して来た。

「山田先生か」

『ボーデヴィッヒさんの容態はどうでしたか?』

「ああ、見た限り大丈夫だった」

『そうですか。それはよかったです』

「それで、襲撃してきたアレの事はわかったか?」

『いいえ、わかりません。ただ分かるのは・・・』

「アレが一夏の持つ光と関係してる事だな」

 

 

 

その夜、食堂では

 

『トーナメントは事故により中止となりました。ただし、今後の個人データ指標と関係するため、全ての一回戦は行います。場所と日時の変更は各自個人端末で確認の上―――――』

 

トーナメント中止の知らせが流れていた。

「・・・・」

一夏はラーメンの卵を突きながら考え事をしていた。

 

 

『ファウスト』

 

 

『貴様の影だ』

 

 

『お前と言う光が、私と言う影を生み出したのだ』

 

一夏はファウストの事を思い出していた。

 

「一夏、早く食べないと麺が伸びるよ」

「あ、そうだな」

シャルルの言葉に一夏は伸びかけた麺を食べた。そんな二人を遠くから見ている女子たちがいた。

一人一人なにか言ってた。

「優勝・・・チャンス・・・消えた・・・」

「交際・・・無効・・・」

「・・・・うわああああんっ!」

女子が数名、泣きながら去っていく。

「何だろう?」

「さあ。ん?」

一夏が振り向くと、そこには

「箒?」

箒がいた。なにか不安そうな顔をしている。一夏は箒の所へ行った。

「箒」

「・・・・(ピクッ)」

「先月の約束なんだけど――――」

「言わなくていい」

「は?」

「お前が巨人だと言う事を知ってから考えたんだ。お前は皆を守る為に戦っているんだ。そんなお前を私一人に付きあわせる訳にはいかないからな」

箒は少し残念そうな顔で言った。

「だからこの約束は、戦いが終わってからまた改めてだ」

「箒・・」

「じゃあな」

箒はそう言って去って行った。

「・・・戦いが終わってから、か」

「一夏、どうしたの?」

「いや、何でも」

「あ、織斑くんにデュノアくん、ここに居ましたか。さっきはお疲れ様でした」

「山田先生こそ。ずっと手記で疲れなかったですか?」

「いえいえ、私は昔からああいった地味な作業が得意なんです。心配には及びませんよ。そうそう、それよりも朗報です!なんとですね!遂に遂に今日から男子の大浴場使用が解禁です!」

「え!でも確か来月からじゃ・・」

「それがですね、今日は大浴場のボイラー点検があったので。もともと生徒たちが使えない日なんです。でも点検自体は終わったのでそれならお二人に使ってもらおうという計らいなんですよ!」

「そうですか。ありがとうございます、山田先生」

「あの・・山田先生、僕少し調子が悪いので今回は遠慮させていただきます」

「そうですか。では私は先に行って鍵を開けて待ってますから二人は着替えを持って来て下さい」

 

小走りで食堂を去っていく山田先生。

 

「いいのかよ、シャルル」

「いいよ一夏。一夏はゆっくりしてね」

「まあ、そうさせて・・・」

一夏はポケットからエボルトラスターを取り出した。点滅するように光っていた。その時

 

 ズドオオオオォォォォォ

 

突然、建物が揺れた。

『緊急事態発生。生徒の皆さんはすぐにシェルターに避難してください』

避難放送が入った。

 

「入る前に一汗掻かくか」

 

 

「山田先生、状況は」

千冬がモニタールームに入ってきた。モニターにはバグバズンが映っていた。

「生徒は全員シェルターに避難。教員達が向かってます」

モニターに教員達がバグバズンを戦ってる映像が映し出された。

「アイツ、飛べないのか?」

「え、どう言う事ですか?」

「アイツの羽を見てください。羽がボロボロです」

「もしかして・・・」

「おそらく前回の戦闘のダメージが残っているのでしょう」

 

 

一夏は森の中を走っていた。

「ウオオォォ!」

一夏はエボルトラスターの鞘を抜き、天に掲げた。

 

 

 

「ここから先に行かせるか!」

「避難は!?」

「完了してます!」

「政府からの応援はまだなの!?」

教員達がバグバズンの進行を阻止していた。その時、バグバズンに向かって紅い玉が直撃し、バグバズンは倒れた。光が晴れるとそこにはネクサスが立っていた。

「アレは・・!」

「あの時の巨人!!」

 

 

千冬と真耶もモニター室でそれを見ていた。

「織斑くん!」

「一夏、頼むぞ」

 

 

「シュア!」

ネクサスはジャンプしてバグバズンに飛び蹴りを浴びせた。バグバズンは倒れるも、すぐに起き上がりネクサスに向かって突っ込んだ。ネクサスも突っ込み、二体はぶつかり合った。二体は押し合ったがネクサスはその力を利用し巴投げでバグバズンを投げ飛ばした。

「ヘァ!」

ネクサスは起き上がりバグバズンに向かった。しかしバグバズンはいきなり穴を掘り始め、穴を掘るとその中へと消えていった。

「シュア・・・」

ネクサスはその場に立ち止り周りを見渡した。周囲には不気味な風が吹いた。

 

 ゴゴゴ・・・

 

「ヂェア!?」

 

その時、ネクサスは自分の足元を見た。その瞬間土が舞い上がりそこからバグバズンが現れた。バグバズンは穴から出て来た勢いを利用し、ネクサスに突進した。

「ヂェア!!」

ネクサスはそれを喰らい倒れた。ネクサスは直ぐに立ち上がるがバグバズンは爪で連続攻撃をしてきた。

「ヂェア!!」

ネクサスは倒れ、バグバズンが迫って来た。バグバズンは爪を振り上げた。ネクサスの脳裏にバグバズンとの最初の戦いが蘇った。バグバズンが爪を振り下ろそうとしたその時、

 

 ドドドドドドッ!!

 

何処からか砲撃が飛んで来てバグバズンの爪に集中的に当たり爪が折れた。ネクサスは砲撃が飛んで来た方を見ると、ISを纏ったセシリア、鈴、シャルルが居た。

「間に合いましたわ!」

「応急処置だけど難とか間に合った!」

セシリアと鈴のISをよく見ると所々まだボロボロだた。三人はバグバズンに向かい攻撃を続けた。

「今だよ!」

シャルルがそう言うとネクサスは頷き立ち上がった。ネクサスは左腕をエナジーコアに当てジュネッスに変わった。

「シュア!」

ネクサスはバグバズンに突っ込み、パンチやキック、ウラ拳、エルボーなどの攻撃のラッシュを浴びせた。ネクサスの打ち込んだキックを喰らいバグバズンは倒れた。ネクサスは距離を離した。

「ジュア、シュ、シュアアァァァ・・・シュア、ジュア!!」

ネクサスは腕をL字に組みオーバーレイ・シュトロームを放った。オーバーレイ・シュトロームは起き上がったバグバズンに直撃した。

「グエエエエエエエエッ!」

バグバズンは光の粒子となって消滅した。

 

「やったあ!」

「やりましたわ!」

セシリアと鈴は喜んでいた。

「やったね、一夏」

シャルルも笑いながら呟いた。

 

「シュア、フアアァァァ」

 

ネクサスは腕をクロスさせ光に包まれ消えた。

 

 

 

「はあ〜〜〜。疲れた〜〜」

一夏は今大浴場に居た。大浴場の設備は湯船大が一つ、ジェットとバブルのついた湯船が二つ、檜風呂が一つ。サウナ、全方位シャワー、打たせ滝までついてる。一夏も大浴場に入った時、驚きのあまり声が出なかった。一夏は今日の出来事を思い出した。ファウストの襲来、ラウラのIS暴走、バグバズンの再来。だが一夏がその中で一番考えていたのはファウストの事である。

(ファウスト・・。一体アイツは何なんだ・・?)

一夏が考えていると

 

 カラカラカラ・・・

 

扉の開く音がする。一夏が後ろを振り向くと

「お、お邪魔します・・・・」

「!?」

 

 ザボンッ!

 

目の前の物を見て一夏は湯船に沈んだ。湯船から顔をだしそこにいたのは。

 

「シャ、シャルル!?」

 

シャルルであった。その格好はタオルをまいてた状態だった。

 

「・・・あ、あんまり見ないで。一夏のえっち・・・・・」

 

「す、すまん・・・」

 

一夏はそう言って後ろを向いた。

 

「話があるんだ。大事なことだから、一夏に聞いて欲しい・・・・」

 

見るわけにはいかないので、シャルルに背を向けて話を聞くシャルルが近くに寄ってきて、一夏が背中を合わせる形になる。

「その・・・前に言ってたこと、何だけど」

「・・・学園に残るって話か?」

「そう、それ。僕ね、ここにいようと思う。一夏が守ってくれるって言ってくれたから」

「シャルル・・・」

「それに僕は一夏の力になりたいんだ。一緒に皆を守れるように」

シャルルは一夏を向いて。肩に手を乗せて体を寄せてくる。その時、シャルルは初めて気づいて。一夏の胸や背中に沢山の傷がある事を。

「一夏・・・この傷は?」

「・・この傷は全部ビーストに受けた傷だよ。殆どが始めの頃に受けた物だよ」

「ここまで沢山・・・」

「逃げ遅れた人たちを守るためだよ」

「もしかして一夏がISを普段から着てた理由って・・・」

「これを見られたくなかったから」

 

 

「ねえ一夏。お願いが有るんだけど」

「なんだ?」

「僕のことはこれからシャルロットって呼んでくれる?二人だけの時でいいから」

「それが本当の名前か?」

「そう、僕の名前。シャルロット・デュノア。お母さんがくれた、本当の名前」

「わかった・・・シャルロット」

「うん・・・よろしく」

 

 

 

 

翌日、朝のSHR、シャルロットはいなかった。

「み、みなさん、おはようございます・・・・・」

山田先生がふらふらしながら教室に入ってきた。

「織斑くん、何を考えているかわかりませんが、先生、怒りますよ・・・」

「その割にはまったく覇気がありませんよ」

「今日は、ですね・・・転入生を紹介します。転校生と言いますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと・・・じゃあ、入ってください」

「失礼します」

 

そして入って来たのは――――

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

シャルロットであった。しかも制服が女子のであった。

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。はぁぁ・・・また寮の部屋割りを組み立てなおす作業が始まります・・・」

山田先生が疲れたような顔をした

「え?デュノア君って女・・・?」

「おかしいと思った!美少年じゃなくて美少女だったわけね」

「って、織斑君、同室だから知らないってことは―――」

「ちょっと待って!昨日って確か、男子が大浴場使ったわよね!?」

教室が騒がしくなりそして

 

 バシーン!

 

刹那、教室のドアが蹴破られた。

「一夏ぁっ!」

そこに鈴が烈火の如く怒り一色で現れ、IS展開と同時に衝撃砲がフルパワーで放たれる

「死ねっ!!!!」

「うおっ!?」

衝撃砲がフルパワーで放たれた。一夏はそれをギリギリでかわした。衝撃砲が放たれた所は吹き飛んでいた。

「お前俺を殺す気か!!?」

「だまりなさい!!」

鈴が次弾を放った。しかしその衝撃砲は途中で止まった。そこにはシュバルツェア・レーゲンを展開したラウラがいた。

「助かったぜ、サンキュ。っていうかお前のISもう直ったのか?」

「コアがかろうじて無事だったからな。予備パーツで何とかした。」

「そうか・・・・むぐっ!?」

 

一夏がいきなり胸ぐらを掴まれ、ラウラに引きよせられ――――キスされていた

 

「お、お前は私の嫁にする!決定事項だ!異論は認めん!」

「・・・嫁?婿じゃなくて?」

「日本では気に入った相手を『嫁にする』というのが一般的な習わしだと聞いた。故に、お前を私の嫁にする」

「誰だお前に変な日本文化教えたのは?」

「私の部下で副隊長のクラリッサだ」

「その副隊長今すぐ連れてこい!!」

一夏とラウラがそんな話をしてる時、

「アンタねええええっ!!!」

気付いたら鈴が衝撃砲発射態勢に入っていた。

「待て!俺は悪くない!どちらかというと被害者サイドだ!!」

「全っ、部っ、アンタが悪いに決まってんでしょうが!!」

「くっ!こうなったら!」

一夏はポケットからボイスレコーダーを取り出した。スイッチをONにした。

 

 キイイイイィィィィィ

 

耳が痛くなるような音が鳴り響いた。クラスの女子達が耳を塞いだ。鈴も耳を塞いでた。

「くっ!あんた卑怯よ!!」

「今の内に!」

一夏はそう言って廊下の方に逃げたが既にセシリアが待ち伏せしてた。

セシリアの背中から黒いオーラのような物が出ていた。一夏は後ろに逃げようとしたが。

「一夏、何処にいく?」

刀を持った箒がいた。一夏は窓の方に近寄り下を見た。そして一夏は窓を開けて飛び降りた。

「なっ!?」

「待ちなさい!!」

 

 

「脱出成功・・」

一夏は無事に着地した。

「今の内に・・」

一夏は逃げようとしたが足元に大量の弾が飛んで来た。

「一夏、どこに行くの?」

リヴァイブを展開しディバイトガンナーを構えたシャルロットがいた。すると盾がパージして中から六九口径パイルバンカー『灰色の鱗殻』通称盾殺しが姿を現した。

「一夏!待ちなさい!」

「逃がしませんわよ!」

ISを展開したセシリアと鈴が迫って来た。シャルロットも盾殺しを構えて迫って来た。

「こうなったら」

一夏はポケットから何かを取り出した。缶のような物でピンが刺さってあった。一夏は三人が近づくのを待った。三人が十分近づいた時に一夏はピンを抜き缶を上に投げた。すると缶は光放った。

「うわっ!?」

「こ、これは!?」

「閃光弾!?」

三人は光で目をやれて真っ直ぐ突っ込んだ。一夏が避けると三人は激突して気絶した。

「まず三人・・」

「一夏!覚悟!!」

箒が刀を構えて突っ込んで来た。

「箒!ごめん!」

一夏は振り下ろされた刀を避けて箒の後ろに回り込んで首にチョップを打った。箒はそれを受け気絶し倒れた。

「さて」

一夏は倒れてる四人を見た。

「織斑先生にどう説明するか・・・」

 

その日のHRは文字通り荒れた。

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明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。(ザルバ)
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