fighting heart 1話 |
プロローグT 炎は燃えない
僕の見ている世界は黄金の炎に包まれていた。
僕にとって大切な家がその炎によって燃えていく。
幼い頃、よく遊んだもらった庭。
両親の笑顔が絶えなかったリビング。
それが全て燃えていった
跡形も残さず。
そのすさまじい炎の中、僕はただ一人燃えずに残ってる。
何故?何故?
僕はただ、悲しいって少しだけ思っただけなのに。
すべてが燃えてしまった。
僕以外の全てを。
友達が居た学校も。
いつも行く公園も。
僕に関わるありとあらゆるものが燃えた。
僕は周りを不幸にする。
僕が少しでも悲しいと思えば大切なものが燃え。
僕が少しでも泣けば周りの世界が燃えた。
やはり、僕を残して。
焼け跡には何も残らない。
楽しかった日々の残骸も全て燃えた。
もう、あの人の笑顔は見れない。
そうか、僕は炎なんだ。炎は周りを燃やすけれど自分は燃えない。
こうして、町は一晩で燃えた。
第1話 偽りの家族と小さな出会い
「おはようっ。」
元気な声が僕の耳に届く。
「・・・・・おはよう。」
僕はいつもどおりそっけなく返す。
場所は家の長い廊下。
僕の前には奈津が笑顔で歩いてる。
「義樹、もうすぐご飯だって秋さんが言ってたよ。」
「ああ、わかった。」
と僕は先ほどと同じようにそっけなく返す。
奈津は返事を聞くと自分の部屋に入っていった。
僕はそのまま下へ降りる階段へと向かう。
僕の名前は北下 義樹(14)。
先ほど挨拶したのが北下 奈津(14)だ。
僕は小さい頃に両親をなくし今の家族に養子として育てられた。
昔から僕は話をするのが本能的に嫌いで家族にもそっけない。
僕は巨大な階段をゆっくりと下りていく。
この家はかなり広く家政婦まで居る。
いわゆるこれが金持ちなのだろう。
今の両親は共働きでめったに家に帰らない。
普段、家には住み込みの家政婦通称”秋”と住み込みの庭師通称”為蔵”と後は奈津と僕しかいない。
ときどき、家政婦部隊が掃除しにやってくるが月に1度あるかないかである。
そんなことを考えているうちにいいにおいが広がってきた。
多分、秋さんの朝食だろう。
僕は食堂の扉を開く。
「ほむ、おいしい。」
奈津が食卓でパンをかじってる。
秋さんは少し離れたところで母親みたいな表情を浮かべてうっとりしている。
僕は何事もないように席にすわる。
そして、今日の朝食をみる。
食パンにスクランブルエッグにスープが並んでいる。
「・・・・・・いただきます。」
と食事の挨拶もそっけなく朝食にありつく。
「義樹、おいしいよね〜。」
と奈津はいつもと同じことを言う。
「ああ、うまい。」
「♪〜」
奈津は今日も機嫌がいいみたいだ。
ん?なにかおかしいなぁ。
何か違和感を感じた。
何故だろう・・・・・・。
「義樹さん。そんなにゆっくりでいいの?」
秋さんが長い髪をなびかせながら僕に近づいてくる。
「ああ、学校か。」
僕は食堂に取り付けられている時計を見て言った。
時間は8時を過ぎていた。
今日がいくら始業式だといってもこれは遅すぎだな。
僕は朝食を一気に押し込むと奈津に言った。
「・・・早くしないと遅れるぞ。」
桜が通学路を桃色に染めていた。
僕たちにとって最後の年度のはじまり。
しかし、そんな実感はわかない。
どうせこの学校はエスカレーター式だから。
よほどのことが無い限りは高校にあがれる。
僕は走るのをほどほどに桜を見物していた。
そうしていると前に制服姿の人が歩いているのが見えた。
多分もう、大丈夫だ。
僕は走るのをやめて歩き出した。
「よぉ、親友。」
学校の門をくぐると景気の良い声がした。
「ああ、おはよう。」
はいつもどおりの返事をすると声の主は僕に言った。
「はぁ、新学期早々つれないねぇ〜。」
「啓人といっしょにするな。」
僕は思っても無いことを口にする。
「それはありがとう。」
と啓人は僕の頭に手を乗せわしゃわしゃとする。
「・・・・・・別にほめてないのだが。」
と呟いたが時はすでに遅し。
啓人は何故か小躍りをしている。
あいかわらずわけがわからん。
彼は小宮 啓人。
何故か僕の親友をやっている奴だ。
周囲の視線が飛んでくる、多分新1年生の視線だろう。
「早くいくぞ。」
「そうだな。」
と僕達は並んでクラス表へと足を伸ばす。
「やぁった〜。今年も一緒だねっ。」
クラス表の前に行くと奈津が大声で喜んでいた。
奈津の隣には奈津の友達が二人ほどいて笑っている。
僕はこいつらと同じクラスでないことを祈った。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「・・・・!!」
クラス表を見ると僕はB組だった。
啓人もB組らしく僕に微笑を見せている。
ちなみに奈津達は・・・・・・。
・・・・・・B組だった。
あれ?何かおかしい。
朝から思っていたことだが何かがおかしい。
しかし、僕の心は変わらない。
そして、啓人の他愛もない話を聞きながら教室まで足を運んだ。
「わぁあ、ちぃちゃん。すごい。」
教室に入るとやっぱり奈津の声が聞こえた。
「はぁ。」
ため息が漏れる。元気ありすぎ。
僕は出来る限り奈津たちに気づかれないよう指定された席に座ろうとする。
「あ!!義樹も同じクラス?」
とやはりみつかった。
「ああ。」
と僕はそっけなく言う。
また、うざったい奴が来た。
「よっちゃんも同じなの?」
「義樹君、今年も同じクラスだね。」
と奈津のグループが集まってくる。
「その、よっちゃんはやめてくれっていってるだろうに・・・・。」
と呟くが彼女らには聞こえなかったようだ。
そのよっちゃんとは奈津の親友の”神崎 飛鳥”が使ってる愛称だ。
飛鳥は僕がこちらに来たときにはもう奈津の親友だった。
「よっちゃんよっちゃん。」
「はぁ・・・・・なんだ?」
と愛想無く答える。
彼女達も愛想の無い反応は普通だと思ってるので話は続く。
僕は話半分にしながら別のことを考える。
「義樹君、がんば。」
何ががんばなのかわからないがこいつも奈津の親友だ。
名前は”野美山 智春”。
こいつは確か、俺がこちらに来たときはクラスの代表をやっていて必要以上に声を掛けてくる奴だ。
ちなみに啓人とは赤ん坊の時からの仲らしい。
「啓人君もがんば。」
「あ、ああ。」
案の定、啓人は苦虫をつぶしたような顔になった。
昔から智春は啓人の秘密を握っていて少しでも啓人が逆らうとその度に啓人の秘密や秘話などを暴露する。
だから、啓人も逆らえない。
おとなしい性格に見えてかなり怖い奴だ。
しかし、僕はそれを表に出さない。
すぐに心の中でつぶす。
怖いと言う感情を恐ろしいと言う感情をすべて。
ニセモノへとかえる。
「あ、よっちゃん。そういえば・・・・」
と飛鳥は何か言ってきたがチャイムが鳴る。
途端に僕達は席に向かっていた。
始業式は順調に終わった。
新1年生に学園の案内など3年の仕事も終わった。
全てが無事に終わり僕は「ふぅ」と一息つく。
知らない生徒に向かって話すのは気が進まない。
まぁ、義務的に読むだけなら大丈夫だ。
用は気持ちの問題だ。
普段は喋らないでも必要とあらば喋るし話もする。
僕はそういう人間なんだから。
後は、HRのみである。
僕たちは規則正しく並べられた席に座りおのおの何かしている。
理由は先生が来ないからだ。
焦れた生徒は席から立ち上がり友人の席で話し込んいる。
僕は小説を読みながら先生を待つ。
不思議なことに僕の隣の席は空いていた。
担任の話によると都合で休みらしい。
「あ、義樹。」
僕の読書時間は奈津達によってつぶされた。
「・・・・・・」
僕は軽く無視する。
これがいつもの僕。
「義樹!!」
と奈津は耳元に大きな声で呼んでくる。
「なんだ?」
と鋭くにらみつける。
たいていの奴はこれでびびってくれるが奈津はびびらない。
「今日、まっすぐ家に帰るの?」
「いや、買いたいものがある。」
いつもより優しく返してやる。
こうすれば奈津は引き下がる。
だから、僕は嘘をつく。
特に買いたいものなど無いからなぁ。
「そう、なら。飛鳥とちぃちゃんの買い物に付き合ってあげて。」
「嫌だ。」
今度は僕でも即答で答える。
「なんで?どうせ買い物って言ったら商店街行くんでしょ。」
「嫌だ。」
嫌悪感を包ませながら僕は言う。
奈津は困ったような仕草を見せ言う
「はぁ、困った家族だこと。」
「!!」
その言葉に僕は怒りを募らせる。
しかし、それが顔に出ることが無かった。
いや、心のどこかでその怒りを引き止めたのかもしれない。
明らかに空気が変わる。
いつも、反論する僕が答えない。
それは場の空気を悪くした。
「すまない。やっぱりまっすぐ帰るよ。」
僕はすぐに取り繕う。
どんなことがあっても僕の仮面ははがれてはいけない。
それだけが僕の生きる意味。
その後、担任が教室に入ったことで話は途切れた。
そして、今日も問題なく終了する。
まっすぐ帰るとは言ったもののあの屋敷に帰る気も無く僕は散歩をする。
商店街は奈津たちが居るので僕は桜公園へ向かう。
桜公園はこの町で最も桜が多い公園で昼間や夜などは人がいっぱい居るが夕方や朝には少ない。
僕は桜公園の奥へ向かう。
この辺は昔、山だったので桜公園の奥のほうは崖のようになっている。
でもそれは少し前の話で今は舗装されてコンクリートの壁になっている。
フェンスから町の景色を眺める。
下を見ると怖く感じるが眺めると美しく感じる。
「!!」
途端に人の気配を感じる。
僕はぱっと振りむく。
すると、金髪の少女が遠くからこちらを見つめていた。
僕は少しにらんだ。
少女はそれにびびったのかどこかへ行ってしまった。
再び目線を町に向ける。
美しい町だな。
夕日を背景にして町はさらに美しく見えた。
「!!」
また、人の気配がした。
僕は振り向く。
が今度は誰もいない。
「気の所為か・・・・・。」
と呟く。
仮面がはがれないようにしっかりと支えてやる。
再び町に目線を向ける。
何故かホッとする。
この景色を見ていると心が和む。
「・・・!!」
また、人の気配がするが僕は動かない。
じぃ〜と町を眺める。
「ここ良い?」
隣から声が聞こえた。
僕は少し驚きつつ隣を見る。
隣には先ほど後ろに居た少女がいた。
・・・・・いつのまに?
疑問が浮かぶが今は気にしていられない。
「ああ。」
少し、混乱していたが短く答える。
さすがに知らない人とは話をするのはいやだ。
僕は早々に立ち去ろうとして少女を見る。
少女はフェンスから見える町をじぃ〜と見つめていた。
金色の髪が夕日に映えて僕は少女を見つめてしまう。
少女の髪は綺麗なツインテールでまとめられておりそれがまた視線を動かす要因になった。
「綺麗だね。」
と少女が言ってきた。
僕は少女を見ながらするっと言葉が出た。
「確かに。」
僕から見ても少女は綺麗だと思える。
夕焼けに染まる空と少女は異常に映えた。
金髪の光沢が風によって綺麗に靡く。
僕の視線に気づかないのか少女は町を見続ける。
身長は僕よりか少し低いだろうか?
・・・・・・・・。
といけない。仮面がはがれてしまいそうだ。
僕は帰るべくフェンスを後ろに向ける。
そして、言った。
「じゃあな。」
これが僕に出来る精一杯の譲歩。
少女はその言葉で振り向いたみたいだが僕は家に向かう。
「また、遭えるといいね。」
背後でそんな言葉が聞こえる。
でも、僕は遭いたくない。
だって、壊れてしまうから。
彼女と一緒にいたら壊れてしまいそうだから。
日常が、大切な場所が。
昔みたいに・・・・・。
この日、僕の仮面は壊れかけた。
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題名にものすごく悩んだ作品です。 |
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