義輝記 伏竜の章 その九
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【二号からのお願いの件】

 

?黄巾賊大天幕内?

 

俺と華蝶仮面二号(貂蝉)と共に、大天幕に入り小太郎達が戦っている場所へ向かっている! 無論、走って!!

 

二号「……颯馬ちゃん、順慶ちゃんってあんなに強い将なの?」

 

俺は、頭を横に振る。

 

日の本に居た頃は、似合う言葉は『可憐』、『柔和』………少しだけ『狂気』が入るか? 

 

とても武将とは思えない外見であり、武においても秀でる事もなかった気がする。 はっきり言えば、文官に近い…。

 

よく、俺の政務とか手伝ってもらっていたから。

 

だから、程遠志達より聞いた時は、全然信じられなかった……。

 

趙子竜の槍捌きを軽々避けて、別の将との連繋をも打ち破る…。

 

しかも…賊とはいえ、幼子が虫を殺すが如く、容易く命を奪う行為を

犯す事を信じれずにいた…………………。

 

二号「……そう。 わかったわん!」

 

……驚き足を止めて、貂…ゲフン、二号の顔を見る!

 

優しく笑いながら、人差し指を上げて左右に振る。

 

二号「颯馬ちゃんのお顔に全部書いてあるから問わないわ! ほら! こんなとこで立ち止まっている暇なんてないんだからん!!」

 

この容貌にして、結構細かい所まで気に掛けてくれる人格者。

 

月様達から慕われるのも、よく分かるよ…………。

 

後、少しで例の部屋まで到着する前に、突然二号が立ち止まり、俺に話かけてきた。 緊張して構えてしまった俺は悪くは無いはずだ!!

 

二号「颯馬ちゃん、私からの頼み、聞いて貰えるかしらん?」

 

俺は、拒否権があるかどうか、まず確かめる。 

 

二号は笑いながら頷き、またとんでもない事を言い出した!

 

 

☆★ 二号(貂蝉)の呟き ★☆

 

私達、管理者の話をこの世界に来る時にしたと思うの。

 

で、この世界は、颯馬ちゃんも知っている通り『銅鏡が導いた別世界の後漢時代』。……華水や月ちゃん、詠ちゃん、霞ちゃん達が過ごしてきた大切な場所。

 

だけど、この世界があると困る管理者も居るわけ。 

 

私や卑弥呼は、この世界に大事な人がいるから残したいと考える『肯定者』側の管理者。 そして、颯馬ちゃんの世界よりこちらに来た二人は、間違いなく『不定者』側の管理者が関わっているわぁん!

 

『不定者』は、この世界の存続を認めない……。 この世界その物を破壊する事を目的とする者達。 誰だか予想はついてるけど……。

 

…そんなわけで、『管理者』対『管理者』だから、万が一もあるの。

 

そんな事になったら………華水の遺言の継続、お願いしたいのよ。

 

☆★ 終了 ★☆

 

 

月様の乳母、李儒さんの最後の言葉『お嬢様の事、お願いね』…。

 

俺は、そんな二号に小さい声で怒鳴りつけた!

 

馬鹿を言うな! 誰もそいつの代わりになんか成れないんだ!

 

アンタが死んだら肉親を完全に失う! 必ず生きて戻れ!!

 

もし………そんな事になれば、俺で良ければ、全力で支えてやる!

 

二号は、嬉しそうに笑っていたが……もしかして、俺は、とんでも無い事を誓ったのかも知れないと、後で、後悔した…………。

 

◆◇◆

 

【武田信玄の思いの件】

 

?黄巾賊包囲網の柵外側?

 

信玄「柵を登ってきた者は、容赦なく突き刺しなさい! 甘い考えを持って助けようとすれば、私達に災いが降りかかりますよ!!」

 

華陀なる名医のお陰で、生を受けてから始めて五体に気力が充実するという気分を味わう。 ………いつも、信廉に苦労を掛け、あの子の人生を犠牲にしてしまう愚を犯した私は、今度はあの子の役に立ちたいと決めていた………のだが。

 

……愛する殿方も同じ『天城颯馬』………。 地位でも金でも譲れる所は譲りますが、颯馬だけは、颯馬だけは! 

 

ぜっっっったいに譲れません!!

 

伝令兵「報告………うわぁぁー!!」

 

信玄「………何を驚いているのです?! 戦場を前にして冷静さを保たねば、生き残る事など出来ませんよ?!」

 

……………私の姿を見て驚くなど無礼な! 

 

伝令兵「も、申し訳ありません! 背後に猛虎の幻影が見えた物で!」

 

信玄「何を馬鹿げた事を! して、報告をなさい!!」

 

伝令兵「はっ! 天城様よりの伝令! 『黄巾賊大天幕にて強敵来襲。張角達は無事保護、風魔様が殿(しんがり)で敵を抑えているため、応援を願いたし!』 との事です!」

 

信玄「それで、颯馬は?!」

 

伝令兵「はっ! 風魔様の救援のため、華蝶仮面二号と名乗る武人と共に大天幕に向かっております!」

 

信玄「………」 

 

★☆ 信玄の心中 ☆★

 

『またですか、またなんですか?! 人一倍他の将を心配するのに関わらず、自分の身は死地に迷いなく投じる、呆れたお人好し!

 

最初の天水付近の夜襲で報告を受けたとき、何人の姫武将が驚愕し、陰で嬉し涙を流した事か、貴方は分かっているのですか!!』

 

★☆   終了  ☆★

 

 

信玄「至急、月様にご相談したい事があると伝令を! こちらの兵の指揮を完了させ次第、向かいますので………!」

 

伝令兵「はっ!」

 

……武田家を降しただけでなく、私達姉妹の頑な心まで降した殿方。

 

貴方の身は、この『武田信玄』が守り支えましょう!

 

◇◆◇

 

【武田信廉の思いの件】

 

?包囲網中央部 出入り口付近?

 

信廉「…で、颯馬は、その武人と共に向かったのですか?」

 

義清「そうなのじゃ! 私達には、そこまで力量がないため、兄者を…颯馬を守れない…………!」

 

義清殿は、元敵の私に素直に心情を吐露する…。 涙を溜めて悔しそうな顔が、私の胸を締め付ける………。

 

甲斐と信濃の争奪戦で、長年の敵同士だった者が、こうして仲間となり、同じ殿方を愛する不思議な縁。

 

……みんな、貴方のお陰ですよ、颯馬! 

 

だから、私がまずしっかりしなければ! 姉上とは違う『武田信廉』の力で、この戦局を、仲間を、颯馬を守るのだ!!

 

…………私は、義清殿をあえて叱りつける!

 

信廉「『北信濃の勇将』と謳われる貴女が、何を女々しい事を!! まだ、私達には出来ることがあります! この包囲に支障が無いように動かなくては行けません!」

 

義清殿は驚いた顔をして、私を見つめる。 

 

そんな義清殿に、今度は微笑みながら、優しく声を掛ける。

 

信廉「…だから、義清殿の力も必要なんですよ。 一緒に颯馬達を助けましょう!」

 

義清殿は、何度も何度も、力強く頷いてくれた。

 

この後、部隊を二つに分けて、義清殿に退き口の守りを頼み、私が周辺の警戒を行う。 颯馬達の安否確認ともしかの援軍として。

 

後、伝令を放ち、こちらの情報を月様や道雪殿達に伝えた!

 

◆◇◆

 

【小太郎の生死、新たなる敵の件】

 

?黄巾賊大天幕内、張角達の部屋の前?

 

俺と華蝶仮面二号は、扉の前に立っている。

 

扉は頑なに閉じ、来訪者を拒む……っても、開けるけどね!

 

今は、物音もせず、静まり返っているがどうなっているのやら。

 

俺は、ゆっくりとドアの取っ手を掴み、開けようとした!

 

 

二号「危ない!!」

 

二号に腕を掴まれて、俺の身体は浮いて二号の方へ………!

 

     バキッ!!

 

頑丈な扉から、不似合いな華奢な手が、先程まで居た俺の位置に突き出ている……………?!?!

 

??「………颯馬、様…颯馬、様? 先程、こコに、気配があったのニ……………!  そこ、に、イラッシャル、の、ですカ!!」

 

扉を完全に破壊して出てきたのは、辛うじて『筒井順慶』だと判断できる者。 

 

綺麗な金髪で整っていた髪が、グシャグシャで色も白に近く、大きな目が印象的だった可愛い顔が、血だらけの皺だらけ。

 

いつも清潔感溢れる鎧を着用していたのに、刀傷らしく一文字の傷があっちこっち見受けられ、尚且つ大量の地や焦げた後が見える。

 

それでも、両手を突き出して、ヨタヨタとゆっくりとした足取りでこちらに、否、俺に向かい歩いて来る。

 

二号「貴女を近寄らせるわけには、行かせないわよぉん!」

 

順慶「……! じゃ、邪魔、するな! き、キんニく達磨!!」

 

二号「……口の減らない子には、お仕置きパンチ!!」

 

順慶が二号を、二号が順慶を殴ろうとしたそのとき、影が割り込む!

 

  シュッ! トッ!

 

導師の服を纏い短髪の少年が、二号の攻撃を左手で受け流し、右手で順慶の攻撃を受け止める! 

 

順慶は目を見開き、嬉しそうに言葉を紡ぎ出した。

 

順慶「あぁ?! …『ろ』、『老師』申し訳、ありマ…セ……ン」 

 

??「この馬鹿が! 「氣」の力を限界以上に引き出すなと、何回も説明しただろうが!! ………ったく、手を焼かす弟子だ!!!」

 

二号は、攻撃した手を引っ込め、その少年に対峙する。

 

二号「………やっと、出て来たわね『左慈』ちゃん。  ………『于吉』ちゃんはどうしたのぉ?」

 

左慈「へっ! あいつなら、お前らの足下だ!」

 

俺は慌てて、下を見る。……あるのは黄巾賊の酷たらしい死体のみ?

 

      ピクピク…………ムク!

 

颯馬「!」    二号「下がってぇ!!」

 

先程まで、ヒゲのオッサンだった死体が、動き出したと思えば……髪が肩まである眼鏡を掛けた少年になる!!

 

于吉「困りますねぇ、左慈。 後、数歩近づけば、この于吉があの異分子を殺害することが出来たのに………」

 

左慈「ふん! そんな策略を使わなくても、俺がこの手で殺してやればいい! お前のやり方は、まどろっこしいだんよ!! 」

 

気絶した順慶をお姫様抱っこして、左慈は于吉に喋る。

 

左慈「……それに、この場所で殺す気は、どのみち無いんだろう?」

 

于吉「そうですね。 もし、殺すのなら、もう少し手の込んだ仕掛けを作りますし…………フフフフフ!!」

 

嫌な笑い声を上げ、こちらを見る………。

 

カタカタカタ! カタカタカタ! ドン!

 

道雪「颯馬殿! 御無事ですか!!」

 

紹運「颯馬!!!」

 

于吉と言う導師が印を組むと、足下が丸い円を描き輝き出す!

 

于吉「……残念、時間切れのようですね。私達も戻りましょうか?」

 

左慈「援軍が来るのは分かっていたくせに。 まぁ、いい。黄巾賊も于吉の策略で暴走し、討伐される寸前……計画通りだ!」

 

左慈とやらは、順慶の顔に掌を当てると、掌が光輝く!

 

次の瞬間には、順慶の顔と髪が元通りになった…………。

 

左慈「貂蝉、次はその異分子達共々殺してやる!!」

 

そう一声上げて、左慈、于吉、順慶は……………消えた。

 

何だったていうんだ、あいつらは…っと! 

 

小太郎は! 小太郎!! どこにいる?! 

 

俺達は、先程、順慶が出てきた扉の部屋へ飛び込む!!

 

………中は、壮絶の一言………。

 

まずは、鼻につく血生臭い臭い…。 消し炭の臭いもする。

 

家具は真っ二つに割れ、辺りに人らしい肉片が飛び散っている。

 

床を見れば、血溜まりがあっちこっちに出来て、腕や足、内蔵や首が散乱状態。 ……正直、胃から酸っぱい物が込み上げてくる。

 

だが、小太郎の姿が…………どこにも見えない!!

 

二号も心配そうに、俺の探していない場所を見てくれている。

 

道雪殿は扉の外、紹運殿は扉の内で、先程のような敵が来襲しないか

警戒してくれている。 おなご二人をこのような場所に待機してもら

うのは、申し訳なく思いながらも、俺は捜し続けた………。

 

 

??「颯馬様……何を捜しているの?」

 

ふと、背中から声をかけられた…。 

 

颯馬「大事な、大事なモノを捜しているんだ……」

 

確か、傍にいるのは貂……いや、二号だよな?

 

??「…それは、そんなに大事なモノなの…?」

 

こんな可愛い声、していたか? それに捜すモノは同じだろう?

 

颯馬「………俺にとっては、大事な仲間なんだ!」

 

道雪殿? 紹運殿? 反射的に応えたてしまった後に、声の主を考え

たが……わからん? だけど、聞いた声だ。

 

??「…………………仲間……だけ?」

 

いや、違う………。  このおなごは………!

 

颯馬「俺のお嫁さんになると誓った『風魔小太郎』だ!!」

 

そう応えた瞬間、俺は後ろを振り向いた!

 

 

そこには………いつも、仲間達と共に俺を支えてくれた『風魔小太郎』が、はにかみながら立っていた………。

 

 

小太郎「颯馬様、皆さん、ご心配お掛けしました!」

 

勢い良くお辞儀をして謝る小太郎。

 

颯馬「ーーーーーーーーー!!」

 

俺は……………力一杯、小太郎を抱きしめる!

 

腕の中で、小太郎が『痛いですよ……!』と呟いていたが、心配させた罰として無視して抱き続けた………。

 

二号は、『良かったわねぇ』と、どこから取り出したのか、布切れを出して涙をふき、道雪殿や紹運殿も泣きながら喜んでくれた。

 

◇◆◇

 

【颯馬、新たなる決意の件】

 

?大天幕内 張角達の部屋?

 

 

信廉「颯馬、ここにいますか!」

 

慌ただしいく部屋に入りこんできたのは、武田信廉殿。

 

信廉「火勢がここまで来ました! 至急脱出して下さい!!」

 

道雪殿や紹運殿を見た時には、目を丸くされたが、俺に非常事態を教えてくれた! 

 

……確か、火計を行うと俺が言ったな。外周りから少しずつ火勢が挙がるように、小太郎に命じたのだ。この策の要になる物。

 

程遠志の救援で火計がしっかりできたか心配だったが………。

 

小太郎「はい! 火計は発火装置を使って仕掛けましたので、時間に少しずれを生じましたが、予定通り外周りの天幕は火勢を上げています!」

 

小太郎は、結局、たいした怪我も無く無事。

 

小太郎曰わく『始め対戦した時、違和感を感じたんですよ。普通の順慶様と違うな、と。 

 

それで考えたのは、『肉体の強制強化』。何かを利用して肉体を強靭に変えた一時的な強さだと思ったんです。 

 

だから、その何かの影響が抜けるまで、途中から私の分身や変わり身の術で相手させてもらってたんですが……。

 

…………まさかあのような状態になるなんて…』

 

途中から、順慶の様子があのような姿になって支障が無いと判断、火計の件が心配になった事もあり、様子を見に行ったため、この場所に

居なかったのだという。

 

俺達は、急いでその場所より脱出!

 

逃走路には、信廉殿の兵達がそれぞれ要所に居てくれたため、迷わず抜ける事ができた。 

 

………振り返って大天幕を見上げれば、火勢が全てを覆い尽くす。

 

順慶殿のあの力、そして力を貸す左慈、于吉なる不定者側の管理者の動向。   

 

俺の知る三国志の世界を遥かに超えている事態に、頭を抱えたくなるところだが、此方にだって俺と共に日の本統一に力を貸してくれた仲間達が居る! 

 

そう新たに覚悟を決め直し、義清の待っている軍勢に向かい走っていった。

 

◆◇◆

 

【曹陣営内の思惑と思いの件】

 

?曹操陣営にて?

 

凪「…………以上が、張角捕縛の件の子細でございます。 この件の処罰、私一人の暴走故のため、何卒私一人のみに!」

 

真桜「何抜かすのや凪! あの化け物相手に凪が居たって変わりはなかった!! …華琳様! 処罰はウチにもお願いします!!」

 

沙和「沙和にも処罰を! 凪ちゃん、真桜ちゃんが処罰受けて沙和だけ受けない理由なんてないの!! 華琳様!!」

 

華琳「……………桂花」

 

桂花「はっ! 三人の報告と各陣営に送りました間者の話は一致しております。この場合、兵達を無事に全員連れて戻ってきただけでも、宜しいかと」

 

華琳「……他には?」

 

桂花「そうですね…。劉備軍の越権行為の目撃、謎が多い董卓軍の『天の御遣い達』その実力の一端の情報、黄巾賊以外の敵の確認…と、予想外の実績を挙げています。 董卓軍の軍師が詰問の遣いを大将軍に送るとの事も、災い転じて福とすれば、張角達の事を差し引いて処罰無しが妥当かと………」

 

華琳「…そう。 今回の任務、張角達の確保は出来なかった。…けどそれを補う実績を挙げた貴女達に処罰無し! 今は体を休め次の任務に備えなさい!」

 

三人「「「  はっ! 」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

華琳「さて、桂花? 先程の何進将軍から私達の詰問を逆に褒美に変える策、私自身が先に謁見して申し上げればいい…という事でいいのかしら?」

 

桂花「はい! 何進は元々庶民の出ですので、宮廷内では何太后の付属品と冷遇されています。 そこで、華琳様が今回の件は何進将軍の為と持ち上げ、将軍の得になるように説明すれば大丈夫です。」

 

華琳「何進将軍より詰問で問われるより、私自身が先に謁見へと出向き、意見を述べる。そうすれば、詰問の内容を此方の有利なように持っていくが出来る…と言うわけね」

 

桂花「 御意。…しかも、上手くいけば、劉備軍の関雲長をこちらに迎えいれる事も可能かと存じます」

 

華琳「! …面白いわね! 詳細を話しなさい!! 勿論、上手くいけばご褒美を用意しましょう!」

 

★★★

 

沙和「凪ちゃん、身体の具合は大丈夫なの?」

 

真桜「そうやで! 凪! どこか痛いとこあらへんか?」

 

親友の二人は、私の身体を心配して声を掛けてくれる…。

 

とんでもない相手を目撃して、精神的疲労が多いのに………。

 

私は『大丈夫』と答えて二人を安心させ、それぞれの自分達の天幕へと向かった。 ………………外を見れば既に真っ暗だった。

 

私は、寝台に腰を掛けて考えた………。

 

任務とはいえ、今回は驚愕するモノがあまりにも多くあり、寝付く事が出来なかったのがその理由。 真桜や沙和が見た美少女の化け物、その化け物を欺く手腕を持つ董卓軍の将。 

 

…そして、私とは違う戦い方をする、『天の御遣い』にして『伏竜の軍勢』の軍師『天城颯馬』様……………。

 

敵として対峙して幾つか判明した『神の拳』と言われる実力。

 

私を倒した時に見せた、寂しそうな悲しそうな御尊顔。

 

倒れた私を心配して、敵であるのに真桜達のところまで背負ってくれた優しさ…………。

 

そ、それに、傷だらけの私に、『可愛い』と始めて言ってくれた男の方……………。

 

私は、天幕の外に出て、董卓軍の天幕が見える場所に、手を組んで祈る。『神の拳』、『天の御遣い』と言われる方だ、祈れば叶うかもしれない………。 

 

私は、祈る。 ただ一向(ひたすら)に…。

 

 

『 不思議な不思議な『天の御遣い』天城颯馬様………。

 

………私に貴方の拳をご教授下さい! 

 

……後、出来たらで、結構です。…今度、戦場で会う時になりましたら、敵では無く味方として、貴方の傍に、居させてください…… 』

 

☆☆☆

 

桂花を返した後、私は自分の天幕に戻る。

 

明日は、早朝より何進将軍に謁見を申し込んであるため、一人で寝る事になっている。 寝台に入り、凪より受けたある軍師の話と将の話を思い浮かばせた…………。

 

『天の御遣い』……………始め報告を受け取った時は、ただの与太話だと思っていた。 

 

だが、各地に放っていた間者より、『天の御遣い降臨』の噂を聞きつけ、念のため信用できる者を放った。

 

そして、我が軍に長く勤めるその者より……送られてきた竹管。

 

『天の御遣いは複数、全て勇将、知将也。 特に天城なる者、神の拳を操る武人であり、また人智を超えた謀将。味方にすれば天を望め、敵に回せば長城と化す事必す也』

 

天の御遣いは、与太話ではない。 ………しかも複数!

 

それだけでも驚きなのに、特に『天城』なる者に、これだけの文を割いて報告している…………それだけの逸材なの?

 

後に知る、『天水の戦い』

 

賊の討伐戦だけど、賊軍四千、董卓軍二千五百による数の劣る董卓軍不利な夜戦。 しかも、奇襲を掛けるつもりが敵伏兵の待っている場所に行く絶対絶命の最悪な条件で………。

 

それを、蛍の動きで見破り、仲間の御遣いを包囲網へと導き撃破した手腕、賊将の鎧を物ともせず、『素手』で撃ち殺した武………。

 

鎧というものは、鋭利な槍や矢、切れ味を誇る剣から身を守る防具。

 

そのため、時と金を掛けて作られる頑丈な物。

 

それを、あの『天城』は『素手』で鎧着用の相手を殺した。しかも、鎧の隙間では無く、その上から………。 

 

これは、最初に送りこんだ間者からの再報告があり、医者の判断も添えて報告してきたから、これで完全に与太話の可能性は消えた。

 

また、その軍師の戦術も、桂花と語り合った結果、我が軍にも使用可能で有効な方法として、随時活用し成果を挙げている。

 

 

 

数日前に、何進将軍との軍議の場にその軍師を見た。

 

天水太守『董仲穎』は、善政を行うと風評が流れる評価が高い人物。

 

可憐と言わざる得ない私好みの美少女。 

 

その後ろに件の軍師『天城』、この国の衣装と違う物を纏う優男。 

 

付近を見れば、見目麗しい将達が並び立ち、太守と軍師を守らんと気迫に満ちている。…この者達が天の御遣い達だろう。

 

あまりにも場違いと思えど、密かに様子を伺い、自分自身の人を見る目の無さに恥居る事になった………………。

 

何進将軍への黄巾賊討伐での献策、凪に対する武人としての実力と礼儀、そして、また何か行うのではないかと予感させる人望。

 

真桜達が見た将は、董卓軍の将を助けたと言うから、天の御遣いの一人だろう。 なんと優秀な将が多い事か…………。

 

まずは、明日の行動。 それにより董卓軍はどう動くのか………。

 

今度は、何を見せてくれるのか、楽しみだと思いつつ、意識が眠りに落ちていった……………………。

 

◆◇◆

 

【孫陣営内の思いと回想の件】

 

?孫陣営より少し離れた場所?

 

雪蓮「うーーーーーーーん! 動き足りないわ!!」

 

夜の月を見ていたら、酒が呑みたくなって陣営を抜け出していた。

 

あははは! 明日になれば冥琳に叱られる事確定だけど、月が私を呼んでるから仕方ないのよねぇ〜〜!!

 

あんな事があると、余計にお酒が呑みたいしーーー!

 

 

☆★ 回想 ★☆

 

今日は、沢山黄巾賊を殺せると思った……。

 

呉に住まう民に仇なす黄巾賊を…………。 

 

だけど、殺せたのは中に混じっていた盗賊の類の奴らだけ。

 

あいつらは、天幕に火が着いた途端、団体でこっちまで来たから撫で切りにしちゃた。 仲間を見捨てて来るなんて、最低な行為だから!

 

後でこちらに来たのは、小さな子供を連れた母親、やせ細った若者、それに病人…………。 

 

十日の包囲で元気の良い奴らは、どこからか抜け出たみたい。 多分、何進の兵達が賄賂を受け取り見逃したのだろう……。

 

弱き民を救う為に立ち上がった母様の志を受け継いで、私達が頑張っているのに、官軍の長がそんな事してどうするの!!!

 

私は怒り、その者を助けようとした………!!

 

だけど、冥琳は悲しそうに横に首を振る。『それをすれば、我らの悲願が達成されなくなるぞ』と。

 

規則違反で裁定では打ち首となる重大な違反。

 

乳飲み子を抱えていた若い母親は、『お許しを! もし駄目ならせめてこの子だけでも………!』と、目に涙を溜めて懇願する。

 

母様が見たら、思いっきり殴られているんだろうなっと思いつつ、

私は、心を鬼に変え、腰の剣『南海覇王』を振り上げた…!

 

雪蓮『ごめんなさい…母様、これが私達の力の限界! 弱き民を救う志を全うするために、弱き民達を犠牲にしなければいけないの!』

 

 

??「待って下さい!!」

 

私が剣を振り下ろす直前、後ろより止められて振り向けば……。

 

軍議で会った董仲穎様が、顔を真っ赤にして立っていた。

 

月「この民達は、私の軍で保護します。兵をこちらに送りますので集合させ、貴女方の兵に警備を命じて下さい!」

 

雪蓮「そんな事をされれば、規律違反で仲穎様が罰を受けますよ?! それに、この策を献策してくれた軍師の功も無駄になります! それでも、よろしいのですか?!」

 

私は、出来ればこの民達を救いたいと思った! 董仲穎様の申し出はとてもありがたい申し出だが…建前でこう言い放ってしまった。

 

月「構いません! 罪の無い民を殺して何が国ですか! 民あっての私達、民あっての国! 私は、そのように我が子房より教わりました! だから、どのような事があろうとも守ります!」

 

私は、兵に命じて仲穎様の命令通り行わせ、仲穎様も使いを出して兵を呼び寄せる。

 

待っている間、仲穎様は遠くの空を見上げて語ってくれた。

 

月「…遥か向こうの天の国も、数多くの戦乱に巻き込まれ多くの民が亡くなりましたが、その犠牲を無駄にせず国を建て直したと聞き及んでいます」

 

雪蓮「天の国は平和な国だって、劉備軍の御遣い君が申していましたが…」

 

月「天の国は、一つだけではないようです。 劉備軍の天の御遣い様は平和な国の出身ですが、我が子房の出身は此処と同じ戦乱の国だったそうですよ。 だから、戦い慣れをしていると…………」

 

雪蓮「……………………」

 

月「それに、我が子房は、私と同じ人を死なすのが嫌なのです。

民を守る戦において、民を斬るなどと知れば、激怒して天に帰ってしまいます………。 私は、それが………!」

 

董兵「仲穎様! 信玄様が至急お会いしたいとの事です!」

 

月「わかりました! それでは、後の事は伯符殿の指示に従うように! 終わり次第、こちらに伝令と元の配置に戻って下さい!」

 

董兵「はっ!」

 

月「伯符殿、それでは失礼します!」

 

雪蓮「はい! ありがとうございました! 我が誇りも救っていただき感謝致します!」

 

☆★ 終了 ★☆

 

トクトクトクトク チーン!

 

私は、杯を二つ並べてお酒をついだ。 んーー、別に亡くなった人に供えるとかじゃなくてぇーー。

 

…………冥琳! 何時まで隠れて見ているのよ! 早く来ないと全部呑んじゃうわよ! 

 

     ゴソゴソ ガサッ!

 

冥琳「また、何時もの感か? 雪蓮?」

 

雪蓮「い〜え〜、冥琳だったら、付近にいるんじゃないかな〜と思って、声掛けてみたの! やっーーぱり、居たじゃない!」

 

冥琳「………雪蓮。既に呑んでないか? ウップ! 酒臭い!!」

 

雪蓮「だいじょ〜ぶ! 何杯かひっかけてきた、だけだから……!」

 

冥琳「すまなんだな……。お前の矜持に反する事を頼んで……」

 

雪蓮「…………………いいのよ。今の私達には仕方ないもの。董仲穎からの申し出は、本当に助かったんだから〜。それと、私を追ってきたのは謝るだけじゃないんでしょう〜? 何かあったの〜?」

 

冥琳「明命が、張角の救出に失敗し、しかも自分の名前と国を喋ったそうだ………はーー」

 

雪蓮「でも、収穫もあったようね〜? グビィ パァーー!」

 

冥琳「あったとしても、些細なものだ。 劉備軍の趙子竜に貸しを一つ作った事、董仲穎の天の御遣いと新たな敵となる者が、人間離れしていて、手が負えない、と言う話だかな………」

 

雪蓮「 グビィ?! な、なにそれ!! とても良い話じゃない! すぐ陣営に戻って話を聞くわ! 行きましょう、行きましょう!!」

 

冥琳「おい! さっきのしんみりとした態度は何だったんだ!」

 

雪蓮「いいから、いいから! 早く、早く!」

 

私は、冥琳の手を握りしめ、陣営に戻りつつ、月を見て思う!

 

『母様! 董仲穎様には貸しを幾つも作ってしまいましたが、必ず返して自分達の国を築き上げて、あの世で自慢してみせます!!』

 

 

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あとがき

 

正月休みを利用しての連続投稿、大分疲れました。

 

その分、いろいろとありましてお礼申し上げます!

 

支援の数が、前作が8にしてもらったり、お気に入りに入れましたとの報告をいただいたりと、大変嬉しいです!!

 

出来れば、今回の投稿で少し休もうかなと思ってますが、どうなる事やら。 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

ご期待に添えられたら展開なら、嬉しいですが、これからもよろしく御願いします。

 

 

説明
義輝記の続編です。 前作ではご支援いただきありがとうございます。 また、よろしければ、お読み下さい。
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コメント
雪風様 コメントありがとうございます! 一考してみます!(いた)
招待する将・・順慶関係なら島左近・松永関係なら三好長慶か十河一存が良いなと・・(雪風)
雪風様 コメントありがとうございます! そう言っていただければ嬉しいですね! 後、もしかすると、また一人呼び込む事になりそうです。本多を…。(いた)
かつての宿敵(義清)を鼓舞・叱咤する信廉・・この外史は様々なものを見せてくれる貴重な物・・・。(雪風)
naku様 コメントありがとうございます? 一応似たようなモノを考えています。于吉の関係者と別の人で。(いた)
naku様 コメントありがとうございます。 あの二人は、原作通り一刀にも手を出させる予定です。ただ、今回世界に影響を多大に与えているのが颯馬だからです。応援ありがとうございます。(いた)
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戦極姫 真・恋姫†無双 

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