【討伐戦、論功行賞の件】

?何進大将軍大天幕にて?

明朝より、軍議が始まった。

出席者

前面………大将軍　何進　武官

左側

董卓軍……董仲穎、天城颯馬、武田信玄、武田信廉

　　　　　華雄、立花道雪、高橋紹運

孫策軍…孫伯符、周公瑾

中央　劉備軍…劉玄徳、北郷一刀、関雲長、諸葛孔明

右側

袁紹軍…袁本初、顔良、文醜

曹操軍…曹孟徳、夏侯元譲、夏侯妙才、荀文若

何進大将軍が、椅子より立ち上がり、周囲を見渡し満足そうに笑う。

何進「皆、ご苦労！！　これで反乱軍の討伐は終わった！！」

それから漢王朝の昨今の出来事、何進自身の功績、十常侍の横暴など長きに渡り話すが………長い、長過ぎる。　　

猪々子「ふぁ〜〜ぁ………」

斗詩「ちょっと、文ちゃん…！」

春蘭「彼奴（あいつ）は、結局、何を言いたいのだ………？」

秋蘭「姉者、静かに…。　華琳様が叱られるぞ？」

春蘭「むぅー……………」

何進「…である。　それでは、この討伐の論功行賞を行うが、その前に劉玄徳！　主の軍勢には、処罰をせねばなるまい！！」

劉玄徳「ーーーーーーー！」

◆◇　曹孟徳の提言　◇◆

華琳「何進大将軍閣下、早朝より、臣、曹孟徳、参上いたしました事お詫びします！　されど、申し上げたい議あり、言上申し上げいたします！　

閣下の耳目にも届いています董卓軍、曹操軍、劉備軍の張角争奪の議についてですが、我が軍勢は漢王朝への忠誠を示すため、張角達の首を得ようと突入させました。　

しかし、董卓軍は任務として突入、鉢合わせをして双方戦闘になった事、誠に申し訳ありません！　以後注意をさせます！　

しかし、劉備軍は明らかに張角達を救うと明言、董卓軍と積極的に戦闘を踏まえ、その任務を阻止しようと致しました！　これは、然るべき処罰を与えるべきかと存じます！　

我が曹操軍も漢王朝に忠誠を示すため、勇み立った事誠に遺憾と思い閣下の裁定にお任せするものといたします！」

◆◇　　終了　　◇◆

何進「今朝早く、曹孟徳より提言があり、充分吟味して論功を行うようにとの、申し出を受けていたく感服した！　それに比べ劉玄徳よ！　主は『天の御遣い』の御輿を上げ世を惑わし、しかも、張角達黄巾賊首領を救おうとした事、漢王朝に背く行い許し難い！！」

何進大将軍は、顔を真っ赤にして劉玄徳達に怒鳴りつけた！

劉玄徳は顔を青ざめ、反論しようとするが聞き入れられない！

関雲長にしても、握りしめた拳より血が流し、何進を睨みつける。

諸葛孔明は、プルプルと震えて今にも失神しそう………。

北郷一刀は…………俺の位置からは、見えなかった。

何進「主達の義勇軍は、曹孟徳の預かりに…」

麗羽「お待ち下さい、何進大将軍閣下！　全員なんて曹孟徳殿の負担になりますわ。　ここは、二手に分けて行う事が重要かと！」

何進「ほう？　では、その負担をお前が半分受け持つと？」

麗羽「はっ！　曹孟徳殿とは良き友人故に、負担を減らして差し上げたいと思いますわ！」

猪々子「（ﾎﾞｿッ）………斗詩ぃ、良き友人が日頃いがみ合ってるって、どうなるんだろうな？」

斗詩「（ﾎﾞｿｯ）仲が良い程喧嘩するっていうからね………ハァ」

何進は、少し悩んだ後、裁決を言い渡す！

何進「流石、名門袁家の御曹司だけある！　だが、曹孟徳の提言ゆえ責任を取らせ、劉備軍は曹孟徳に預ける事とする！　袁本初の友を思う心は、陛下に上書を行い、然るべき報いをしたいと思うが？」

麗羽「はっ！　この袁本初、何進大将軍の御考えに気付かず、申し訳こざいません！！　陛下にはよしなに！」

劉玄徳一同「「「「「「「　！！！　」」」」」」」

何進「曹孟徳、良き指導を頼む！」

曹「　御意！　」

華琳（少し目論見が外れたけど、勇猛なる関雲長筆頭に優秀な将、『天の御遣い』を手に入れられた事は、嬉しいわね。　劉玄徳がお荷物になるけど、凪達に任せましょう！）

袁本初（ホーホッホッホッ！　進言して私に何人か来てくれれば良し、華琳さんの所に全て行っても、それもまた上々。　……この私が華琳さんを跪かせれば、その配下は全て私の手に入るだけですもの。貴女の人材は私のモノ。私のモノは私のモノですわ………　）

何進の論功行賞は、それから進む。

袁本初………『平原郡』の統治。

麗羽（当然の成果ですわね！　オーホッホッホッホッ！）

曹孟徳………陳留刺史から州牧へ。

華琳（妥当ね。　これから忙しくなりそうだわ）

袁公路（孫伯符代理）……『汝南』の統治。

雪蓮（ふーん、上手くいけば、孫家に有利になるわね）

董仲穎…………の番になった時、何進大将軍は急に声を荒げた！！

何進「董仲穎よ！　主に問う！　主の軍は、敵討伐の献策、張角達の捕縛など多大の功績を挙げた…。　そのため然るべき地位や領地を望めよう…………。　だが、張角達のその後の対応、主の将に寄る独断の賊難民保護！　…………これをどう扱うかにより、重罰になる可能性もある。……………………如何に！！」

月様は、確かな足取りで何進大将軍の前に向かう。　

顔に緊張が見えるが、目は何進将軍をジッと見つめている。

月「大将軍閣下、臣、董仲穎、畏れながら申し上げます。」

月様、堂々と声を張り上げ申し開きを述べた。

月「黄巾賊の反乱、無辜の民に対する悪辣熾烈な事、誠に許し難い事と存じます！　首領張角達は、己が騙され御輿にされたと申していましたが、多くの民達の人命を蔑ろにした事、許す事などできはしません！　それなりに、刑罰を与える事を提言いたします！」

そう言われ、目を閉じる。　

何進大将軍の権力、いや迫力に気落ちしたか……と見る各軍勢の目の中、月様が吠えたてた！！

月「しかし、力無き弱き者も即座に断罪する事に、遺憾を覚えます！　何進大将軍もご存知でしょう！　今のこの世の中を！！　

漢王朝の下で官が富を集め、美食に舌鼓を打つ中、庶民が一日に食す物無く、命を失っていく事を！！　そんな中、更に民達を脅し税を奪う事、黄巾賊と何が変わりましょうや！　

今回、黄巾賊の中に、力無き者が多数いた事聞き及んでいらしゃる事と存じます。私も実際に確認し、我が将の行った事に異論などなく、保護の許可を与えました！

将の行った事は正道に基づく物。私にはこの采配を下した将に処罰を与える事はできません！　それに、保護した力無き者達を改めて処罰するなら、漢王朝の威厳が落ちましょう！

ですが、軍令に反した事は事実。将に許可を与えたのは私の罪です。どうぞ私めに、罪科を与えて下さるように御願い致します。　これが、董仲穎の望みとお受け取り下さい………」

何進大将軍「……………………………」

大将軍は、髭だらけの顔を月様に近づけ、険しく睨む！

何進「…………本当に、そう思うかね………？」

月「はい！！」

それでも、月様は足をしっかり踏ん張り、何進大将軍の眼光に抗して一歩も引かない事を態度で示した！

何進「ハッハハハハハ！　こりゃ、一本取られちまったよ！　まいった、まいった！　俺の負けだ！　ハッハハハハハーー！！」

月様の顔を見た何進は………………急に可笑しそうに笑だしだ？？

月様は、目をパチクリする。

董卓軍の将はもとより、俺も他の軍も口を開けて驚く………。

何進「いやー、すまん、すまん！　俺はあんた達も知っているように元肉屋のオヤジよ！　宮廷なんて堅苦しいモノに入ると、頭まで堅くなってしまい、物事を自分の都合の良いようにしか、見れなくなってしまっていたようだ……………！」

兜を脱ぎ、頭を掻かかれた後、少し笑顔になり………。

何進「久々に人らしい言葉を聞けたよ……。宮廷やこのような軍議に集まると、澄まし顔のネエチャンやら、おべっか使いやら、ふてぶてしい十常侍やらで、人としての心ってもんがなぁ……」

それだから、あんたの諫言は効いたよ、とかかと笑う何進大将軍。

何進「俺は、あんな世界は似合わない男だ……。　昔は憧れたりもしたが、今は窮屈で息が苦しくなる。昔の肉屋に戻り、客と馬鹿話した方が面白いんだが………」

その後、月様には、報奨と引き換えにお咎め無しとなり、何進大将軍より保護した黄巾賊の救済を、月様の自国で行うようにする事を条件に許可し、張角達の件は斬首の可能性が高いので、明後日まで引き渡すようにと、言い渡された。

この後、解散となり諸将は陣営に戻っていった。

★★★

大天幕に残ったのは、董卓軍の将達と何進大将軍と武官。

何進「それにしても、漢王朝に仕える者の中に、こんな硬骨漢がいるとは……！　そのような者を処罰などしたら、十常侍共が喜ぶだけだし、なにより俺がつまらん！　これからも、漢王朝に仕え、その諫言と心を持って支えて欲しい！！　」

突然、大きな傷だらけの手を月様の手に乗せて頭を下げて頼み込む。

月「そんな……、何進大将軍閣下！　頭を御上げ下さい！　私には勿体なき仕儀です！」

何進「やはり、信用出来る良き人物だな。…それから、そなたが『伏竜の軍勢』で名高い天城…でいいのか？」

颯馬「『天城颯馬』と申します。この国の者では無いため、字や真名がございません。　お見知りおきの程を…………」

何進「うむ、やはりお主がか。噂は漢王朝内にも届いておる！　『天の御遣い』という皇帝陛下と同じ天を冠する者としてな！」

そういえば、『天』って皇帝陛下と同じ『天に繋がる者』として不敬にあたると書物で読んだ！　『天の御遣い』に関わる月様達や俺達はどうなる？　特に『天』が二つも付いてしまう俺なんか………？！

何進「安心するがいい！　それは、支障は無い。　確かに『天の御遣い』の自称する者は多いし、その名で煽動する者もいる。　官として言わせて貰えば、悪事を働く者を捕らえるが、漢王朝に味方し、数々の功績を持つお主達を誰が裁こうとするものか！」

劉備軍の天の御遣いも、本来は処罰の対応モノだが、義勇軍の実績もあるし、今は曹孟徳の傍に行かせたから、そちらに任せると丸投げ発言。

それにな……と、何進大将軍がニヤリと笑う。

今は、十常侍達の権力闘争で、そのような有象無象な輩に付き合っている暇など無いのだ！……って、何、簡単に言い放っちゃうんだよ！　この大将軍様はぁぁーーーー！！

何進「おぉ！　ツッコミまで入れられたか！　こんな地位になっても突っ込んでもらえるとは…うわっはははーーー！！」

　　　　バン！　　バン！

うおぅ！　痛い痛い！！

一介の軍師風情が、つい霞のやり取りで身に付いたツッコミを入れちゃて恐縮する俺…。立場を考えろと自分自身に叱咤していたら…。

周囲の冷ややかな目線、呆れ顔をよそに、嬉しそうに懐かしいそうに、笑顔で俺を見ながら背中を叩く大将軍閣下……。　

何進「さて、我々も解散するか！　すっかり元の肉屋の親父の口調になっちまったな！　皆、ご苦労さん！！」

董卓軍一同「はっ！」

にこやかな顔だった何進大将軍が、急に横に立っていた武官に向かい、話し掛ける。

何進「……………さて、さっきから黙っている武官よ。　お主も戻っていいぞ。　董卓軍の下にな………！　」

急に口調を改めて、そんな事を言い出した！

武官？「……あれ？　いつの間に気付いていたんです？」

何進「自慢じゃないが、俺の傍に女は居ないのだ…。　それなのに、武官の男から艶めかしい香りがするなんて、変だとは思わないか？」

武官？「うぅぅぅぅ、修業不足ですう………」

言っとくが、野郎が好きってわけじゃないんだーーーー！

ただ、この容貌が、体格が嫌だって寄り付かないだけなんだーー！！

何進大将軍は、後ろを振り返って誰も居ない場所に向かって悲しい叫び声を上げた。　…髭だらけのでっぷりとした五十近い男が。

……何進大将軍ならそれなりに…『権力に媚びてくる女は嫌だ！　愛がある家庭が欲しい！』…そうですか…。

何進「………失礼した。　そんな訳で、武官を元通りにしてから行ってくれ。　それと、董仲穎。　もしかすると、力を貸してもらうことになるかもしれん！　その時は頼む！！」

月「はい！　如何様も命令あれば！」

それじゃ、張角達の事引き渡しを頼むぞと、言い添えて別れた。

俺達は、武官？に問いただすと、『小太郎ですよ！』と返答が…。

小太郎「信玄様より、月様や颯馬様に危害が加えられそうになった場合、止めて欲しいと命じられましたので！」

信玄殿は、澄ました顔で終始無言のまま、皆と共に董卓軍天幕まで帰った。

…………顔を朱に染めながら……………。

◇◆◇

【一難終わり、また一難の件】

?董卓軍陣営内?

道雪「月様、我等の独断のために、不利な立場に立たせてしまい、申し訳ありませんでした！！　」

紹運「月様……………ありがとうございます！！」

月「へ、へう〜〜！！　二人とも！　お止め下さい！！」

道雪殿は、黒戸次（道雪の車椅子の名前）のに乗ったまま、頭を下げ

紹運殿は、床に座り込んで土下座。　日の本が誇る最高の謝罪の姿勢

だと説明すると、月様は慌てふためく！

宗茂「月様、私からも御礼を申し上げます！　義母上と義姉上の命を救っていただきありがとうございます！！」

宗茂までも、土下座を始めるから月様大混乱！！

月「あ、あ、ああ、天城様！！　どうか！　これ以上は！！」

俺も土下座したかったんだが、止めておこう…。

縛っていた武官を解放して戻ってきた小太郎も含め、全員で今までの事を話し合う。情報の共有は大事な事だ。

ーーーーーーーーーーー

義清「私達が居ない時にそのような事が……………！」

華雄「月様……！！　臣下と申しますが、あのような心の蔵が停止しそうな事は控えて下さい！　詠や霞達になんと言われるか…！」

月「………ごめんなさい………」

颯馬「…しかし、月様のお陰で、何進大将軍の件は済みました！」　

俺は、華雄殿を宥めながら、今後の展開を考える………。

張角達が処刑される可能性、劉備軍の解体による各地の群雄の変化、宮廷内部の勢力の動き、そして順慶殿と操る管理者達の事。

信玄「………颯馬！　張角達においては私に腹案があるため、任せていただけますか？　月様にも許可を戴いたので……」

紹運「……私は、保護した民達と兵達の様子を見に行って来よう。　宗茂！　一緒について来てもらえるか？　」

宗茂「お付き合いします！」

颯馬「収容された人数も多いので、道雪殿、信廉殿。　お二人も頼めますか？」

道雪「承知いたしました！」　信廉「了解です！」

義清は入り口の警護、華雄は中の警護。

天水に早馬で今回の報告を送り、宮廷内部の情報を集めて貰おう。

不定者側の管理者達は、貂蝉と相談してからじゃないと。

群雄の情報は、すぐには変わらないので、間者の人数を集めてから送る事にしよう………と考えを纏め、月様と共に信玄殿の案を聞いて意見を出し、完璧さを目指した。

なるべく、皆が不幸にならないように……………。

◆◇◆

【曹孟徳、劉備軍を手中に…の件】

?曹操陣営内?

★☆　華琳の心中　☆★

私の目の前に、あ・の・『関雲長』が礼儀正しく拝礼を行う！

あの艶やかな黒髪、戦場を颯爽と駆け抜ける武勇、揺るぎない忠誠心！　前の戦場で共闘してから、一目惚れした関雲長が目の前に！

その横には、臥龍、鳳雛で並び称される軍師達が、『天の御遣い』北郷一刀の背後で震えながら此をみているわ。

………可愛い、じゃなくて…ｺﾎﾝ。

☆★　終了　★☆

劉玄徳とその配下よ！　お前達は、賊首領の逃亡援助を企て実行に移さんとし、任務で潜入した董卓軍の将と対峙して妨げた事明白である！　だが、何進大将軍閣下の温情により、お前達の命は、この曹孟徳が預かる事となった！　

これからは、我が配下として、この国に忠誠を尽くし、任務に全力を傾ける事を誓え！　

元譲、妙才！　関雲長、趙子竜、張翼徳を預けます！　この国の武を互いに切磋琢磨して力を上げ、兵達を精兵と成し遂げなさい！

荀文若！　貴女に諸葛孔明、ホウ士元を預けます！　二人で智を協議し、この国の政務を見直し、他の国よりも活気あふれる豊かな国と成長させるのです！

『天の御遣い』北郷一刀よ！　私は貴男の力を知らない。　

だから、貴男に分かる知識を私に教えなさい！　必要な知識かどうかは、この曹孟徳が決めます！

そして、劉玄徳！　…………貴女に、まずは伝えましょう！

何時まで、泣いているのだ！　劉玄徳！　貴女の甘い考えの為、将や兵、そして『天の御遣い』までこのような事になった事を分からないのか！！　

貴女が、そのまま泣いていても、評価は変わらない。　ここは離れたければ成長せよ！　民を笑顔に変えるには必ず犠牲が出る事を察し、出来る限り努力せよ！　自分が努力した分だけ民達の負担が減る！

話し合う事も同じ。　自分の言い分を通したければ、その分努力をして相手が納得するようにすればいい！　言葉が通じなければ、その言葉を学べ！　相手の生活習慣が分からなければ、知る努力をせよ！　通じないからと行って安易な武力など、争いの元と知れ！！！

待たせてごめんなさい。　楽文謙、李曼成、于文則！　貴女達に劉玄徳を預けます！　民達の生活の向上を目指しなさい！！　

これにて解散！　劉玄徳達の天幕を案内せよ！

ーーーーーーーーーー

天幕に集まっていた多くの将兵が去り、私一人が残る。

ふと、思う軍議の顛末………。

今回の件は、こちらの思惑通り運んだ。　

私の提言により我が軍の違反がうやむやになり、劉備軍の解体、陳留刺史から州牧の昇格、劉備軍の獲得。

だけど……気にかかる、董仲穎の態度、董卓軍の将達の対応。

あれは、策なの？　それとも本当に真摯思って提言したのかしら？

董仲穎の何進将軍に対する冷静な態度、鋭利な諫言の数々……。

それを、笑い飛ばして謝罪する事で器量を見せた何進将軍。

策ならば、失敗した時の予防策を考えるのが普通。　

でも、そんな気配が全くなかったし、他の軍勢にも動きはなかった。

明日、もう一度確かめよう。　

もし、前者なら私が将達が力を付ければ勝てる！　勝ってみせる！！

これが、後者なら…………………………………。

◆◇◆

【揺れ動く信念の件】

?一刀の天幕にて?

俺『北郷一刀』は、今、悩んでいる…………。

皆と見ていた桃香の理想に、揺るぎを覚えている、と言ったが正解だろうか………。

始めは、桃園の誓いを間近に見て、桃香達の力になるために動いた。

『勧善懲悪』……その言葉通りの大義名分があったから、俺も兵も傷を負い死を覚悟しながら戦い抜いた。　勿論、仲間達も頑張った！

そして、ここまで来れたんだけど、張三姉妹救出に関わってから、考えがゆっくり確実に変わっていったんだ………。

……董仲穎様が言われた『対価』。　何かを得れば何かを失う、重大な選択になれば成る程、重く慎重な決断が欲しい物。

桃香は、基本的に戦いは嫌がる、出来るだけ話し合いの解決を望む優しい女の子だ。　……大分天然ボケ入っているけど。

今回、俺達は黄巾賊の真相を聞いて、桃香達の指揮の下、動いた。

弱き者を救う！　その大義名分に沿って。　だけど、冷静に考えれば

世間一般から見て、俺達に大義はあるのか？

親兄弟、友人愛しい人を死傷させた者達の首領が『御輿だったから私達関係ないです、ごめんなさい』で済まして、その関係者が納得するのか？　少なくとも俺はしない！　絶対に！！

それに、董仲穎様と謁見した時も考えれば、俺がもの凄く甘い考えしていた事がわかり、顔が赤面ものだ…………。

董仲穎様の資金、兵への保障、仲間達の命を全て自己の責任と覚悟を

持ってこの戦に参戦されたからこそ、何進大将軍にあの諫言が出来たんだと思う。　

それなのに、自分達の都合に合わせようとしたり、董仲穎様の将に戦い挑んだり……何様のつもりになっていたんだろうな……俺……。

それに、そんな無謀な作戦に付いて来てくれた義勇軍兵士の皆には本当に申し訳ない事をした。　あの時の天幕突入で率いた兵で死傷者は誰も居なくて良かったよ。　

俺は、曹孟徳と言う新たな主に下で、自分の考えを纏めよう。

出来れば、劉備軍全体を………。

そうすれば、桃香達の望む『現実的な世界』が見えてくるんじゃないかと！！

………ここまで考えて、ふと思う。

もしかして、これは俺の認識を改めさせるための『天の意思』かもしれないな。　いや、俺だけではなく、劉玄徳達の認識を改めさせるために……。

◆◇◆

【その頃の天水…の件】

?天水　天水城内にて?

ねね「詠殿ーーー！！　月様より連絡が来ましたぞ！！」

詠「う、うるさい！！　聞こえているわよ！　で、報告の竹簡は？　…って、ねねは、何も持っていないじゃない！？　」

ねね「今、数人掛かりで、こちらへ持って来させているのですが…」

謙信「…おっと、ここだ、ここだ！　皆、この部屋に入れてくれ！　詠殿、御免！　入れさせてもらうぞ！」

文官達「はっ！」

ドサドサドサドサ！

詠「ちょっと！　何よ、この量は！！」

謙信「軍師殿が、我ら天人達用に接触した人物の情報も送ってくれたのだ。　来るべき戦いの時に備えて…との事らしい」

霞「まぁ、確かに腹黒い奴は、仰山いるからな。情報は無いよあった方がよっぽどマシやし……。　どれ………なんやと！」

恋「…………何か、美味しい物、あった？」

　　　　　　　ガタン！

霞「か、関雲長が曹孟徳の傍に入ったやと！　な、なんて、うらやま、じゃなかった！　関雲長の貞操の危機！　ウチが今から救い…」

恋「霞、待つ…」　　　　グイッ

霞「こ、こらぁ！　離せ、離さんかいーーー！」

詠「恋！　離しちゃ駄目よ！　しっかり霞を抑えてくれたら、肉まん十個用意させるわ！」

恋「……十五個」

詠「ちょっ！　…う〜〜ん、十二個じゃ駄目？」

恋「…ﾌﾙﾌﾙ…！」

詠「…はぁ、分かったわよ。　じゃあ十五個用意するわ！」

恋「…ねね、これで…いい？」

ねね「流石は恋殿です！　見事な交渉術ですぞ！」

詠「ねねに、全部肉まん代負担させるように！」

文官「はっ！」

ねね「詠殿！　それは殺生な……ですぞ！？」

詠「恋に変な知恵をつけさせちゃ、駄目でしょう！」

霞「どちらにしても離さんかい！！　関雲長が危ないのや！」

謙信「…………どれ、私も。　……ふむ、私達の知る三国志とは少し離れ始めたか………。　颯馬に頼まれた物も、早く用意しないと…」

☆☆☆

信長「ほぅ！　颯馬は長島一向一揆で私が使った真似をしてきたか！　これは愉快！　そして慧眼だな！」

家久「うーーん、これって『欠囲の計』って言うだよね？　相手を囲むけど、逃げ道作って『こっから出られるよ』て追い立てる策！」

義久「はい！　お姉ちゃんも聞いた事ありま〜す！」

歳久「家ちゃんの言うとおりです。　あと、信長殿の場合は完全な包囲網で、そのため、窮鼠猫噛むの諺通り、手痛い反撃を喰らったのではなかったですか？」

信長「ぐっ！　だが、あの前例があるから、この策に活かされたとは思わないのか！「自分の失敗を素直に認めない将は、颯馬に嫌われますよ」グッ！……認める。　確かに散々な結果だったから……な」

家久「うんうん！　素直が一番だよね！」

義久「でもぉ…この策、ちょっと可哀想な気もするわねぇ〜？」

歳久「……残酷な行いですが、抑制力があります。　似たような輩は直ぐに出てこないでしょう。　ですが、根本を治さない限りは何度もこのような反乱が繰り広げられていくのは、間違いないですね…」

信長「うむ、大木を根元から切り落とし、新しい若木を植えるか、大木の腐ったところや伸びすぎた場所を、剪定して切り落として しまうか、それしかないのたろうな…………」

★★★

光秀「颯馬は、大丈夫でしょうか？」

義輝「新たな敵、しかも筒井の武は、妾達以上に強くなっている可能性もある。　援軍を頼んだ方が良いかもしれんな…。　義昭には負担を掛けるが、果心殿にお願いしてみるかの………」

光秀「はい。……それに、久秀殿もどこかで動いていると思うと…」

義弘「私や鹿介殿も居ますから安心して下さい！」

義輝「鹿介達は、どうしたのじゃ？」

義弘「あ、はい！　颯馬に言われていました『その家独自の戦い方を学ばせた隊を編成』するようにと言うことで、今、訓練に励んでもらっています！　三太夫殿も自分の部隊に術を一生懸命教えいますし順調です！」

義輝「それは、上々！　それから、義弘！　果心殿に、こちらにおいでいただくように申し出を！　頼みたい事が出来たからとな…！」

☆☆☆

詠「………あっ、大変！　至急、果心殿に連絡して！　月達が果心殿の力を必要にしているって！　急いで向かうように！！」

果心「……ふすふす、彼方も私の力を借りたいのですか？　承知しました、義輝殿の頼まれた用事が終わり次第、すぐに参りますよ…」

　　　　　スウゥーーーーーーー！

詠「…………何回見ても慣れない術だわ………」

　　　　　ブンブン

詠「さて、ボクも颯馬から頼まれた、王朝内の情報を集めるように手配しなくちゃ！」

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あとがき

最後まで読んでいただき、ありがとうございます！

今回の策でmokiti1976-2010様より許可をいただき『劉備丸投げの策』を使わせていただきました。　ありがとうございます！

もし、この作者様の作品を読まれていない方は、早急に読まれる事をお勧めしますよ！　この作品より優れている事は間違いありませんので。　それに面白いですからね！

それから、お偉いさんとの会話が続くもんですから、作者なりに当時の言葉使い調べてみましたが、わかりません。

かなり、間違いがあると思いますので、緊迫感だけでも味わっていただければありがたいです。

………今回は、一刀や華琳がどう思うかどう動かすと悩んで悩んでの末の作品になりました。　原作とは違うやい！　こんな言い方するのか？と批判がきそうですが、作者の限界としては、こんなモノだとご理解いただければ幸いです。

また、次回作も、よければお願いします。