人　物

佐藤智之（30）警視補

橘夕香（19）会社員・事務

捜査員

元カノ

○公園

　　　満開の桜の下でたたずむ橘夕香（19）の

　　　後ろ姿。

　　　爪先で「彼」と書き、消す。

　　　振り返る。夕香の美しい顔が現れる。

　　　少し離れた位置のベンチに座る佐藤智之（30）、

　　　唾をゴクリッと飲み込む。立ち上がって、

　　　夕香に近づき。

佐藤「あ、あのう」

夕香「え？」

佐藤「お１人でしょうか？」

夕香「（小首をかしげて）はい？」

　　　佐藤に近づく元カノ。佐藤の頬を思い切

　　　りひっぱたく。

元カノ「さいってい！」

　　　ドカドカと歩き去る。

　　　頬を押さえる佐藤。

　　　ひきつり笑いで夕香に。

佐藤「いや、その。コーヒーでも飲みません？」

○公園（夜）

　　　雨の中。新緑の桜。

　　　その下にうごめく、20名ほどの警官たち。

　　　木の根もとをライトアップし、スコップ

　　　で掘る捜査官。

　　　手を止め。

捜査官「あった、ありました！　佐藤警視補に

　連絡を！」

○喫茶店・玄関

　　　扉脇に新緑の花壇。

○同・中

　　　窓の上に風鈴。冷房の風で揺れている。

　　　窓際の席に佐藤と夕香。

　　　携帯電話をかけている佐藤。

佐藤「何？　公園で男の死体が見つかった？」

　　　電話を切る。

　　　夕香、コーヒーカップを置きながら。

夕香「これから、お仕事？」

佐藤「そう、本庁で。しばらくは缶詰かな」

　　　佐藤、大きく息を吐く。

　　　電話をポケットにしまって立つ。

　　　ポケットからはらりと落ちる写真。

　　　元カノが写っている。

　　　拾い上げた夕香、写真を無表情に見つめ。

夕香「ねえ。女の人ってね、智之さん」

佐藤「ん？」

　　　夕香、ふっと寂しげに笑い。

夕香「大好きな人。独り占めしたくなるの、時々」

○同・玄関

　　　新緑の花壇。

　　　歩き去る佐藤と夕香。

従業員の声「ありがとうございました」

○同・玄関（夕）

　　　紅葉している花壇。

○同・玄関（夜）

　　　雪が積もっている花壇。

　　　扉にクリスマス・リース。

○同・玄関（朝）

　　　新緑の花壇。

　　　その前を、足早に通り過ぎる佐藤。

○歩道（朝）

　　　早歩きの佐藤。強張った表情で携帯電話

　　　操作。

　　　受信メール『容疑者はつき合って一年後、

　　　同じ場所で男を殺します』の文字。

　　　ふと顔をあげる。

　　　遠くに公園。満開の桜が見える。

○公園・入り口（朝）

　　　桜を見上げて立ちつくす佐藤。

佐藤「（青ざめて）そうだ、京都へいこう！」

○線路

　　　走ってくる新幹線。

ナレーション「Ｊ●東海」

　　　　　　　　　　　　　ＥＮＤ