『まただめだった……か』

　俺は徐々に透けていく自分の身体を見ながら、そう呟いていた。

　これで何度目になるのだろう

　もはや幾度となく繰り返されたことだ。身体が透けていくことに恐怖は無い

　今の俺にあるのは、助けられなかった者達への後悔

　そして、このループに終わりは来ないのでは、という諦めにも似た感情だけだ

　まるで、クリアしたゲームのセーブデータを消して、また始めからスタートするかのように繰り返される転生

　これが何度目になるのか……とうに数えるのはやめ、覚えてなどいない

　それでも、何の為に転生しているのか、それだけは忘れてはいない

『すべては彼女達の笑顔の為に』

　一人も欠けてはならない

　それがただ一つの条件

　あるときは雪蓮が毒矢に射られて命を落とした

　またあるときは、その毒矢を回避したがために亞莎が命を落とした

　冥琳が病により志半ばで逝った

　早期に華佗を見つけ治療させれば、祭さんの治療が間に合わなかった

　秋蘭が蜀の罠に嵌り命を落とした

　共に春蘭を送れば、秋蘭に怪我を負わされたと逆上した春蘭が紫苑を切り伏せた

　華琳が俺の制止を振り切り蜀との徹底抗戦をしたとき

　救援が間に合わず討ち取られた

　雛里が成都攻略前に流矢に当たって死去した

　深い悲しみを負った桃香は、大徳とは無縁の人物になってしまった

　赤壁の戦いにおいて、勝利は目前と思われたとき

　突如として来襲した恋に不意をつかれ、愛紗が負傷した

　愛紗を下げるため華琳に追撃をしなかったため司馬懿が台頭

　完全に息を吹き返した華琳によって、蜀は滅ぼされた

　白蓮が麗羽に滅ぼされたり、華雄が鈴々に切り伏せられたりもした

　もちろん、戦いの途中で俺が死んだことだって何度もある

　その度に身体は透け、その外史から完全に抹消された

　そして次の外史へと飛ばされるのだ

　今回もまたどこかで失敗したんだろう

　身体はほとんど透けてしまい、辛うじて輪郭がわかるぐらいだ

　あと何度転生したら全てを救うことができる？

　あと何度転生したら彼女達の悲しむ顔を見ないで済む？

　俺はあと何度転生すればいい？