暗い話
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暗い話

 

 

世界は薄暗かった。太陽が小さいためだと言われている。

昔は今よりも遥かに大きくて、明るかったという。

 

生まれたて眼が悪い僕は、今の世界の暗さよりも一層暗い世界で生きていた。

人とは少し違うだけなのに、周りは一歩分離れて僕に接する。それが嫌でたまに暴れたりもした。

そしてまた一歩分僕と皆との間が出来上がるんだ。それの繰り返し。

しかし、その何歩分を軽々と越えるのが君だった。

生まれてからずっとそばにいた僕たちは、互いを信頼、尊敬し合った。

ペタペタと彼の顔に触れ、そのきめ細やかな肌、すっと立つ鼻や、少しかさついた唇を確かめる。

 

「くすぐったいよ」。と笑う声が心地よい。

 

いつも君が隣にいて、僕の手を優しく握り導いてくれた。

 

 

 

世界が少し明るくなった。太陽が大きくなったらしい。

そのせいなのか、僕の視界も良くなって自分だけでも動けるようになった。

そうだ、今度は僕が君を導いてあげないと―――何処に?どうやって?

 

何もかも君に頼っていた僕にあるものって何だろう?

君に導いてあげられるものは――自由じゃないのか?

 

景色は見えているのに、大事なものだけが真っ暗で見えなくなった。

 

 

 

突然、君がパーティを開いてくれた。

 

キラキラと輝くご馳走に、パチパチと弾ける飲み物。

 

チン

 

触れ合うグラスたちが繊細に鳴り響く。

甘く、ほろ苦い。そして喉を通る冷たさ。君はグラスを片手に僕をみて微笑んでいたから、

僕もそう返した。

 

パーティが終わるころ、僕の世界は始まる前より暗くなっていった。

あの頃の僕に戻ろうとしている。

「あ…?」

少し刺すような痛みを感じながら、ふと気付き、君を見た。

そして段々と暗くなっていく世界の最後は、君の少し驚いた顔と笑顔だった。

 

 

(あぁ、また君に迷惑をかけてしまうんだなぁ)

 

 

 

 

「…ごめんね」。

 

 

 

帰り道。握られた手はいつもより強くて痛い。

僕の世界は暗い。

君の手は温かった。

説明
友人と暗い話について話した次の日の朝、電車の中でふと
暗い話って何だろう?と思って出来たのがこのお話。
BLのつもりで書きましたが、とらえ方は皆様次第でございます。
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