その後………部屋では………

思春「…………よし、明命……やるぞ」

明命「はい！」

一刀の部屋の屋根裏から思春と明命が忍び込んでいたのだ

明命「しかし……本当にあるのでしょうか？」

思春「私も分からん………だが、雪蓮様の勘は信憑性がある

探してみればある筈だ」

明命「…………そうですね

見つかるまで探してみましょう！」

思春と明命は一刀の部屋で『あるもの』を探していた

読者の皆は察しがつくと思うのだが………それは

思春「…………っ!?あったぞ!!」

明命「っ!!本当ですか!?」

思春「ゴミ箱の中にあの『灰』があったぞ!!」

そう……この二人は雪蓮の命令で『灰』を探しに来ていたのだ

思春「……………こんなにあるぞ……」

明命「一体何故こんなに…………？」

ゴミ箱の中を覗いてみると全体の2/5が『灰』で埋まっていた

徐に思春はゴミ箱に手を突っ込み『灰』を掴む

思春「…………全て『灰』だな……」

明命「……………っ!!思春殿！」

思春「っ!!どうした!?」

明命が突然声を荒らげ寝台に指をさした

明命「枕元にも同じあの『灰』が!!」

思春「なっ!?」

思春は明命が指をさした方向を見てみると、一刀の寝台の枕元にゴミ箱の中と同じあの『灰』が少量だが盛られていた

明命「思春殿………しかも……」

思春「あぁ…………そのようだな……」

思春「寝台の端が………欠けている……」

……ところ変わって此処は政務室

一刀と三国の王達が今日の分の政務をしていた

一刀「……………華琳、これはどうすればいいかな？」

華琳「えっと………そうね、これは………」

桃香「蓮華さん、ここって………」

蓮華「う??ん………やはりここは………」

それぞれ自分一人では判断のしようがない書簡を見せ、意見を聞き合っていた

雪蓮「………………」

唯一人………雪蓮は一刀をジッと獲物を狩るかのような目で睨みつけていた

冥琳「…………………雪蓮」

雪蓮「ん??？何？冥琳」

冥琳「そんな顔をして一刀を睨んでいないで仕事をしろ」

雪蓮「でもさぁ………」

ゴネる雪蓮に冥琳は声のトーンを下げ囁くように

冥琳「お前の言いたいことは分かるが、今は仕事をしろ………

思春と明命の報告次第まで下手に動くことはできんからな……………」

と言った

雪蓮「それは分かってるけど………」

それでもまだ雪蓮はゴネる

そこへ一刀が

一刀「ん？雪蓮、どうかしたの？」

雪蓮「っ!!…………何でもないわよ♪

何時冥琳と一刀を襲うかなって話してきただけよ♪」

一刀「ぶっ!?」

一刀は盛大に噴いた

蓮華「ね、姉様!!政務中にそのような事を言わないで下さい!!」

雪蓮「冗談よ、冗談♪」

一刀「時と場合を考えてくれ……」

華琳「全く……………(雪蓮、徐に表に出さないで)」

雪蓮「(分かってるわよ…………)」

一刀「ふぅ………よし、一段落したから休憩がてらちょっと街に行ってくるよ」

愛紗「っ!!なら、私も同行しましょう」

一刀「……………断っても来るよね？」

愛紗「当たり前です！ご主人様は三国の頂点なのですから護衛をつけなければならないのですよ!?」

愛紗の説教が始まりかけていたので

一刀「分かった分かった！一緒に来てくれ！………これでいいだろ……？」

愛紗「最初からそう言って頂ければよかったのですよ」

一刀と愛紗は話をしながら政務室から退出していった

雪蓮「………………明命、思春……いるのでしょう？出てきなさい」

雪蓮がそう言うと

思春と明命が屋根裏から現れた

思春「雪蓮様の仰った通りでした」

明命「一刀様のお部屋に大量の『灰』が捨ててありました」

華琳「恐らく私達が部屋に訪れた時に慌てて捨てたのでしょうね」

桃香「結構ご主人様焦っていましたもんね……」

思春「更には一刀の枕元にも『灰』が盛ってあり、寝台の端が崩れたようにありませんでした」

思春が雪蓮達に報告していると

左慈「俺の睨んだ通りだな」

左慈と卑弥子などの四人の管理者が部屋に入ってきた

卑弥子「事態は思った以上に深刻のようだ………

かなり『毒』の侵食が進んでいる」

貂蝉「迂闊だったわん………まさかご主人様がこんな事になるだなんてねん」

于吉「完全に盲点でした…………

響窃を倒して平和に浸かり過ぎていました」

雪蓮「左慈………今の一刀は…………」

左慈は深いため息をしたあと

左慈「ハッキリ言ってしまえば『毒』なんて生易しいもんじゃなくなっちまったぞ………

最早『猛毒』よりタチが悪い………」

明命「そんな！なら、本当に『昨日』のような出来事であの『灰』が出来てしまったのですか!?」

明命の言う『昨日の出来事』………

それは…………

昨日の雪蓮での部屋…………

左慈「そんじゃま、上映……じゃなくて思春の記憶を写すぞ」

左慈が思春の記憶を映し出した

一刀『…………よしっ!!いくぞ!!』

一刀は机の上に置かれた石を両手で包み込むように持ち上げた

一刀『……………………』

一刀はジッと石を睨む

冥琳「………何も起こらぬな……」

思春「いえ………よく見ていてください………」

華琳「…………………」

そして…………

ｷﾞｭｫｫ！

一刀『………………ん!?』

愛紗「むっ!?」

明命「えっ？」

一刀に存在する『猛毒』がその姿を現した

一刀『っ!?……………こ、これは…………!?』

それは正に異様………異常………不可思議な光景だった………

雪蓮「ちょっと………これって……？」

一刀『何だ…………？これは……………？

一体何が起こっているんだ…………？』

一刀が持っている石は表面からみるみる『灰』となり、崩れていたのだ

左慈「やっぱりか……………大方予想はついていたがな……」

そして、遂には石は完全に崩れあの『灰』だけとなってしまった

卑弥子「左慈………一刻も早く手を打たねば…………」

蓮華「待ちなさいよ！一刀に何が起きているの!?」

左慈「見てわかんねぇか？蓮華……

こいつは……」

左慈「『体気吸収』だ」

愛紗「『体気吸収』？あの気を吸い取る気技か？」

卑弥子「その通りじゃ」

一刀『これは……もしかして【体気吸収】か？

でも、何で………？』

記憶の中で一刀が言っていることは最もである

左慈「本来『体気吸収』は自分の気技として操り、敵の気や体力を吸い取る回復同時進行型の攻撃だ

だが……北郷のは自ら『体気吸収』をしているわけではない」

冥琳「では…………一体何故だ？」

秋蘭「確かに…………一刀は『体気吸収』を操れるのではないのか？」

于吉「勿論ですとも

ですが……今回のはもっと複雑なのです」

愛紗「？？複雑とはどういう事だ？」

左慈「いいか？よく聞け……」

左慈は声のトーンを下げ周りを見渡した

それにより部屋の中が緊張感に包まれる

左慈「確かに北郷の体内には響窃の存在能力が現在進行形で流れている

だがな……」

華琳「？？何か問題があるの………？」

左慈「大ありだ……

『存在能力』は字の通りで存在する能力って意味だがこれは能力を流した本人が居なければ意味はないだ」

蓮華「えっ？……じゃあ、響窃を倒した今一刀の能力は消えかかっているってこと？」

左慈「いや…………残念ながらその逆だ

響窃が流し込んだ存在能力は皮肉にも響窃がこの世にいたお陰で北郷は制御し、操ることができた

だが、制御をしていた響窃が北郷に倒された今……………響窃を倒したその存在能力が暴走してるんだ」

華琳「暴走ですって!?」

華琳は思わず声を荒らげた

思春「暴走したら何が起こるのだ？」

思春の質問に対し、貂蝉が暗い表情をしてこう言った

貂蝉「主に4つの進行状態に分けられるわん

まずは第一症状………今ご主人様の身に起きていることねん

存在能力が暴走を始め『体気吸収』が常時発動されている………といったこと」

秋蘭「既に始まっているのか!?」

貂蝉「残念だけどねん

しかも、恐ろしいことに『体気吸収』の制御が効かないから触れたもの全ての気を吸収してしまう可能性もあるわけでぇ

挙句の果てには接触しているものが生命として維持できなくなる程吸収してしまうのよん」

蓮華「っ!!…………まさか、それって………？」

左慈「今までのあの『灰』は接触した物の成れの果てだ」

明命「はぅわ!?成れの果てですか!?」

雪蓮「ひとつ辻褄が合ったわね………

この『灰』の正体は物体の成れの果てだったのね………」

卑弥子「次に第二症状………存在能力が流し込まれた体に流し込んだ元の主の種を植え付ける

この場合なら流し込まれたのはご主人様、流し込んだのは響窃じゃな」

于吉「第三症状としては存在能力が本格的な暴走を始めます

暗く濁った『邪闇気』を発したり意思疎通ができなくなります」

左慈「そして最後の禁断症状………

北郷一刀という精神が完全に消え去り、精神も身体も全て響窃となり、魔人・響窃が完全体となり復活する……」

全員「「「「っ!!?」」」」

左慈「あんだけ苦労して倒した響窃が最悪、その倍以上の戦闘力を持って復活しちまうぞ

そうなったら待ってるのは破滅だ………」

冥琳「何か方法はないのか!!?」

冥琳が左慈に向かって叫ぶ

左慈「ないわけじゃないんだが……」

華琳「教えなさい……今すぐ！」

左慈「結構荒療治だぜ？どうなっても俺は責任は取らねぇからな……」