本編補足
[全12ページ]
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運命への一矢

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C1 入所

C2 出会い

C3 面会

C4 夫婦愛

C5 足掻き

C6 再会

C7 恩義

C8 転職

C9 謁見

C10 意地

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C1 入所

 

暗黒大陸連邦。ハーブ刑務所の廊下を看守達に連れられて俯きながら歩いていく、手錠をかけられた元野球選手のサンデー。牢屋から囚人達がサンデーを指し、騒ぎ出す。

 

囚人A『おい、ありゃ野球選手のサンデーじゃないか。』

囚人B『おっほ、こりゃこりゃ、大物が来たわ。』

囚人C『お、俺カード持ってたぜ。』

 

看守達と共に去って行くサンデー。

 

 

ハーブ刑務所AD雑居房。看守AがAD雑居房の鍵を開け、扉を開く。中に入るサンデー。中に居る囚人達は目を見開き、サンデーを指さし、顔を見合わす。サンデーはAD雑居房の中に入り、壁にもたれかかって座る。囚人のロバーツがサンデーに近寄り、サンデーを見回す。サンデーはロバーツの方を向く。

 

ロバーツ『あんた、サンデーか。あのギガンツの名投手の。』

 

サンデーは眉を顰め、ロバーツから顔を背けて頷く。両拳を握りしめるロバーツ。

 

ロバーツ『やった!俺はギガンツの大ファンなんだ!』

 

時計を見た後、テレビを見てため息をつくサンデー。

 

サンデー『チャンネルをかえてくれねえか?』

 

サンデーの顔を覗き込むロバーツ。

 

ロバーツ『何言ってんだ、もうすぐあんたの所属していたギガンツとライガーズの試合じゃねえか。明後日からはチンピラーズとだ!』

 

眉を顰め、俯くサンデー。囚人Aがサンデーの方を向く。

 

囚人E『チャンネルは変わらねえよ。前にチャンネル争いでアニメオタクが殺されてからはな。』

 

テレビに映るギガンツ球場を見つめるサンデー。

 

C1 入所 END

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C2 出会い

 

ハーブ刑務所野外。バスケットボールやキャッチボールをする囚人達。壁の上をマシンガンを持った看守達が行き来する。壁にもたれかかり、キャッチボールをする囚人達の方を向くサンデーの隣にロバーツが駆け寄る。ロバーツはグラブをサンデーに見せる。

 

ロバーツ『おい、あんたも一緒にやろうぜ。』

 

サンデーは首を横に振る。

 

サンデー『いや、遠慮しとく。』

 

肩を落とすロバーツ。

 

ロバーツ『そうかい。残念だ。折角、名投手とやれると思ったんだが…。』

サンデー『すまんな。今、そんな気分じゃない。』

 

ロバーツはサンデーに背を向け、キャッチボールをする囚人達の方へ向かっていく。サンデーはため息をつき、頭に手を当ててキャッチボールする囚人達の方を見る。腰の屈んだ暗黒大陸連邦発明家の老人スチュレ・ロファリンゲがサンデーの前を横切り、彼の隣に座る。

 

スチュレ・ロファリンゲ『おや、これはこれは、こんな所で有名人に会えるとはな。』

 

眉を顰め、スチュレ・ロファリンゲの方を向くサンデー。

 

スチュレ・ロファリンゲ『おっと、怖い顔しなさんなって。それにしても、お前さんみたいな有名人がなんでこんなブタ箱なんかにきているんじゃ?』

 

サンデーは左肘窩の上で握り拳を作り、中指と人差し指を軽く曲げ、親指を上下に動かす。

 

スチュレ・ロファリンゲ『…ヤクか。』

 

サンデーは頷く。

 

サンデー『ああ。』

 

額を抑え、空を仰ぎ見るサンデー。

 

サンデー『疲れが吹っ飛ぶのさ…。』

 

サンデーはスチュレ・ロファリンゲの方を向く。

 

サンデー『…そういうあんたは何でだ?見たところ…だいぶ歳の様だが…。』

 

笑い出すスチュレ・ロファリンゲ。

 

スチュレ・ロファリンゲ『ふぉふぉふぉ。いや、新型手榴弾の実験で助手を二人ばかり殺してしまっての。』

サンデー『ああ、そうかい。』

 

キャッチボールをする囚人達の方を向くサンデー。スチュレ・ロファリンゲはサンデーの方を向く。

 

スチュレ・ロファリンゲ『その名も野球ボール手榴弾じゃ。』

 

サンデーは眉を顰め、目を見開いてスチュレ・ロファリンゲの方を向く。

 

サンデー『はぁ?』

スチュレ・ロファリンゲ『投げやすく、扱いやすく設計した手榴弾じゃ。ただ、投擲手の技量はいるがな。』

 

立ち上がるスチュレ・ロファリンゲ。

 

スチュレ・ロファリンゲ『まあ、今日、お前さんと会ったのは運命かもしれんし、偶然かもしれん。わしは明日、釈放じゃ。わしの名はスチュレ・ロファリンゲ。クリント州ニューラサイ市でちっとは名の知れた発明家じゃ。ま、興味があればまた会おうて。』

 

去って行くスチュレ・ロファリンゲ。肩を上下に動かし、苦笑いを浮かべて首を横に振った後、囚人達のキャッチボールを目に映すサンデー。

 

C2 出会い END

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C3 面会

 

ハーブ刑務所。AD雑居房。まばらに雑魚寝するサンデーを含む囚人達。壁を叩く囚人B。

 

囚人F『ち、ギガンツめ。完全試合しやがって!』

 

目を見開くサンデー。

 

ロバーツ『はっは、チンピラーズの打線があいかわらずヘボだっただけさ。』

囚人F『何だと!』

 

ロバーツの胸ぐらを掴む囚人F。

 

大きな音。

 

扉の方を向く囚人達。扉の前に看守達が居る。囚人Fはロバーツから手を放す。看守Bは2、3回頷くとサンデーの方を向く。

 

看守B『おい、サンデー。来い。貴様に面会だ。』

 

目を見開くサンデー。看守Bは扉を開ける。立ち上がるサンデー。看守Cがサンデーに手錠をかける。サンデーの方を睨み付ける囚人F。看守達と共にAD雑居房を去るサンデー。

 

 

ハーブ刑務所面会室の扉を開けるサンデー。ガラスの向こうにはサンデーの妻のミーリーが座っている。一歩前に出るサンデー。

 

サンデー『お前…。』

 

ミーリーはハンカチーフで目元を拭う。椅子に座るサンデー。

 

サンデー『来てくれたのか。』

 

泣きだすミーリー。目を見開くサンデー。

 

ミーリー『…もう、耐えられないわ。連日連夜、マスコミの連中に追われて…まるで私も、私が犯罪者みたいに。』

 

眉を顰めるサンデー。

 

サンデー『…俺が悪い。俺がヤクなんかに手を出したから。』

 

ミーリーはサンデーを見つめる。

 

ミーリー『…これに。』

 

離婚届を取り出すミーリー。暫し、離婚届を見つめ、何回も瞬きをするサンデー。

 

サンデー『…これは。』

 

泣きだすミーリー。

 

ミーリー『もう限界よ。私もレイチェルも!あなたのせいでこの先…うっ、うっ。』

 

ため息をつくサンデー。

 

サンデー『そんなことはない。ここから出たら、もう一度マウンドに立って…。』

 

眉を顰めるミーリー。

 

ミーリー『何を言ってるの!?もう引退を考える歳じゃない!!』

 

机に両手を勢いよく置き、立ち上がるサンデー。

 

サンデー『そんなことはない!俺はまだできる!!やれるんだ!!』

ミーリー『それに、あなた球界からの永久追放処分なのよ。ここから出たって何もないわ!』

 

サンデーはミーリーに握り拳を見せる。

 

サンデー『俺にはまだ、まだ、この剛腕があるんだ!』

 

ため息をつくミーリー。

 

ミーリー『何を言っても聞いてくれないのね。そうやって、いつもいつも仕事と酒にかまけて、揚句には薬物まで!!レイチェルだっているのに。もう嫌よ!!!』

 

顔を両手で覆うミーリー。顔を歪め、椅子に座り込むサンデー。

 

 

ハーブ刑務所面会室の外の廊下に出る手錠をしたサンデー。看守Bがサンデーに近づく。

 

看守B『お前は今からD独房に入ってもらう。』

 

目を見開き、眉を顰めるサンデー。

 

サンデー『え、お、おい。なんでだ。独房っていや…俺は何か悪いことをしたのか?』

看守B『チンピラーズのファンに嬲り殺しにされるぞ。昨日の完全試合を見てなかったのか?』

 

面接室の廊下から去って行く看守達とサンデー。

 

 

D独房の扉が開き、中に入るサンデー。

 

看守B『シーズン中は外出は禁止だ。』

 

鍵の音。サンデーは座り込み、離婚届を見た後、何時間か天井を見上げる。サンデーは下を見、立ち上がって机に離婚届けを置き、椅子に何時間か座る。俯くサンデー。彼はペンを取り出して、離婚届を見つめた後、ペンを置き、壁にもたれて座る。

 

鍵の音。

 

D独房の扉が開き、看守達が現れる。

 

看守D『終わったぞ。』

 

看守を見上げるサンデー。

 

看守D『チンピラーズの優勝だ。』

 

下を向くサンデー。

 

サンデー『そうか。』

 

サンデーは立ち上がり、手錠をかけられると看守達に連れられて行く。

 

 

ハーブ刑務所AD雑居房。扉が開き、中に入るサンデー。囚人Cと囚人Dがサンデーの方を向く。

周りを見回すサンデー。

 

サンデー『…随分と減ったな。あいつら出所したのか?』

 

頷く囚人E。笑い出す囚人G。

 

囚人G『はっは、今頃、地獄の釜で務所暮らしさ。』

 

眉を顰めるサンデー。

 

囚人E『悪い悪い。軽い冗談だ。ギガンツのファンの奴ならチンピラーズのファンのあいつ誰だったけ、まあいいや、ま、そいつに殺された。』

囚人G『人生からの出所だな。はっは。』

囚人E『出所して地獄でまた入所か、救いねえな〜。』

 

サンデーは暫し、唖然とする。

 

サンデー『そうか。』

 

ハーブ刑務所の廊下を歩くサンデー。サンデーはハーブ刑務所の総合窓口を暫し、見つめる。サンデーは離婚届を握りしめ、総合窓口に提出する。

 

C3 面会 END

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C4 夫婦愛

 

ハーブ刑務所正門。扉が開き、バックパックを背負ったサンデーが出てくる。閉まる扉。サンデーは刑務所を振り返った後、正面を向いて歩きだす。

 

コーサス州アクリ市ホニャララ銀行。受付に座る銀行員A。前にはサンデー。銀行員は眉を顰めてサンデーの顔を覗き込む。

 

銀行員A『引き出すといっても…只今、サンデー様のお預かり残高は…0です。』

 

目を見開くサンデー。

 

サンデー『え、お、おい。そんなことはない!もう一回確認してくれ!!』

銀行員A『そんなことを言われましても、無いものは無いんです。』

 

カウンターを叩くサンデー。

 

サンデー『そんな事はない!第一、俺は務所に今までいたんだ!引き出す筈が…。』

 

銀行員Bが銀行員Aの後ろにつく。サンデーを睨み付ける銀行員B。

 

銀行員B『お貸しすることならできますが…。』

 

サンデーはカウンターに乗り上げ、銀行員Bの胸ぐらを掴む。

 

サンデー『預けたものが無いってのはどういうことだ!俺の金だぞ!!』

 

客達がサンデーの方を向き、顔を見合わせる。駆けてくるホニャララ銀行の警備員A。

 

客A『うわ、あれ…ほら、ヤクで捕まってたギガンツのサンデーじゃないか。』

客女A『怖いわ。』

客B『おいおい、まだヤクが抜けきってないんじゃないか。』

 

サンデーは周りを見回し、銀行員Bから手を放す。

 

客女B『あんな人野放しにしておいていいの?』

 

サンデーは眉を顰め、舌打ちしてその場から去る。

 

 

コーサス州アクリ市の市街地を眉間にしわを寄せながら歩くサンデー。サンデーは目を見開き、立ち止る。彼は顔から汗を吹き出し、勢いよく後ろを振り返るとそのまま駆けていく。

 

コーサス州アクリ市合同庁舎に駆けこむサンデー。サンデーは息を切らしながら総合受付の前に立つ。

 

サンデー『おい、土地の名義を見たい。今すぐだ!』

庁舎職員女A『土地の名義ですか。それなら二階の法務局の方まで行ってください。』

 

サンデーは頷いて階段を駆けあがっていく。

 

コーサス州アクリ市合同庁舎2回。受付に駆け寄るサンデー。座っている庁舎職員女Bを見つめるサンデー。

 

サンデー『至急知らべて欲しいことがある。土地の名義を知りたい!場所は…。』

 

庁舎職員Aが用紙とペンを渡す。サンデーは用紙に住所を記載し、庁舎職員女Bに渡す。庁舎職員女Bはそれを受け取り、庁舎職員Bに渡す。歩いて去って行く庁舎職員C。サンデーは受付のデスクを人差し指で何回も叩く。

 

庁舎職員Bが登記事項証明書の写しを持ってくる。

 

受付のデスクから身を乗り出すサンデー。

 

庁舎職員女B『7アントになります。』

 

庁舎職員女Bを見下ろすサンデー。

 

庁舎職員女B『7アントになります。』

 

サンデーは一歩後ろに下がり、財布から7アント取り出して机の上に置く。庁舎職員Bがサンデーに登記事項証明書の写しを渡す。彼はそれを暫し見つめた後、顔を真っ赤に染め、眉を吊り上げて歯を食いしばり、握り潰し、大きな足音を鳴らして去って行く。

 

市役所職員A『おい、あれ…ギガンツのサンデーじゃなかったか?』

庁舎職員女B『さあ、野球なんて興味ないんで。』

 

 

コーサス州アクリ市のミーリー邸宅の正門の前に立つサンデー。サンデーは呼び鈴を押す。

 

ミーリーの声『はい。どなた?』

 

サンデーは呼び鈴を覗き込む。

 

サンデー『おい、俺だ!!サンデーだ!お前!俺の全財産を引き出して、土地から何からの名義も自分のものにするとはどういう了見だ!!』

 

暫し、沈黙。

 

サンデー『おい、ふざけるな!出て来い!!この泥棒!売女!!!』

 

サンデーは呼び鈴を押し続ける。

 

ミーリーの声『警察を呼ぶわよ!』

サンデー『ああ、呼んでみろよ!!』

ミーリーの声『ピンポンダッシュの現行犯でまた豚箱いきね。今度は戻ってこれないんじゃないの!!!』

サンデー『何だと!だいたい俺は逃げてない!!』

 

ベランダに立つミーリー。

 

ミーリー『きゃーーーーーーーーーー!薬物中毒のストーカーイカレ脳みそ男よーーーー!薬物中毒のストーカーイカレ脳みそ男が私を襲おうとしている!!助けてーーーーーー!助けてーーーーーー!!!』

 

ざわめき。周りを見回すサンデー。サンデーはミーリーを指さす。

 

サンデー『訴えてやる!絶対訴えてやるからな!!』

 

ざわめきが大きくなり、駆け音が鳴る。サンデーは舌打ちしてその場から去って行く。

 

C4 夫婦愛 END

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C5 足掻き

 

コーサス州アクリ市ギガンツ事務所。オーナー室。ブラインドのかかった窓を背に壮麗な椅子に座り、机のうえで手を握り合わせるオーナーのチャッツネー。横には暗黒大陸連邦の旗がある。机の前に立つサンデー。チャッツネーは立ち上り、サンデーを見つめる。チャッツネーはサンデーに背を向ける。

 

チャッツネー『…本来なら、君がこのオーナー室に入ることもできないのだが、君はギガンツの功労者だから、今回だけは特別だぞ。』

 

大きな音を立てて机に両手を置き、チャッツネーを見つめるサンデー。

 

サンデー『俺を使ってくれ。』

チャッツネー『無理だ。』

 

サンデーは上体を前に出す。

 

サンデー『それは承知だ!そこのところをなんとか…。』

 

眉を顰めるチャッツネー。

 

チャッツネー『お前は自分の置かれている立場が分かっているのか!』

 

頷くサンデー。

 

サンデー『だ、だが、できる!俺はもう薬なんかにゃ頼らない!!俺は…。』

 

チャッツネーはサンデーの方を向き、睨む。

 

チャッツネー『もう、終わりなんだよ。サンデー。君はこの球界から永久追放処分が出された。薬物を使いギガンツだけでなく、球界に汚点をもたらした君を使うことはもう無い!!』

 

チャッツネーはサンデーに背を向け、窓に近寄ると、ブラインドを人差し指と中指で少し、開ける。

 

チャッツネー『それに…君の時代は終わったんだよ。シーズンでは敗れたが、チンピラーズを押さたキャッチマンやブルーといった若手が出てきている。』

サンデー『若手がどうした!俺は剛腕のサンデーだぞ!そんな汚点、俺の活躍で…。』

 

チャッツネーはサンデーを睨み付ける。

 

チャッツネー『まだ分からないのかサンデー!君は球界に泥を塗ったばかりではなく、球界に憧れる若者、子供たちの夢を台無しにしたんだぞ!』

 

目を見開くサンデー。彼は俯くとオーナー室の扉を開け去って行く。サンデーはギガンツの事務所の前に出て、暫し立ち止まる。彼の左腕が震える。

 

 

コーサス州アクリ市。ベーカー街路地に入っていくサンデー。路地の壁にもたれかかり、ガムを膨らませるプッシャーA。立ち止まるサンデー。プッシャーAは白い粉の入った袋を取り出す。

 

プッシャーA『…出所しても、こいつの味が忘れられねえか?』

 

サンデーは白い粉の入った袋を見つめる。

 

プッシャーA『今日はいいものが手に入ってよ。』

 

プッシャーAは懐から桃色の粉を取り出す。

 

プッシャーA『こいつはブラッディ・アビス。とんでもない力や魔力が手に入るぜ。ああ、あとはアイデア?インスピレーション?か、まあ、ともかくユランシアの有名な絵描きやミュージシャンがやってるってよ。ほれ、この前、リッキントンで個展開いた奴。あいつも使ってたって聞いたな。値はかなり張るがな。』

 

ため息をつくサンデー。

 

サンデー『安物でいい…。ハイになりたいだけだ。』

 

笑みを浮かべるプッシャーA。

 

母親の声『今日のデザートはパイナップルよ。』

子供の声『やったー!パイナップル!』

子供女の声『パイナップル!パイナップル!!』

 

サンデーは路地の隙間から自転車の籠にパイナップルをのせ、去って行く親子連れを見る。口笛を吹き、手をポケットにしまうプッシャーA。

 

サンデーは2、3歩前に進む。

 

暫し、口笛。

 

口笛を止めるプッシャーA。

 

プッシャーA『いったか…。』

 

プッシャーAはサンデーの方を向く。

 

プッシャーA『じゃ、金を…。』

サンデー『いや、いい。』

 

眉を顰めるプッシャーA。

 

プッシャーA『お、おいおい。こっちはサツに捕まる危険までしてきてるんだぜ。』

サンデー『俺にはまだ…。』

 

路地裏から駆け出すサンデー。

 

サンデー『俺にはまだやれることがあるんだーーーーーーーーーーーー!!』

 

プッシャーAは肩を上下に動かし、首を左右に振る。

 

C5 足掻き END

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C6 再会

 

クリント州ニューラサイ市ニューラサイ駅に降り立つサンデー。彼は周りを見回した後、ニューラサイ駅の総合受付に駆けていく。

 

サンデー『人を探している!』

 

サンデーを見上げる係員A。

 

係員A『人を??あれ、あんたどっかで…。』

サンデー『ともかく急いでいるんだ!名前はスチュレ・ロファリンゲ…職業は…。」

 

係員Aは目を見開く。

 

係員A『スチュレ…。』

 

係員Aは係員Bの方を見る。

 

係員A『ロファリンゲさんっていや、実験の失敗で刑務所じゃなかったか?』

 

係員Aの方を向く係員B。

 

係員B『大量の保釈金払ってとっくに出てますよ。』

 

頷く係員A。係員Aはサンデーの方を向く。

 

係員A『ロファリンゲさんのとこなら、ほら…。』

 

係員Aは窓から見えるロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場を指さす。

 

係員A『あそこだよ。』

 

サンデーはロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場を見つめる。

 

サンデーは係員Aに向けて一礼する。

 

サンデー『ありがとう。』

 

駆けていくサンデー。

 

 

ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場。検問所の前に立つサンデー。警備員Aがサンデーの方を向き、暫し見つめた後、首を傾げる。

 

警備員A『…何か?』

 

一歩前に出るサンデー。

 

サンデー『俺は元ギガンツの投手のサンデーだ。』

 

目を見開く警備員A。

 

警備員A『あ、あんたやっぱりサンデーか。』

 

頷くサンデー。

 

警備員Aは肩を落とす。

 

警備員A『…俺はあんたのいた所をがむしゃらに目指したんだぜ。でも、駄目だった。でもよ。あんたみたいなのがいるところが俺達の憧れたばしょだったてのかい…。』

 

俯いた後、顔をあげるサンデー。

 

サンデー『スチュレ氏に会いたい。』

警備員A『…あのマッドにか。アポなしでは会えないぞ。』

サンデー『では、今からアポを取る。スチュレ氏につないでくれ。』

 

頷く警備員A

 

警備員A『分かった。一応連絡だけはしておく。』

 

警備員Aは無線機を取る。

 

警備員A『…野球選手のサンデーが来ている。スチュレさんに会いたいそうだ。』

 

警備員Aを見て頷くサンデー。警備員Aは2、3回頷く。警備員Aはサンデーの方を向き、ゲートを開ける。

 

警備員A『通っていいぞ。とりあえず、この先の事務所で待ってくれ。マッドが直々に出迎えるそうだ。』

サンデー『ありがとう。』

 

警備員Aは舌打ちする。駆けていくサンデー。

 

 

ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場の事務所に入るサンデー。事務員女Aがサンデーの方を見て一礼する。

 

事務員女A『サンデーさまですね。暫く、その席についてお待ちください。』

 

サンデーは椅子に腰かける。

 

暫く時計の音。

 

激しい靴音。

 

扉が勢いよく開き、現れるスチュレ・ロファリンゲ。彼はサンデーの方を向き満面の笑みを浮かべる。

 

スチュレ・ロファリンゲ『ほっほう。やはり来たか!!』

 

立ち上がるサンデー。

 

サンデー『俺は…。』

 

スチュレ・ロファリンゲは腕を大きく振る。

 

スチュレ・ロファリンゲ『ともかく。来い来い!今すぐ投げてもらいたいものがあるんじゃ!』

 

頷くサンデー。

 

サンデー『お、おう…。』

 

ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場の廊下を歩くスチュレ・ロファリンゲとサンデー。

 

スチュレ・ロファリンゲ『務所で言った野球ボール手榴弾の開発が完了してな。助手も何人か投げたが今度は大丈夫だった。通常火薬と魔法火薬の調合を1:3にして、それから安全ピ…。ま、是非とも蔵人のあんたに投げてもらいたかったんじゃが…。本当にちょうどいい時に来た。』

 

スチュレ・ロファリンゲは野外試験所の扉を開ける。

 

スチュレ・ロファリンゲ『こっちじゃ。こっち。』

 

ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場野外試験所。広大な敷地内にコンクリートでできた的が距離を取って置かれている。スチュレ・ロファリンゲの隣に立つサンデー。スチュレ・ロファリンゲの助手達が野球ボール手榴弾を持ってくる。スチュレ・ロファリンゲは野球ボール手榴弾を1個手に取る。スチュレ・ロファリンゲの方を向くサンデー。

 

スチュレ・ロファリンゲ『使い方は、この安全ピンを外して投げるだけじゃ。』

 

スチュレ・ロファリンゲは最寄りの的を指さす。

 

スチュレ・ロファリンゲ『まずは試しにあの的で…。』

 

サンデーは口角を上げる。

 

サンデー『試しなんかいらねえ。』

 

サンデーは最も遠い的を指さす。

 

スチュレ・ロファリンゲ『最も遠い的を狙うとは…。』

 

サンデーは野球ボール手榴弾を1個取り、的を見つめる。彼はその安全ピンを引き抜くと大きく振りかぶって投げる。轟音と共に的に向かう野球ボール手榴弾。見つめるスチュレ・ロファリンゲとサンデー及びスチュレ・ロファリンゲの助手達。

 

大爆発する的。

 

大歓声が上がる。

 

スチュレ・ロファリンゲの助手A『おお、すごい!あの的に的中させるとは!!』

スチュレ・ロファリンゲの助手B『流石、プロは違う!!』

 

拍手をするスチュレ・ロファリンゲ。暫し、煙を見つめるサンデー。

 

サンデー『へ、へへすげえ威力だな…。』

 

一歩前に出るスチュレ・ロファリンゲ。

 

スチュレ・ロファリンゲ『軍への正式採用を狙っとるんじゃ。ふひゃはははは。』

 

スチュレ・ロファリンゲの方を向くサンデー。

 

サンデー『軍への!!』

 

スチュレ・ロファリンゲのラペルを掴むサンデー。

 

スチュレ・ロファリンゲ『な、なんじゃ…。』

サンデー『た、頼む!俺に、俺にこの野球ボール手榴弾の投げ方教室を開かせてくれ!』

 

サンデーはスチュレ・ロファリンゲのラペルを離し、土下座する。

 

サンデー『お願いだ。頼む!この通りだ!!俺にはもう、俺にはもうこれしか残されていないんだ!!』

 

スチュレ・ロファリンゲはサンデーを見下ろす。

 

サンデー『悪い話じゃないだろ!だいたい、投擲には技術が居る!俺は…俺はそれを持っている!なっ!なっ!なっ!!』

 

暫し、沈黙。

 

スチュレ・ロファリンゲは腕を組み、人差し指を顎に当てる。

 

スチュレ・ロファリンゲ『ま、悪い話ではないし、いいじゃろう。確かに教師はひつようじゃからな。』

 

サンデーは顔を上げ、両拳を上げて立ち上がる。

 

サンデー『やった!はは!やった!!』

 

飛び上がるサンデーを見るスチュレ・ロファリンゲとその助手達。

 

C6 再会 END

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C7 恩義

 

クリント州ニューラサイ市ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場の敷地の一角に建てられたサンデー投擲教室。腕組みをするサンデー。野球ボール手榴弾のレプリカを投げる生徒達。

 

生徒の一人クリットが投げる。明後日の方向へ飛んでいく野球ボール手榴弾のレプリカ。クリットは舌打ちして、的に背を向ける。クリットに近づくサンデー。

 

クリット『くっそ!また外しちまった!』

サンデー『焦るな焦るな。今、見本を見してやるフォームをよく見とけ。』

 

サンデーは野球ボール手榴弾のレプリカを取ると投げる。轟音と共に的のど真ん中にあたる野球ボール手榴弾のレプリカ。

 

クリット『うおお、すげえ。』

 

歓声が上がる。周りを見回すサンデー。

 

サンデー『わはは、俺はこれでも球界で鳴らしたことがあるんだぜ。』

 

腰に手を当てて笑うサンデー。サンデーの隣に現れるスチュレ・ロファリンゲ。

 

スチュレ・ロファリンゲ『いやはや、盛況じゃの。』

サンデー『ああ。』

 

サンデーは野球ボール手榴弾のレプリカを投げている生徒たちの方を向く。

 

サンデー『レッチェにコウザー、アルガム、こいつらはだいぶいい線まで仕上げたぜ。それに…。』

 

サンデーはスチュレ・ロファリンゲの方を向く。

 

サンデー『あんたの宣伝力のおかげさ。野球ボール手榴弾。軍の正式採用に決まったんだってな。』

 

頷くスチュレ・ロファリンゲ。

 

スチュレ・ロファリンゲ『アレス王国の王子成りすまし事件でユランシアはだいぶ揺れそうじゃな。くっく、ちょうどいい時期じゃったわい。』

 

サンデーは笑みを浮かべ生徒たちの方を向く。

 

 

早朝。クリント州ニューラサイ市ニューグランドアパートのサンデーの部屋。電話の音。ベットから置き、受話器を取るサンデー。

 

サンデー『はい。え、わ、分かりました。すぐ行きます。』

 

サンデーはベットから飛び起き、背広に着替えて部屋から出ていく。

 

 

クリント州ニューラサイ市クリント州ニューラサイ市ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の社長室に入るサンデー。眉間にしわを寄せ、机の上で手を握るスチュレ・ロファリンゲ。隣には暗黒大陸連邦陸軍中佐のコールサマンとマグットコーポレーションの幹部ミラレス、そしてサンデー投擲教室の生徒、レッチェ、コウザー、アルガムが立っている。

 

サンデー『おう、やっと軍隊のお出ましか。俺が仕上げた…。』

 

スチュレ・ロファリンゲはサンデーの方を向いた後、俯く。眉を顰めるサンデー。

 

スチュレ・ロファリンゲ『…残念ながら、サンデー投擲教室は今日をもって廃止する。そして…君は解雇だ。』

 

スチュレ・ロファリンゲに駆け寄るサンデー。

 

サンデー『お、おい!何を言っている!冗談だろ!!俺は野球ボール手榴弾の投擲技術を上げたんだぞ!俺は功労者だぞ!!何で、お前ら…。』

 

一歩前に出るミラレス。

 

ミラレス『ご心配なさらずに。これからはマグットコーポレーションが投擲技術を向上させることになります。』

 

机を叩くサンデー。

 

サンデー『ふ、ふざけるな!』

 

サンデーはレッチェ、コウザー、アルガムの方を向く。

 

サンデー『おい、レッチェ、コウザー、アルガム…お前らも何か言ってやれよ!』

 

鼻で笑うレッチェ。

 

レッチェ『は、爺が何言ってんの?』

コウザー『あんたの時代は終わったの。』

アルガム『俺ら、マグットコーポに講師として雇われてさ、どこぞのヤク中のポンコツ投手なんかに、講師やらせちゃな〜。』

コウザー『軍もこの工場も名前に傷がつくってもんだ。信用もガタ落ちになるしよ。ははははは。』

 

サンデーは顔を赤く染め、こめかみに血管を浮き出させる。

 

サンデー『てめえら!俺が育ててやったんだろうが!!!』

 

眉を顰めるレッチェ。

 

レッチェ『は、もともと俺らの実力でしょ。』

コウザー『老害は黙ってなって!』

 

握り拳を上げるサンデー。コールサマンがサンデーの前に立つ。

 

コールサマン『マグットコーポレーションは軍需産業だ。』

 

コールサマンは拳銃を取り出す。

 

コールサマン『彼らが雇った講師たちに手を出せば…どうなるか分かるな。』

 

サンデーは歯を食いしばり、地面にうずくまると床を叩く。

 

サンデー『ちくしょーーーーーーー!ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょーーーーーーーーーー!!』

 

 

クリント州ニューラサイ市ロファリンゲ魔法兵器とか通常兵器製作所の巨大工場の敷地の一角に建てられたサンデー投擲教室に立つサンデー。

 

音が鳴り、的に野球ボール手榴弾のレプリカが当たる。

 

サンデーは野球ボール手榴弾のレプリカを見た後、フォームを何回も繰り返すクリットを見る。クリットに近寄るサンデー。

 

サンデー『朝早くから練習熱心だな。』

 

クリットは飛び上がりサンデーの方を向く。

 

クリット『いや、びっくりした!何だ、先生か。』

 

クリットは的の方を向く。

 

クリット『いや、もう少しで何か掴めそうなんですよ。』

 

俯くサンデー。

 

サンデー『そうか、だが、残念なことにこの教室は今日限りでお終いだ。』

 

目を見開き、サンデーの方を向くクリット。

 

クリット『そ、そんな。そんな俺、せっかくやっと。』

サンデー『残念なのは俺も同じさ。』

 

クリットは眉を顰め、野球ボール手榴弾のレプリカを取ると、投げる。的のど真ん中にあたる野球ボール手榴弾のレプリカ。

 

クリットはサンデーの方を向き、深々と一礼する。

 

クリット『俺、先生のおかげでここまでなれました。ありがとうございます!』

 

目を見開いた後、2、3回頷くサンデー。

 

 

スーツケースを持ち、クリント州ニューラサイ市ニューグランドアパートを見上げるサンデー。サンデーは俯き、クリント州ニューラサイ市の市街地を暫く歩く。顔を上げるサンデー。彼の眼にはマグットコーポレーションの投擲教室が見える。

 

フェンス越しに野球ボール手榴弾のレプリカを投げるマグットコーポレーションの生徒達。サンデーとクリットの目が合う。

 

サンデー『クリット!お前…。』

 

クリットは目を見開いて逃げていく。

 

クリット『だ、だって、こっちの方が月謝安いし、あんた教えるの下手くそだもん!』

 

フェンスに手をかけ、崩れ落ちるサンデー。

 

C7 恩義 END

-10ページ-

C8 転職

 

コーサス州アクリ市ミーリー邸宅を見上げるサンデー。遊具で遊ぶミーリーの娘で幼いレイチェル。

 

ミーリーの声『レイチェル。レイチェル、夕飯よ。』

 

立ち上がるレイチェル。

 

レイチェル『はぁ〜い。』

 

レイチェルの手を取るミーリーの夫。

 

レイチェル『パパ。行こ行こ。』

 

唖然とするサンデー。レイチェルは微笑んで、ミーリーの夫に連れられて行く。風がサンデーのコートを揺らす。サンデーは俯き、ミーリー邸宅に背を向け、去って行く。

 

 

コーサス州アクリ市ランスの酒場。カウンターに座り、酒を飲むサンデー。後ろのテーブル席には2たり連れの客が座っている。

 

客A『おい、聞いたか。ユランシアはかきいれ時らしいぜ。』

客B『ああ、特にロメンはやばいらしいな。各地で、ロメン皇帝を僭称した有力者達が争いはじめたじゃねえか。』

客A『へっへ、俺ら傭兵ギルドには好都合!戦ある所、金と女が取り放題、ロメンの女はべっぴんが多いらしいじゃねえか。ぎゃはははは。』

客B『勝てばの話だ。』

客A『勝った方につけばいい。』

 

客Cが客Aの隣の席に座る。

 

客C『おいおい、楽しい話をしているな。俺も混ぜてくれよ。』

 

眉を顰める客A。酒を飲むサンデー。

 

客A『あんたは?』

客C『俺か、俺は近いうち戦地にお前らを運んでやるよ。』

客B『ああ、海賊ギルドか。』

客C『ま、それに向こうの輸送船はいいもん積んでるからな。かっぱらって敗戦国のせいにしちまえばいいんだよ。けけけ。』

客A『そりゃいい考えだ。』

客C『それより、どうやらロメンのタルキィサスが水城のクリイズ城を攻めるって噂だぜ。』

客B『何、そりゃ本当か!』

 

客たちの方を向くサンデー。頷く客C。

 

客C『ああ、俺達海賊にも出番があるらしい。』

 

目を見開くサンデー。サンデーは立ち上がり、チップを置くとランスの酒場から出ていく。

 

 

コーサス州アクリ市海賊ギルドの受付に立つサンデー。サンデーを見上げる海賊ギルドの受付嬢。

 

海賊ギルドの受付嬢『なんのご用でしょうか?』

 

サンデーは受付に肘をかける。

 

サンデー『海賊になりたい。とりあえず今、100000ダルある。』

 

海賊ギルドの受付嬢はコンピュータを見る。

 

海賊ギルドの受付嬢『とりあえず…その金額だと水夫のことも考えて…。この木造船しか購入できませんね。』

 

頷くサンデー。

 

サンデー『分かった。それでいい。』

 

C8 転職 END

-11ページ-

C9 謁見

 

ダンテ海を渡るサンデーの持ち船バロンダ号。甲板立つサンデー、隣には副船長のカリファド。マストから海賊Aが大きく手を振る。

 

海賊A『カンダンテ湾が見えたぞーーー!急げ!急げ!ロメンの船舶ばっかりで、まだどいつもきていないぞーーーー。』

 

サンデーは一歩前に出る。

 

カリファドが後ろを向く。

 

カリファド『ロメン帝国へ通信忘れるなーーーー!』

海賊B『おう!』

 

 

カンダンテ湾に入るバロンダ号。ロメン帝国ソルダム級駆逐艦がバロンダ号の横につき、誘導する。港に泊まるバロンダ号。バロンダ号からタラップが降り、カンダンテの港に降り立つサンデー一向。港には大量の人型機構をはじめとした兵器が並ぶ。

 

サンデーを見上げるロメン帝国百人隊長のユーカサス。

 

ユーカサス『ロメン帝国に助力に感謝する!では、こちらへ。』

 

ユーカサスの後をついていくサンデー一向。

 

 

カンダンテ宮殿玉座の間に入るサンデー一向。玉座に座るタルキィサス。両脇には皮冠を被った息子のロムルスとレムスが座る。サンデー一向を向き、ため息をつくタルキィサス。跪くサンデー一向。

 

タルキィサス『一番乗りに来た船が…木造のオンボロ船とはな。まあ、城攻めまで待機。行ってよし。』

 

立ち上がるサンデー。

 

サンデー『失礼ながら、俺は投擲のスペシャリストです!』

 

目を見開くタルキィサス。

 

タルキィサス『投擲の…。』

 

タルキィサスは手を叩いて笑う。

 

タルキィサス『ははは。面白い。投擲のスペシャリストとな。』

 

ロムルスの方を向くタルキィサス。

 

タルィキサス『ロムルス!』

 

跪くロムルス。

 

ロムルス『はっ。父上。』

タルキィサス『スペシャリスト様の腕前を拝見しようではないか。』

 

頷くロムルス。ロムルスは魔法を唱える。ダンテ海の上空に現れる小さな的。

 

ロムルスは一礼して元の位置に戻る。

 

タルキィサス『そこまで言うのならやってみせよ!』

 

眉を顰めるカリファド。サンデーは口角を上げ、野球ボール手榴弾を取り出し、安全ピンを引き抜くと、投げる。轟音と共に的を貫き、大爆発が起こる。

 

ロムルスは立ち上がり2、3歩前に出て手を叩く。タルキィサスはロムルスの方を向き、手を叩く。

 

ロムルス『すばらしい!まことに見事な腕前です!』

タルキィサス『ロムルスが称賛するとはな。お見事!して、貴殿の名前は?』

 

サンデーは胸を握り拳で叩く。

 

サンデー『俺の名はサンデーだ。』

 

ロメン帝国兵Aが駆け込んでくる。

 

ロメン帝国兵A『報告します!暗黒大陸連邦マグットコーポレーション所属の海賊船より連絡!我々に協力すると!』

 

ロメン帝国兵Bが駆け込んでくる。

 

ロメン帝国兵B『エグゼニ連邦よりコーランド海賊、千年大陸よりモーガン海賊が来ております!』

 

立ち上がるタルキィサス。

 

タルキィサス『おお!ぞくぞくと!余の威信はまだ落ちておらぬ!僭称皇帝どもを根絶やしにするぞ!!』

 

歓声を挙げるロムルスとレムス。サンデーはカダンテ港を見つめる。彼の目に入るマグットコーポレーションの海賊船。

 

C9 謁見 END

-12ページ-

C10 意地

 

ロメン帝国ジューパーズ居城のクリイズ城。クリイズ湾を取り囲むロメン帝国船舶と各国の海賊船群。砲弾が飛び交う。戦列の最後尾に位置するバロンダ号。

 

海賊A『始まったぞーーーーー!!』

 

砲弾がクリイズ城に降り注ぐ、クリイズ城の城壁が青く光り、砲弾を砕く。

 

海賊A『バリアーだ!バリアーが張られている!!』

 

カリファドはマストを見上げる。

 

カリファド『うるせーーー。みりゃ分かるし、こんなオンボロ船に乗っている。俺らからすりゃ、何もできないのさ。』

 

カリファドはサンデーの背中を見つめる。

 

カリファド『そう…何もな。』

 

マストを見上げるサンデー。

 

サンデー『戦況はどうなっている?』

海賊A『こっちが押されている。お、ありゃ魔導士か…。』

 

マストに登っていくサンデー。

 

海賊A『おお、こりゃすげえや。これがまほ…。』

 

海賊Aの後ろに座るサンデー。ロメン帝国のリットリオ級戦艦から砲撃と共に放たれる青い閃光。

 

サンデー『お、こいつはすげえな。』

 

海賊Aは振り向く。

 

海賊A『な、何だ。船長か。驚かすなよ!』

 

水柱が立ち上り、煙がクリイズ城城門を覆う。

 

サンデー『…やったか。』

 

煙が払われ、現れる無傷のクリイズ城城門。

 

海賊A『何てことだ。あんだけやってもびくともしないとは…。』

 

クリイズ城壁から砲弾が飛び、赤い閃光がロメン帝国の船舶のいくらかを焼く。

 

海賊A『…こりゃ、俺らの木造船じゃひとたまりもねえぞ…。』

 

 

夕方、クリイズ城から距離を取る船舶達。最後尾に位置するバロンダ号の甲板。船長室に向かうサンデー。甲板に座り込む海賊A。

 

海賊A『おい。聞いたか。マグットコーポの奴ら、投擲の精鋭らしいぜ。』

 

頷く海賊B。

 

海賊B『しかも、前金まで払われてるらしい。』

海賊C『ち、ギルドの契約上、船長が死なない限り転属することもできないしよー。』

海賊D『だいたい、こんな木造船せなにができるってんだ?弾にあたれば一発でお陀仏。この尻の先から動けやしねえし。』

海賊C『これじゃ、手柄もたてられたもんじゃねえし、第一、この遅さじゃ、ほかの奴らに先を越されちまうよ。』

 

眉を顰め、ため息をついて船長室に入るサンデー。

 

 

深夜、バロンダ号甲板に集まるサンデーとカリファド。及びバロンダ号の海賊達。サンデーは海賊達を見回す。

 

サンデー『俺達がの奴らを出し抜くには夜襲しかねえ。あの城門は堅牢だが、近接すればいけるはずだ。』

 

サンデーはカリファドの方を向く。

 

サンデー『木製はレーダーには引っかからない。なあ、カリファド。』

 

頷くカリファド。カリファドはバロンダ号の海賊たちを見る。

 

カリファド『では、お前達、俺達はこれから、灯を消し…あの城壁に接舷する!』

 

頷くバロンダ号の海賊達。

 

カリファド『では、船長。前に出て、号令を。』

 

頷き、バロンダ号の海賊達に背を向けるサンデー。バロンダ号の海賊達は各々が槍を持ち上げる。サンデーの背を複数の槍が突き刺す。目を見開くサンデー。

 

サンデー『お前ら…。』

 

目を見開き、部下たちを見回すサンデー。引き抜かれる槍。甲板倒れるサンデー。カリファドはサンデーを蹴飛ばす。

 

カリファド『あんた、海賊の才能がねえよ。』

 

甲板の上で血をまき散らしながらのたうち回るサンデー。カリファドは銃を鳴らす。

 

カリファド『よ〜し、今から俺らはマグットコーポレーションに鞍替えだ。ついて来い。野郎ども!!』

 

歓声。彼らはボートに乗り、マグットコーポレーションの軍艦へ向かって行く。

 

サンデーは握り拳を震わせ歯を食いしばって立ち上がる。

 

サンデー『俺はまだできる!俺はまだできるんだ!!』

 

懐から野球ボール手榴弾を取り出す。サンデーはクリイズ城城門を見つめ、野球ボール手榴弾の安全ピンを抜く。

 

サンデー『俺はまだ終わっちゃいない!俺は、俺は…。』

 

サンデーの唇から一筋の血が流れ、掌から零れ落ちる野球ボール手榴弾。

 

サンデー『うおおおおおおおぉおおおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

サンデーは大きく振りかぶり、ワインドアップで勢いよく腕を振り下ろす。7色に輝く閃光がサンデーの手から放たれ、クリイズ城城門に向かって行く。青い光の壁が割れ、大爆発が起こる。

 

炎上するクリイズ城城門。サンデーは顔を上げ、クリイズ城城門を睨み付ける。

 

サンデー『見たか!この剛腕のサンデーの剛速球を!!見たか!見たかーーーーーーーーーっ!俺が城門を破った!!俺がっぐあ!!』

 

サンデーは天を見上げ、大量の血を口から吐きだし、崩れ落ちる。

 

コーランド海賊親分『あれ〜、何かしらんが城門が爆発しとるぞ。』

コーランド海賊A『よっしゃ!攻めれー!攻めれー!!』

コーランド海賊B『よっしゃ!略奪じゃーーーーーー!!』

 

サンデー『やったぞ…。俺は、あの城門を壊した。俺がやったんだ!俺の力だ!!』

 

立ち上がるサンデー。サンデーから流れる血が彼の周りを染めていく。

 

サンデー『これが俺の力だ!俺は投手だ!名投手なんだ!!俺はまだまだできる!俺は終わっちゃいない!俺は剛腕のサンデーだ!俺は終わっちゃいないんだーーーーーーーーーー。』

 

サンデーの足元の野球ボール手榴弾が爆発する。四散するサンデー。炎上するバロンダ号。

 

モーガン海賊A『お、何だ?』

モーガン海賊B『おいおい、ドジな野郎だぜ。まったくこの掻き入れ時によ!』

モーガン海賊親分『ま、分け前が増えていいこった。ははははは。』

 

C10 意地 END

 

END

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
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R-18グロテスク 悪魔騎兵伝(仮) 

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