【獣機特警K-9UG】勇気の意味【RS隊・交流】 |
ラミナ市郊外、20:00。
アパートの住人の火の不始末により、火災が発生。火は、瞬く間に木造の建物全体を飲み込んだ。
駆けつけた消防隊が懸命の消火活動に当たっているが、火は燃え盛るばかりだった。
「マリア隊長! 逃げ遅れた人を救助してきます!」
RS隊の纏 孝也[まとい・たかや]が叫ぶ。
「ダメよ! 火の勢いが強すぎる! もう少し待機!」
隊長のマリア・アインリヒトの言葉に、孝也は食い下がった。
「でも! 要救助者は助けを待ってるんです! オレ、行きます!!」
「あっ!? 待ちなさい!!」
マリアの制止も聞かず、孝也は走りだした。そして、燃え上がる建物の中に消えていく。
1分、2分、3分……。孝也たちは戻ってこない。
と、その時!
ガラガラグシャアァーンッ!!
建物が耐え切れず崩落した!
「孝也君!!」
悲鳴のようなマリアの絶叫。
そして、辺りを沈黙が支配した。
永遠のような時間。と、がれきの下から、這い出してきた人影があった。
「要救助者確保……。救助を完了しました」
それは、幼い少女を抱きかかえた孝也だった。彼の耐火服の背中は大きく裂けていた。左腕は肘から先がちぎれ、骨格フレームがむき出しになっている。崩れ落ちてくる建物から、身を挺して少女をかばったのだろう。
少女を救急隊に引き渡してから、孝也はマリアに歩み寄った。
「先輩、オレはちゃんと要救助者を助けだしましたよ。人の命と比べたら、腕の一本や二本なんか安いもんで……」
パンッ!
乾いた音が響いた。マリアが、孝也の頬を平手で打ったのだ。
「……勇気の意味を履き違えてもらっちゃ困るんだ。キミのはただの向こう見ずだよ。死にたがりは、あたしのRS隊には必要ない」
「せんぱ……」
孝也の言葉を、マリアは遮った。
「隊長命令を無視した罰として、一週間の自宅謹慎を命じる。以上」
そして、振り返ることもなく立ち去った。
立ち尽くす孝也。
「……リカルド・マルタン」」
その声に、孝也は振り返った。
「ラウル署長!?」
「リカルド・マルタン。かつて、2年間だけRS隊に所属していた男だ。私が一般の救助隊からスカウトしたんだ。マリアも彼にはよく懐いていたよ」
「その人がいったい……?」
「熱いヤツだったよ。『自分の命を引き換えにしてでも、人を救いたい』……それが口癖のような男だった」
ラウルは言葉を紡ぐ。
「そして、2年前のアクアアイルコンビナート大規模火災で……殉職した。隊長の制止を振りきって、燃える工場内に突入して、な」
ラウルの瞳が微かに揺らいだように見えた。
「マリアは、目の前でリカルドの最期を見た。だから、彼と君が重なって見えてしまうのだろう。君に、リカルドと同じ道をたどってほしくはないんだ」
「……」
カン、カン、カン……・
消防車の鳴らす鐘が、響いた。
説明 | ||
タカヤ君 http://www.tinami.com/view/657057 ラウル署長 http://www.tinami.com/view/654333 マリア http://www.tinami.com/view/656879 リカルド・マルタン隊員がRS隊に在籍していた期間と、殉職した事件はIGとIIGの間ということで。その時にはマイちゃん http://www.tinami.com/view/636102 はRS隊を退職していたとか。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1000 | 976 | 4 |
コメント | ||
>みゆうさん 「ロボットだから大丈夫」とタカヤ君本人は言ってますが、それでも重症であることには変わりないわけで。テレジア博士(ロボットのお医者さん)にこってり絞られるといいよ!(尾岸 元) 腕が千切れるとは…生身の人間だったら取り返しがつかないところですね(=°人°=;)(みゆう) >Dr.Nさん マリアのメッセージを正しく受け取ってタカヤ君が成長してくれることを信じてます。(尾岸 元) マリアちゃんの意外な一面が。しかしそれも悲しい出来事があったからこそ。タカヤくんもまたひとつ成長しましたね。(Ν) >古淵工機さん 成長する系主人公の資格がありますね、タカヤ君。(尾岸 元) 勇気と無謀は違う…その言葉を胸にかみ締めながら、タカヤは成長していくのですね…!(古淵工機) |
||
タグ | ||
【獣機特警K-9UG】 【K-9UG】 【K-9UG】RS隊 【K-9UG】消防関係者 【K-9UG】交流 | ||
尾岸 元(OXY_GEN)さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |