真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜 第2幕 |
真・恋姫†無双〜物語は俺が書く〜
第2幕「世界は自分中心に回っている。そう思った方が楽しい。By.天の道を往く男」
一刀は自分のこと『自分はその天の御遣いだ』と、名乗りあげた。しかし、それがあのような事態を招くことになろうとは…この時、誰にも予測が出来きなかった。
「ほぅ?貴公があの…」
「天の御遣いさんですか〜?」
「して、証拠は…?」
いきなり『天の御遣い』だと言ってもいきなり信じる者がいないのは当然の結果であった。一刀はどう証明しようかと何気なしに周りを見る。
右の方を見る。しかし、針のような山々しかなかった。
左の方を見る。デブのおっさんが、仲間の首に刺さっている針を抜き取り、抱えて逃げようとしている。
後方を見ると砂塵が立っていた。
「あれっ?」
気になって一刀はもう一度左の方をを見るとデブのおっせんが馬に跨っていた。他のおっさんも、意識を朦朧とさせながらも馬に何とか跨り縄を打つ。
「あぁ、盗賊さんたちが逃げますよ?」
「なんと?」
「デブの方に針を打つのを忘れていた…」
気がついた時にはもう、数百メートルも離れている上に馬で逃げられた以上、もうお手上げ。一刀も一時は自分の詰めの甘さに拳を握ったが、そこまで執着する理由も無い為に直ぐに拳を解き、肩を竦める。
「まぁ、いいか」
「確かに同じ二本足なら負ける気はないが、馬となると…其れより一刀殿」
趙雲はまるで、美味しいところを誰かに取られたかのような顔で話しかけてきた。
「『天の御遣い』云々は我々でなく此方に向かってくる、ここの刺史[しし]殿に説明をすると良い」
「旗印は…分かりませんが…きっと、陳留の刺史さんですね」
「『曹』って描いてるぜ?」
「見えるのですか〜?」
趙雲が一刀の後ろの方を指差し、一刀も後ろ向く。先ほどは砂塵しか見えなかったが今は人影、そして『曹』と描いてある旗が目に入る…趙雲以外の女の子じゃ、人影すら見えない距離だというのに…
「勿論、視えてるぞ?なんってたて、『天の御遣い』だからな」
そんな一刀を無視して踵を返す三人組。
趙雲曰く、『楽しい事なら首を突っ込んでも構わぬが、官が絡むと面白みがなくなるのでな』。
戯志才曰く、『貴方のような貴族を私たちのような旅の者が連れて歩くと良からぬ想像をする者が居りますゆえ』っと、の事。
そんなこんなで置いてきぼりを喰らったが、趙雲が最後に『もし、次ぎ会う機会があれば、その時は真名で呼んで構いませぬよ』と一刀に言い残し、その場を去った。
この世界で初めて認められたようで嬉しく感じる一刀であった。
趙雲達が去ってから十分位すると、一刀の前に馬に跨い鎧を着ている100から150の人達……兵士に囲まれていた。
「……」
兵士が近づき不審者である呆然と座り込んでる一刀を睨みつけ槍を構える。
しかし、一刀は怯えるどころか槍を掴み逆に目を細め睨み返してきた。その鋭い眼光に恐れを抱き、目を逸らした。
「貴様!何を賊の一人に恐れを抱いている!?その程度で華琳様の兵が務まるとでも思っているのか!?」
「姉者、兵が賊より姉者に怯えているから余り声を張り上げるな。それに、こ奴…」
「仮にも春蘭が調練した兵を眼力のみで怯えさせるのだから、ただの賊ということは無いでしょう。それなりに出来る様ね?」
叱責共に現れたのは兵達の後ろで見ていた上司達と思われる人物三人。なんの迷いもなく、威風堂々と一刀の前に現れた。
一人は小さな身体を軽装な鎧で護っている十代の少女。顔立ちが良く金色の美しい髪を、髑髏を模した髪止めクルクルのツインテールにし、自信に充ち溢れた蒼き瞳で一刀を見定めるように見つめていた。
もう一人は十代後半の女性。赤い袖無しのチャイナドレス(動きやすいよう裾は短め)の上に、軽装な右側しかない胸当てと右腕に髑髏を模した装飾品に綺麗な黒い長髪。赤き瞳は一刀と映し、主の命令一つですぐにでも殺せるように大剣を構え、少女の右側に待機していた。先ほど兵を叱責したのもこの女性だった。
最後の女性は黒髪の女性と同じ格好をしており違いと言えば、服の色が青で胸当てと装飾品が逆の方に付いていること。そして、亜麻色の短い髪(右目を前髪で隠している)にくすんだ黄色い瞳で一刀を分析しながら、どんな行動をとられても対処できるよう少女の左側で待機していた。
この三人と対峙している間に一刀も先ほどの言動・立ち位置・獲物からそれなりに分析を試みた。
「(金色の少女を囲むように立っていることから、あの少女が大将かな?となると、残り二人は従者で赤いのは大剣を構えていることから前衛…言動からして突進型の人かも、取りあえず注意してこう。青いのはよくわからんが鎧を着てるから戦闘はするだろうし、多分冷静な分析も行える人かもしれない。それに赤い奴を『姉者』と呼んでいたこと視野にいれると事情は分からないが連携が出来る可能性があり・・・求められる戦闘方法は)」
周りの状態、地形、敵の陣形を確認し背中のバックに手を入れようとしたが。
「!?春蘭!」
少女はその行動を見逃すことはなく、掛け声と共に赤い女性を嗾[けしか]る。赤い女性は大剣を振るい一刀の首を飛ばそうとするが、それを後ろへと回転して避け、バックに手を入れひし形の形をした小刀…『苦無[クナイ]』を取り出した。
『苦無』…昔、日本には大名や悪徳代官が居り、そのような者を殺して報酬を貰うことを生業としていた集団がいた。その名は忍、忍者。忍は小回りの利く武器は扱いその中でも『苦無』は投擲、切断と用途は多く、小さい為に携帯、持ち運び、生産性も高い。
一刀はクナイ三本を取り出し、敵の出方を観る為に目の前にいる三人に一本ずつ投げつける。周りにいた兵は最初は何が起こったのか解らなかったが、状況を理解した瞬間同時に襲いかかってきた。それを刃渡り1メートルはある自分の愛刀『朔夜』で鞘に納めたまま受け流し、すれ違い際に首に手刀を打ち込み返り討ちにあった兵は呻き声を上げて気絶していった。
それから牽制するかのように刀を抜刀し、兵の首に位置に上げ踊るかの如く体を一周させる。それにより、近づくと首を切られるかもと思い近づこうとしなくなった。
先ほどクナイを投げた方を向けば、待っていたかのように赤い女性が大剣を地面に差しそれによりかかっていたおり、その下には見事なまでに真っ二つに切られたクナイの残骸が転がっていた。
青い女性は金色の少女を前に護るかの様にように弓を構えておりその少し前には撃ち落とされたクナイと撃ち落とした物と思われる矢が地面に突き刺さっていた。
金色の少女は未だに分からないが、どうやら青き女性は弓使いのようだ。その証拠に一刀に矢の標準を合わせると共に赤い女性の援護をできる様、弓を構える。
「まったく。不意打ちをしておきながら、我々を待たせるとは……無礼な奴だ」
「今の攻撃に殺意が感じられないことから我々の出方を窺った、っと思われるのですがどうでしょ、華琳様?」
「全く同じ見解だわ、秋蘭。春蘭、殺す前に尋問なきゃいけないから生け捕りにしなさい。秋蘭は援護を!!」
「はっ!仰せのままに」
「御意」
その命令と共に赤い女性…春蘭と呼ばれている女性は一刀に向い大剣を振るい、青き女性…秋蘭と呼ばれる女性は矢を放つ。
一刀は朔夜の鞘『望月』で矢を弾き、刀身で大剣を受けた。
「っ!?お、重い!」
剣道の癖で敵の攻撃を受けてしまい、あの細腕からは想像もつかない威力に手が痺れてしまった。そしてあからさまな隙を作り、春蘭が大剣の柄で一刀に鳩尾を喰らわる。
「うっ!?」
「なんだ、所詮この程度なのか?」
地面に膝をつき倒れる一刀にあきれ顔で落胆した声を出した。
一刀もそこで意識を手放した。そして、手放す瞬間『朔夜』が微かに震えているように見えた。
『刀で大剣を止めようなんて、愚の骨頂ね。だから、対等に戦える…それ以上の力があるのに貴方は三下なのよ』
と、嘲笑っているように見えた。
「荘周が夢を見て蝶となり大いに楽しんだ後、目が覚める。ただそれが果して荘周が夢で蝶になっていたのか、蝶が夢を見て荘周になっていたのかは……だれにも証明できないの。……聞いてる?」
「えぇ、聞いてますとも。それよりも曹操様、いい加減に私の縄を解いて貰えませんかね?」
あの後、一刀が目を覚ました時にはどこかの店の中で、体には荒縄で拘束されておりその状態で尋問を受けるはめとなった。
最初は自己紹介との事で一刀は自分の事を簡単に説明する。名、生国、所属(学校)、家族構成等…迂闊な発言をすれば首が飛びかねないので慎重に答えるが、何か不公平なものを感じて逆に質問する。
『なぁ、いい加減にあんた等の名前教えてくれない?じゃないとチビ・デコ・鉄仮面[てっかめん]と呼ぶ…』
最後まで言い終わるよりも前に金髪の少女が自分の獲物と思われる死神のような鎌を一刀の首に当てる。しかし、一刀は怯えもせずに不敵な笑みを浮かべていた。一刀は未だにこれは夢だと思い、死んだら目覚めるだけだ、と考えていた。それを華琳という少女は一刀と同じように口の端を釣りあげる。
『この曹孟徳を前に恐れもせずにそのような暴言を吐くとはその見上げた肝に免じて許しあげましょう』
一刀の時間が停止いた。趙雲が女性だった事から他の武将もその可能性があるとは考えていたが…曹孟徳がこんな小さい子だとは予想していなかった。そして、自一刀の知っている三国志において曹孟徳の近くにいた兄弟は名を口にする。
『夏候惇』
『応?』
律儀に反応する春蘭と呼ばれていた女性は『魏武の大剣“夏候惇”』らしい。となると、夏候惇のことを『姉者』と呼んでいた女性は。
『夏候淵』
『!?貴公、何時私の名を?』
『魏武の神弓“夏候淵”』が驚きの声を上げる。そしてついうっかりして、余計なことまで話してしまった。
『そして、“魏王”・曹操か…』
『!!?どうして!?』
曹操が余裕の笑みを崩し、驚きの声をあげた。しかし、自己紹介してないのに名を知っていたことにではない。
『答えろ、貴公!なにうえ我らの名を知っている!?』
『そ、そうだぞ!?華琳様を呼び捨てにしてタダでおけると…』
『春蘭、秋蘭、下がりなさい』
夏候姉妹を威圧し、後ろへと下がらせ一刀の前へとやってくる。威風堂々としてはいたがその眼は困惑に充ちていた。
『どうして…?信じられない、なぜあなたが“魏”という名を知っているの?』
『どうしてと申されても、ねぇ?』
一刀はそこで初めて迂闊なことをしたことに気づいた。今の曹操が魏の王とは限らないのだから。夏候姉妹も困惑の眼差しで自分の主を見つめていた。その眼差しに気づき姉妹の方を向き話し始める。
『“魏”というのは私が考えていたこの国の名の候補の一つなの。二人には近いうち話そうと思っていたのだけど…それを!』
曹操が、夏候姉妹が一刀を睨む。敵意丸出しにし、自分たちの獲物を掴む。
『どうして貴方がそれを知っているの!?』
『まさか、五胡の妖術使い!?』
『華琳様、お下がりください!魏の王となるお方が得体のしれない猿と一緒にいてはいけません!!』
『ちょ、武器を振るな!つか、誰が猿だ!?ムキー!?』
その後は一刀と春蘭がひと暴れし、落ち着いた所で黙秘していたが曹操の『拷問にかけるわよ?』の一言に折れた。一撃で死ぬ[目覚める]ならともかく、嬲られて死ぬ[目覚める]なんて嫌だからだ。そして、一刀は自分が未来から来た―時間跳躍して来たかもしれない事と今までの経緯を曹操に話した。
突拍子な事に驚いていた三人だったが曹操が出した結論は…南華老仙。
「胡蝶の夢だよな?」
「あら、よく知っているわね?」
「学校のテスト…生徒がどれだけ教えたことを理解しているか検査することなのだが、最近やってな。丁度範囲内だ」
「て、す、と、については分かったけど『学校』というのは?」
「華琳様〜?結局こ奴は何者なのですか?」
夏候惇が困惑気味に訪ねて来て、隣にいた妹の夏候淵が代わりに答える。
「それは華琳様にも解らないということだ。だから理解しようとするなよ、姉者?」
「むむぅ?」
それでも理解しようと頑張る夏候惇。そこに、
「春蘭、こいつは天の御遣いだそうよ」
などと、大言した。それに釣られ、一刀も、
「そう、吾こそは彼の管輅の占いに出てくる天の御遣いなり、ってコラ、短い脚で蹴るな!鎌を振ろうとするな!」
「なんと、そうなのか」
「……誰か何とかしてくれ」
調子に乗り、曹操に蹴られ鎌を振られ、夏候惇は主の大言を真に受け、この混沌から抜けたい夏候淵は周りに助けを求めるが、誰も目を合わそうとしない。
「兎に角、次からそう名乗りなさい!!じゃないと五胡の妖術使いとして槍で突かれるわよ?」
暴れたせいで乱れた服を整えながら一刀に命令する。一刀はというと、曹操が振った鎌で縄を切っていたが暴れはしても逃げる素振りはしなかった為、そのまま放置されていた。今は近くの椅子に座っていた。
「すでに旅の人にそう名乗ってるよ。曹操がここの刺史だどいうことと真名の意味も聞いた」
「そう。この世界の事を知らないのに真名を一度も呼ばなかったのはそのせいね。命が助かったわね、もし私の真名を呼んでいたら」
想像しなくても解る。夏候惇に斬られ一刀はこの世界[夢]とおさらばしていたろう。
「華琳様、この件に関してはここまでで宜しいでしょ」
「そうね、一刀。貴方にもう一度問うわ」
曹操の真剣な表情に釣らて背筋を伸ばす。
「あなたを襲った盗賊の特徴は背の小さいのと太ったのと、髭を生やした男…でいいのね?」
「もしそうなら情報と一致します」
「あぁ、確[しっか]りと記憶してるぞ。で、そいつ等があんたの大事な物…南華老仙を盗んだと」
曹操はそいつ等を追っていたが見失い、代わりに一刀を見つけたそうだ。『あの時、捕まえていれば報酬かなんか貰えたかな』とやましい事を考えていると、視線を感じて顔を上げると不敵に微笑んでいる曹操と目が合った。その瞬間、一刀の勘が背中に電流を走らせる。
「曹操、何考えているのか当ててやろうか?そして、当てた暁には衣・住・食を提供してくれ」
「ほんと大胆な事をするわね…いいでしょう。言ってみなさい」
曹操は笑みを崩すことは無かった。きっともう一刀という人物をある程度把握しているためだろう。一刀自身も状況把握をしているので迷うことなく発言する。
「盗賊狩りに協力させようとしている。理由は、俺が盗賊の顔を覚えていること。あわよくば『天の御遣い』が自分の下にいる事を知らしめる、他国への牽制する事が出来る。どうだ?」
夏候姉妹は開いた口が塞がらず、曹操自身も前半は予想通りの答えだったが、後半まで見抜かれるとは思わなかった。最初は呆然としていたが、次第に笑い始めた。
「ふっ、ふっふふっ、だ、ダメっ!可笑し過ぎる。まさか、ここまで言い当てるとは…いいでしょう。約束は果たすわ、だけど盗賊狩り以外にもしっかりと働いて貰うわよ?」
「当然だな、俺だって只飯を食う気なんて毛頭ない」
「それからあなたの真名を預けなさい」
最早、話にすらついて来れない夏候姉妹をおいて交渉していく二人だったが突然、即答していた一刀が黙り込む。曹操も不思議に感じた。すると一刀はポツリと言う。
『真名は無い』と。そして、自分の世界では真名という概念はなく、一刀が真名に当たると。すると、話を聞いていた三人が一斉に立ち驚いた一刀は後ろへと引っ繰り返った。
「ど、如何した?」
「なんということだ、貴公は出会ったばかりの我らに真名まで許したと?」
「いや、名を聞かれたらそう答えるしかないし。言っておくが偽名じゃないぞ。親からもらった名はそれだけだ」
「そう、それじゃ…春蘭、秋蘭」
「「はっ!」」
二人に向き合う曹操。そして、俺に自分の真名を預けるように言った。夏候惇だけは最初は嫌がっていた(主の真名を呼ばれることを)が曹操の説得[命令]により渋々承知した。そして、俺の方を向き己が名を名乗った。
「我が姓は夏候、名は惇、字は元譲、真名は…春蘭だ。気安く呼ぶなよ」
そう言いつつ手を差し出す。その手を掴み握手する。次に夏候淵が手を差し出しその手を掴み握手する。
「私の性は夏候、名は淵、字は妙才、真名は秋蘭だ。姉者共々頼む」
そして、金髪の少女と向き合う。
「我が姓は曹、名は操、字は孟徳、真名は華琳…今よりこの真名をあなたに預けるわ」
そう言って、一刀の手を見る。最初は分からなかったが直ぐに悟り、自分の手を差し出す。自分の名と共に。
「俺の姓は北郷、名は一刀。字・真名はない。その代り、俺の知識を華琳の為に使うことを誓う」
満足がいったのか、曹操…華琳はその手を掴み熱く握る。
「よろしく、華琳、春蘭、秋蘭」
目の錯覚でなければ皆が笑っているように見えた一刀。そして、自分の物語がここから始まるように感じた。
「処でお前、よくこの状況で華琳様に交渉を持ち掛けたな。そんなに上手くいく自信があったのか?」
確かに失敗すれば、何も得ることは出来なかったろうし下手をすれば華琳にただ働きさせられる虞[おそれ]だってあった。華琳と秋蘭は肝が据わっている者だと思っていた。一刀は盗賊の時と同じく、右人差し指を天高く揚げ、こう宣言した。
「天の道を往く男の人が言っていた。“世界は自分中心に回っている。そう思った方が楽しい”っと。 故に俺の思い道理になって当然だ」
必ず落ちをつける男。その名は『北郷 一刀』秋蘭の中でそれが一刀の定位置となった。しかし、残りの二人はというと。
「素晴らしいわ。その人に会ってみたいわ」
「華琳様!?」
「“世界は自分中心に回っている”か。天の世界ではそうかも知れないが、この世界では華琳様こそが世界の中心だ!!」
「突っ込むところが違うぞ、姉者!?」
誓いを立てたこの日、この時、他の場所でも強き想いを馳せている者がいた。
―ある城の宿舎―
「あぁ、曹操様。もうすぐで…もうすぐであなたに会えます。はぁ〜ん」
己が欲望のままに動くもの。
―都市から離れた村―
「大丈夫だよ、みんな!僕が盗賊からこの村を護るから」
優しで思いでみんなを護るために武器を取るもの。
―田舎の村―
「この籠全部売るのは大変なの〜」
「みんなが作ってくれたものだぞ?全部売り捌かないと」
「気を張り過ぎるのは戦いの時だけにしてやー」
姦しく騒ぎながら村の為に何かしようとするもの。
―ある村―
「あーん!お姉ちゃんおなか減った!」
「ちーだってお腹減ってよ」
「お金がないから歌って稼ぐしかないわ」
大陸一の歌手になる為に旅するもの。
―ある料亭―
「季衣、今頃お腹すかせているのかな?」
友を心配するもの。
―とある城の見張り台―
「ぷはーっ!酒がうまい!!風も気持ちがえぇ、なんかいいことがありそうや」
何か、いいことを予感するもの。
―とある天幕―
「くー…おぉ!ねぇねぇ稟ちゃん。今、いい夢を見たので今日から改名して……程c[ていいく]と名乗ることにしました〜」
「そうですか、宜しいのでは」
自身の名を改めるものと旅するもの。
そして、
「ここが桃園…愛紗ちゃん、鈴々ちゃん!ここで誓いを立てようよ」
「えぇ、これが私達の始まりの地として」
「みんなで乱世を終わらせるのだ!」
「雛里ちゃん…私、私塾を出ようと思うの。この乱世を終わらせる為にこの知識を使いたいの」
「朱里ちゃん…うん、私も行くよ。一人じゃ駄目なことも二人なら、なんとかなるよ」
「お前か、客将として志願したという者は」
「えぇ、なんですか、そんなに見つめて?メンマは上げませんよ」「いらん」
「おーい、たんぽぽ?どこだー、置いて行くぞ?」
「ここにいるぞぉ!置いてかないで!!翠お姉さま!!」
「桔梗様、また劉璋[りゅうしょう]が無理難題を!?」
「またか!?あの坊主は!!」
「でもやるしかないは。民の為にも」
「お母さん、がんばれー」
「……すぅ〜」
「恋殿、起きてくだされ〜」
「恋!!月[ゆえ]から離れなさい!」
「私は構わないよ、詠ちゃん」
「恋、私と勝負だー!」
「おほほほほっほ、げ、っほ」
「姫、笑いすぎですよ」
「蒸せるなんて、大陸の最後かしら」
「みぃにひれ伏すのにゃー」
「はっはー」
「は、はー」
「はーはー」
「あれー雪蓮様機嫌いいですね?」
「うむ、最近あの調子じゃ」
「なんかいいことがありそーとかいっていた」
「早くなんか起こらないかな〜」
「すぐに動けるように準備しておけ、思春、明命、亜莎。それからシャオ!勉強しなさい!!」
「ヤダヨーだっ!!」
「逃げ脚だけはすごいですね」
「まったくだ」
「えっと、いいのですか」
「美羽さま?また、孫策さんに無茶を…さすが大陸一のいじめっ子!!」
「にょほほ〜、もっと褒めてたもれ」
「うん?泣き声がする。今行くぜ!!この五斗米道[ゴットヴェイドウ]がな」
「ぬぅ、行くぞ貂蝉。だーりんと共にな」
「分かっているわよ。ご主人さま今行くわ〜。そして、華陀ちゃんまってー」
陳留の城―ある一室。一刀は華琳に部屋を借り其処に滞在する事となり、風呂から上がった処だった。
―――カツン。
「んぅ?『朔夜』か」
物音がした方を見ると愛刀の『朔夜』が倒れていた為、拾い上げふと、春蘭にやられた時の『朔夜』が喋った気がした事を思い出し、鞘の『望月』から引き抜き、
『ぷはっー、やっと抜刀してくれた。もぅ、焦らすのが得意なひとね〜ってちょ…』
無言で納めた、いいまでに無い速さで。
一刀「疲れてるんだ。そうに違いない、俺の刀は喋らないのだから。うん、おやすみ」
刀を投げ、寝台に潜る一刀の横で『朔夜』が震えていたがそのまま、夢の夢に落ちようとしていた。
―――この瞬間、貴方は物語を開[書]く鍵[筆]を手に入れた。
さぁ、始まりますよ。貴方が描く物語をその手で実現しなさい―――
―???−
暗い部屋に蝋燭に火を灯し、その明りで本を読む青年がいた。静かだったその部屋にコツコツと、足音が聞こえてきた。
「于吉、北郷が確認できたと聞いたが?」
本を読んでいた青年、于吉が本を閉じ声のした方を見る。そこには于吉よりも小柄な青年、左慈が仁王立ちしていた。
「えぇ、ですがまた三国志です。更に前とはかなり性格も違うようですが」
「俺達のすることは変わるまい」
「はい、ですが今はまだ動くわけにはいきませんので…ねぇ?」
「そう言いながら近づくな!変態野郎」
さぁ、この世界の一刀の運命はいかに……3幕「今の俺に前振りは……ねぇ!!」へ
すみません。更新が大変遅れました。やはり仕事をしながらだと一週間に1,2本が限度でしょうか?しかも、誤字脱字も多いでしょうが目を通して頂ければ幸いです。
補足…苦無[クナイ]
子供の時、男の子は誰もが忍者に憧れるもの…一刀もその一人。しかし、彼は熱中し過ぎる傾向があり、忍の武器紛いな物を自作したり忍術紛いな物まで修得してしまった。子供の頃は「僕に半端は無い。やるからには徹底的にクライマックスだ!!」が口癖だったとか(今もたまに夜の部屋から聞こえる)。
本文で説明した通り、その用途は多く手裏剣の様に飛ばすことも可だ。
説明 | ||
今回は長編となりました。 この作品の北郷 一刀は性格が全く異なりますのであしからず。 仲間には優しいですが敵と判断すると最低です。 主に落とし穴に嵌めたり、縄で逆さ吊りにしたりと…。しかも、いつ仕掛けたのかも解らないほど鮮やかに。 強さは武将達と渡り合えるくらい。 しかし、武力が全てはない。 得物は主に刀。時に暗器を使い武将に「武士としての誇りはないのか!?」の問いに「俺、武士じゃないし」と答えたりする。 ※追加項目 ・多少氣を使います。凪や祭ほど量は多くは無いですが技量・応用に至っては上という設定です。今作品には関係ありませんが。 |
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刀がしゃべった?・・・まぁなんでもありですよ。おもしろければね。(ブックマン) 天道様の次は電王か…。面白くなりそうですねぇ。続き楽しみにしてます(よろづ) 術的なものは使えるんですか?(sin) ふむ…我の道を行こうともやることはやっている一刀、って感じですね。次回期待して待ってます(MiTi) 内容は好き・・・なのだが、誤字脱字が気になった。2、3箇所あるから確認したほうがよいかと。次回に期待(☆samidare☆) なんとゴーイングマイウェイww(ルーデル) なんか意外にこの一刀良いですな!! 次も期待期待!!!!(YUJI) 何というか…一刀らしくないのに一刀らしいのが良い。今後も期待していますぞ(タタリ大佐) |
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