恋姫無双 武道伝 4話 |
「よう兄弟」
村の入口で見張りをしている男に声をかけると、居眠りをしていたのか男はビクッと体を強ばらせた。まったく、ほんとに平和ボケしてやがるな。
「は・・・はいっ、異常はありません」
寝ぼけているのか、俺が見ない顔だからどっかのお偉いさんだと思っているのか、ぎくしゃくとした動きで礼をとってくる。見た目は青年、俺よりかなり背が高い。なかなかいい体格をしている。
「ああ、ご苦労さん。ところで今日の見張りは一人かね?」
「はっ、普段は二人なのですが、もう一人は長から話があるとかで遅れています」
遅れている、ということはやはり前もって程立達が話を通していたのだな。しかし一人きりの見張りが居眠りとは感心しないな。
「ああ、長の話というのは俺たちのことだろう。最近この付近の邑が賊に襲われて壊滅した。俺たちは公孫賛殿から依頼されてその邑の救護に向かっていたんだが・・・」
そこで言葉を切ってちらりと星に視線を送る。
「我々が着いた時には既に屍と廃屋しかなかった。そのため我らは手分けして近隣の邑に入り、賊への防備を固めることにしたのだ」
星も俺の意図を汲み取ってくれたようで、スラスラと嘘を並べていく。嘘も方便、あながち間違ってもいないだろう。公孫賛も名声が高まるし、文句は言うまい。それにこうでも言わないと納得しないだろう。無駄な確執は避けて通りたい。
「こっ、これは失礼しました。公孫賛様の使者の方とはいざ知らず・・・」
見張りは慌てて膝を着き頭を下げる。
「いや、いい。俺たちは正式な使者じゃない。客将みたいなもんだからな。ところで明日、この邑の男手を集めてもらえるか?俺たちがしばらく指揮をとることになったんで、挨拶をしておきたい。」
「は、承知しました。では明日邑の広場に皆を集めます。申し遅れました、私は姓は厳、名は綱と申します。御芳名をお伺いしてもよろしいですか?」
「ああ、俺は李文、こっちが」
「趙雲だ。よしなに頼む」
フッと星が流し目を送ると、見張りはポーっと見とれてしまっていた。まあ男なら仕方ないよな。
「星、あまりからかってやるな。ではな、見張りをしっかり頼む。」
伝えることは伝えた。明日からが本番だな。礼をとって見送ってくれる厳綱に手を振り、流石に疲れたと宿に足を向ける。
「で?子文よ、お主はどこで寝るのかな?」
しまった、夜は星が部屋を使うんだった。見張り小屋ででも夜を明かそうと思っていたのに、話の流れから立ち去ってしまった。今更厳綱のところに戻るのも締まらない。どうしたものか。
「まったくお主は。切れ者のようで抜けているな。公孫賛殿の客将が野宿などというわけにも行かんだろう?おとなしく私と相部屋で休むんだな」
ううむ、俺としては美人と寝れるのは嬉しいが、ここで頷いていいものなのか?だが星のいうように、公孫賛の客将などとホラを吹いた手前、野宿というのもな。
「仕方ない、星。今晩はお邪魔する。が、俺は床で寝る。そこは譲らん」
「つまらんやつだな」
「うるせい、そう思うなら俺を篭絡できるくらい女を磨くんだな」
「そうだな、励むとしよう」
くだらんことを話しているうちに宿についた。程立たちはまだ戻ってないようなので、軽く食事を摂り、先に休むことにする。
「星、筋肉のほぐし方を教えてやる。よく覚えとけ」
寝る前に今日使った筋肉をほぐすためのツボを教えてやる。容赦なしで。
この晩以降、夜な夜な宿屋から聞こえる奇声が邑で話題になったのはまた別の話である。
説明 | ||
武道伝4話になります。最近職場でいろいろあっていっぱいいっぱい。 作中で字が出てこない人物は、元服してなかったり、まだ字を付けてなかったりするからです。フルネームで自己紹介しないのは軽い挨拶程度で、苗字だけ名乗るような場合だったりですね。 |
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コメント | ||
hideさん、ありがとうございます。恋姫ssって出だし大体同じなんですよね。なので弄ってやろうと書き始めたらどんどん原作サヨナラしはじめまして・・・(やはから) 珍しい切り口に、わくわくしますー続きをまってますー!(hide) |
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