超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ルウィー編
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戦いは熾烈を極めていた。

この世界の大陸を守護する女神四人と紅き負の神がこの場で集まり、眼前の敵に応戦する。流れるようなフォルムに盾のような形をしている肩と足から飛び出す剣の様な翼が特徴的なロボット。人の数倍の大きさを誇る巨体ながらその身のこなしは時に荒ぶる津波のように、時に緩やかに流れる川のようだ。左手に装着していたガトリングガンを捨て、両腕に展開した獣の爪の様な形をしてレーザークローを巧みに使い彼らたちの猛攻を難なく防ぎ、高熱の光爪は浅くではあるが彼らの体に生傷を量産されている。

 

流動的に全ての動作が繋がっている動きを見せるロボットは如何なる角度の攻撃を未来予知でもしているかのごとく避けられる。一度倒した際にリミッターが解除されあらかじめ封じられた夜天 空の攻撃パターンをプロテクトが解除されインストールしたロボットは女神も紅き負の神を寄せ付けない鋼鉄の武芸者となっていた。

 

「このぉぉ!!」

 

「はあぁぁ!!」

 

黒き女神ブラックハートことノワールが己の剣に魔力を注ぎ込み。武骨な剣は光に包まれ巨大な光の剣と成りシェアエネジーで強化れた大剣で叩き潰すようにロボット目掛けて振り下ろすが、腕から展開されているレーザークローで軽く流さる。背後から緑の女神グリーンハートことベールが持ち前の加速力で一気に距離を縮め頭部を貫かんと槍を伸ばすが、寸前の所で頭部を動かし槍の刃は鋼鉄の肌を微かに舐める程度。

 

受け流され地面へと落ちるノワールはバックプロセッサと女神たる人知を超える怪力で態勢を整え、無理な体制から巨大な光剣を切りあげるが剣閃の延長線上に既にロボットの姿は無く、剣翼から光の粒子を放ちながら飛びだったロボットがベールを蹴り飛ばしていた。

 

強烈な一撃に意識が一瞬無くなりそうになったが、紅き負の神ブラッディハートこと紅夜の声に意識を取り戻し追撃の光爪の突き刺しを紙一重で躱す。続けて紫の女神パープルハートことネプテューヌが上空からシェアエネジーのみで構築した巨大な光の剣で操りロボット目掛けて圧出する。ロボットの瞳が鈍く光り、カウンターを決める形で直撃する直前に剣の腹を回り蹴りを決め、吹き飛ばす。光の剣は狙った相手とは別の壁に突き刺さり白い爆発を起こして消滅する。ノワールとベールが下がり、同時に上空からネプテューヌが紅きノイズの双翼を広げ地面すれすれを移動する。天と地からの挟み込むような体制にロボットにプログラムされた動きを取る。真っ先に狙ったのは紅夜だった。今までの会話から推測するに彼はこのチームの中で指令官であり、もっとも実力がある人物。彼を中心に女神は動き、彼の声に女神は肉体の限界を超えた動きを見せる。彼を潰すことは彼女たちの戦意を一気にそぎ落とすことにも繋がる。

 

『紅夜!アヒンアヒン言わせてやれ!!』

 

「了解!!」

 

地面スレスレでの飛翔から一気に昇天を目覚めしてその両手に握る二つの双銃剣を構えながら突進する。同じく宙で一回転して流星の如く刀を前に落下する。それに対して軽々とロボットはネプテューヌの攻撃を受け流した。全身の至る所に取り付けられたカメラが全周囲の状況を確認して、スペックと処理能力だからこそなせる動きである。

 

「−−−クリムゾン・バレット!!」

 

刺突、左薙、右切上、袈裟切り、逆袈裟と紅の軌跡を描きながらの五連撃後、魔力を込めた爆発性のある紅蓮の弾丸をロボットを人間の三倍はありそうな巨体では信じられない動きで躱し、受け流し、捌いた。しかし、自分すらも範囲に入れた魔力の爆発は容赦なくロボットの装甲と紅夜の肌を焼く。

爆風に一人と一体は後退をして距離が離れた。焼かれ焦げた激痛を気にせず紅夜は叫んだ。

 

「−−−バカ野郎」

 

白き閃光が紅夜の横を過った。

爆風で姿は見えない。しかし、煙の合間に見える腕が奴の居場所を教えてくれる。

この大陸の女神ホワイトハートことブランは紅夜に最大の感謝と畏怖感を抱きながら、己の手に握る奴を葬るための戦斧を力強く握りしめた。

地面を蹴り、バックプロセッサユニットからシェアエナジーを推進剤として吹かしながら距離を詰める。ロボットも反応して右手に展開された光爪を向けるが既に遅い。

 

「くらぇぇぇぇええぇ!!!」

 

白き女神の一撃がロボットの咄嗟に腹部を庇うように出された左手に直撃する。耳に響き劈く轟音と共にロボットの体は後方に吹き飛び背後にあった壁すら破壊して奥に倒れる。振り向くと体の至る所が黒ずみ酷い火傷を負った紅夜が銃剣を地面に付き刺し杖代わりに立っていた。素人から見ても辛そうだった。

 

「紅夜。無茶な行動は控えて、幾ら貴方の回復能力でも……」

 

「あと、もうちょっとなんだろう。気にするな」

 

心配するネプテューヌに紅夜は受け流す。この戦いの勝利は最早奴の封印しかない。

破壊され煙を上げる中で立ち上がるロボットの左手は既に何事もなかったように元通りになっていた。どうやら武器は元通りに出来ないようだが、右手に展開されていると同様左手にもレーザークローが展開された。

 

「俺の体より、いま優先するべきことを考えろ。俺の体は不死身属性があるから無茶無謀は俺の役目、隙はなんとか作るから、今の調子で奴をなんとか封印場所まで追い詰めるぞ」

 

「分かりました。紅夜を盾にもっと攻めますわよ」

 

「「「ベール!?」」」

 

紅夜の痛々しい姿を前にベールは悠然と答えた。その姿勢にネプテューヌ達は声を上げた。

 

「−−−もしかしたら、私達の力を合わせればあのロボットを再生を許さず欠片の一欠けらも残さず消滅できるかもしれません。しかし、私達は本来敵同士、今この場で息を合わすことなんて不可能ですわ」

 

「あんた、それって紅夜に捨て駒になれって言っているような物よ!?」

 

「私達に余裕はありませんわ」

 

「…紅夜、それでいいの?」

 

「ノープログレム。道は切り開くって言っただろう」

 

「あー、もうー!」

 

ネプテューヌとベールが紅夜との時間が濃かったからこそ、信頼と同時に女神である自分の無力さを思いながら頷いた。ノワールは勝手に解決している三人が止まらないことに苛立ちながら諦め、ブランは不思議に思った。何故、そこまで無茶が出来るのだろうと。

 

「ブランも隙があった撃ち込めよ」

 

「……あなた、どうしてそこまでやるの?」

 

不死身属性とは言ったが、表情から察するに痛覚はしっかりあるようすだ。それでも強がっているのは目に見えていた。ブランの質問に紅夜はきょとんとして暫く考えるように黙り、納得が出来た様にうんと小さく頷き全員の前に出た。

 

「女神以前にお前ら女性だし、ここは男である俺がなんとかしないとなーーー、うん。それだけ」

 

「…………」

 

名誉が欲しいわけでもなく。富が欲しいわけでもなく。命が欲しいわけでもなく。

ただのプライドの問題と言い張った。女性以前に信仰の対象にされるブランは困惑する。少なくても初めて見るタイプの男性だった。しかし、知っている。まるで彼は小説で描かれる主人公の様な、存在だなと。それを見てベールとノワールは微笑む。あぁ、自分たちもこんな彼の姿に惹かれていったんだろうなと。

 

「ーーー行くぞ」

 

四女神達の誰よりも先に足を進め双銃剣を構えた。

四女神達が彼の背中を見て頷き構えた瞬間、両手にレーザークローを展開したロボットは剣翼を広げ魔力の推進剤を吹かしながら突進する。その速度は女神の中で最速であろうベールですら追いつくほどであり、あっという間に距離を詰められた。振り下ろされる一撃に全員がその場で解散することで回避する。地面に叩きつけられた拳の衝撃は地面を走り蜂の巣状に広がる。

 

真面にあたれば潰れたトマトのような惨状になってしまうだろうと紅夜は冷や汗を掻きながら、ロボットに背を向き速度を上げた。ネプテューヌ達も疲労を顔に出しながらそれを追いかける。ネプテューヌは先導となって壊れた壁を通り、奴の封印する場所に急ぐ。このメンバーの中で恐らくゲイムキャラの居場所を知っているのはネプテューヌのみ、故に先導を動かすことは出来ない。ネプテューヌを追うようにノワール、ブラン、ベールが動き最後尾に紅夜が後ろに意識を回しながら奇襲に注意する。

 

『くるよ!』

 

「分かってるっての!」

 

壁が一気に吹き飛ぶ。砂煙から薄らと映る鋼鉄の巨体。それを認識した瞬間、衝撃が砂煙を消し飛ばしロボットは飛翔していた。させるかと叫びながら紅夜は双銃剣を上空に飛ぶロボットに向ける。引き金を振り絞ると同時に放たれる氷結の誘導弾と爆炎の炸裂弾。本来の一割程度しか出力を出すことが出来ない邪神の名を授けられた魔銃から放たれた弾丸をロボットはスラスターの役目をする剣翼から更に魔力を噴出して体を動かした。威力の高い炸裂弾を体を微かに逸らすだけで躱し、威力の低い誘導弾はレーザークローで切り裂いた。

 

だろうなと紅夜は今までの戦闘情報から単発的、そして幾度も連続的に攻撃した女神達を流すように躱すその姿を見て、そこからのパターンからこうなることを既に計算していた。知っている中で一番圧倒的であり、超絶的に強者である夜天 空の戦闘形態なのだ。周囲にある全てを未来予知でもしているがの如く、武芸の動きを見せるロボットに正直同じ立場で戦っている時点でこちらに勝率はほぼないと言ってもいい。

 

それでもダメージを当ててこれたのは捨て身。肉を切らせて骨を断つ、愚直なまでの突進と自滅覚悟の攻撃。一体どんな理屈か不明ではあるが、あのロボットにはどれだけダメージを与えてもまるで((時間回帰|・・・・))しているように再生してしまう。倒すことはこの場のメンバーでは不可能という結論にたどり着く。ならば紅夜、そして彼女たちの勝利条件は空がこうなることを予想して設置した奴を封印する場所にたどり着きこいつを封印することにある。故にーーー紅夜のすることは決まっている。

 

「うおおおおぉぉぉおぉぉぉお!!!!!!!!」

 

頭の中で合唱されている怨歌を振り払う勢いで獣のように咆哮を上げ渾身の力を込めて双銃剣を構え突進する。ロボットはプログラムされた無垢なる殺意を持ってロボットは目標を定めレーザークローを振るう。

重なり合う光の刃と黒き刃。鋼鉄の意志と紅蓮の戦意。機械の鬼と地獄の神。

 

『男の意地みせたれぇぇ!!』

 

「っ、だらぁぁぁ!!!」

 

後先は一切考えていない。ただ全力で戦う。

スペックで負けている。戦闘技術で負けている。そもそも限界のない機械と精神と肉体を削りながらの争い。相手は常に全力で動くことがあり、こっちは疲労で徐々に動きが鈍くなってしまう。しかし勝ち目がなくても、後ろには女神達がいる。鍔迫り合い状態にベールが咄嗟に螺旋を描いた石の槍を召喚して対象を串刺しにするシレットスピアーを撃ちだす。ロボットはそれを僅かに体を逸らすだけで躱し、次にブランが魔力の弾丸を戦斧で撃ちだすゲフェーアリヒシュテルンは前方を向けて魔力を吹き出して紅夜を吹き飛ばして狙っていた魔弾をレーザークローの乱舞で切り裂く。

 

まだだと紅夜はプロセッサユニットの出力を上げる。同時にゲイムギョウ界の紅夜の精神と肉体を浸食していく。気が狂いそうなほど大音力で響く怨歌、見えてはいけない憎悪の塊が視界に映る。自分が自分でなくなる感触。自分は歌う側なのか、聞く側なのか分からない。しかし、その手に握る双銃剣の感触だけは、それを握らせる理由ははっきりと覚えている。

 

冷徹な暴虐のマシンがレーザークローの乱舞を振るう。その一手一手に鮮血が散る。詰将棋のように紅夜の肉体には薄い傷痕が深い傷跡が着実に刻まれる。それでも紅夜は戦意を失うことは無い。後にいるのは希望の象徴である女神達がいる。

故に振り向くことはありえない。

故に恐怖する必要はない。

故に倒れる事はありえない。

 

「ブラッディ・クロスゥ!!!」

 

今出せる最大の破壊力を誇る必殺技と言ってもいい技を放った。紅の双翼を双銃剣に纏わせ巨大な斬撃を放つ紅の十字架。どうせ避けられるか、受け流されるか、真正面から破壊されるか。それでも時間稼ぎ目的として視界を覆う意味での攻撃だった。紅夜を呼ぶ声にネプテューヌに彼はすぐさま道を曲がった。そして女神以外の声を耳に届いた。顔だけ微かに後ろに視線を送るとアイエフとコンパが必死の形相で手を振って呼んでいる姿が映った。

 

「コンパ、あいちゃん!!」

 

「準備は完了ですぅ!ゲイムキャラさんはいつでもいけるそうですぅ!!」

 

「早く来なさい!」

 

壁の先を掴み無傷なロボットが修羅の如く現れる。不気味に光るツインアイ。

迎撃態勢に入る紅夜だが、一瞬だけ遅れが生じた。限界を超える戦いを先ほどまで続けていたのだ。精神的に疲労が溜まり、デペアが過剰に負を吸収することを抑え、それを補助する形で空が授けたペンダントも既に処理能力が限界まで来ていた。故に一瞬の判断ミス。

その瞬間に剣翼を大きく広げ莫大な魔力を放出して宙を舞った。意識と視界が一瞬真っ黒になっていた紅夜は慌てて射撃攻撃をするが、既に遅くその着地地点は戦闘を飛んでいたネプテューヌだった。

 

「!?」

 

全員の動きが止まる。ロボットが自らが封印されるためにここまで誘き出されたことはコンピューターが示した回答の一つだった。体を横に足を広げ、右腕を前に出し、左手を後ろに下げる構えを取ったロボットは動いた。後から奇襲を避けるために。

 

「女神様達いまですぅ!!」

 

「ネプテューヌ、ベール、ノワール。抑えろ!!」

 

ロボットは危険度が高い者から排除しようと突進する紅夜に抉り撃ち込むように放った。全身の捻りから放たれる回転の勢いは触れればあっという間に砕け散る。更に高熱を発するレーザークローも回転して光の大砲のように見えた。それに紅夜は双銃剣を刺突する。偶然か角度、速さ、威力全てが同じだった。相殺する力と力。お互いの動きが完璧に止まった。その刹那が勝負を分けた。

 

ネプテューヌが左腕にベールが左足にノワールが右足にしがみ付いた。ロボットは咄嗟に残った右腕振り払おうとするが黒き刃が右腕の関節に突き刺され動きがまた止まる。

 

「行け!!ブラン!!!」

 

「うらあああぁぁぁぁ!!!」

 

女神と冥獄神によって両腕と両足が止められたロボットは思考が止まる。オリジナル空なら出来る対処がこの身では出来ないからだ。出来るのに出来ないという矛盾にロボットの双眸が映したのは戦斧をその小さな身に後ろに構え突進する姿だった。

 

今度こそ逃げらない。ブランは全ての余力をこの一撃に込めた。放たれた銃弾の如くロボットの懐に潜り込んだ。反撃は来ない。纏うように構えていた戦斧を力のままに解き放った。全身に痺れが走るほどの衝撃が伝わった時、ロボットは宙を舞った。奥の壁に轟音と共にぶつかりプログラムの処理が止まる。

 

「ゲイムキャラさん、お願いしますぅ!!!」

 

『悪しき者に永久の眠りを』

 

優しげな声がドーム型に部屋の中央にあった裁断にセットされたディスクから発せられる。幾多の薄い蒼色の光の粒子がその空間を照りだし、部屋全体に施されていた魔法陣が展開される。

ロボットを包み込むように光の粒子が集まっていく。酷く幻想的な光景にネプテューヌ達は言葉を失う。

粒子がロボットの体に触れると同時にその身が凍りついていく。ロボットも再起動し、その粒子を振るおうとするが既にスラスターである剣翼は凍りつき使い物にはならず、その隙に右腕が両足が凍っていき、最後は縋りつく様に伸ばされた左腕が凍りつき、氷の中に封じ込められたその姿はまるで地獄から手を伸ばす鬼のように見えた。

 

「……やりましたね」

 

「本当に疲れたわ…」

 

勝利の歓喜に震えるほど女神達に余裕はなく。この中で一番テンションが高いネプテューヌでさえ何も言わず女神化を解除して静かに腰を付いたほど彼女達は疲労困憊だった。特にロボットと最も激しく戦ったであろう紅夜は冥獄神化が解除されると同時に力尽きた様に倒れた。

 

「ちょ、紅夜!?」

 

全員が倒れた紅夜の元に急いだ。見れば見る程無残な姿のように見えたが傷は既に自己回復しており、コートは血だけで真っ赤に染まっていたが、眠るような吐息に全員が安堵のため息を吐いた。

 

「…………ふふ」

 

「あはははは」

 

そして一息。そこで漸く氷の象物となったロボットを見ながら笑いが溢れてきた。

少し前までは戦うだけの仲だった女神達が、協力して一つの事を成し遂げた瞬間だった。

 

 

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