暗い空気が流れたまま警邏が続いていった

一刀「…………っと、そういえばそろそろお昼だな」

真桜「せやな………もうええ時間やと思うで」

太陽は自分達の頭の真上にきていた

愛紗「ならば………お昼しますか？」

一刀「そうだね………それなら適当に食べr………」

一刀がそう言いかけた時、

女「キャーーーーー!!!」

男「てめぇ!!何しやがんだ!?」

犯人「知ったことか！てめぇの女がいちゃもんつけてきたんだろうが!!」

男「何だとてめぇ!!」

女性の悲痛な叫び声と男の罵声が聞こえてきた

真桜「っ!?隊長！」

一刀「あぁ！いくぞ!!」

愛紗「はい!!」

俺達三人は急いで事件現場に走っていった

現場に着いた俺達だったが

一刀「おい！大丈夫か!?」

そこには殴られ、ボコボコにされた彼氏らしき男と

鋭利な刃物で切られ肩から血を流した女性が蹲っていた

真桜「こりゃあアカン………完全に伸びとるで

おい！救急隊読んでこんかい!!」

警邏兵A「御意!!」

愛紗「くそ！我々いながらこんな事が…………」

一刀「犯人は何処へ行ったんだ？」

俺は内心怒りに震えながら冷静に聞いた

警邏兵B「民達の話しによると裏道のほうへ逃走したようです！」

一刀「そうか………愛紗！真桜！」

真桜「なんや!?隊長！」

一刀「ここは任せた、俺は犯人を追う」

愛紗「なっ!?駄目です!!危険過ぎます！

犯人は凶器を持っているのですよ！」

愛紗は一刀を説得にかかるが

一刀「応援を待ってたらまた犠牲者がでる！

ここは任せたぞ!!」

俺はそう言うと裏道に駆け出した

愛紗「あっ…ご主人様!!………つ!?」

これは愛紗から聞いた後日談なんだが、愛紗は俺を追いかけようとした時に俺の後ろ姿を見たらしいんだが

その後ろ姿は暗いものに包まれていたという…………

裏道に入り犯人を追いかけ始めた俺は只ひたすらに走っていた

一刀「くそ！何処に行ったんだ!?」

裏道はかなり複雑な形状となっている為、慣れている者でないと迷路の如く迷ってしまうのだ

警邏隊隊長の一刀も例外ではない

一刀「このままだと…………」

一刀がそう呟き右の小道に目をやると

犯人「はぁ……はぁ…………っ!?しまった!!警邏隊か!!」

血のついた包丁らしきものを持った男が俺の目の前を通り過ぎていった

一刀「っ!!見つけたぞ!!待てっ!!!」

一刀は犯人の後を追った

一刀「待てっ!!それ以上逃げると罪が重くなるぞ!!」

犯人「そんな事知るか!!」

一刀「よ〜し、そっちがその気なら俺にも考えがあるぞ！

成都の警邏隊長舐めるなよ!!」

俺と犯人の追いかけっこが始まった

犯人との追いかけっこが始まって10分弱………

遂に俺は犯人を袋小路の壁際に追い込んだ

犯人「はぁ……はぁ……はぁ……ちくしょう………しつこい野郎だ…」

一刀「これくらいしつこくなきゃ警邏隊長になんて任せられないんだよ

さぁ、観念しろ」

徐々に俺は問い掛けながら犯人に迫っていく

一刀「何故女性を傷つけたんだ？理由は何だ!?」

犯人「理由だと!?俺は悪くねぇ！悪いのは全部あの女だ!!」

一刀「………どういう意味だ？」

聞き覚えのある台詞に若干呆れながら俺は聞いた

話しによるとコイツは傷つけた彼女の元彼で

同じ場所にいて殴られた男は今の彼氏らしい

彼女は浮気性で過去に2人程浮気をしていたらしくソレに愛想が尽きこちらから別れ話を切り出したんだと言う

少しでもショックを受ければいいと本人は思っていたらしいが

残念ながらむしろ別れて喜び、直ぐさま今の彼氏と結ばれてしまったのだ

それを見たことにより遂に堪忍袋の緒が切れた………ということらしい

一刀「そんな理由で………!!」

犯人「そんな理由だと!?お前に何が分かる!?」

一刀「あぁ！分かんないさ!!

だが、お前はそんなくだらない逆恨みをして殺人未遂という犯罪を犯して自分の人生を狂わせてもいいのか!?

自分だけじゃない！刺された男性の今後の人生を狂わせる気か!?」

俺は犯人に向かって叫んだ

犯人「う、うるさい!!お前には関係無いことだ!!とっとと消えろ!!」

一刀「……………ふざけるなっ!!!!」

犯人「っ!?ぐっ!!?」

俺は『両手』で犯人の胸ぐらをつかんで後ろの壁に叩きつけた

その時、微かに両手の親指が犯人の首に触れていた

一刀「俺は警邏隊長でもあり、この国を引っ張っていく『天の御遣い』でもあるんだ！

関係ない訳ないだろうが!!」

犯人「なっ!?て、『天の御遣い』だと!?」

犯人は度肝を抜かれかのように驚いていた

一刀「あぁ………俺は北郷一刀

この成都を治める『天の御遣い』だ」

犯人「御遣い様が何だって警邏なんかの泥仕事を………？」

犯人は冷静を取り戻しつつ俺に恐る恐る聞いた

一刀「上に立つ者……治める者………何が一番大事か？

それは民達の生活を守り抜くことだ

民達が居なければ国など出来上がらない

だから俺は命を賭けて民達を守り、愛紗……関羽や曹操もその後についてくるんだ」

犯人「…………御遣い様……」

一刀「だから………俺はあなたも救う

まずは自分の犯した罪を償ってほしい………

勿論この事件の発端である彼女達にも反省してもらうつもりだ」

犯人「…………御遣い様………………俺が間違っていました………」

犯人は涙ぐみながら俺に謝りだした

俺はその様子をみて笑顔で微笑んだ

だが……………

一刀「分かってくれたならいいよ

よし、そしたら…………」

一刀が胸ぐらから手を離そうとしたその時だった

犯人「ぐうっ!!?ぬうぅぅぅ………!!」

犯人が突然苦しみだしたのだ

一刀「っ!?どうした!?大丈夫か!?」

犯人は呻き声を上げながらその場に倒れ込んでしまった

俺は慌てながらその男の『背中を右手で摩って』しまったのだ

この行動をしていなければ…………

俺はこの時の行動を悔やんだ

犯人「ぐうっ!!かはっ!?」

一刀「おい！しっかりしろ!!」

犯人「み、御遣い………さ……ま………ぐうぅぅ!?」

一刀「一体何だってんd………っ!?」

俺は摩っている右手にザラザラとした違和感を感じた

恐る恐る右手を見てみると…………

一刀「っ!!………う、嘘だろ………？」

右手と男の背中にはあの『灰』が付着していたのだ

そして

恐れていた事態が起こってしまった

一刀「っ!!そんな事より………

おい！大丈夫…………っ!!?」

俺は右手から男に視線を移すと

男の背中だけではなく左腕にまで『灰』が付着していたんだ

犯人「み、御遣い………ざ……ま……」

いや………『付着』していたんではない………

男の左腕自体が『灰』となっていたのだ

一刀「ど、どうなってるんだ!?」

『灰化』は左腕だけには留まらず少しずつ右腕も『灰』となってきてしまい

犯人「ミ、ミ………ツか…いザ………マ……………」

遂には男の体全体が『灰』となってしまった

一刀「あぁ…………ああぁ………」

そして、一刀が震える手で男に触れると

ｻﾞｻﾞｱｧｧ……………

静かに音を立てて崩れてしまった………………

俺は………北郷一刀は乱世が終わってから初めて人を殺めてしまったのだ………………