ゆり式6-ゆずこv縁2- |
3年生に入って半分過ぎた辺りから、私は秘めていた気持ちを
縁ちゃんにぶつけていた。
「縁ちゃん、私と付き合って!」
「いいよ〜」
驚くほど簡単に嬉しい返事が来た。タイミング的にも唯ちゃんが
アイちゃんのものになってしまったことも大きいだろう。
私が思っていた時期と近くなってしまい、偶然なんだけど
まるで縁ちゃんの心の隙間に私が攻めていったように見えなくもない。
「でも、私唯ちゃんの代わりにはなれないよ〜?」
「そんなことわかってるって。私は縁ちゃんだから好きなの」
「えへへ〜。何だかうれしいね〜」
いつものように柔らかな笑みを浮かべてこっちも嬉しくなりそうな
雰囲気を出しているけど・・・。その笑顔はどこか寂しげに私の目には
映っていた。
「唯ちゃ〜ん」
「わっ、くっつくな」
そんな一大イベントがあっても私たちは遠慮なく唯ちゃんに
くっついて鬱陶しがられている。そんな私たちを微笑ましくアイちゃんが
見ている、そんな日常。
いつもと違うのは仕事が後輩にがんばってもらえてるから
少し暇ができたアイちゃんが私たちの部室にちょくちょく来られるように
なったことくらいだ。
私たちがふざけていてもアイちゃんは嫌そうなどころか
嬉しそうに私たちのやりとりを眺めている。
「唯ちゃん、世界一かわいい〜」
「唯ちゃん、宇宙一かわいいよ〜」
「規模がでかすぎる!」
いつものようにチョップで突っ込みを入れられてずきずきする
頭をさすりながら縁ちゃんを見る。すると、縁ちゃんと目が合うと
ちょっと照れくさくて、縁ちゃんにこう言葉をかけていく。
「縁ちゃんもかわいいよ〜」
これまでは何気なしに同じようなテンションでじゃれていたのに
この時に限って縁ちゃんからの反応はなかった。
だけど代わりにというか、顔が真っ赤になって笑顔だった表情が
きょとんとしたような感じに変わっていた。
「どうした、縁。大丈夫か?」
唯ちゃんが普段と違う縁ちゃんの様子に心配すると縁ちゃんは
すぐに普段通りの表情に戻して、両手を使って違う違うと言っていた。
そうして少しだけ間を空けてから私に視線を戻して、少し低めの声で。
「ゆずちゃんもかわいいよ〜」
「えへへ、ありがとう・・・」
何事もなかったかのように事は進んでいったが、私の中でもやもや
したスッキリしない気持ちが篭っていた。
告白したのは失敗だったかな・・・。
縁ちゃんは優しいから断ることができなかったんだとか、
嫌な方へと思考が行ってしまいそうだから。
無理にでも方向転換をすることにした。
二人に変な気を使わせたくなかったから・・・。
放課後に唯ちゃんとアイちゃんが先に帰っていって部室の中には
私と縁ちゃんが残っているという状況となっている。
二人きりになってからは少しの間沈黙が続いていて
パソコンのキーボードを打つ音だけが響いている。
思わず根を上げるように口を開いたのは私の方だった。
「ごめんね、縁ちゃん」
「え?」
私の声は少し涙を含むような感じで震えているようだった。
実際少し目元が潤んでいるかもしれない。
そんな私を見て縁ちゃんは驚いたように、目を開いてそれ以上は
動かない、私の言葉を続きを待っているようにしてみている。
「私が告白なんてしちゃったから気まずかったかな・・・」
そんな空気にしたくなんてなかった。
気まずいまま時が過ぎていくなら私は余計なことをしたのかもしれない。
そういう負の思考がぐるぐる回っていくと縁ちゃんから声をかけられた。
「ゆずちゃん」
「なに?」
私は咄嗟に反応して縁ちゃんの声がした方へと振り向くと
私の唇に柔らかくて暖かい感触がした。ほぼ不意打ちに近い状況。
驚いて思わず跳ねのけそうになるくらいだ。
だけどそれをしなかったのは普段は見ない真剣な眼差しを私に
向けている縁ちゃんを見てしまったから。
「あのね、ゆずちゃん」
「はい!」
「私嬉しかったよ」
「え?」
「一歩深く潜り込んできてくれて」
「う・・・うん?」
縁ちゃんの言葉のすべてを理解できなくて頷きながらも
首を傾げるような部分がちらほら。だけど、縁ちゃんは至って真面目で。
「私ってちょっと変かもしれないから〜。友達としてしか付き合いの経験
なかったんだよ。でもゆずちゃんからはそれ以上のものを感じて反応
し辛かったんだ。それは嫌ということなんかじゃなくてむしろ・・・」
言葉を溜めるように言う縁ちゃんの顔はどこか色っぽくて私は喉を
鳴らしていた。いつも可愛いけれど、今はもっと違う次元の可愛さを
感じてしまう。
「嬉しかったから?」
私の言葉を思い切り頭を上下に振る縁ちゃん。頭を下げた所で
止まってわずかに震えていた。
「すごく・・・すごく嬉しい」
「縁ちゃん・・・顔あげて・・・、今の縁ちゃんこれまでで一番かわいい」
「ゆずちゃぁん・・・」
猫なで声のように甘い声が私の耳に入ってくると、電気が走るように
びりびりと心に来る。甘くて切ない気持ちで胸が破裂しそうなほどで
縁ちゃんが愛おしくてたまらなかった。
「よかった、縁ちゃんが嫌だったのかもって不安だったんだ」
「嫌なわけないよ〜・・・」
私たちは椅子から立ち上がって抱き合った。
すごく近くに縁ちゃんがいて、間近に息遣いが聞こえて興奮する。
そして、どっちが意識することもなく自然に・・・
ごく自然に二人は唇を重ねて、キスをした。
それは長かったのか、短かったのかよくわからなくなるほどで。
そっと口を離すと、離してもまだ相手の温もりが残っていて
気持ちよかった。
「今度縁ちゃんの親御さんに挨拶しにいこうかな」
「え!?」
「娘さんを私にくださいってね」
「お父さん手ごわいよ〜」
「ぐっ・・・。ま、負けないもん」
「あはは、プレッシャーに弱いゆずちゃんかわいい〜」
「よ、弱くないですもん。ちょっと武者震いしてるだけですし」
「言葉遣い変なの〜。あははは」
「んふっ、縁ちゃんが笑ってくれるだけで私は満足だよ」
「私をここまで笑わせてくれるのはゆずちゃんだけだよ」
「うん、自信出てくるなぁ」
「もっと自信もちなよ」
「うん・・・じゃあもうちょっとだけ」
甘えるように、求めるようにもう一度だけ縁ちゃんと
キスをした。どんな甘いものを食べるよりとろけそうな気持ちだった。
「ん、昨日二人何かあったのか?」
唯ちゃんの言葉に私たちはびくっとして唯ちゃんを見る。
あれから数日後に縁ちゃんと会う回数を増やして色々と遊んで
みた。楽しいけれど、この空間が今のところ一番落ち着く気がする。
なのに唯ちゃんの一言でお互いのことを意識してしまうではないか。
私はアイコンタクトで唯ちゃんに必死に空気読んでと伝えるが。
「ウィンクすんな」
と、変なツッコミをされてしまった。
「なんだ、二人付き合い始めたんだ」
仕方なく私と縁ちゃんが唯ちゃんに説明をすると意外そうな顔をしながらも
どこか嬉しそうにして私たちにおめでとうと言ってきた。
改めて言われるとこそばゆい気持ちになってしまうではないか。
でもよかった。付き合ってることがバレたとしてもこの場の空気が
変わることはなくて、いつものように遊んで情報収集してるのが楽しい。
縁ちゃんも特別私を意識することなく部活を楽しんでいるようだ。
この時だけは特別に。そのあとは縁ちゃんとは親密に、残りの日々を
過ごすだろう。この関係が壊れないように私はがんばろうと思う。
昔の、二人に会う前の寂しかった私とはもうお別れだ。
清々しい雲一つない晴天が私たちを祝福してくれているように
見えたのだった。
終
説明 | ||
ブログに思いついたものを書いたものです。この二人のイチャイチャはとても好きですね。他のカプももちろん好きですけどw やはり百合は良いものです。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
725 | 724 | 2 |
タグ | ||
ゆゆ式 百合 野々原ゆずこ 日向縁 キス | ||
初音軍さんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |