ガールズ&パンツァー nazi zombie army ジョイナスさんと戦います! |
「誰もいない・・・?」
先行して教会内に入ったカールが周りにM1A1トンプソンを向けながら、周囲から人の気配がしないこと気付き、口にした。
砲撃か空襲で屋根が吹き飛ばされている為、所々空いた穴から不気味な雲で覆われた空が見える。
他の者達も周囲を探ってみるが、無線機からの声の主は何処にも居ない。
そればかりか誰一人として生存者が居なかった。
「誰も居ないぞ・・・?あの無線機の奴もだ」
「誰も居ない・・・?うっ・・・!」
二階を調べてきたインニェヤルドの報告に麻子は操縦席で震え始めた。
麻子の状態を見たみほ達も、外から伝わる不気味な雰囲気を感じ、息遣いが荒くなる。
アントノービッチが祭壇を調べようとすると、どこからとも無く声が聞こえてきた。
『HAHAHAHA!Welcome!!』
「な、なんだ!?」
その不気味な声に、驚いた者達は、それぞれ手に持つ銃を周囲に向ける。
何処にも声の主は居ない為、みほ達は混乱する。
暫くすると、祭壇の前が不気味に白く光り上がり、そこから霊体が出て来た。
「なんだこいつは・・・!?」
「これは・・・邪悪な魔法・・・!?いや、黒魔術!」
魔法が存在する世界出身であるリンダが霊体を見て、直ぐに黒魔術と分かった。
「ちょ、今度は幽霊!?ヤダモー!!」
「もう、何が何だかわかりませんわ・・・」
「本当に第二次世界大戦末期のベルリンでしょうか・・・?」
「帰らせて・・・」
「・・・」
霊体を見た沙織達は驚きを隠せず、それを口にしたが、みほだけは驚きの余り声が出なかった。
祭壇の近くにいたアントノービッチは驚き、叫び声を上げながら手に持ったPPs43を目の前で浮かんでいる霊体に向けて乱射し始めた。
当然ながら、銃弾は身体をすり抜けて行く。
「銃弾がすり抜けている!?」
ボニファーツが言えば、全員があの霊体には銃は聞かないと分かり、距離を置き始めた。
ひたすら短機関銃を撃ち続けるアントノービッチは祭壇から動かなかった。
霊体は何か技を出そうとする素振りを見せる。
「離れろ!」
ヒゲがアントノービッチに向けて告げるが、銃声で掻き消される。
「Joey eggplant!」
下から霊体の周りを囲むように魔法陣が浮かび上れば、衝撃波のような物が放たれ、それを受けたアントノービッチは吹き飛ばされた。
それと同時に周囲に複数の頭蓋骨が霊体の周りを回り始め、魔法陣の数だけゾンビが召還される。
「ぞ、ゾンビを召還したぁ!?」
「げ、迎撃準備!」
何が何だか分からず、みほ達は召還されたゾンビの迎撃も行う。
召還されたゾンビを全滅させても、次のゾンビが召還された挙げ句、床からゾンビが這い出てくる。
「なっ!?きりがない!」
インニェヤルドが続々と出て来るゾンビを見て叫べば、みほ達の士気が下がっていく。
「倒して倒しても出て来ます!」
「みぽりん、きりがないよ〜!」
「うわぁ・・・来るな!来るなぁー!!」
「どうしましょう!?このままでは!」
倒してもまた沸いてくるゾンビに沙織達は慌てふためいていた。
みほも打開策が無く、どうすることも出来なかった。
「(このままじゃゾンビに・・・)」
自分達がゾンビに車外に引き摺り出され、腹を割かれて手足が引き裂かれる光景が目に浮かんだ。
「こ、殺される・・・」
群がってくるゾンビをキューボラ越しから見たみほは、ややパニック状態になったが、霊体が苦しみ声を聞いて、正気に戻った。
「へっ・・・?」
状況を確認する為にキューボラから頭を出して、霊体の方を見ると、いつの間にか実体化しており、その正体である全長3mの((一般親衛隊|アルマゲイネ))の制服を着た白骨体が何度も頭を撃たれていた。
他の者達が苦戦している中、それが殆どのゾンビの気を引いているのか、白骨体にダメージを与えている。
マルゴットが周囲のゾンビを倒しつつ、車体に乗り上がり、みほ達にも弱点を教える。
「あいつは周りの頭蓋骨を全部撃つと実体化する。私には出来ないからあの二人にやってもらってる」
飛び上がってきたガイコツを倒しながら説明するマルゴットに、みほは二階の方で白骨体を攻撃するマリとルリを見た。
数十発以上頭に撃ち込むと、白骨体は霊体化した。
「あっ、霊体化した!」
「頭蓋骨は・・・早い!」
霊体に戻った白骨体は前より頭蓋骨の数を増やし、召還するゾンビやガイコツの数も増やす。
徹甲弾なら直ぐに倒せると思ったみほは、マリとルリに回る頭蓋骨を全て撃ち落とすよう願う。
「マリさんとルリさん!頭蓋骨を全て撃ち落としてください!」
「それ今からやってるんだけど!どうするつもりよ?」
「徹甲弾を直接頭に当てます!」
「直接頭に!?」
それを聞いたルリが、銃を撃つのを止めてみほの方へ振り返った。
「はい、直接撃ちます!」
「それで助かる。雑魚はこっちに任せて!」
みほは頷いた後、車内に戻り、マルゴットは近付いてくるゾンビやガイコツの排除を始めた。
完全にアントノービッチはゾンビの集団に殴り続けられた挙げ句に死んでしまったが、周りにいたゾンビを機関銃などで排除した為。死体のなんとかマシになった。
車内に戻ったみほは、震える全員に白骨体を倒すことを伝える。
「皆さん、あの霊体を倒します」
「た、倒せるのでありますか。西住殿」
「えぇ、あの周りを旋回する頭蓋骨を全て撃ち倒せば実体化するそうです」
「まるでゲームのボスキャラみたいだな・・・」
「倒せるの、アレ!?」
「何か戦った事があるような・・・?」
聞いてくる全員にみほが答えれば、白骨体を見た華が何処かで見たと口にする。
「え、戦った?」
「はい、何処かのゲームでやったことがあるような・・・?」
それを耳にした優花里が華に聞いたが、沙織が中断させた。
「もう、どうでも良いからさっさとやっちゃおうよ!」
「分かりました。優花里さん、徹甲弾装填!」
「はい、西住殿!」
「麻子さん、あれから2m以上離れてください!」
「承知した」
当たる確率の高い位置まで下がった。
後ろからゾンビが近付いてきたが、この際後ろに生きている人間以外轢き殺しても構わなかったので、お構いなしに履帯の下敷きにして踏み殺した。
肉が潰されるかのような音が鳴ったが、みほ達は実体化した白骨体を倒すのに気を取られていた為、全く気付かない。
砲身を霊体に向ける頃には、周りを旋回していた頭蓋骨は全て撃ち落とされていた為、キューボラからルリの合図が来た。
華は実体化した白骨体の頭部に狙いを定めた。
上にいた二人は直ぐさま巻き込まれないようにその場から離れる。
「一発で・・・決める・・・!」
照準器に頭部が重なった瞬間、華は引き金を引いた。
砲声が響き、徹甲弾が白骨体の頭部目掛けて飛んでいき、数秒後には徹甲弾を頭部に受けた白骨体は声を上げて苦しみ、地面に落ちていく。
『グオオ・・・』
「倒したのか・・・?」
ショウグンが実体化した白骨体が教会の床に消えていくのを見て口にした瞬間、周囲にいたゾンビ達は直ぐに死んだ。
今居る場所から敵が全て居なくなったのを確認すると、みほ達の緊張感が途切れ、椅子に凭れ掛かるように倒れ込む。
「あっ、ガス欠だ・・・」
戦闘が終わったのと同時に麻子が燃料切れであることを車内に居る全員に伝えた。
「困りましたね・・・戦車が無ければ・・・」
報告を聞いた優花里が困った表情をして言えば、沙織が半ば絶望した言葉を吐いた。
「えぇー!?そんなぁ・・・」
「この先、あのような敵が出て来ると思うと・・・ぞっとします・・・」
「燃料と言っても、ここはガソリンスタンドでも貯蔵所でも無いし・・・」
華が困り果てた表情で口にし、みほは戦車をこの場に放棄するしか手はないと判断するしかなかった。
無論、W号からエンジン音が聞こえないので、インニェヤルドを除く軍人全員は直ぐに燃料切れであることに気付いた。
「やれやれ、頼みの戦車はガス欠か・・・」
カールが乾パンを一つ口にしながら、言った後、軍人ではない者達は落胆する。
「戦車無しで行くのか・・・きついな・・・」
同じく弾の補充をしているボニファーツも口にして、頭を抱える。
この人数なら押して移動できるが、どこからとも無く現れて襲い掛かるゾンビからしたら襲ってくれと言っているような物なので、仕方なく戦車を放棄することを決めた。
車内に入れ込んでいた武器や弾薬も一緒に持って行く。
アントノービッチの亡骸は空の棺桶の中に入れて葬っておいた。
「銃なんて、撃ったことないや・・・」
「私も・・・確か、これって引き金を引いて撃つ・・・?」
もちろん単なる女子高生が銃なんて撃ったことはない。
みほ達以外の者達は、何かしらの出来事で銃を撃ったことがある者達か、軍人達から教えられた者達だ。
銃を持ったみほ達に、マリが近付いて教える。
「簡単よ。安全装置を外して照準器に狙いを定めて、引き金を引くだけ」
ホルスターからワルサーP38を取り出し、安全装置を解除して、壁に向けながら教えた。
このえらく簡略した説明に、みほ達は有り難く受け取ることにした。
取り敢えず簡単な銃の撃ち方を教わったみほ達は、暫し休憩の後に一行と共に教会を出て、死者の街に出ようとしたが、ルリが祭壇を弄くってると、祭壇が一人でにずれ、地下へと続く隠し通路が出て来た。
「みんなぁ〜、隠し通路、見付けちゃったよ〜!」
ルリが全員に知らせると、一行は祭壇の前に集まる。
「あら、凄いじゃないの。ルリちゃん」
「エヘヘ、ありがとう」
隠し通路を見付けたルリを、マリが笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でて褒めた。
「まるで謎解きゲームだな・・・」
麻子が口にした後、素早く先に入る者を陽炎に決めて、一同は隠し通路へと入っていった。
最後にみほ達が入るのだが、麻子が怖がって入ろうともしない。
「う、うぅ・・・怖い・・・」
「早く行ってよ、麻子。またゾンビが来るかもしれないじゃないの」
沙織からの催促に、麻子は震えながら梯子を下りて行く。
最後にみほが梯子を掴んだ瞬間、不気味な声が彼女の耳に入ってきた。
『In addition, I come・・・!』
「ひっ!?ちょっと、早く降りてください・・・」
この声にみほは恐がり、先に降りている者達に催促した。
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