ガールズ&パンツァー Nazi Zombie Army U |
一行がベルリンを離れて一日が経った後、総統地下壕で変化が起きた。
それは総統地下壕もゾンビの侵入を許し、今ここも落ちようとしている所だ。
地下壕内にもゾンビが入り込み、床には殺された人間の死体に腕や脚、頭、内臓が散乱していた。
天井には鎖が付けられ、そこに死体が引っ掛けられ、死体がぶら下がっている。
この世の光景とは思えぬほどの光景が広がる中、多数のゾンビが頑丈な扉を開けようと、手に持っている凶器で何度も叩く。
その扉の中では、ドイツ第三帝国の総統アドルフ・ヒトラーが歩き回っていた。
扉の前では陸軍の将軍が立っているが、床には死体が一つ転がっている。
床に倒れているのは若い陸軍の将軍の死体で、ヒトラーが死体を跨ぐ。
扉を叩く音が中にも響いてきたが、やがて音が強くなり、破れそうな勢いになってきた。
音で振り返った将軍が死の恐怖を感じ、震え始める。
「はっ・・・!」
声を上げた将軍に、ヒトラーは一周してからワルサーPPを片手に唯一の部下に近付いた。
突如と無く、ヒトラーは唯一この場にいる部下に銃口を突き付けた。
殺されると判断した将軍は目を瞑る。
だが、ヒトラーは手に持っている拳銃を床に捨て、机の上に置いてある石でできた謎のパーツを取り、叫び始める。
「これは我々を守る物であった筈だ!!」
今の状況や予想外の出来事に対する怒りをぶちまけたヒトラーに、将軍が口を開く。
「そ、それは、三つ揃わなければ意味がありません!」
その事を伝えると、ヒトラーは怒りを抑え、将軍に近付き肩を叩いた。
だが、パーツを持つ手に力を込め、それを将軍の顔に叩き付ける。
「貴様!今更!それを!わしに!教えるか!」
何度も叩き付け、最後に後頭部に加えると、将軍は息絶えた。
唯一の部下を殺して一人になったヒトラーは床に膝を付けながら呆然とする。
扉を叩く音が強くなり、2〜3回程強く叩かれると、扉が開いた。
扉に殺到していた多数のゾンビが中に入って来る。
それを見たヒトラーはパーツを持ちながら叫んだ。
「ワァァァァァァ!!」
その後、彼がどうなったのか分からない。
川を渡る船の船上では、途中で乗船してきたコルネリウスが居り、一同が彼の前に集まっていた。
ホレイシオが川に向けて嘔吐する中、コルネリウスからアントノービッチとツェーザルが本当に死んでいるのか話される。
「正確には彼等は死んでいない。ただ、この世界に魂を捕らわれているだけだ」
「死んでないだと?」
「あぁ、肉体から離された魂が鎖か何かで捕らわれ、元の世界へ帰れないで居る」
ボニファーツからの問いに答えたコルネリウスの言葉に、みほ達を始めとした異世界から来た者は安心しきる。
次にカール達を始めとするこのゾンビが跋扈する世界の出身者が問う。
「俺達はどうなる?」
「死ぬな・・・どうやらこの状態は異世界から呼び出された者達でしか起きないらしい」
「そうか・・・死ぬには死ねないな・・・」
ゲールド・シュバイガーが、包帯を巻いた自分の傷を見ながら言う。
ちなみにコルネリウスと船長を除く一行は負傷しており、所々に血で赤く染まっている包帯を巻いている。
例えるなら、みほが頭に包帯を巻いている事か。
深刻な表情をしているコルネリウスを見たボリス・メドヴェージェフとハーマン・ウルフが何故そのような表情をしているのかを聞く。
「おい、なんでそんな表情をしている?」
「何か、隠しているのか?」
「顔に出てるか・・・?分かった。話そう」
少し深呼吸をしてから、彼は口を開く。
「一刻も早くこの状況をなんとかしなければ、今ここで起きている状況が、君達の世界で起きるかもしれない」
これを聞いたカール達4人を除く(マリとルリも少し驚いた程度)一同の表情が凍り付いた。
みほ達にこの地獄で起こっている事が、自分達の居る世界で起こるイメージが浮かぶ。
友人や家族、後輩達がゾンビに殺され、市街は血で赤く染まり、道には死体、頭部や腕に脚が無い死体か単体が転がり、ゾンビが跋扈する。
学園艦は死者の海に浮く死者の都と化し、陸地に着けばさらに地獄が広がる事だろう。
「食い止めないと・・・」
最悪なイメージが浮かび上がったみほは、それを現実にしない為にこの世界で起きている惨状を終わらせる事を決意した。
沙織がみほの肩を叩いて、手を合わせるように伝える。
「みぽりん、この状況を終わらせて帰る為に」
「手を合わせましょう。こんな事は他の世界でも起こしてはいけません」
「西住殿、こんな地獄を起こさない為に行きましょう」
「恐いがやるしかない・・・現実にしない為にも・・・!」
仲間達からの問いに、みほも手を合わせた。
「やろう、世界を守る為に!」
最初に沙織が口にすれば、麻子があることを口を開く。
「まるで勇者とその仲間達だな・・・」
「はい、少し緊張してきました・・・」
次に手に汗を滲ませながら華が言う。
「私達の世界の命運が、私達自身に掛かっていますから・・・」
優花里も額に汗を滲ませながら言った。
全員が手を合わせた瞬間から緊張していた。
最後に、みほが身震いしながら告げる。
「私も・・・世界が掛かっていると、全国大会より緊張する・・・」
「大丈夫、みんなでやれば恐くない・・・」
「そ、そうです・・・やりましょう・・・!」
「頑張りましょう、西住殿!」
「やれることはやろう・・・」
沙織達からの励ましの声を受けたみほは、勇気づけられた。
「はい、世界のために!」
『オォーッ!!』
「(途中で折れなければ良いんだが・・・)」
自分達を自分達で勇気付けるみほ達を見て、コルネリウスは彼女達の身を案じた。
いつの間にか、船は血で赤くなった川の上を走っていた。
「か、川が・・・!」
「血で赤く染まっている・・・!?」
船長が気付いて、インニェヤルドがそれを声に出す。
その言葉に釣られて一同が川に視線を向ける。
「どうやら力が強まっているらしい・・・早いところ、解決しなければ・・・」
血の川を見たコルネリウスは、空を見上げながら口を開いた。
同時に悪魔の笑い声が聞こえ、未だにベルリンへ招集するよう拡声器からの放送が続いている。
船は、箱の上で二匹のネズミが千切れた人の腕を貪り食う川の船溜に泊まり、船長が操縦席から出て来た。
「目的の地区へ着いたぜ、貴族の旦那」
船長がコルネリウスに知らせると、まず彼が船を降りて、まだ船上にいる一同に告げる。
「ありがとう。では、私は情報収集に当たる。向こうの駅にソ連軍の無線機があるはずだ」
谷の方に指を指しながら、コルネリウスが告げる中、カールが船から降りる。
「そこは知っている。確か、泉の近くの駅だった。この先のキャンプを抜けて、教会前の墓場を通って塹壕を抜けて、丘を上がれば駅だ。そこにソ連軍が駐留している・・・いや、全滅してるな。なんせ今はこんな状況だしな」
「正確な位置を分かっているな・・・流石は工作員だ。そうだな。これ以上、広がる前に解決しないと」
正確な場所を言ったカールにコルネリウスが褒めると、手に持っているMP41の安全装置を外した。
「では、私はそろそろ行く。健闘を祈るぞ、諸君」
一同に背中を見せながら告げると、何処かへ去っていった。
コルネリウスの姿が見えなくなると、一同は船から降りて、カールが目的地の場所を指差す。
「では、彼に話したとおりのルートで向かう。行くぞ」
スプリングフィールドM1903A4の安全装置を外しながらカールが告げ、言った本人が一同を先導する。
「それじゃあ・・・行こうか」
みほ達も一同に続いて川をせき止めて出来た橋を渡った。
彼女等の目に最初に映ったのは棒で串刺しにされた複数の人間の頭だ。
決意したみほ達を動揺させるのに丁度良い光景だった。
「な、なんか・・・前より酷くなってるような・・・?」
沙織がそれを口にすると、他の4人はそれに同意ずる。
そんな彼女等に、赤い川からゾンビが出て来る。
「こいつ等、川から出て来たぞ!」
「手当たり次第に殺せ!」
浩二郎が叫べば、ボニファーツがStg44を構えながら言う。
無論、ドイツ語で叫んでいるので一部を除いて理解できてない。
川から出て来るゾンビを倒していると、道からもゾンビが現れる。
フェンスの向こう側にもゾンビは居るが、ただ叩いているだけであった。
木に串刺しにされて燃えているゾンビが居る場所を、川から出て来るゾンビを倒しながら通り過ぎると、先のバリケードが崩れて、5体程のゾンビが出て来た。
これを容易に倒し、突破した。
橋を渡っていくと、V2ロケットが突き刺さっている破壊された村に辿り着いた。
付いた瞬間、先にあるドイツ軍のキャンプの見張り台が突然爆発する。
そこにもゾンビがおり、一行を見るなり襲ってくる。
手早く片付けると、IS−2重戦車の残骸の目で死体を貪り食うゾンビを撃ち、先へ進もうとすると、三階建ての民家からゾンビが出て来た。
置かれていた燃料が入っているジェリカンをカールが撃てば、あっさりと全滅する。
一行はそのままドアだけが残っている家の残骸の中へと入った。
またもゾンビが出て来たが、銃で撃ったり頭を殴ったりして突破した。
途中、一人用のソファーや洋式便器に座ったゾンビが居たが、容赦なく鉛弾を撃ち込んで倒す。
キャンプの見張り台近くまで来ると、見張り台後ろにある空襲でボロボロになった木の上にゾンビが座っていた。
直ぐ近くの枝には死体が乗り掛かっている。
カールは左手でコルトM1911 A1を取り出し、木の上に座るゾンビの頭を撃ち抜く。
頭を撃ち抜かれた死体は地面に落ちる。
見張り台に上がったみほ達とカール、ボニファーツ、ナターリヤ、浩二郎、ホレイシオは、偶然会った弾薬を補給しておき、周囲を見渡した。
「あっ、西住殿、V号戦車N型です!」
「本当だ・・・短砲身でも十分戦える・・・!」
優花里からの知らせにみほはV号の75o短砲身でも、ゾンビ相手には十分と判断する。
下にいる者達も弾薬を補充した後、また下へ降りて、何処か進める場所を探し始めたが、ゾンビの包囲攻撃を受け、見張り台まで戻ってくる。
「ゾンビの襲撃だ!全員迎撃態勢!!」
見張り台に向かってくるゾンビにボニファーツがStg44を構えながら叫んだ。
叫びの後に、上と下から一斉射撃が行われる。
向かってきたゾンビは弾幕で次々と地面に倒れていく。
こういうときに限って、ゾンビの増援は現れる物だが、その援軍は燃え盛る炎から現れた。
「ほ、炎の中から現れたぞ・・・!」
「熱くないのでしょうか・・・?」
全身を燃やしながら向かってくるゾンビを見て、麻子が言えば、華が間の抜けた事を口にした。
前のV2製造工場で、優花里が火炎放射器でゾンビを燃やして普通に焼き殺せたが、どうやら火加減が高くないと焼き殺せないらしい。
炎から出て来るゾンビを全滅させると、仮設兵舎から複数のゾンビ出て来た。
ドアが倒された音で気付き、下にいる者達の一斉射撃を喰らってあえなく全滅する。
これ以上、ゾンビが来ないと判断すると、みほ達を除く一行はセーフハウスのある場所へと向かった。
みほ達はV号戦車の元へと向かい、全員でクランクで発動機を動かし、エンジン音を鳴らすその戦車に乗り込む。
「エンジンはバッチしだ」
「無線機オーケー!」
「照準器は良好です」
「砲弾排出器バッチリです!」
それぞれの位置に着いた沙織達からの報告を受けたみほは前進を命じた。
「準備はOK・・・墓場に入ってください」
「分かった」
徒歩組が出て来るであろう墓場に向かう為に、門を破壊して墓場内に入った。
前方には教会が見える。
まだ徒歩組は出ていないようで、まず始めに華が口を開いた。
「まだV号突撃砲に改造されていないV号戦車があったとは驚きです」
「V号戦車は戦車部隊の不足分を補う為に、生産を打ち切られながらも未だに配備が続けられましたから」
「敗北直前のドイツは何でも使ってたんだな・・・」
華の言葉に優花里が応えた後、麻子がそれに納得した。
徒歩組がセーフハウスから出て来て教会まで向かおうとすると、教会の壁を突き破って、T−34/85が出て来た。
これを見た沙織は搭載機銃であるMG34を構えて慌てふためく。
「て、敵の戦車ぁ〜!?」
「この戦車には対戦車砲弾が・・・あっ、でも。何か様子が変・・・?」
沙織が声に出したことで、全員が身構えたが、キューボラから見たみほは、T−34の様子がおかしい事に気付いた。
調べに行ったボリスが操縦席のハッチから操縦者の死体を引っ張り出して、みほ達に合図を送った。
「どうやら死んだまま動いていたようだな・・・」
「破壊されても少しは動きますからね・・・」
ハッチを開けて車外に顔を出して麻子が言うと、優花里が操縦者が死んでも、アクセルを踏みっぱなしであれば、動くと解説する。
教会に入ろうとすると、複数のスナイパーゾンビの狙撃を受けた。
「狙撃だ!遮蔽物に隠れろ!!」
インニェヤルドが叫べば、車外に顔を出していたみほ達が車内へと避難する。
彼女等が隠れている合間に、スナイパーゾンビは狙撃銃を持つ者達に排除された。
徒歩組が教会内に入れば、銃声が聞こえた。
銃声が止むと、スナイパーゾンビの狙撃ポイントからカールが顔を出し、みほ等に合図を送る。
その時であった。
墓から大多数のゾンビが這い出てきたのだ。
「ぜ、前方に多数のゾンビが!?」
華の知らせでみほ等が乗る戦車の周りにもゾンビが這い出てきた為、包囲され掛けたが、カール達が近くにいるゾンビの排除してくれた。
キューボラから頭を撃たれて倒れていくゾンビを見て、みほは指示を飛ばした。
「はぁ・・・!榴弾砲装填!目標、ゾンビが集まる一時の方向!」
「はい!」
指示を受けた優花里が榴弾を装填すれば、それを確認した華は照準して言ってから砲撃する。
「直ちに発射します!」
言葉の後に砲声が響いて、大きな空薬莢が防止用の板に当たって下に落ちる。
発射された榴弾は大多数のゾンビが集まる場所に命中し、多数を殺傷できた。
このV号戦車N型はこれ以上性能の向上が出来ない限界点のV号を、戦車戦闘を犠牲にして、軽装甲車両や歩兵戦闘に向けに改造したタイプである。
43年に生産が打ち切られ、車体は全てV号突撃砲に回されたが、それでも各装甲部隊の戦車不足を補う為に、終戦まで運用が続けられた。
塹壕地帯のゲートを開けて出て来るゾンビが多いため、墓場のゾンビは徒歩組に任せ、塹壕から出て来るゾンビの掃討に向かった。
自爆ゾンビも出て来たが、沙織の前方機関銃の銃撃で倒れていき、周囲のゾンビの排除に有効立てられる。
数十分後には、全てのゾンビの排除に成功した。
徒歩組が塹壕に向かっていく中、沙織が無線機を弄って、何処かに繋がる。
「あっ、なんか繋がった」
無線機が繋がった事を沙織が口にすると、女性の声が聞こえてきた。
言葉はドイツ語であり、みほはヘッドフォンを抑え込んで音声を耳に入れる。
『ここまで来れた・・・今はもう引き返せないわ・・・私にはハンスがどれほどの苦痛を味あわなければならないのか考えられないわ。少なくとも後ろは安全よ。私達はこの状況を上手く切り抜けられるわ・・・そう思う・・・分かってるわ。ハンスは私の中で強さと彼の信念が私に力を与えてくれるわ』
無線を聞き終えると、みほ達は戦車を塹壕地帯へ進めた。
流石に戦車では入れないので、上から行くことにする。
塹壕内にはガスマスクを付けたゾンビや地面にめり込んでいたガイコツが徒歩組に襲い掛かってきた。
こちらにもガスマスクを付けたゾンビが襲い掛かってくる。
それらを機関銃や主砲で吹き飛ばしつつ、丘の入り口まで向かった。
向かっている最中にガイコツや初めて見るアーマーを付けたガイコツも襲ってきたが、ガイコツは踏み潰しても問題はないので、遠慮無く踏み潰していき、丘へと急ぐ。
次にゾンビが出て来るが、その度に榴弾や機関銃で薙ぎ倒し、先へと進む。
丘まで到着すると、現れては直ぐに自爆する自爆ゾンビと対峙する徒歩組が見えた。
全ての自爆ゾンビが爆発するのを確認した徒歩組は、丘の上にある脱線した客車を使ったセーフハウスへと向かっていった。
「丘の上まで上がってください」
「承知した」
みほ等も丘の上まで上がって、そこで一時期の休息を行う。
チャンネルを無線機から勝手に先程の女性の声が聞こえてくる。
『考えられない・・・ちゃんとやれるわ・・・ゴホッ、ゴホッ!』
「弱ってる・・・」
ヘッドフォンを抑えて良く聞いていたみほが言うように、女性は深傷を負ったのか、かなり弱った声だった。
『こんなところで・・・一人で死にたくない・・・ゴホッ!ハンス・・・置いてくるべきじゃなかった・・・ゴホッ!』
咳き込む女性の声に、みほ達は不安になるが、それでも女性は言い続ける。
『絶対に・・・ブハッ・・・!アンテナに急いで・・・!ガハッ!ハンスの為に!』
「死んじゃった・・・?」
無線機が切れ、女性の声が聞こえなくなり、最後の言葉に沙織は女性が死んだと思った。
丘の上の駅までに徒歩組と共に到着する。
駅にもゾンビが居たが、一体だけだったので、直ぐに頭を撃たれて地面に倒れた。
血で赤く染まった湖にあるアンテナの方へナターリヤがそこに向かい、アンテナを起動させた。
アンテナの発信音が暫く鳴り響く中、それに混じってゾンビの唸り声が聞こえてきた。
「ゾンビの急襲だ!全員迎え撃つ準備をしろ!!」
湖から這い出てくるゾンビを手に持つ狙撃銃で撃ち倒したカールが、全員に聞こえるような声量で叫んだ。
それぞれが持つ銃の銃声が鳴り響く中、血に染まった湖だけではなく、脱線した貨車からゾンビが続々と出て来たみほ等の戦車にも襲い掛かる。
「いっぱい出て来たぞ」
「ゾンビが全滅するまで撃ってください!」
『はい!』
麻子からの知らせに、みほが指示を飛ばすと、残りの沙織と華、優花里が返事をして、各々の作業を始める。
些か数が多かった為、一体のゾンビが戦車に張り付いてしまう。
「うわぁ!?乗り掛かられた!」
「私がやります!」
砲弾を抱えていた優花里が言えば、みほがMP40の安全装置を外し、キューボラから上半身を出して張り付いたゾンビを銃撃する。
数十発の銃弾を受けたゾンビは全身穴だらけとなって、車体から落ちた。
安心しきったみほが、車内に戻ろうとすると、左から上がってきた一体のゾンビに左腕を掴まれた。
「は、離して・・・!」
左手に持つMP40を手放して、みほは必死にゾンビの腕を振り払おうとするが、力が強すぎて全く離れない。
余りにも強い腕力で掴まれた左手から血が流れ出る。
彼女の腕を掴むゾンビは胸の胸骨が見えて、顎の部分が腐り落ちている腐敗したゾンビだ。
ゾンビが左手に持っている人骨で殴られる。
「痛ぁ・・・!」
左手から来る痛みと何度も来る顔からの痛みで声が出て、鼻血も出す。
腕が握り千切られるか殴り殺されるのではないかと思い、死を覚悟した瞬間、砲声が響き、みほの腕を掴んでいたゾンビが左手だけを残して衝撃で吹き飛ばされ、駅の壁に叩き付けられて死んだ。
二回からの援護もあり、みほ等を包囲しようとしていたゾンビはある程度排除される。
「西住殿!大丈夫でありますか!?」
「大丈夫ですか!?西住さん!」
「だ、大丈夫・・・」
鼻血を出しながら、心配する華と優花里に答えた。
小型拳銃を抱えていた麻子が、みほの左腕にゾンビの腕がまだ掴んでいる事に気付き、声に出した。
「う、腕!腕ぇ!!」
「あっ、まだ腕が・・・!」
「早く離してって!」
沙織が機関銃を再装填しながら言うと、みほは腐った腕を力尽くに引き離し、キューボラから外へ放り込んだ。
最後と言わんばかりにマシンガンゾンビが姿を現すと、みほはマシンガンゾンビに砲身を向けるよう指示する。
「砲弾を大きいゾンビの方へ!」
「はい!」
「((射|う))て!」
短砲身の榴弾が放たれ、マシンガンゾンビに命中し、周りのゾンビを巻き込んだが、マシンガンゾンビはおぞましい姿に成りながらも未だに健在だった。
だが、二挺のMG34とルガーP08の銃撃を受け、地面に倒れた。
マシンガンゾンビが倒れたと同時に、ゾンビは全滅した。
みほ達を含めた一同が駅の二階にある無線機の前に集まった。
カールが無線機に触れると、英語で男の声が聞こえてくる。
『情報報告に寄れば、ナチスはサガルマータの遺物を所持している。それがゾンビの脅威を制御する為の鍵であると思われる』
その無線を聴きながら、みほはリンダからの治療を受けていた。
『我々が予想した場所では、かなり困難な場所にあるとされている。本当に申し訳ない。だが、我々は諸君らにライオンの巣に再び戻る必要があるのだ』
用件だけを伝えると、声の主は無線を切った。
「どうする?安全な場所にいる奴は、俺達にベルリンに向かえと言ってるぞ」
ボリスは直ぐにライオンの巣が、ベルリンへあることに気付き、どうするかをカールに聞いた。
「決まってる。ベルリンへ戻るさ」
「だが、ベルリンにどうやって戻る」
それに答えたカールに、ハーマンが異議を唱えた。
「戦車には全員乗れないしな・・・」
全員がベルリンへどうやって向かうか悩む中、ルリが自転車に目を付けた。
「仕方がない。自転車で向かうか・・・」
向かう方法については自転車で解決し、みほ以外の一同が自転車でベルリンに向かうことになった。
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