機動戦士ガンダム異聞?旭日の旗の下に?第9話
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これまでのあらすじ

 

 後世世界U.C.(宇宙世紀)0079年1月3日、ジオン公国とプラントの宣戦布告から始まった人類史上初の宇宙戦争は、新たな局面を迎えつつあった。

 

 ヘリオポリスにて開発中だった連邦軍の新型MSがザフトによって強奪される事件が発生、更に、その時の戦闘によりヘリオポリスが崩壊したのである。この責任を取り、オーブ代表ウズミ・ナラ・アスハは辞任、日本はヘリオポリスに救援部隊を派遣するとともに、薩摩パトロール艦隊に新造艦アークエンジェルの護衛を命じた。

 

 世界は、かつての第2次大戦同様の三極構造にあった。この事態に軍務大臣高野五十六は、万能宇宙戦艦「轟天号」を紺碧艦隊に送り、その試験を行う事を前原に指示した。

 

 

 

 世界は、動乱の中に合った。

 

 

 

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第9話 大天使尾行作戦

 

U.C.0079年12月18日 紺碧島秘密ドック

 

 この日、しばしの休息を終えた後、前原を初めとした富嶽号乗員は、轟天号最終試験航行の為、出航の準備に取り掛かっていた。

 

「補助エンジン動力伝達」

 

「動力伝達」

 

 機関長が復唱すると、補助エンジンにエネルギーが入った。

 

「補助エンジン点火5秒前…3、2、1、補助エンジン点火」

 

 補助エンジンのノズルに火が付いた。

 

「微速前進0.5」

 

 航海長がギアを前に少し動かし、舵をとると、船体が少し前進した。

 

「潜航!」

 

「潜こぉおおおおう!」

 

 艦長の復唱と同時に、轟天号の船体が水中に潜る。すると、水中にゲートが見えてきた。

 

「ゲート開け!」

 

「ゲート開きます」

 

 水中のゲートが開き、轟天号がゲートから洞窟の中に入っていった。紺碧島のゲートは、島にある湖と海を繋げる海底洞窟を利用した天然の発艦口である。上下に入り組んだ洞窟を進むと、太平洋に続く出口に出た。

 

「補助エンジン最大出力、マキシマオーバードライブ充填120%、フライホイール始動」

 

 帰還部の「ロ号艦本イ900式マキシマオーバードライブ機関」のフライホイールが回転し始めると同時に、轟天号が浮上を始めた。

 

「メインエンジン点火10秒前、7、6、5、4、3、2、1、フライホイール接続、点火」

 

 轟天号の船体が海面を出たと同時に、マキシマオーバードライブに、火が付いた。

 

「轟天号、発進!」

 

 轟天号は更に高度を上げ、徐々に宇宙への進路を取った。

 

 

 

 

 

 

サイド4「プラント」首都バンチ「アプリリウス」最高評議会場

 

 その頃、プラントでは今回のヘリオポリス襲撃を行ったクルーゼ隊に対する査問委員会が行われていた。査問委員会には、最高評議会委員の他、ジオンから独立機動軍司令キシリア・ザビ少将、宇宙攻撃軍司令ドズル・ザビ中将、武装SS司令エギーユ・デラーズ大佐、地球方面軍司令ガルマ・ザビ大佐、総帥府主席秘書セシリア・アイリーンが参加していた。

 

 査問委員会の内容は、襲撃の概要、強奪したモビルスーツのスペック説明、そして、所属不明の第3勢力の存在についてだった。

 

「この第3勢力のモビルスーツですが、白い機体は9月にシャア少佐が目撃した日本で開発された新型MSの改良型と思われ、詳しいスペックは不明ですが、装甲はアクシズで研究中のルナ・チタニウム合金を使用されていると思われます。又、この後ろの黄色い機体は日本軍の主力MSであるジムシリーズと共通点が多く見られ、恐らくこの第3勢力は、日本軍の諜報特殊部隊と思われます」

 

 クルーゼと共に査問に出頭していたアスラン・ザラの説明が終わると、早速穏健派が厳しい意見が飛んだ。

 

「しかしクルーゼ隊長、そのモビルスーツは南極条約を違反してまで奪う価値があるのかね?」

 

「足つきが出港してからでも強奪は可能だった筈ではないのかね」

 

 これらの発言に対し、クルーゼは冷静に答えた。

 

「お言葉ですが、中立国管理下のコロニーの軍事利用は南極条約を反しております。それに関しては五分五分です。更に、強奪の機会はあの時期でなければ我々はこの戦争で負けていたでしょう」

 

 クルーゼの発言が終わると、ガルマが挙手し、発言を求めた。

 

『いずれにしても、連邦軍は遅まきながらモビルスーツの有効性に気付いたのでしょう。これからの戦いで、連邦軍が量産型のMSを前線に投入してくる可能性は十分あり得ると考えるべきでしょう』

 

 ガルマの意見に、強硬派の一人が罵声を浴びせた。

 

「所詮はナチュラルだ!」

 

 その言葉に怒りを覚えたガルマは直ちに反論した。

 

『お言葉ですがその言葉を借りれば我がジオン国民と日本人もナチュラルですぞ!不謹慎な発言を撤回してもらいたい!』

 

「双方落ち着け!これは査問委員会であって作戦会議ではないぞ!」

 

 緊迫する議会だったが、ドズルの一言によって再び沈黙が訪れた。結局、査問委員会の結果、クルーゼ隊は処分は不問となるものの、足付き(ザフトでのアークエンジェルの名称)の追撃には、フャルメルを母艦とするシャア・アズナブルの部隊に引き継がれた。

 

 

 

 

 

 

アメリカ ジオン軍地球方面軍ニューヤーク基地司令官室

 

「申し訳ありませんドズル兄さん。ついカッとなってしまったもので」

 

 査問委員会後、ガルマはドズルと会話していた。先程の口論についてである。

 

『あの程度の小童など怒鳴り散らさんでもよい。いずれお前は将来のザビ家を背負って立ち、俺をも使いこなす大将軍になる器だからな』

 

「はははっ、そうなる頃にはもう平和な時代ですよ。ところで、何故木馬の追撃任務をシャアに任せたのです?」

 

『うむ。実は木馬の搭乗員だが、報告によると、あのエンデュミオンの鷹が乗っているらしい』

 

「エンデュミオンの鷹と言うと、一週間戦争でのエンデュミオン攻防戦でローラシア級2隻を轟沈させたあの…」

 

『そう、それに強奪に失敗したストライクという奴のパイロットがコーディネイターという噂があったからな。万が一に備えてシャアにした。それに、ゲルググのデータを取る良い機会にもなるからな』

 

「ゲルググ!完成したのですか!」

 

『最も、まだ量産ラインに乗ってないがな』

 

 

 

 MS-14「ゲルググ」とは、ジオニック社製のジオン軍新型モビルスーツである。このモビルスーツは、ジオン系量産機としては初となる携行型ビーム兵装を始めて標準装備した機体で、この当時の量産機としては高性能な機体である。このゲルググの開発経緯には、実はシャアが目撃した日本のMSがあった。

 

 ガンダムの存在を知ったジオン軍上層部は、その機体性能を映像から調査、分析し、機体の動力にミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉を使っている事を突き止めた。この報告を聞いたギレンは、直様ミノフスキー博士にミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉の小型化を要請、それと同時に、ビーム兵装を標準装備した新型MSの開発をジオニック社に依頼した。こうした試行錯誤の結果、ジオン軍初のミノフスキー・イヨネスコ型核反応炉搭載型MS「YMS-14先行量産型ゲルググ」が完成したのである。だが、まだ正式量産型のA型は量産ラインに乗っておらず、先行量産型に高機動バックパックを搭載したB型をエースパイロット中心に配備されたに過ぎなかった。

 

 

 

「そうですか…でも、シャアなら戦えるでしょう」

 

『うむ!そうだな!』

 

 そう言うと、ドズルからの通信が終わり、ガルマは後ろの景色に目をやった。

 

「(この膠着状態はいつまで続くのやら…早く終わってほしいものだ…)」

 

 ガルマはしみじみ、そう思った。

 

 

 

 

 

 

U.C.0079年12月24日 暗証宙域(ユニウスセブン跡地)

 

 轟天号は、通常のコースのまま、富嶽号を中心とする紺碧艦隊本隊と合流し、暗証宙域にて轟天号の最終試験航行が行われていた。しかし、暗証宙域を通るルートを行くうちに、ユニウスセブン跡に来てしまったのである。その際、前原はここに眠る24万以上の魂を安らげるために、簡易的な宇宙葬を催したのである。そこまでは良かったが、なんとそこへ沖田准将からの情報にあったあのアークエンジェルを発見したのである。この事態に前原は、全艦にミラージュコロイドを展開させ、動向を探っていた。

 

「どうだ?噂の天使様のご様子は?」

 

 司令官室の前原は、ベットでの小休止を終えると、入江の報告を受けていた。

 

「はい、現在、大天使は周辺のデブリから物資を補給している可能性があると思われます」

 

「物資を?」

 

「はっ、恐らく、デブリに混入している水かと…」

 

 

 

 ユニウスセブンのデブリは、他のデブリと違い、水分と空気が多く含まれており、緊急の補給ではぴったりなのである。しかし、アルテミスに向かった筈のアークエンジェルが何故ユニウスセブンで水を補給するのかが分からなかった。そんな事を考えていたその時だった。

 

 

 

『艦橋より司令官!艦橋より司令官!』

 

 突如、艦橋より艦内電話が鳴り響き、前原は受話器を取った。

 

「こちら前原、どうした?」

 

『3時方向に爆発を感知!ザフトのジンが潜伏していた模様!』

 

「何!それで、その後どうした!」

 

『はっ!どうやらヘリオポリスで確認した白いMSによって撃墜されたようで、更にその白い機体は、救命ポッドと思われる者を回収して大天使に帰還しました!』

 

 報告を聞いた前原は、そっと受話器を戻した。

 

「司令!」

 

「嫌、今動くのは不味い、紺碧艦隊本隊は直にルナツーへ帰還するように伝えろ!」

 

「はっ!しかし、轟天号は…」

 

「轟天号は、このままアークエンジェルを追尾する」

 

 この前原の行動は、轟天号の性能を見越しての決断だった。そして、轟天号の初陣となる戦いへの道とも知らず…

 

 

 

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キャラ設定

 

ジオン公国

ガルマ・ザビ

初出:機動戦士ガンダム

概要

 ジオン公国地球方面軍司令官。階級は大佐。ザビ家の末弟だが、ドズルのように現場主義を重んじた司令官で、前線の兵達からの信頼も厚く、将来を嘱望された身である。

 

ドズル・ザビ

初出:機動戦士ガンダム

概要

 ジオン公国宇宙攻撃軍司令。階級は中将。ザビ家の三男で、目の前で次兄サスロを目の前で殺されたというトラウマを持つ。ガルマの将来についていつかは自分をも部下にする大将軍になると考えている。

 

キシリア・ザビ

初出:機動戦士ガンダム

概要

 ジオン公国独立機動軍司令。階級は少将。ザビ家の長女で、諜報機関キシリア機関の長で、ありとあらゆる情報を持っている。ギレンとは不仲である。日本についてはキシリア機関をもってしても見抜けない大高総理と高野大臣を狸と呼んでおり、X艦隊(紺碧艦隊)を最大の脅威として見ている。

 

エギーユ・デラーズ

初出:機動戦士ガンダム0083

概要

 武装SS司令官。キシリアからはギレンの腰巾着と呼ばれており、大高、高野からは「ヒムラーの再来」と呼ばれている。最もスペースノイドの解放を望んでいる。

 

セシリア・アイリーン

初出:機動戦士ガンダム

概要

 総帥府主席秘書、会談においてはギレンから全権を任されている。ギレンの愛人という噂もあるが…

 

プラント

アスラン・ザラ

初出:機動戦士ガンダムSEED

概要

 クルーゼ隊所属のMSパイロット。パトリック・ザラのご子息で、母を血のクリスマスイブで亡くしている。友人であるキラと戦わなければならない事に悩んでいる。

 

説明
第9話です。発進シークエンスを書くのは始めてですので、少し物足りなさを感じるかもしれません。
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コメント
技術加速は各勢力で進んでいるようですね。所でジオンの後世転生者って誰なんだろう。作中での言動を見る範囲ではザビ家の誰かとは思えないけど・・・(プロフェッサー.Y)
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機動戦士ガンダム 機動戦士ガンダムSEED 紺碧の艦隊 宇宙戦艦ヤマト トータル・イクリプス 東宝特撮 クロスオーバー 

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