ガールズ&パンツァー Nazi Zombie Army U 総統地下壕は、総統官邸です!
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美術館からベルリンを脱出した水路に似た場所へと一行は辿り着いた。

不気味なオレンジ色の霧が立ち籠めており、もはやこの世ではなく、まるで地獄にいるようだ。

 

「なんか・・・怖い・・・」

 

そんな禍々しい感覚を覚えながら口にして、みほ達は水路の出入り口小屋へ向かった。

美術館で死んでいる降下猟兵から拝借したMP40を構えながら、沙織は出入り口に向から出ようとした瞬間、突如門が閉まる。

 

「キャッ!」

 

閉まった門に吹き飛ばされ、沙織は壁にぶつけられる。

 

『沙織さん!(武部殿!)』

 

心配したみほ達は、直ぐに倒れている沙織の近くへ集まり、堅い鉄製の門に顔面をぶつけられて鼻血を出している彼女の表情を見る。

 

「大丈夫か!?沙織!しっかりしろ!」

 

麻子は不安な表情を浮かべながら、壁に頭を打撲して意識障害を起こしている沙織を揺さぶった。

優花里や華も、沙織の頭から血が出ている事に気付き、ポケットから包帯を取り出す。

 

「武部殿の頭から血が!」

 

「沙織さん、しっかりして!」

 

その声は水路の周りに居たカール達の耳にも入っており、壁にもたれ掛かって死んでいた国民擲弾兵から弾薬類などを探っていたマリが、川まで近付いた。

Stg44を構えながら近付くと、ゾンビの唸り声が周囲に響き渡り、川から大量のネズミが凄い速さで出て来る。

 

「キャッ!もう、何よ!」

 

驚いたマリは転び、ネズミが自分のズボンの中に入ってこないような位置に移動した。

 

「全員戦闘準備をしろ!」

 

カールがM1A1トンプソンを持ちながら、この場に居る全員に戦闘を行うよう指示する。

一方の出入り口の小屋では、頭から出血している沙織の治療を行っていた。

 

「あぁ・・・華・・・ありがとう・・・」

 

「沙織さん、しっかりして。敵が来ましたよ」

 

外から聞こえてくる銃声に、沙織に華が告げる。

みほが小屋からカール達が川から出て来るゾンビに銃撃を加えるのを見る。

自分達が加勢に加わる必要は無いと判断し、沙織の看護を続けた。

銃声がしなくなると、自然と門は開き、残りの者達が小屋へと入ってくる。

 

「声はしたようだが、彼女は大丈夫か?」

 

カールが短機関銃を持ちながら、みほに問う。

だが、代わりに沙織が答えた。

 

「大丈夫、大丈夫。私全然平気だから・・・」

 

そう言って、沙織はMP40の銃口を杖代わりにして立ち上がった。

長年の経験上で、彼女が余り大丈夫ではないと分かり、沙織と同じ身長の優花里とみほに担ぐよう命じる。

 

「よし、ニシズミとアキヤマ。君達は身長が同じだ。彼女を担げ」

 

「はい・・・」

 

「えーと・・・」

 

「日本語で良い。訓練で学んだ」

 

「あぁ、はい!分かりました!」

 

カールからの命令にみほと優花里は応じ、沙織を担いだ。

 

「えぇ・・・良いのに・・・」

 

「全然大丈夫に見えませんよ。武部殿」

 

「もし、よからぬ事が起きたら心配です・・・」

 

優花里や華の心配する声に、沙織は応じる事にした。

麻子は捨てたVG−45の代わりにMP40を持っており、沙織の近くに居た。

近くに居る華もモーゼルM712を持ちながら警戒する。

 

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門を出たら、直ぐにゾンビが一行に向かってきた。

 

「近付かせるな!撃て!」

 

ボニファーツが叫ぶと、近場にいるゾンビに対して一斉射撃が行われた。

向かってきたゾンビは数十発の銃弾を受けて細切れになった。

ガイコツまでやって来たが、雨のような銃弾を受け、バラバラになる。

襲ってきた敵を全て片付けると、航空機のエンジン音が聞こえてきた。

 

「このエンジン音は・・・B−17だな・・・」

 

カールは直ぐにアメリカ軍の戦略重爆撃機B−17と分かり、一同が暗い空を見上げた。

上空にはカールの言うとおりB−17が飛んでいたが、要図がおかしかった。

 

「何か様子が変だな・・・」

 

「エンジンから火を噴いてるよ」

 

空を見上げていた麻子が言えば、ルリがB−17のエンジンが火を噴いていることが分かった。

 

「なに?おっ、ホントに火を噴いてるぞ!」

 

ハーマンが言うと、B−17は何処かに墜落し、中に詰んである爆弾が爆発したのか、大爆発を起こした。

 

「墜落したぞ!」

 

「あれ程の爆発・・・生存者は居ないようだが・・・調べる必要はあるな」

 

ボリスが言うと、カールは墜落現場に向かうことにする。

 

「えぇ・・・行くの?」

 

「そうだ。幸いにもプラネタリウムの近くらしいからな。行くぞ!」

 

余り行く気のないマリの問いに、カールはそう返して先へと進んだ。

みほと優花里は沙織を抱えながら一行の後へと続く。

砲撃か空襲で破壊された街路へ入った途端、何隊かのゾンビが一行に襲い掛かってきた。

直ぐに一斉射撃を食らわせて殲滅させる。

行き先が崩れた瓦礫で塞がれている為、道標のように出て来たゾンビを倒しながら右手の破壊された建物に入った。

ひたすらゾンビを撃ち倒しながら暗い屋内の二階へ上がると、開かない門の隙間から手を伸ばす複数のゾンビが見えた。

奈子とリンダがM1928A1トンプソンやM1ガーランドで、門にいるゾンビを撃ち始めた。

ちゃんと照準器を覗いて狙ったので、頭部に命中し、門に集まっていたゾンビは全滅する。

 

「余り無駄弾を使うなよ・・・」

 

そう二人に忠告すると、カールは先へと進んだ。

一行が街路に出ると、またもゾンビが出て来たが、造作もなく一同は手に持つ銃で撃ち倒し、前へと進む。

血で描かれたハーケンクロイツが見える場所まで向かうと、壁が崩れ、召還者が壁の上に這い上がり、ゾンビを召還し始めた。

 

「美術館のあいつか!奴を先に撃ち殺せ!」

 

ゲールトが叫ぶと、狙撃銃を持つ者達は一斉に召還者に向けて撃った。

召還者は複数のライフル弾を受けて直ぐに力尽き、壁から落ちた。

残りのゾンビは小銃に機関銃、短機関銃などで撃ち倒される。

自爆ゾンビが出て来たが、わざわざ銃撃の前に飛び出してくれた為にゾンビを巻き込んで爆発してくれた。

全ての敵を排除した一行は道印に沿って、デパートの中へと入った。

やはり中にもゾンビは潜んでおり、一行の足跡を聞くなり襲ってきた。

近接武器を持つ者達は直ちに排除し、二階へと上がる。

二階に上がった一行は、周囲にゾンビが居ないか確認し、居ないと確認すると、目の前に見えるセーフハウスへと直行した。

セーフハウスへと入ると、机の上に置かれたラジオから声が聞こえ始めた。

 

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『お終いだ。私は総統地下壕に招集された。だが、私は馬鹿ではない。ヒトラーは降伏する前に、我々を道連れに死ぬつもりだろう。私は最後まで戦い抜く。諦めないぞ!』

 

声の主もこちらの声も受け入れずに切った。

弾薬補充を済ませた後、飲食と休息を済ませた。

 

「もう良いよ。一人で歩けるから」

 

椅子に座らされた沙織は、痛みが取れたのか、一人で立ち上がる。

出口のドアを開け、一行は危険な場所へと戻る。

出た先はデパート本館だった。

残されている衣服を見る限り、高級デパートだと分かるが、どれもこれも砲撃や爆撃で荒れ、さらにこの惨事で酷いことになっている。

 

「買い物を楽しむ雰囲気じゃない・・・!」

 

デパート内の酷い惨状を見た麻子は震え始めた。

華も周囲を見ながら口に出す。

 

「確かに買い物を楽しむ雰囲気じゃありませんね・・・不気味です・・・」

 

彼女の言うとおり、マネキンが焼かれていたりして、不気味である。

ルリがピアノに近付いた瞬間、この場にいる全員に幻覚が見えた。

 

「わっ・・・!?」

 

それはピアノを弾くヒトラーと、それを聞くのは第三帝国軍の指揮官達だ。

数秒後、その幻覚は消えた。

 

「なんだったんだろう・・・?」

 

みほは幻覚に少し戸惑いながら、出入り口に向かう者達の後へ続いた。

彼女が出入り口へと血が付いた瞬間、左右の銅像が光り始め、出入り口の扉の隙間から、不気味な霧が入ってきた。

 

「はっ・・・!?」

 

直ぐにみほは出入り口から離れ、二階まで避難した。

扉が開き、続々とゾンビが入り込んでくる。

 

「ゾンビのご来店か?嫌な客だ!お帰り願え!」

 

二階からのゾンビの侵入に気付いたボニファーツは、Stg44を構えながら全員に聞こえるような声量で告げる。

出入り口に向けて一斉射撃が行われ、次々とゾンビが薙ぎ倒される中、ガイコツまで入ってきたが、銃弾の雨を受け、バラバラになる。

 

「左右からも来る!」

 

「こっちにも!?」

 

ゲールドが二階から出現したガイコツが向かってきた事を知らせた。

知らせに応じたルリは手早くMP40の銃口を向け、ガイコツを撃ち始める。

銃声が鳴り終える頃には、デパートに入ってきたゾンビは全滅した。

敵の全滅が確認されると、沙織は辺りを物色し始めたが、殆ど戦災や今起きてる惨状で焼き尽くされたのか、無かった。

 

「全然無いじゃん・・・」

 

「武部殿、行きますよ!」

 

「は〜い!」

 

優花里からの声に、沙織は一行の後へと続いた。

出た途端、一行の目線に入ったのは先程墜落したB−17だった。

 

「まだ燃料か爆弾が残っているかもしれない。迂回するぞ」

 

カールからの指示に、一同はゾンビが居る方向へと進んだ。

ゾンビを撃ち倒しながら進み、途中に弾薬箱があったので回収し、左手に曲がると、壁の柱に召還者が這い上がってきた。

それも各柱に一人ずつ、約四人も出て来て、ゾンビを召還、自爆ゾンビまで召還する。

 

「まずはあいつ等からだ!」

 

自身の愛銃であるスプリングフィールドM1903A4を構え、一番遠くにいる召還者の頭に狙いを付け、引き金を引いた。

狙撃銃を持たない者達は、自分達に向かってくるゾンビや自爆ゾンビの排除に当たる。

最後の一体が頭を撃ち抜かれて地面に落下すると、召還されて襲ってくるゾンビはたったの一体だけで、ルリがリーエンフィールドNo4で頭部を撃ち抜くと、ここら辺のゾンビは全滅する。

先へと進むと、目の前にもう一つの川が目に入った。

道行きに行こうとすると、左手の壁が崩れて複数のゾンビが出て来た後、スナイパーゾンビからの狙撃を受けた。

 

「狙撃だ!全員、遮蔽物に隠れろ!!」

 

空かさずカールが狙撃銃を構えながら指示を飛ばすと、狙撃銃を持たない者達は遮蔽物に隠れ、隠れている場所からゾンビの排除を行う。

手早くスナイパーゾンビの狙撃ポイントを確定し、そこに狙いを付けると、標的はそこに現れた。

 

「まぁ、ゾンビだから仕方ないよね?」

 

マリはkar98kの狙撃スコープを覗きながらそう口にすると、引き金を引いた。

銃弾はスナイパーゾンビの頭部に命中し、貫通して壁に突き刺さった。

 

「終わりましたかね・・・?」

 

遮蔽物から優花里が顔を出すと、ヘルメットを被ったゾンビが一体だけこちらに向かってくるのが見えた。

M1カービンを構えて、照準器を覗いて狙いを定め、引き金を引く。

 

「ウゥ!」

 

頭部に命中したが、ヘルメットが飛んでいっただけであり、もう一度狙う必要があった。

再び狙いを定めて引き金を引き、沈黙させた。

 

「ここから近道できそうね・・・ルリちゃん、行くわよ」

 

「うん」

 

崩れた壁から近道が出来ると独断で判断したマリは、ルリを連れて勝手に入った。

それを見逃さず、カールも後を追う。

 

「おい、待て!」

 

「皆さん、行ってしまいますよ!」

 

「あぁ、私達も行きましょう!」

 

もちろん、他の一行もカール達の後へとついていった為、みほ達も続いた。

入った場所は二連装128o高射砲が一門ある高射砲エリアだった。

 

「あれは・・・128o二連装高射砲・・・」

 

形は違えど、ヤークトティーガーというティーガーUの車体をベースとした重駆逐戦車の主砲とされている128o砲であるが、周りに転がっている死体を見れば、はしゃぐ気分にもなれない。

無論、そこにもゾンビは居り、一行の足音を聞きつけるなり、襲ってくる。

 

「まだ未使用の砲弾が転がっているから気を付けろ!」

 

ハーマンが、高射砲周辺に置いてある砲弾に注意するよう叫んだ。

狭い通路に入ると、そこは首や腕、脚、横腹の無い死体ばかりが転がっており、みほ達に不快感を与える光景だった。

B−17が墜落した辺りまでに辿り着いた。

生存者を探してみたが、乗員は全員黒焦げの焼死体に変わっており、触れただけでも灰になって散りそうだ。

 

「生存者は無しか・・・次へ行こう・・・」

 

カールが諦めて近くの建物に向かおうとすると、一行を待ちかまえていたかのようにゾンビが地中から這い出てきた。

 

「いつの間に出て来たんだ!?」

 

近くの地中から這い出てきたゾンビの頭に蹴りを入れながら、ボニファーツが叫んだ。

土嚢に配置されているMG42を、ナターリヤが手に取り、一行に殺到してくるゾンビに機銃掃射を掛ける。

 

「私達も!」

 

「は、はい!」

 

みほ達も手に持つ銃で、ゾンビの掃討に加わる。

自爆ゾンビの何体かが現れた魔法陣から召還され、出て来たが、あっさりと銃弾の前に倒れ、周囲のゾンビを巻き込んで爆発する。

このまま全てのゾンビの掃討が終わるかと、一同は思ったが、爆薬の類ではない爆発が起こり、フライデーモンが現れた。

 

「あのでっかいのが!」

 

「こいつで仕留めてやる!」

 

フライデーモンを見たルリが叫べば、ボリスがM1バズーカを取り出し、フライデーモンに向けて撃った。

後ろにいたクレマンと浩二郎が軽い火傷をしたが、対戦車弾頭を食らったフライデーモンは膝をついた。

 

「あの炎を撒き散らす前に((殺|や))れ!!」

 

ハーマンがMP40を構えながら、全員に告げた。

その指示に、銃口が一斉にフライデーモンに向けられ、銃弾が集中する。

雨のような銃弾を受けたフライデーモンは力尽き、爆発した。

残りのゾンビを一体ずつ撃ち殺していくと、もうゾンビは這い出てこなくなり、全滅していた。

全滅を確認した一行は、目の前の建物に向かうことにする。

 

「玄関はゾンビが大量に待ち受けていそうだ。あそこから行くぞ。丁度セーフハウスも見えるしな」

 

崩れた建物の西館にセーフハウスを見付けたカールは、崩れた端っこを指差し、そこから入ると皆に知らせた。

沙織からすれば、不便な入り方だが、こんな状況なので、文句を言っている場合ではない。

西館に入った一行は、目に付けたセーフハウスへと入っていくが、みほは右手の部屋に人影を見付け、短機関銃を握りながらそこへ向かった。

 

「西住殿・・・?」

 

「みぽりん、どうしたの?」

 

「多分生存者かも・・・行ってくる」

 

カール達にも伝えずに、みほは声を掛けた優花里と沙織に告げ、奥に進んだ。

 

「私達もついていきましょう」

 

「い、行くのか・・・?」

 

「当然でしょう。さぁ、麻子も」

 

華が言うと、麻子は嫌がったが、沙織に背中を押されて一緒についていくことになった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

緊張し、息を少し荒げながらみほはMP40の((照準器|サイト))を覗きながら前へと進む。

さながらCQBと呼ばれる室内戦や市街戦用の戦闘術であるが、この中で知っているのは優花里とインニェヤルド程度だろう。

沙織達がみほに追い付いた途端、マシンガンゾンビが彼女等の後ろから現れた。

 

「ヒッ・・・!うわぁぁぁ・・・!」

 

最初に目が入った麻子は、ウェンチェスターM1912をマシンガンゾンビに向けて撃った。

散弾銃の弾丸を近距離で受けたマシンガンゾンビは怯みもせず、ただ前を歩いていた。

銃声に気付いたみほは直ちに駆け付け、マシンガンゾンビの頭に数発撃ったが、拳銃弾では刃が立たない。

だが、マシンガンゾンビは何の抵抗もせず、みほから見て東の方へ向いて叫ぶと、姿が消えた。

 

「へっ・・・?」

 

「な、なんだ・・・!?怪奇現象か・・・?」

 

「何が、なんだか・・・分からないですよ・・・こんな・・・」

 

何が何だか分からない彼女達であったが、みほの後ろから三体のゾンビが襲い掛かってきたが、全て気付いたマリに撃ち殺された。

 

「あっ、ありがとうございます・・・」

 

「別に。ついてこないから来たけど・・・なんか見付かった?」

 

華からの感謝の言葉に、マリはどうして離れたのかを問う。

少し落ち着いたみほが、代わりに答えた。

 

「向こうに生存者が居ると思いまして・・・」

 

「そっ。じゃあ、調べてくれば?」

 

マリの言うとおり、みほ達は奥を調べてみたが、誰も居らず、死体だけだった。

諦めてセーフハウスへ入ると、出口の近くの机に置いてあるラジオが、みほ達の到着と共に鳴り出した。

 

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『何が起きているんだ?死体が地中から起き上がってくる!黒魔術だ!私は地獄にいるのか?私はもう死んでいるのか?これは総統に叛した罰なのか!?総統地下壕に戻らねば!』

 

どうやら惨事発生当時の音声らしい。

音声が切れると、一行は暫しの休憩と弾薬補充の後、出口を出た。

少し進むと、破壊された箇所から外が見えた。

路面電車の終着駅らしく、遠くの方に目をやれば、崩れて、板で補修された橋が見える。

そのまま前に進むと、瓦礫の中からゾンビが這い出てきて、一行に襲い掛かってきた。

一行は慣れた手付きでゾンビを撃ち倒し、川の近くまで来ると、橋を渡れないことを察し、水路から向かうことにする。

水路の川は、血のように赤く染まっており、死体が浮いている。

もし誤って落ちれば、何かの感染症になりかねないだろう。

サーチライトが不気味に照らす水路を道行きに進む中、板の橋を複数のガイコツが渡る音がした。

 

「ガイコツ!」

 

まず始めにガイコツの姿を見たルリは、今持っているMP40でガイコツを撃ち始めた。

それと同時に川からゾンビが這い上がってくる。

特に動揺することなく、一行は出て来るゾンビを撃ち倒していき、橋を渡ってこちらに来たガイコツ諸共全滅させ、目的地に来た。

 

「こいつは酷い・・・」

 

カールは門の前で腕や脚、下半身などをもがれた多数の死体を見て口にした。

当初なら、みほ達は吐いているところだが、絶句する程度で済んだ。

門が開くと、一行は直ぐにベルリン・プラネタリウムの中庭へと入った。

中庭の中はベルリンを防衛するドイツ軍の野営地となっており、四連装機関対空砲が何門か設置されている。

まず彼等の目に入ったのは土嚢の上に置かれた頭蓋骨を串刺しにしたインテリアの様な物だ。

次に目にはいるのは、サーチライトで照らされた靡くハーケンクロイツの旗と破壊されたベルリン・プラネタリウムの一部。

ゆっくりと見ている暇はないので、一行が先へと進もうとすると、残ったベルリン・プラネタリウムの建物に、魔法陣が浮かび上がり、召還者が姿を現した。

 

「あいつを撃て!」

 

ボニファーツがStg44を構えながら叫ぶと、ライフル銃を持つ者達は一斉に召還者を撃ち始めた。

召還者に呼び出されたゾンビや自爆ゾンビに対しては、短機関銃などを持つ者達が対処する。

最初の召還者を倒すと、次の召還者が現れた。

銃声が鳴り響く中、次の召還者を倒すと、またも召還者が現れる。

 

「なにこれ。幾ら倒しても何度も出続けるって事?」

 

マリが何度も現れる召還者を見て、そう口にすると、みほ達を含む軍人でない異世界出身者達はやや不安になった。

三体目を撃ち倒すと、ガイコツと鎧ガイコツが出て来る。

拳銃などを引き抜いて、心臓に狙いを付けて撃っていると、四体目の召還者をカールが仕留めた。

これにより、最後がガイコツとなり、一行はここを突破できた。

しかし、各テントにもゾンビが死体の振りをしており、一行が通り過ぎるなり、起き上がって襲ってきた。

 

「死体の振りなんかしちゃって!」

 

後ろから近付いてくるゾンビに、ルリが気付き、短機関銃で一掃した。

そのまま前に進み、瓦礫を跨いでプラネタリウム本館に入り、階段を上がって二階へ上がると、セーフハウスが見えた。

迷わずセーフハウスに入ると、そこは狭い暖炉のある部屋だった。

一行が弾薬補充を行う中、暖炉の上に置いてあるラジオから音声が流れてくる。

 

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『戻らねば・・・!ゴハッ!ぶがぁ・・・!絶対に・・・!おぉ・・・!総統地下壕に・・・!うぉぉ・・・グァァ・・・ソウトウチカゴウニ・・・!あぁぁ・・・!』

 

声の主は、苦しみながら声を上げて、呻り声を上げた後、ラジオは切れた。

 

「何かにやられた・・・?」

 

みほは声の主のその後を予想してみたが、余り良くないことが思い浮かんだので止めた。

一行が外に出て、道行きに進んでいくと、破壊された場所へと出た。

総統地下壕の場所が何処か分からず、取り敢えず見える場所へと向かったが、向かった先に霧が現れ、ゾンビがそれを遮った。

 

「また亡者共か・・・!」

 

このパターンでゾンビが出て来ることが既に分かっていたカールは、直ぐさま迎撃態勢を取る。

向かい側の建物から沸いて出て来るゾンビを撃ち殺していると、彼等から見て、右手から自爆ゾンビが突っ込んできた。

 

「またあいつだ!撃ち殺せ!」

 

ツェーザルの知らせに、みほ達は突っ込んでくる自爆ゾンビに銃撃を加えた。

五人全員の一斉射撃で、拳銃弾や小銃弾を何発か食らった自爆ゾンビはその場に倒れて爆発する。

この場に留まって、何体か撃ち倒していると、ゾンビは全滅した。

 

「全滅したか・・・弾薬は大丈夫かな?」

 

ゲールドが残弾を確認しながら言うと、一行と同じく次なる場所であるゾンビが出て来た場所へと進んだ。

そこは美術品が展示された場所であるが、周りに死体があるため、見る気分はない。

微かに不気味な声が耳に入ってきて、壁には幾度か目にする紋章や魔法陣が血で描かれている。

死んでいる者達の中に、ソ連兵が混じっていることから、ここに逃げてきたことが分かる。

 

「この扉かな?」

 

「多分そうでしょう・・・」

 

沙織は血の跡が途切れている扉を開け、華はGM M3A1を構えながら入った。

中には大きく穴が空いた場所と机に座り込んで死んでいるドイツ軍の将校しか無い。

みほと優花里、麻子も入り、辺りを調べてみたが、進む先はこの穴の中にしか無いようだ。

 

「どうやらここしか無いみたいだな・・・」

 

入ってきたカールが穴を見ながら確認する。

推定する限り、総統地下壕の通路のようだが、不気味な雰囲気が、そこから漂ってくる。

魔法が存在する世界の出身者達は、その不気味な雰囲気に、額に汗を浮かばせている。

 

「こ、怖い・・・」

 

「だ、大丈夫よ・・・今まで通り、やって来たじゃないの・・・!」

 

マルゴットはそこから来る邪悪な魔力を感じ取ったのか、恐怖を感じて震えたが、リンダになんとか勇気づけられて立ち直る。

 

「よし、入るぞ・・・」

 

まず最初に陽炎が、PPsh41を構えながら入った。

こういう狭い場所では、搭載弾数の多い円形弾倉を付けたPPsh41短機関銃なら、効果は絶大だ。

他の者達も、陽炎の後へと続くように、穴の中へと入っていく。

推定通り、総統地下壕の通路らしく、通路に沿って左へ曲がると、地下壕の指揮所に入った。

指揮所は誰も居らず、ただ無惨な死体だけが転がっているだけだ。

そればかりか、死体が壁に立て掛けられていたり、吊されたりしているなど、異常な光景が広がっている。

燃え盛る奥の通路では、何者かがそこへ曲がっていくのが見える。

ヒトラーの幻聴じみた声が、一行の耳に入ってくる。

 

「な、なんだ、ここは・・・!?」

 

幻聴を聞いた麻子は震え始め、その場に座り込んでしまった。

 

「ちょっと麻子!しっかりしてよ!」

 

沙織は麻子を立たせようとするが、彼女は一向に立ち上がろうとしない。

見かねたカールは、マルゴットに立たせてついてくるよう指示する。

 

「仕方がない。ブルクヴィンケル、その小さいお嬢さんを運べ」

 

「や、((はい|ヤー))・・・」

 

ドイツ語で指示されたマルゴットは、麻子を立たせた。

部屋を一つ一つ調べて、何か居ないか確認した後、最下位まで下れる階段を降りることにした。

コンクリートを抉る音が聞こえ、複数のガイコツが階段を上がってこちらに襲い掛かってくる。

 

「こんな所にも居る!」

 

カミーユは、ステンMkXでガイコツを撃ち始めた。

何体かは倒せた物の、余り命中精度は高くないので外れてしまう。

キースやホレイシオも加勢に加わり、ガイコツは全滅できた。

 

「ゾンビの声が聞こえる・・・」

 

下からはゾンビの声が聞こえるため、カミーユはそう呟いた。

陽炎が先行して下の階に降りる中、マルゴットに抱えられた麻子は、みほ達に守られながらも彼等の後ろへと続く。

奥へ進む度にヒトラーの幻聴じみた声が強くなり、黒電話が鳴り始めた。

 

「電話が鳴っている・・・」

 

「なんで電話が鳴ってんだ・・・?」

 

続いてカミーユが、黒電話の音を耳に入れて呟く中、陽炎がそれを疑問に思った。

最下階まで来ると、壁に串刺しにされた死体の中にゾンビが居たため、カールがコルトM1911A1を引き抜いて射殺した。

通路に入ると、禍々しさはさらに増した。

周りから伝わる恐怖感が、みほ達に襲い掛かってくる。

 

「嫌な感覚がする・・・」

 

「こ、怖い・・・」

 

マリが思ったことを口にすると、みほは身震いを始めた。

黒電話が鳴っている部屋に、優花里が恐る恐る入って行った。

 

「一体誰が・・・?」

 

受話器を手に取り、耳に当ててみると、凄まじい奇妙で悲鳴のような音が大音量で聞こえ、優花里は受話器を手放した。

 

「キャッ!?」

 

「ヒァ!?」

 

「わっ!?わ、わわわ!!」

 

その突如、そこには無かった無惨な死体が大量に現れた。

沙織と華は驚くが、みほは驚きの余り、死体の上に倒れ込んでしまった。

死体はみほと装備の体重で押し潰れ、彼女の腕に内臓が絡み付いた。

 

「へっ、わぁぁぁぁぁ!?」

 

絡み付いた小腸を見て、みほはパニックとなり、部屋を出て通路の壁にもたれ掛かり、まだ腕に付いている肉を払い除ける。

マリが近付き、みほが気付いてない蛆を払う。

 

「動かないで!蛆が付いてる・・・!」

 

「へっ?わっ・・・!?」

 

腕を伸ばすマリに、みほは肩に付いている蛆に気付いて声を上げたが、彼女の人差し指で口を防がれる。

 

「ルリちゃん、腰に付いたの取って」

 

「分かった」

 

腰の辺りにも蛆が付いている為、ルリに蛆を取らせた。

一行は、それをただ黙って見ている訳にはいかず、沙織達を除いて、次の黒電話が鳴る部屋の探査を始める。

最初に陽炎とイサイが部屋に入り、受話器を手に取った途端、部屋は異常な光景が広がった。

 

「な、なんだぁこりゃ!?」

 

それは上半身を引き千切られた下半身が、天井に吊されている光景だ。

しかも吊されている死体の数は大量であり、床はちょっとした火災が起き、不気味よりか異常な狂気である。

余りにも目を覆い隠したくなる光景に、陽炎とイサイは外に出ようとしたが、ドイツ陸軍の制帽を被り、戦車兵の戦闘服を着た女性が突如となく出入り口に現れ、二人を通さんと立ちはだかる。

 

「ど、退けよ!」

 

直ぐに女戦車兵を退けようとするが、女戦車兵は直立不動状態と維持し、全く動かない。

浮かび上がっているタイルから、全身大火傷のゾンビが二人に襲い掛かる。

 

「ぐぉ!?」

 

陽炎は、ゾンビが持っている骨に殴られ、イサイはハンマーで殴られた。

通路にいる者達が必死に二人を助けようとするが、女戦車兵は全く微動だしない。

 

「そこを退け!さもなく撃つ!」

 

カールは45口径自動拳銃を向けて女戦車兵を脅すが、こちらに背を向けたままだ。

仕方なく引き金を引き、女戦車兵を射殺した。

殴られて血塗れな二人を救出したカール達であったが、その女戦車兵を射殺した影響が出た。

 

「はい、これで全部取れた」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

全ての蛆が取って貰い、みほはお礼を言うと、突然マリが自分に倒れ込んだ。

 

「え、えぇ!?」

 

「なによ、これ・・・力が出ない・・・?」

 

当然抱き付かれたみほは少し戸惑ったが、マリの方は何故か身体に力が入らなかった。

マリの豊かで柔らかい胸が自分に乗り掛かっているため、みほの恐怖が少し和らいだ。

暫しして、マリの力が戻ると、カール達と合流する。

 

「蛆虫は捕れたか?」

 

「え?は、はい」

 

ボニファーツに聞かれたみほは、少し戸惑いながらも答えた。

相変わらず麻子は震えているが、後はこの部屋を残すだけなので、まず最初にカールが入った。

 

「な、なんだ、これは・・・!?」

 

そこには、有刺鉄線で縛られたカールと、板に串刺しにされているゲールド、ボリス、ハーマンの姿があった。

他の者達は、その光景に絶句している。

早く出たいと思ったクレマンが先へと進むと、謎の叫び声が聞こえ、彼が進んだ先からゾンビが出て来た。

 

「全員離れろ!」

 

カールが全員に出るよう叫ぶと、通路が突如と無く燃え始めた。

 

「つ、通路が燃えている・・・!?」

 

「な、なんだぁ・・・!何が起きてる・・・!?」

 

マルゴットは周囲に起きる怪奇現象に驚きを隠せず、麻子はさらに彼女に抱き付いた。

燃え盛る部屋から全身大火傷のゾンビが続々と出て来る。

焼けたゾンビを銃や近接武器などで倒していると、コンクリートの壁をぶち破って、マシンガンゾンビが現れた。

 

「うわぁ!」

 

乱射されるMG42の銃弾に当たった陽炎は倒れ込んだ。

ホレイシオと奈子が助けに向かうが、ハーマンに止められた。

 

「止めろ!奴はもう助からん!」

 

ハーマンの言うとおり、陽炎は何十発のライフル弾を食らい、息絶えた。

物陰に隠れていたイサイが、仇を取ろうとDP28を持って飛び出すが、頭を撃たれて即死する。

 

「こ、こんなに・・・!?」

 

現実で死なないのが奇跡的だが、死んでいるようにしか見えない。

 

「クソ、これでも食らえ!」

 

対戦車榴弾を撃てるワルサーカンプピストルを持つボニファーツは、それをマシンガンゾンビに向けて発射した。

 

「グォォォォ!!」

 

マシンガンゾンビは対戦車榴弾が腹に直撃し、出て来る内臓を抑えながら苦しみだす。

それに間を抜かさずに銃撃を加え、マシンガンゾンビを撃退する。

他のゾンビを残らず倒すと、安全な場所に隠れていたみほ達が出て来た。

 

「終わったようですね・・・」

 

「そのようかな・・・?」

 

華がGM M3A1を構えながら壁越しから覗くと、沙織もMP40を持ちながら辺りを見た。

 

「し、死んだ・・・?」

 

優花里は、顔に白い布を被されている陽炎とイサイの遺体を見て、口にする。

みほはコルネリウスの言うとおりであれば、二人は死んでいないと無理矢理思い込む。

何処かゾンビに見付からない様な場所に、二人の遺体を置くと、先へと進んだ。

鉄格子で塞がれた方向を見ると、みほ、沙織、華、優花里、麻子が新品仕立ての戦車兵の戦闘服を着て、綺麗に直立不動状態を取っていた。

 

「あ、あれは・・・?」

 

それを見たみほは、驚きを隠せなかったが、一向に釣られて床が見えないくらいの霧が立ち籠める通路に向かう。

 

「予想通りおぞましい光景だ・・・」

 

まず最初に入ったカールが、辺りに転がっていたり、天井に吊されているナチス第三帝国の幹部や軍関係者や家族の死体を見ながら呟いた。

腹から抜き取られた内臓が積み上げられており、それを目にしてしまったみほ達を含む異世界の出身者達は吐いてしまった。

 

「当然の結果だ・・・こんな物、俺も吐きたくなる・・・」

 

口を押さえながらボニファーツが口にした後、掛けてある絵に目がいった。

ヒトラーの最後にまつわる映画を見ていたみほと優花里、麻子は、袖で口を拭いながら違うと思った。

ヒトラーが居たと思われる部屋にルリがまず最初に入り、机の上に置かれていたサガルマータの遺物を手に取る。

 

「ねぇ、もう一個出して?」

 

豪華な椅子に座りながら「美術館で手に入れた遺物を出せ」と言うルリに、ボリスは応じた。

二つの遺物を持ったルリは、それを合わせてみると、強い力で二つの遺物が繋がろうとする。

重力に寄せられる物体のように、遺物は繋がった。

 

「繋がった・・・」

 

「まるでパズルのようだな・・・」

 

ハーマンとボニファーツが言う中、ゲールドは壁に掛けられた地図で、最後のサガルマータの遺物の位置を特定する。

 

「おそらくここだな・・・」

 

「当てはあるのか?」

 

「言ってみるしか無いだろう」

 

机に腰掛けながら問うカールに、ゲールドは行くしかないと答えた。

そして、一行は最後の遺物を求めて、ベルリン郊外へと向かった。

 

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総統閣下「チョォー!待っててばっ!!」
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