つよきす ?面倒くさがり屋のゴン?
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?2日目?

 

いつものようにダンボールハウスから出て、通学路をのんびりと歩く。

何時もの場所に行くとカニっちはいなかった。

どうやら寝坊したらしい。

いつも隣に住んでいるレオっちが起こしているんだけど、たまにっていうか…週に3日ぐらい2度寝して遅れる時がある。

 

空は快晴で、深呼吸をすれば朝特有のひんやりとした空気が気持ちいい。

歩く歩調がいつもよりかなりゆっくりなのはもちろんこの空気を堪能し尽くす為である。面倒いわけではない。

……やっぱ面倒い。

学校までの道のりのほぼ半分を踏破したところで、背後から聞こえる荒々しい足音。

 

ズシャアアアァァァァァァァ!!

「おっと!!

あまりにも大事なものを忘れているぜーーーーーっ!!」

 

「財布ならあるぞ?」

 

「ちげーよっ!!

ボクのことを置いていくなよなッ!!」

 

この騒ぎを見ている登校中の周りの生徒から温かい視線を向けてくる。

なんか面倒なことになりそうと感じたゴンは2人から離れた。

その後も2人は何やら言い合っているが、時間が近づいてきたのでゴン

スバル、フカヒレは2人を無視して登校した。

 

…その後、校門閉まるギリギリに登校した2人がいたそうな。

 

「遅刻になりそうになったのはレオのせいだかんなっ!!」

 

「なんでだよっ??」

 

 

……………………………

…………………

……………

……

 

 

レオとカニがゴン達と合流した。

 

「てめーら…よくもボクを見捨てたなーーーーーーーっ!!」

 

カニが吠えるが、ゴンはどこ吹く風だ。

それを見たカニはさらに怒りをあらわにし

 

「ゴンッ!! なんでボクを見捨てたんだっ??

レオは別にいいとしてっ!!」

 

「いやっ!! よくねーぞ!!」

 

レオの言葉を無視してゴンに近寄るカニ

スバルたちはゴンの後ろから優しくカニを見守っていた。

 

「おらっ!! なんとか言いやがれゴンッ!!」

 

「……………………………Zzz」

 

「…って寝てんじゃねーかっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなやり取りをしつつ、廊下を歩く5人。

その廊下の一角に人集りが出来ていた。

本日はテストの成績順位の発表日。

全員廊下に張り出される結果に釘付けになる。

 

「(…あれ? 昨日テスト返してもらったっけ?

まぁいいや。 思い出すのもめんどいし…)」

 

ちなみに成績順は……

 

 

 

1位 霧夜エリカ 800点

 

オール満点である。

さすが姫。

 

「やっぱ姫って頭いいよね……」

 

「ああ…………」

 

レオもカニも感嘆の声を上げる。

ちなみに僕の順位は下の上。補習にならないギリギリのところを狙っている。

カニは…………………うん。言うのもめんどい。

ふかひれはカニの下。

スバルんはカニの上

レオはど真ん中だった。

 

 

 

 

ホームルームが終わり(担任不在のまま)

一時間目が始まった。(この時に担任が来た。)

一時間目は英語。祈先生の担当教科だ。(このクラスの担任である。)

普段はおちゃらけな祈先生だが授業は厳しく、スパルタなので私語も居眠りも厳禁らしい。

…僕は寝ているからわからないけど…

 

「フカヒレさん、のんびりしてますわね?。

このままですと……二年生をもう一回…ですわ。」

 

男子から先に呼ばれて、答案と一緒に祈先生の一言をもらう。

 

「伊達さん、貴方ならもっと出来るはずです、期待していますわ」

 

それは賞賛、慰労、叱責、脅迫、激励と実に様々。

 

「対馬さん……

点数はまぁまぁですがあまりに特徴がなくてつまらないですわ。

もう少し正解か間違いを増やしてください」

 

「ナナシのさん……補習にだけはならない様にしてくれているようですから、次も補習にならないようにしてくださいね?。」

 

 

「続きまして女子、浦賀さん、まだまだですわ」

 

 無表情。

 

「カニさん、期末には一寸の虫にも五分の魂を、期待してますわ」

 

 呆れ顔。

 

「霧夜さん。言うことなしです。相変わらず素晴らしいですわ」

 

 笑顔。祈先生は表情をコロコロ変えて答案を返していく。

 

「よっぴー、ひっかけ問題にひっかかってくださってありがとう。点数自体は素晴らしいですわ」

 

「先生までよっぴー言わないでくださいよぅ……」

 

ここで紹介

『よっぴー』と言われた女の子は『佐藤 良美』

このクラスメートでクラス委員長。4月2日生まれ。

生徒会ではエリカの補佐兼ブレーキ役を担う他、細かい実務面をほぼ一手に引き受ける。愛称で「よっぴー」と呼ばれているが、エリカ以外に言われることを嫌がっている。

成績はかなりの上位で運動能力もかなり高い。苦労性で貧乏くじをよく引く。周囲に気遣いが出来て、真面目で誰にでも分け隔てなく優しく接することから人望があり、影ではその甘さから「砂糖さん」とも呼ばれている。その反面、たまに毒を吐くなど優等生らしからぬ本性を覗かせたりもする。夢は「お嫁さん」。

 

「(…でも結構ダークな性格をしているからな?。

僕もゲームした時怖かったもん。

…まぁレオっちにしか興味ないから良いんだけどね?。

頑張れ主人公!!)」

 

そんな事を思っている時にカニっちがポツリと

 

「祈先生って人によってコメント露骨に違うね……」

 

 確かに……

まぁ、興味ないからいいんだけど

 

さて次はこのクラス担任の『大山 祈』

2-CのHR担任教師で担当は英語。8月16日生まれ。

生徒会の顧問。巨乳で胸元の開いた服を着ていることが多い。

占いが得意で、時には怪しげな術も使う。生徒からは「祈先生」、「祈ちゃん」と呼ばれている。

愛読書は「4と3/4チャンネル」で月刊誌と増刊が確認されている。内容は一般人には解読困難且つ危険な魔術が満載していると言うシロモノである。

超マイペースでいつもお菓子を持ち歩き、土永さんというオウムを連れている。見た目も喋りもボケっとしているが、授業はスパルタ。成績不振者には問答無用で補習、さらに悪い場合だと烏賊島への島流しを宣告する。英語がわからない相手に対して英語で罵声を浴びせることもある。

面倒臭いことが嫌いで、遅刻常習者。クラスの問題事に対しては騒動を抑えるどころか積極的に参加するが、責任が及びそうになると即逃亡する。教師でありながら乙女から注意されることも多い。また2-Aの担任教師とはライバルで、体育祭やテストの成績でよく賭けをしている。運動はあまり得意ではない。

 

「(あとは…童貞キラーぐらいかな?。

てかこの2人は内なる闇が大きいから関わったら絶対めんどい事になるから関わり合いになりたくないな?)」

 

 

「くそっ、またフカヒレの点数見て心の傷を癒すぜ」

 

「フカヒレ君は何点だったのかなぁ、彼には負けたくないなぁ」

 

 点数の低い連中の声が聞こえてくる。

ふかひれは本当にこういうときだけは人気者だなぁ。

 

「なお、通常は30点以下なら赤点追試ですが、英語のみ、50点以下の場合から追加プリントをやっていただきます」

 

「ええぇーっ」

 

「その課題をやってこなかった方は……残念ながら“島流し”にしますわ」

 

 僕は51点だから関係ない。

 

 

 

 そして昼飯、本日は毎週恒例の学食30円引きの日だ。

 

「先行くぜ、よっとぉ!」

 

 スバルが先行して2階の窓から飛び降りる。

 

「あばよ((臆病者|チキン))」

 

カニも飛び降りる。

普通に危ないがスバルは運動神経が高いし、カニは体が軽いから全く問題ない。

フカヒレとレオは無理。

 

ちなみにゴンはいつの間にか消えていた。

 

大学食は竜鳴館の名物の一つだ。

野外には海も見えるテラスがあり、そこで食う飯は格別だ。

 

「…みんな遅い。」

 

ゴンが場所を取っていた。

と言っても本人はもうすぐ食い終わりそうだが…

 

「だからなんでオメーはそんなに早いんだよっ!!

明らかにボク達と一緒に教室でたじゃねぇ?かっ??」

 

「…並ぶのめんどいから。」

 

「答えになってねぇーーーよっ!!」

 

「まあまあ、いいじゃないの。

実際ゴンがこうやって場所を取ってくれるおかげで、こうして特等席で食えるんだから。」

 

スバルがカニを落ち着かせる。

そうだぞ。僕だってめんどうだけどついでに場所を確保しているんだから感謝しろ?。

 

「でもホント不思議だよな?。

一緒に教室出て後ろ向くとゴンがいね?の。

どうやって移動してんだ?」

 

「ふかひれ…それは企業秘密」

 

そんな事を話しながらお昼が過ぎていった。

 

 

 

「それにしても、島流しか……流されるのは欲望だけで充分だよね」

 

 

 水平線の先に見える小さな島。

竜鳴館所有の無人島、『烏賊島』だ。

祈ちゃんが言っていたように成績不良者や素行不良者は、あの島に流され

る。

そこで性根を鍛え直されるのが、通称『島流し』。大学食と並ぶ竜鳴館の名物である。

 

「じゃ、俺集会あるから」

 

フカヒレがそう言って席を立つ。

集会とは霧夜エリカファンクラブの集会である。

フカヒレはその広報部隊所属。レオは会員。

((親|ファン))でも((反|アンチ))でもない僕から見ればよく分からない集会だ。

…てか面倒い。

「あ、そうだゴン。

お前も来てくれ、出頭命令が出てるんだ」

 

「めんどいから嫌」

 

「そんなことを言わないでくれよ。」

 

「…理由は?」

 

「ほら、お前姫と割と仲良いじゃん。

お前と姫の関係について確認したいって皆が言ってさぁ」

 

めんどくさい……でも行かなかったら行かなかったで面倒くさそうだし…

…やっぱり面倒くさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは広報部隊、研修?今日までの姫の様子を報告してください」

 

「うす、相変わらずテストはオール100点、2位に影も踏ませずぶっちぎりトップっす」

 

親衛隊長の言葉にフカヒレが答える。

 

「また、のどが渇いたといってそこら辺の男をパシリに使ったり…………」

 

 …………どうでもいい情報しかない。

てか帰っていい? ここにいるのも、めんどくさいし。

興味ないし……

 

「で、そろそろ本題に移るけど……ナナシの君」

 

「…なに?」

 

「君は姫とはどういう関係なんだ?」

 

 姫との関係?

 

「薔薇をもらう関係。」

 

「どんな関係だッ?? ソレはッ??」

 

僕の言葉に細目にオールバックの男が訝しげに訊ねてくる。

誰だっけ? 確か2?Aの……。

 

「ああ、大串君か?。

あらら?、すっかり立派になっちゃって?。

なに? まだあの金魚デッカくなってんの?」

 

「誰が大串君だッ!!

村田だッ!! 村田洋平ッ!!」

 

…そうだっけ?

面倒いから覚えていない。

その後ろに居る女子は写真係で村田と同じクラスの西崎紀子だっけ。

 

「おいおいゴン?

村田知らないの?2?Aの秀才で地獄育ちの男で有名じゃん」

 

フカヒレが背後から小声で話しかけてきた。

 

「…地獄?」

 

「村田洋平には12人の妹がいてアイツに懐いているらしい」

 

「それのどこが’地獄なんだ?」

 

「ただ、全員すんごくブスなんだ」

 

「うわぁ??…」

 

そういえばそんな設定だったっけ?

 

「で、写真係の可愛い女の子が西崎紀子。

2?Aのマスコットみたいな娘で写真が趣味で広報委員会所属」

 

「…やけに詳しい…」

 

「村田とは1年の時同じクラスだったし西崎さんは可愛い系として名を馳せている。

つまり2人とも2?Aの有名人なんだよ、ゴンがそういうの無頓着なんだよ。」

 

「…興味ないし、メンドイ…」

 

ようやく長い集会が終わり僕も解放される。

本当に面倒くさかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜……いつものようにレオっち家へと集まる対馬ファミリー。

 

「テストなんてなくなっちゃえばいいのにねー」

 

「そんなことになるとお前ホントにダメな子になるだろ」

 

いつものカニによるダメ人間理論をサクッと否定する。

とはいっても遊びたい盛りの高校生。

カニの意見には全面的に賛成したい3人。

…1名は面倒だからが理由。

 

「進路も限定されちまうしな」

 

「そういえば進路指導調査の紙出した?」

 

「ボクは速攻で書いて出したよ。ゲーム作りたいんだ!」

 

「その熱意がもう少し他のことにも向けばいいのにな」

 

「…進路調査ってなに?」

 

「「「「(また寝ていたな。)」」」」

 

フカヒレが振ってきた話題にカニは元気よく食いつき自分の夢を発表したが、そこに至るまで何が必要なのか全く考えてなかった。

そんな本能のままに生きるお子様をちょっとは更生してやろうかと考えたレオっちは無駄な発言をしてみたが、それはスバルが否定した。

 

「そうなったらカニじゃねぇだろ?」

 

「む、なんかバカにされてる予感。そーゆースバルはどうなのさ」

 

「オレは陸上。高校卒業したら一人暮らしだな」

 

ギリギリアウトローなこの男にも、昔からの夢がある。それが嫌っている父親のものと被る時点で奴も案外複雑だ。

まぁ、それでもやる気のない僕とは大違いだ。

 

「スバルならそつなくこなしそうだけど。なんかあったら言えよ?」

 

「ま、気持ちだけもらっとくぜ」

 

そんな事を話しているレオとスバル

レオの枕を抱えてゴロゴロとベッドを転がるカニが今度はフカヒレに話題を振った。

 

「フカヒレはー?」

 

「進路とかリアルで嫌だよな」

 

「現実逃避すんなよ」

 

相変わらずの発言。

 

「そーそー、たまにはちょっとだけ真剣に考えてみ?」

 

「カニにそういうことを言われたくないね。…………怖っ!」

 

自分の行く末を真剣にシミュレーションしていたフカヒレが何か恐ろしいものを見たかのように震えだした。

パッと見どう見ても異常者だが、いつものことなので気にしない。

てか指摘が面倒い。

 

「どうだった?」

 

「周りが結婚して焦っていたのか、大して好きでもない女と結婚していた」

 

「そもそも結婚できんの?」

 

「ぐはぁっ!!」

 

「フカヒレ??

大丈夫かフカヒレええぇぇぇぇぇええっ??」

 

「やべぇぞ!! 脈が弱い!!」

 

「…救急車呼ぶ?」

 

カニの致命的な言葉の槍がフカヒレの心、それも特にやわらかい部分に突き刺さり、断末魔の悲鳴を上げてフカヒレが倒れた。

あわててスバルとレオが駆け寄るもすでに遅く、鮫氷新一という一人の漢の魂は体から乖離した後であった。

顔が蒼白で脈が弱い。いや、結構真面目に。

 

「スバル!」

 

「おう!」

 

人工呼吸など死んでもしたくないのでスバルとレオと共にフカヒレの蘇生を開始。

 

「行くぜ!筋肉バスター!!!」

 

「ちょおま!」

 

「ちぃ、まだか!スバル!」

 

「よし来た。腕挫十字固!!」

 

「いだだだだだっ!!」

 

「くそっ、ゴン!!」

 

「…ハバネロのねるねるね?るねを顔面に」

 

「や、やめてっ!! とどめ刺され…グバァ!!」

 

……しばらくお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、その女のために必死になって生活費稼いでいると、気づけば若くなかった」

 

「そのやけにリアルで怖い予想を立ててもらってなんだけど、普通に進路について考えろよ」

 

「フカヒレってさ、すぐそういうこと考えるよね」

 

フカヒレの無駄にネガティブな妄想力に呆れ返りながらも、そのあまりの人生どん詰まり感に身震いする。人間そうは成りたくねぇよなぁ。

 

そしてまた妄想パート。

フカヒレの百面相は見ていて面白いが、さすがに飽きたのかレオがスーファミを起動。

 

 

 

 

 

 

 〜スーパー暇つぶしタイム〜

 

 

 

「ボンバーマンの各面のボスって普通にAI強くね?」

 

「スーファミにしては驚異的、とかどっかで聞いたことあるー」

 

「やべぇ、死んじまった。次レオな」

 

「…………………………Zzz」

 

「死ぬといえばみそボンってみそっかすボンバーの略なんだってな」

 

「へー」

 

「ほー」

 

「やる気ねぇにも程がある返事だなお前ら!」

 

「ねーねー、みそっかすってどういう意味?」

 

「レオに聞いてみな」

 

「半端ねぇスルースキルだ。フカヒレの気持ちがちょっとわかる」

 

「で、どういう意味?」

 

「……お前みたいなのってことだよ」

 

「ふーん、確かに画面の端っこから一方的に攻撃できるかわいいデフォルメキャラは愛らしいボクにぴったりだね」

 

「めげないねぇ」

 

「待てスバル、その表現はなんか違う。そもそも風邪ひいたことに気付かない奴みたいなもんだろ、この反応」

 

「おっしゃー撃破!!でもなんか飽きた。普通に対戦しようよ」

 

「そうだな、ステージ増やすのってどうすんだっけ?」

 

「オープニング画面でX連打。結構な速さを維持しないと出ないぞ」

 

「い・の・ち・を・燃・や・せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「すげぇ、一発で出しやがった」

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

 

「ほらカニ、麦茶」

 

「サンキュースバル……んぐっんぐっんぐっ、ぷはー!!!」

 

「最初は?」

 

「もちろん『いつもの』」

 

「……………………………Zzz」

 

「「「てかなんでゴンは寝ながらしているのに、一回も死なずに高得点とってんだよっ??」」」

 

 

 

 

 〜スーパー暇つぶしタイム終了〜

 

 

 

 

 

 

 

「…………怖っ!!」

 

「今度はなんだ?」

 

「誰でも入れる4流大学に入って一度留年、遊びまくってギリギリ卒業。中小企業に勤めて何も面白くない仕事をしながら、安い給料で働き灰色の毎日を送っていた」

 

「リアルすぎる……」

 

「こんな若いうちから嫌な想像させんな!」

 

 

このような実にくだらない会話と共に今日も一日が過ぎていく。

それはありふれた日常のようで、しかし一度たりとも同じ出来事がない輝ける日々。

 

今を共に過ごす人、これから出会う人、そして『過去に出会った人』。

 

日常は変化し続けながらも、同時に新たな日常へと繋がっていく。今日という日はそのちょっとした変化への前振りみたいなものだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ところでゴン将来は……」

 

「…………………Zzz」

 

「…聞くのはムリだなこりゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の朝判明した新カップルはうらやましいなぁ。

俺も人目もはばからずイチャイチャできる女がほしいぜ」

 

「Mighty Heart ?ある日のケンカ、いつもの恋心?」の曲を弾きながらフカヒレが欲望にまみれた声を出した。

 

「そんな経験ないから想像するしかないけど、どんな気分なのかねぇ」

 

「オレはレオが恋に浮かれてる様子ってのを見てみたくはあるけどな」

 

「想像できないね、それ」

 

「…同感」

 

いつの間にか起きていたゴン。

なんでこういう話題になると真っ先にレオが犠牲に。

そんなやる気のない4人に特に反応もせず、フカヒレは話題を続ける。

 

「じゃあさ、この中で先に恋人作ったほうが勝ちってのは?」

 

「やだよ、そんなスピードレースみたいな。ボクたちはフカヒレみたいにがっついてないしね」

 

カニっちにしては珍しくまともな意見だ。

 

恋愛だからと特別視するのもよくないが、そんなに簡単にくっついたり別れたりというのは何か違う気がする。

でも、まぁ若いうちはくっついたり離れたりするもんだしな?。

そう考えると、ナギの奴は大丈夫かな?

別れたりとかは………しないな…うん。

 

「うーん、じゃあもうすぐ夏だろ?恋人作って、ひと夏の思い出でうらやましがらせたら勝ち」

 

「商品は?」

 

「潤いのある、人生かな」

 

「うわーお、魅力的な商品だこと」

 

そういうのは賭けでも目標でもなくただの願望っていうんだよ。とカニと共にブーイングをするレオ。

僕には恋愛が魅力的に思えなかった。面倒いし。

と、そこで笑いを含んだ声が。

 

「ま、いいんじゃねぇの」

 

「おや、意外な言葉」

 

「似非テンション否定派なレオがどうなるか、ちょっと見てみたいしな」

 

「な、なにをぅ?」

 

「あはははは!言われてやがんの!」

 

「普段の行いのたまものってやつかな」

 

「…結構テンションに流されやすいからな?。レオっち」

 

テンションに流されない。

何かを自分の魂に誓うのは別にいいけど、レオが『テンションに流されない』と決めたキッカケがアレじゃあ…な。

 

「否定は……できないけど、人生では一度の選択が何年だって後を引くことがあるからこそ」

 

「テンションなんてあやふやなものに左右されずに、何事にもニュートラルな気持ちで……だったか?」

 

「…何時もの持論」

 

「でも姫のことは?」

 

「ソレは別」

 

「へぇ(笑)」

 

「ほほ?う?」

 

「ふ?ん?」

 

「……………」

 

「なんだよその視線は」

 

嫌な視線がレオに突き刺さる。

スバルは馬鹿な子供を見るような生暖かい目線。

フカヒレは若干の嗜虐と溢れんばかりの嫉妬心。

カニはバカを見る目。

最後のゴンは何かを見定めるような目だった。

しばらくそんな状況が続いたのだが、頑なに口を閉ざしていると不意に空気が弛緩する。

そこで区切りをつけたのか、フカヒレが改めて仕切りなおした。

 

「じゃあ勝負な」

 

「ハイハイ」

 

「うわ、適当な返事。スバルお前やる気ねーだろ」

 

「スバルがそんなんじゃ、勝者無しで終わりそうだね」

 

「あり得るのが悲しい所だよ」

 

「…僕はそれでいい。」

 

「ゴンはメンドイだけだろ??」

 

全員のやる気はなくても勝負は勝負。

ちょっと意識して日々を過ごした挙句、最終的に幼馴染5人でスキー旅行とかに行く様子が目に浮かぶ。

…1人は気だるそうにしていながら……

 

「オレは坊主がちゃっかり勝ってそうだと思うぜ」

 

「まさかー」

 

「おいカニ、その否定の仕方はどういう意味だ」

 

 

 

恋人ねぇ。

 

 

幼馴染とじゃれあいながらレオは思いをはせる。

恋人ができたからと言って、人生がバラ色に輝くのだろうか?何もしなくても毎日が楽しくなるのだろうか。ま、経験してもいないことにいくら想像力を働かせても無意味だろう。

いつものように過ぎ行くゆったりとした夜が、5人組を優しく包んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

で、朝。

 

「……んなアホな。」

 

時計が示す時刻は8時30分。

今日の朝も絶叫調にロックンロールな時間の幕開けだ。

 

「ゴルァ起きろカスどもが!」

 

「んがっ!」

 

「ぐぇ!」

 

「ってぇ!」

 

「…………」スッ

 

固い床で好き勝手に寝ている馬鹿どもをレオは全力で叩き起こす。

…1名は避けたが

 

「あー?いいじゃねぇか。3限あたりからゆっくり行こうぜ……」

 

「ギリギリ間に合う時間帯ってのが曲者なんだよ!こちとら一人暮らしなんだ、不用意にこの自由な生活がなくなるような危険は冒せねぇんだよ!」

 

下手にだらしのない生活をしているような話が両親に行ってしまえば、この自由気ままな一人暮らしが崩壊する可能性が出てくる。

 今のところカニの母はそんな報告をしていないようだが、ちょっとしたことで学校から連絡が言ってもおかしくない。

 

「5分以内に家の前に集合だ。遅れたら殺す」

 

「イエッサー!」

 

「…面倒い。」

 

 

 

 

 

 

 

そして。

 

「閉まってるな」

 

「ああ、閉まってるな」

 

「「Zzzz……」」

 

どう考えても二度寝、朝デッド、ゴンの背中で熟睡、と三拍子そろったこの馬鹿が原因である。

ゴンは寝ながらでも動けるので問題なし。

 

「ふざけんじゃねぇぞカニィィィ!!」

 

「イダダダダダ!!

ギブ!! レオギブ!!」

 

「…カニっちうるさい。」

 

「ほらレオ、カニのせいかもしんねーけどそのくらいにしとけ」

 

「せっかく走ったんだ、フォーメーションBを使って裏側から入ろう」

 

「フカヒレ、それ採用」

 

 5人でいつものように壁を乗り越え、無事に着地。

 

「ちょろいもんだね」

 

カニが言うとおり、正門が閉まっていたとしてもいくらでも侵入経路はあるわけで。

馬鹿正直に遅刻届をもらいに行く奴などどこにいるというのだろうか。遅刻だって重なれば世にも恐ろしい島流しが待っているというのに。

いやーよかったよかった一件落着、などと教室に向かおうとしたその時。

 

「そこの5人、待て」

 

ピシリ、と全員が石化する。

即座にアイコンタクト。

全員バラバラに逃げれば誰かがおとりにじゃん?俺が不利じゃねえかよ!フカヒレ、強く生きろ。なんにせよさっさと逃げるぞ。

全員が思い思いの方向に走りだす。現行犯じゃなければある程度は見逃してもらえるだろう。

 

「止まれ!止まらないと制裁を加える」

 

そんな忠告に従うほど『賢い』仲間は残念ながら俺たちの中に存在しない。きゃー素敵ー。

 

「止まれって言われて止まるバカなんていねぇよーっだ!」

 

「俺もスバルみたいに足は速くないけど、逃げ足だけなら自信あるぜ」

 

…1人を除いて。

 

「…わかった。」

 

「ってオイッ??

ゴンの奴止まったぞっ??」

 

「…逃げたらもっと面倒い事になる。」

 

「仕方ない!!

ゴンを生贄に逃げるぜーーー!!」

 

そんな良心というものの欠片もない会話をした瞬間。

 

「警告に従う気はないと判断した…………実力行使だ」

 

人の形をした旋風が吹き荒れた。

 

「うわっ!」

 

「ぐっ……」

 

「ボクは絶対逃げ」

 

足払い、貫き手、投げと十分にオールラウンダーな能力を見せつけ3人を地面に沈めた人影。

おいおい、フカヒレはともかく他の二人は頭が悪い分身体能力だけは群を抜いてるんだぞ。

そんな驚愕が頭をめぐる瞬間、制裁のターゲットが自分に切り替わったのを理解する。

一直線に迫る蹴り。

 

「!」

 

腹部に直撃して耐え難い苦痛を発生させた。

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

痛みをこらえるレオを形容しがたい目で見つめる女子生徒。

腕章は赤く、風紀委員の身分を示し、冷たくは無いが、そのまなざしはさながら鍛え上げられた日本刀のようで…

 

「だらしがないぞ。根性無しが」

 

その手には日本刀。

スバルがこんな簡単にやられるなんて世界は広いなぁ、と現実から逃避するレオの腹部には確かな痛みがその存在を主張しているのだった。

 

 

「だから逃げたら面倒になるって言ったのに…

まぁでも…ようやく物語がスタートしたな?。

これから先の事を考えると……」

 

ゴンは空を見た。

空は快晴でとても気持ちいい天気だった。

そんな空を見てゴンは一言。

 

「…本当に…面倒くさい…」

 

 

 

 

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つよきすのSSって少なくね?ってことで書きました。
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