義輝記 雷雨の章 その五
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【 洛陽での準備の件 】

 

?宮廷内 謁見の間にて?

 

《反董卓連合戦 開始1ヶ月前》

 

何進「……袁本初め、張譲の甘言に乗ったか…………」

 

金糸「…………………」ショボン

 

銀糸「わ、私を皇帝に───!?」

 

皇帝陛下や側近の方々は皆、怒ったり驚いていたり様々。 特に皇帝陛下は、自分の徳が足りないから、こうなってしまったと落ち込んでいた。

 

袁本初に偽情報を流した張譲は、姿を眩ましてどこに行ったか分からない。

 

残りの十常侍達も、何らかの関係があるとして捕縛してある。

 

稟「こうなっては、袁本初に使者を送り真意を問いただすと共に、水関、虎牢関で食い止めるしかありません! 早急にこちらについて貰うよう使者を派遣して………!」

 

風「…でも、袁本初にしては素早い動きですよ〜。 誰かの入れ知恵があったんでしょうね〜。 このままでは、こちらが倒されてしまいますよー!」

 

 

俺は、その様子を横目で見ながら、謙信殿に問いただす。

 

颯馬「俺の頼んだ物は揃ってます、謙信殿?」

 

☆☆★ 俺が頼んだ物 ★☆☆

 

『燃える水』

 

『年に三度、栗の実が取れる場所』

 

『竹簡 百個』

 

『蓋付きの陶器 五十個』

 

『藁束 五千束』

 

『竹 三百本(長さ八尺』

 

☆☆★        ★☆☆    

 

謙信「うむ! 頼まれた物は天水の貯蔵庫に入れてある! 『燃える水』は大甕三十個、『栗の実』も丁度収穫時期だ! 全部洛陽に持ち込ませよう!」

 

光秀「他に何かいる物はありますか、颯馬?」

 

颯馬「それでは、『釜』が三十個、『銅鏡』を出来るだけ綺麗に磨いた物を多く集めて欲しい。 これは、何進殿に相談してもらえば手に入るはず」

 

光秀「では、頼んでみましょう!」

 

信長「私に出来る事はあるか?」

 

颯馬「信長は、俺が説明する兵器の使用法を伝えるから、その有効活用を考えてもらいたい! 鉄砲に近いんだが…………」

 

信長「火薬も要らないとな? それは凄いではないか!」

 

颯馬「だが…弾は勝手気ままに出る、射程距離も少なく、殺傷力も余りない」

 

信長「接近戦で使用可能か……。 わかった、思案しよう!」

 

長慶「私は何をすればいい?」

 

颯馬「長慶殿は、詠と相談して天水より兵や将を呼び寄せをお願いします。 

 

ただ、全員呼び寄せて天水の守備を守れないと困るので、天水から洛陽までの狼煙台増設、程遠志達に守備の強化等を命じて下さい!」

 

義輝「わらわは、どうすればいい?」

 

颯馬「月様と相談の故、馬寿成様の力が借りれるか聞いてみて下さい! もし借りれれば、天水周辺の守備をお願いしたいと」

 

義輝「承知じゃ!」

 

何進殿達が、俺のあまりにも手際よい対応手段に驚きに満ちている!

 

何進「颯馬! この状況を覆す事が出来るというのか?」

 

颯馬「可能です!」

 

どよめく側近の反応! 驚愕と嬉しさで顔が真っ赤になり泣きだす皇帝陛下。

 

稟「本気ですか、颯馬殿? 相手は袁家とそれに繋がる者と考えれば、少なくても二十万の軍勢は、こちらに向かってきます!」

 

風「こちらの味方の軍は、洛陽全体で二万人前後。 後、董卓軍の動員人数が幾らかで変わりますが、数万人でしょう〜。 

 

こちらに進行出来る道が水関、虎牢関が阻むと言っても限度がありますよ」

 

それは、もっともな事、普通の戦では簡単に撃破される人数が集まるのだ。

 

単純に考えれば、董卓軍が三万、洛陽勢が二万。 相手は少なくても二十万と考えて約四倍。 程仲徳殿の言うとおり、関が侵入を阻んでも限度がある。

 

だから、俺達軍師がここにいる!

 

あらゆる劣勢を覆し、勝利を我が方に傾けるために!

 

 

 

……なんて、偉そうな事言ったけど、対策しておけば撃退は可能だ。

 

問題は、真の黒幕がどう動くかだな…………。

 

◆◇◆

 

【張譲最後の願いの件】

 

?洛陽 ??にて?

 

《反董卓連合戦 開始1ヶ月程前》

 

 

張譲「………流石に『迷家当主』袁本初だけある! 無様な引っかかりようじゃな、ハハハハハハハハ!!」

 

儂は、袁本初に決起を勧めた後、宮廷内や邸宅には戻らず、この時のために用意した隠れ場所に入り、悠々自適な日を送っている。 

 

儂は…………今までの人生で、これほど濃密で充実して、自分の性癖が満たされる日々を送れた事はなかった。 金や地位には十分満たされたのに……

 

久秀様…………

 

貴女にどのような考えがあり、儂に近付いたかは問いませんし、聞く気もありません。 しかし、薄々ながら分かってきましたよ、貴女の目的を……

 

…貴女は、あの天城颯馬の殺害を邪魔した儂を許され、『ご褒美』まで下された。 貴女にどれだけ感謝をしても……感謝しきれない!

 

儂も老いた…。

 

…いつまでこの命が持つのか…分からないが…

 

儂のこの命…願わくば貴女に捧げたい。

 

 

………国や王朝など既に興味は無い。

 

今は、それだけが儂の願いだ………

 

◇◆◇

 

【 一刀は誓う の件 】

 

?陳留城内 演習場にて?

 

《反董卓連合戦 15日前》

 

夕方 仕事が終わった後に俺は練習をしている。

 

夕日の橙色に全体を染めながら、『蜻蛉』の姿勢をとる。

 

一刀「チエエェェイイィィ──────────」

 

       バシィン! バシィン! バシィン!!

 

俺は、両方に支えを置いて1bぐらいの棒を三十程束ねた物で橋のように掛けて、その上を木刀で叩きつける! 何回も体勢を直しながら!

 

『横木打ち』と言う稽古法で、これも重要な稽古の一つだ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

……………とうとう反董卓連合が組まれると、華琳より話を聞いた。

 

 

☆★ ★☆  ☆★ ★☆  ☆★ ★☆

 

華琳『今、麗羽が諸侯を味方に呼び寄せるため、使者を派遣しているわ。私もこの間に軍備を強化し、曹孟徳の力を世に見せ付ける!』

 

一刀『……その戦を回避する気は無いんだな』

 

華琳『当たり前でしょう! 袁家は誑かされたとはいえ、この国随一の強国。

 

一度振り上げた手を元に戻すなんてやらないし、止めれば、この国が蹂躙される。 それなら、流れに乗って最小限の被害に抑えるのが正解よ!

 

ただ、相手が救うに値する者ならの話。 愚者なら容赦なく蹂躙して、曹孟徳の名を挙げる礎にしてあげるわ!!』

 

☆★ ★☆  ☆★ ★☆  ☆★ ★☆

 

 

俺は弱い! 力を付けなければ! せめて、俺の近くの人だけでも…!

 

愛紗「ご主人様! 本日もお疲れ様です!」

 

桃香「一刀さん! お疲れ様!」

 

二人は、この時間に俺が稽古をしている事を知っている。 そのため、終わりそうになる頃を見計らい、迎えに来てくれる………

 

前の世界にこんな事なんか無かったのにな。 及川が知ったら、血の涙を流して悔しがるのだろう。 …久しぶりに思い出すアイツは元気だろうか?

 

 

☆★ ★☆  ☆★ ★☆  ☆★ ★☆

 

愛紗『ご主人様! とうとう積年の恨み重なる『天城颯馬』に天誅を加える事が出来そうです! 必ず私が、この手で晴らしてみせます!!』

 

華琳より見せて貰って袁本初からの反董卓連合決起文の竹簡。

 

そこには、大将軍何進や董仲穎、黒幕『天城颯馬』打倒を謳う文字が躍る。

 

愛紗は、その言葉を見て勇み立ち、桃香も当然と言う顔をして見ている。

 

桃香『真の『天の御遣い』は、やっぱりご主人様だけなんだよ!』

 

☆★ ★☆  ☆★ ★☆  ☆★ ★☆

 

愛紗や桃香は、俺を真の『天の御遣い』だと信じ、悪者を『天城颯馬』と決めつけている。 正義は自分達だと信じてきって………

 

 

前の俺も桃香達と同じだった。 話に聞いた事だけ信じて疑わず、多くの犠牲を出しても、数字として片付けていた。

 

董仲穎様に散々詰られ(なじられ)なかったら、この事に気付く事などなかったんだろう…。 『人』として、敵、味方を見ていなかったなんて。

 

桃香に勉強を教えていた時に思い出した『需要』と『供給』を当て嵌めれば、すぐ理解できたのにな……。 

 

どれだけ、簡単に物事を考えていたんだかと、今頃になり恥ずかしくなる。 

 

だから『話合い』と言う基本的な考えが浮かばないんだ……………

 

 

それに、今回の董仲穎様や天城颯馬様の風評も…かなり懐疑的な事がある。

 

袁本初の決起文には、《 天の御遣い『天城颯馬』が、董仲穎や何進大将軍を言葉巧みに操り、自分の都合が良いように漢王朝を動かした。 忠臣の張譲がこの状態を愁い、漢の臣下である袁本初に申し出て決起を促す 》という。

 

 

だけど、この前の黄巾賊討伐戦で、実際に董仲穎様や天城様達を見たんだ…

 

俺達を陥れた者が、どのような態度を取るかと思って……

 

 

──『思い上がり』『偽善者』『道化者』───

 

……全部、その光景を見て、俺が『北郷一刀』を評した言葉だ。

 

 

真に民を思い、民のために罪を犯した『天の御遣い』の将達。 

 

その将を許し、進んでその罰を自ら受けようと行動した董仲穎様。 

 

その行動を、歯を食いしばって見守っていた天城颯馬様。

 

 

だから、断言出来る! あの方達が、そんな事をする訳がない─!! と。

 

俺の結論は……『百聞は一見に如かず』

 

人の噂より、自分の目で確認して確かめたい!! 

 

そして、更なる確信のため、董仲穎様や天城様に腹を割って話し合いたい!

 

双方に様々な隔たりがあると思うけど…。 だからこそ話し合いをして、溝を少しずつ埋めていきたいんだ。 愛紗や桃香達と共に……………!!

 

◆◇◆

 

【 董卓軍 始動の件 】

 

?天水 天水城内一室にて?

 

《反董卓連合戦 開始25日前》    

     

ダッダッダッ………ダッダッダッダッ! ドン!!

 

詠「…………………………………………」 ハァハァ ハァハァ

 

ねね「詠殿! 颯馬達から、なんと連絡がきましたか!!」

 

恋「…コクコク」

 

霞「…………………………グゥ」

 

華雄「………寝るなぁ!」

 

      バシィン!!

 

霞「おぉう!? ん? 出番きたぁ? 」

 

華雄「心配するな、思う存分戦えれるぞ!」

 

      

 

詠「皆を直ぐに謁見の間に集合させて! 今から話すわ!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

?天水城 謁見の間?

 

詠「颯馬から伝言だと、洛陽に反感を持つ諸侯が、連合を組んで洛陽に攻め込んでくるそうよ。 少なくとも二十万、まだ増える見込みみたいね!」

 

☆董卓軍( 恋姫勢 ) ………董卓含め六名  

 

霞「こりゃー、思う存分に暴れられるやな、恋!」

 

恋「………大活躍…する!」 ねね「恋殿がやる気なのです!」

 

華雄「私もだ! 護衛ばかりでは、腕が鈍ってしまう…」

 

 

★天の御遣い軍( 戦極姫勢 ) …颯馬含め二十四名 (オリキャラ含む)

 

忠勝「拙者も行くでござるよ! 三国の武士と戦えるなど誉れでござる!」

 

義久「私も〜、私も〜!」 

 

義弘「こっちに来ての初陣かー! 頑張るぞ!!」

 

一存「鬼十河の力、見せてやるぜ!」

 

鹿介「…久しぶりの戦、颯馬殿のため、月様のため!」

 

昌景「…お主等、張り切るのは良いじゃが、準備と守備をしっかりと…」

 

左近「そのとおりだ! 詠殿、その指示をしっかり示してくれ!」

 

歳久「詠殿…よろしければ、お手伝いいたしますよ?」

 

家久「じゃあ、守備の点検、任せてね!」

 

信廉「あ、姉上…。 こんなに日の本の将が………」

 

信玄「これはこれで…頼もしいですよ。 信頼出来る者が居るという事は…」

 

義清「全く、楽しい戦になりそうじゃの!」

 

宗茂「はい! 頑張ります!」

 

道雪「ただ、これだけいらっしゃると、誰か纏める将が居なければ、詠殿が大変ですよ……」

 

紹運「それは、一番年長の姉上「キッ!」……失言でした」

 

 ───スッ!  

 

────スッ!

 

三太夫「……よっと!」

 

果心「……ふすふす」

 

詠「急に出て来ないで!! 心臓に悪いから!」

 

三太夫「詠の姐さん! 天城の旦那からの連絡だ! 洛陽の街中には張譲の奴は居なかったんだが、部下に連絡を取っていた形跡があったんだ!」

 

詠「……わかったわ。 それじゃ、三太夫は配下の『忍び』に、各諸侯の情報を集めて貰うように頼んで欲しいんだけど?」

 

三太夫「了解!」

 

詠「それじゃ、こっちで隊を決めるから、その隊で頭を決めて貰い行動を起こしてもらうから頼むわよ!」

 

 

…………

……………………

………………………………

 

 

詠「まず、元から居る霞達は洛陽に向かって! 」

 

霞「了解や、兵も連れてやな?「えぇ! お願い!」 わかった!」

 

 

詠「それから、島津隊、大友隊は天水の守備強化!」

 

歳久「お任せ下さい」  紹運「任せよ!」

 

詠「武田隊は馬を引き連れ、洛陽に!」

 

信廉「わかりました!」

 

詠「男の将達は、天水の周辺の夜盗や賊討伐!」

 

昌景「うむ! 任せておくが良い!」

 

詠「残りの軍勢は、颯馬の言っていた物を持って洛陽に向かうように!」

 

左近「承知!」

 

詠「……なるべく早くこなして、迎撃体勢を整えましょう! 」

 

全員 「「「「「「  おう!  」」」」」」

 

◇◆◇

 

【 孫呉 思い悩む将達の件 】

 

?孫呉 訓練場にて?

 

《反董卓連合戦 開始10日程前》

 

私は、今度の大戦に参加するため、思春より稽古を着けてもらっている。

 

ガキィン! キィーン! ガキィン!

 

思春「……蓮華様、それでは敵に剣筋が読まれてしまいます」

 

蓮華「くっ! このっ!」

 

カキィン! シュッ! 

 

思春「…むっ! 今のは良かったです! たが、私がここで後ろに回れば!」

 

蓮華「きゃぁ!?」

 

私が振り上げ降ろした剣を受け止めず、その剣の上に思春が剣を当て、重さを倍化させられたため、動きが狂って思春に後ろを取られてしまった。

       

思春「動きは、前に比べれば格段に良くなっています。 ですが、何か考え事ですか? 動きが意志に従っていません!」

 

うぅ…私の武術師範であり、護衛を勤めてくれているだけあるわね。 

 

蓮華「姉様が……悩んでいるようだから……」

 

思春「雪蓮様が………!」

 

何時も自由奔放で明るい姉様が、珍しく溜め息をつく事を見かける。

 

先日届いた反董卓連合結成の竹簡を読んでから、生真面目に政務を始めたり、お酒を控えたりと考えられない事をしているから……。

 

冥琳が大層心配したが、「何でもないわ…」の一言で終わらせ、後は喋らない

ため理由が掴めない。 仕事をやってくれるのは有り難いけど…。

 

…私に力があれば、姉様にもっと力になれるのに!

 

★☆☆

 

?孫呉 街裏の一角にて?

 

《反董卓連合戦 開始 8日程前》

 

明命「お猫様方! 御飯の時間ですよ〜!!」

 

ニャァオー ニャァオー フー! ガッガッ! ニィー ニィー 

 

何時もの時刻、何時も場所で、お猫様方に御飯を差し上げているのですが…。

 

明命「う〜〜ん、これで良かったのでしょうか?」

 

私は、何時もの定位置である階段に腰を落とし、両手で顎を支えて、お猫様の様子を見ていたんですよ〜。 和むんですけどね〜…………

 

数日前に、冥琳様と雪蓮様に頼まれて、洛陽に潜りこんだのですけど………。

 

☆★ 明命回想 ★☆

 

《反董卓連合戦 開始 10日程前》

 

明命「洛陽には、あの凄く早いアノ人が居るですから、早めに用事を終わらせないと…………」

 

いつものように、夜の闇に紛れ洛陽の街に侵入しました。 

 

街の家々の間から見ていますが、人通りも無し。 気配も消して、周りも用心深く気配等を確認しましたが、可笑しなところはありません!

 

……ですが、合点がいきません…………

 

何故なら、今の洛陽は『間者返しの都』という嫌な肩書きがあるのに。

 

ですが、警備はしっかりしていましたが、私達の軍とも変わりはありませんでしたので、楽に侵入できました! 他の要因のせいでしょうね………

 

………噂によると…………

 

☆ 曰わく、入った途端に捕らわれて、口に『強烈な酸っぱい物』を入れられたまま、洛陽外に置かれていた……。

 

★ 曰わく、侵入したはずが迷宮となり、一晩経っても脱出できず疲れ果てたところを捕まり、追い出された………。

 

☆ 曰わく、侵入したら、蝶仮面を被った危ない衣装のオッサンに『誰がオッサンなのよん!』と怒鳴られつつ、追いかけられた………。

 

 

ブルブルブルブル  そんな後退的な思考では駄目です! 前向きに、前…!

 

 

??『おいおい、また侵入者かぁ? 全く天城の旦那も人気者だねぇ…』

 

 

えっ!? けっ、気配は……何も────? 

 

私のすぐ後ろから若い男の声! 急いで振り返って見ても、人は居ません!

 

狭い通路には、日用品に使う桶や何が入っているか分からない木箱が数個。

 

後は、お、男物の下着……ですか?

 

??『今回の奴は、かなり優秀だな。 ここまで侵入出来た奴はアンタが初めてだ! 褒めてやるよ……景品は何も出ないけどな……! 』

 

くっ! このままでは……。 私は前に向き直り逃走を試みますが…

 

       ガシッ!

 

三太夫「はい! お客様一人ご案内〜!」

 

今まで居なかったはずの前に、敵将が居たんです─────!!

 

う、う、後ろの声って、誰なんですか!!

 

三太夫「あぁ、簡単な事。 屋根の上から、壁に反響させながら声を届かせ、後ろを振り向いた隙に前へ降りた。 百地流忍法『山彦の術』ってもんさ!」

 

な、なんですか! その得体の知れない業は────!!

 

三太夫「こらっ! 人の業に言い掛かりを付けるな! アンタ等にして見れば得体の知れない業だが、多くの先人が血眼になり完成させた技術だ!」         

ご、ごめんなさい!! 不注意でした!! ペコペコ

 

三太夫「謝罪してくれれば、それでいいさ。 だが、ここまで入り込んだ奴をみすみす見逃すには………いかないないんでね…!」

 

あわわ! 敵の将が、私みたいに背中から武器を抜きましたよ!! 

 

あぁぁ…………お猫様! 明命は貴方達に、もう御飯が差し上げれません!!

 

多分、きっと、絶対、亞莎が代わりにやってくれると思いますが……!

 

雪蓮様、冥琳様、蓮華様、祭様、亞莎、皆様方…目的は未達成のままで申し訳ありません!  先逝く不幸をお許し下さい──────!!!

 

??「 ボソ(三太夫様、その辺りで止めてあげて下さい…) 」

 

三太夫「 ボソ(いや、脅しているじゃなくて、捕縛用の紐を持ってくるのを忘れちゃてな…。 刀の下げ緒で縛ろうかと思っていたんだが……)」

 

覚悟を決めて目を瞑って待ってますが、一向に何も起こりません。 片目をうっすら開けて見れば、あの張角達を助けた時の将が目の前に!

 

小太郎「あれ? もしかして周幼平さんですか?」

 

えっ? なんで私を知っているんです?

 

小太郎「程遠志殿より話を聞きました! 貴女に借りを作ったそうですからね。 もし、出来る事なら叶えてみせますよ?」

 

優しそうな笑顔で言ってくれますが…この人も巨乳人です! 敵には違いないですが、更なる敵なのです! 心を許す事など到底できません!!!

 

三太夫「あ──、言っておくが、俺はアンタを殺さないぞ? 天城の旦那に面会させるだけだ。 城近辺まで入り込んだというのは、天城の旦那に用があるって事だろう? 」

 

コクリと頷くと、案内してくれましたが…………

 

『もし、天城の旦那の暗殺企んで、実行なんてしたら…分かるだろうな?』

 

ふ、二人から殺気が鋭い刃のように出てますよ!? 

 

しません! 行いません!! 絶対に実行しませんから!! 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宮廷内の一室で、天城颯馬に私は出会い、目的を話しました。

 

だって、言わないと後ろの『忍び』の二人が、目を光らせているんですよ!?

 

冥琳様の目的は、宮廷内部の状況と張譲の行方。 

 

雪蓮様は……………董卓軍の不戦の密約締結。 

 

冥琳様の病気を食い止め、雪蓮様の矜持を守らせた感謝すべき人達。 私も出来れば、そうして欲しいと思いました。 だって…後ろの人達、怖いもん…。

 

でも、天城様は…………

 

丁寧に感謝の意を述べながら、お断りされました……………。

 

理由は幾つかあるようで、

 

☆壱、周公瑾がこちらを警戒しているのでないかと言う事。 確かに冥琳様はそんな考えを述べた事があると聞いた事が………。 

 

何故と問うと、『俺だって、そんな胡散臭い事いう奴なんか信用しない』と。 それに、そんな事では内部分裂の危険性もあるから、と言われます。

 

★弐、『俺達の実力を示さなければ、信用はされまい! 我ら天の御遣い達、董卓軍の力を今こそ、大陸全体に示す時!!』と。

 

私は、決意が固い事を見届けて、許可を得て孫呉に戻ろとしますと、幾つか頼まれ物をしました。

 

小太郎殿から、『天城颯馬より雪蓮様に』と竹簡を預かり………それともう一つ、天城様から直に渡された物。

 

もし、孫伯符が元気が無ければ、これらを渡して欲しいと二つの品をもらいました…。 竹筒に入っている物、一つはお酒、もう一つは………

 

な、なんで雪蓮様に元気が無いと分かるんですか? と問うと、優しく微笑まれ……こう、答えられた。

 

『戦になれば元気になると聞いた『雪蓮』が、不戦の密約を自分からするなんて体調が悪い証拠だ。 これで元気を出すように、と伝えて欲しい!』

 

と言われ、後で真名は預かっているからと弁明されましたよ。

 

私は、今度こそお暇させていただいて、孫呉の地に戻ったんです………

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

孫呉に戻ると、緊急の会議が始まり主要な将が集まりました。

 

雪蓮様、冥琳様、蓮華様、祭様、思春様、穏様。

 

雪蓮様、冥琳様に今回の報告を行った後、竹簡を御渡しました。

 

雪蓮様が開き少し見た後、机の上に置かれ、皆さんが覗かれます。

 

私も、恐る恐る覗くと、そこには『詩』が……。

 

…確か…天城様達が天水に降り立ったて少し経ってから流行り始めた詩。

 

《 天の軍勢、力を溜め、時期を悟るが故に、深淵に潜む

 

  雷雲が呼び、雨天が招けば、万難を排し、天へと駆け昇ろう

 

  優しき日輪を守護し、世を安寧に導くために 》

 

雪蓮様達は難しい顔をされ、冥琳様、穏様はハッと驚く!!

 

雪蓮「…! 冥琳や穏は分かったの!? 」

 

……………………視線は、二人に集まりました!

 

…私も詩は知っていましたが、意味は全く分からなかったので、知りたいです!

 

冥琳「……穏、言ってみろ。 間違っていたら訂正してやろう」

 

穏「ではでは〜」

 

天の軍勢、力を溜め、時期を悟るが故に、深淵に潜む

 

訳( ここは天城様達が、董仲穎様の配下に加わるところですね〜。 まだ名声も風評も無いですから、他の勢力に依存せねばならなかったんですよ〜!)

 

雷雲が呼び、雨天が招けば、万難を排し、天へと駆け昇ろう

 

訳( 多分〜、雷雲=戦、雨天=天子の涙と意味と考えれば、今、始まろうとしている反董卓連合戦を示すと思われます〜!)

 

優しき日輪を守護し、世を安寧に導くために 》

 

訳( ここは、天子を意味すると思いますが、董仲穎を示すかもしれません。 今後の課題になりますね〜!)

 

冥琳「うむ、同意見だ。 我らは、もしかすると、起こしていけない者達を起こしてしまった…かもしれんな……」

 

えーと、もしかして、反董卓連合が打ち破られる、可能性が………

 

冥琳「ある! 我らの援助抜きにしても…だ。 だが、やはり颯馬だな。私の心情を考慮して、この戦、本気で戦ってくれるとは……」

 

蓮華「………この場合は、不戦した方がいいのではないの? その方が兵力にも温存出来そうだし………」

 

祭「蓮華様、今回は少し違ってきますぞ。 天城達は背後に漢王朝を背負っていますのでじゃな。 謀略等を行えば戦後に他の諸侯より言い掛かりを掛けてくるでしょう!

 

それに、不戦なんぞすれば、この熱き血を持つ孫呉の兵達が、納得するはずがありませんぞ! 後になり『戦えば俺達が勝ち』、『俺達が不戦したおかげ』と増長する者が増えれば、また戦になりましょう! 」

 

『まっ、儂も実際に戦わなければ、納得なんかせんがな!……カカカ! 』っと笑いながら説明されていました。 

 

☆★ 回想終了 ★☆

 

はっ! 大分長く考えていましたが、御猫様方は、まだお食事中。

 

よ、良かった………。 でも、あの時見た雪蓮様が、とても悲しそうな顔をしていたねのが、印象的だったんです!!

 

本日も、朝から政務へ………。 なんとか力を付けて貰わなくては…!

 

あっ! いけない! アレを忘れてた! すぐにお渡ししなければ………!

 

私は、雪蓮様の執務室へと向かった!!

 

 

★☆★

 

?孫呉 執務室にて?

 

《反董卓連合戦 開始 7日程前》

 

雪蓮「あぁぁ………こんなの私らしくないなぁ………………」

 

私は、颯馬達とははっきり言って戦いたくなかった。

 

…まぁ、いつもの勘が働くのは勿論だけど、心がね、燃えないのよ……

 

いつもは、戦が近いとなれば、政務なんか冥琳に丸投げにして、喜々として戦の準備して出撃するんだけど………………はぁ──── 

 

だから、颯馬に不戦の密約を交わそうと思ったんだけど断られて、しかも、あんな物送られちゃたら、反論できないじゃない! 馬鹿颯馬!!

 

……………でもなぁ、私が先頭で戦わないと、孫呉の士気が上がらないし、冥琳が本当に倒れちゃうし、袁術ちゃんや張勲に愚痴言われちゃうし…………。

 

どうすれば良いっていいのよぉぉ━━━━━━!!!

 

明命「すいません! 雪蓮様、今、宜しいですか?」

 

雪蓮「いいわよぉ──! 入ってちょうだい!?」

 

明命から来るなんて珍しい……、なんの用かしら?

 

明命「……実は、天城様から渡された物が、もう一つありまして……」

 

雪蓮「ちょっと、早く「食べ物なんです」…それじゃ、仕方ないわよね」 

 

私みたい王が、物を食べる時は必ず毒味役がいる。 毒が入っていた場合にその者が身代わりになるけど、その家族は生涯孫家が面倒を見るようになっている。

 

雪蓮「これが………そうなの?」

 

明命「はい! 天水で幻の品と言われています『梅干し』と言うものです! もう一つは『梅酒』という甘いお酒ですよ!!」

 

毒味役が顔をしかめたと言う『梅干し』、ちょっと口に含みかじると………

 

雪蓮「すっ────ぱぁ─────いぃぃ!!!」

 

あまりに大声を挙げたため、執務室に主要な将が集まる!

 

冥琳「なんだ!? なにがあった!? 雪蓮!!」

 

蓮華「何事ですか!?」  

 

思春「……大丈夫ですか?」

 

祭「どうした! 策殿!」

 

穏「雪蓮様〜!!」

 

散々小言を言われ、皆で「梅干し」をかじる。

 

冥琳「す────────んぐ! 成る程……」

 

蓮華「うぐっ! す───ぱぁ────」

 

思春「───────!?」

 

祭「───────これは、なかなかじゃ!」

 

穏「───えぐぅ、酸っぱいです〜〜〜!!」

 

後、梅酒を少しずつ飲み回す。

 

雪蓮「ん?、んー、甘くて美味しい!」

 

冥琳「おっ! これは良い……!」

 

蓮華「美味しい──!「駄目です!」 あっ!」

 

       パシィ!!

 

思春「飲み過ぎますので、これくらいに……ゴックン、お?」

 

祭「やっと儂か………。ゴクッ…! ほぉ? 」

 

穏「私も〜! コクッ ちょっとしか無いですよ!! まだ、飲みたいです〜!」

 

見た事も聞いた事も無い『お酒』と『食べ物』のため、私達は大騒ぎ!!

 

後で明命に聞いたら、元気がないなら渡してくれって頼まれたですって…。

 

本当に、無自覚に女を誑かすのは、噂どおりねぇ………

 

分かったわ! 孫呉の力、私達の力、よく味わいなさい!!

 

私も、貴方達の力、試させてもらうから────!!!

 

 

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あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

今回、話が纏まらず、思考錯誤した結果になります。

 

今回は、準備の状況。 次回から反董卓連合戦を展開していきます。

 

最後まで、読んでいただき、ありがとうございます!

 

 

 

 

説明
義輝記の続編です。 今回は、反董卓連合戦に向け、準備となります。よろしければ読んで下さい。
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コメント
諸侯の一人は引き入れます。 謀り事の準備は…次回も続きますよ。 少し踏み込んだ謀り事の準備風景。どんな策になるのやら。(いた)
naku様 コメントありがとうございます! この二人、どうしようかと考えるのですが…………結論が出ません! 次回作も悩みながら思案中ですけど………本当にどうしようかな……(いた)
雪風様 コメントありがとうございます! 実は…戦極姫キャラは全員泗水関、虎牢関に投入させます。 後ろは二人の漢女と……(いた)
天水守備隊に鬼島津隊(島津)に鬼道雪隊(大友)・・ある意味豪華・・遠征隊が武田騎馬隊に、鬼2名・山中ら・・。これも豪華なり。後は配置を間違えなければ・・・(雪風)
禁玉⇒金球様 再コメントありがとうございます! 明命より連絡が入っておりますので、お伝えします。 『あ、あれは…私が聞いた噂、噂なんですぅ〜』(いた)
華麗にスル―してしまいましたが明命に苦情を一つ、仮面の叔母様にオッサンとは失礼な、敬って諂わんかタワケが!!。反論は認めぬ。(禁玉⇒金球)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 例え勝っても主は華琳ですので、普通に考えれば敵将に会えて話せる確率も少ないですし、二人は勝ったら余計増長しそうですしね。(いた)
止まることを知らない時の中で幾つもの機会を逃す阿呆が二人…御使いを見ても北郷一刀を見ていない。性長いや成長途上の一刀君しかしまだ甘い戦争になったら話し合いは戦後にしか出来ない物なのだよ、腹を割ってというよりも腹を割られるぞと言わんばかりですが、そしてもう劉備と関羽に説得を諦めている感さえある。(禁玉⇒金球)
nikoniko様 コメントありがとうございます! 確かに言わないと意味はありませんが、この二人が言って聞いてくれるかどうか…。 その考えの末が『百聞は一見にしかず』会わせて話し会わせたいと考えたとなります。 会えるかわかりませんけど…(いた)
一刀・・・気付いても馬鹿二人に言わないと意味ねーよ(nikoniko)
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