メルルのアトリエ〜百合〜メルルvケイナ |
【ケイナ視点】
アストリッドさんの好奇心により作られた竜の砂時計というもののせいで
メルルとトトリさんが過去へと飛ばされてしまったことを聞かされた
私は軽くパニックに陥ってしまったが、周りの人たちが支えてくれたおかげで
なんとか落ち着けることはできたが…メルルが帰ってくるまで寂しい思いを
していた。
不安を胸に抱えたまま、空に広がる青い色とは相対的に私の心は
曇っていた。
メルルに何かがあったらどうしようって。前にメルルたちが帰ってくるのが
遅くても1年はかかるとアストリッドさんに言われて長く感じていた。
彼女といると1年が短く感じるというのに…人の感覚とは不思議なものだ。
アストリッドさんは反省の色は見せないが、1年までの間に帰れる方法を
見つけてくれると私を慰めてくれた。時々メルルのアトリエに姿を現しては
研究の過程を素人にわかりやすく言い換えてくれた。
その見返りとしてアストリッドさんの作ったきわどい衣装を着せられる
羽目になってしまってけど。
「乙女の恥ずかしげな反応が欲しいのだがな」
「無茶を言わないでください!」
私の気持ちは今それどころではないのだ。
メルルがいてくれたらそっちの方にも気が向くのだけれど。
王国がアーランドと一緒になってからはメルルはアトリエで働きながら
住むようになっていた。その時に私も一緒に住まないかと誘われて
私は新婚の気分で二つ返事でOKを出して間もなくこの事件である。
ロロナちゃんの師匠はとんだトラブルメーカーだと思うし、それ以上に
頼もしい部分もしっかり見せてくれる不思議な人だ。
「そういえば向こうではロロナちゃんはもっと大きいんだっけ・・・。
なんか変な感覚」
「よくわかんない〜」
「それもそうか」
一人きりでは気が滅入るけど、大きくなるまでの間預かっていた
ロロナちゃんのおかげで少しは気が紛れているのも事実だった。
ロロナちゃんは不思議な魅力を持っている、一緒にいると元気になるっていうか
そこだけ取るとメルルに似ている部分があるのかも。
アトリエの掃除を始めて、一通り終わらせると隣の部屋にあるメルルの
ベッドの上に私は横たわった。本当はベッドの布団も綺麗に洗って干したり
したいのだけど、私はしなかった。
それをすると、今はいないメルルの匂いがなくなってしまいそうで。
それでも少しずつその匂いが薄くなっていくのが切ない。
早く戻ってきてほしいという気持ちを持ちながら私は日々を過ごした。
途中、アストリッドさんが開発した機械で過去との行き来が
可能になるというものができた。人を使うのは不可能だがアイテムたちなら
時間をかければ行き来ができるらしかった。
アストリッドさんにメルルに宛てた手紙を入れてくれるように頼んだ。
それはもう断られても何度も何度も頭を下げて頼み込んだ。
「はぁっ、大丈夫だというのに…仕方ないな。向こうから返ってくるかは
保障できんぞ?」
「構いません」
機械は不穏な音を立ててから、しばらくしてその音が静まっていく。
中を確認すると入っていたものがすべて消え去っているのを見た。
その機械は拠点としてアトリエに置いていたが壊れると嫌だし
そもそも動かし方がわからないから、送るときは必ずアストリッドさんの
居るときにしか動かさなかった。
時々「私も入る〜」ってロロナちゃんが入りそうになってしまったときは
アストリッドさんや私も大慌てになった。今思えばそれも微笑ましい思い出である。
もうそれから何日経っただろうか。返事の手紙は私が送る半分くらい
返ってきて、元気でやってるよっていう言葉と何をしているかというのを
簡潔に書かれているのを見てホッとする。
そんな毎日を過ごしていた。
「トトリやメルルちゃんはいつ頃帰ってくるのかしらね」
「もうすぐだと思いますよ…そう思いたいです」
「そうね」
何かをしてなきゃ落ち着かないのは私だけではない。
愛するトトリさんも向こうに行ってしまってミミさんはそわそわしながら
いつも護衛を受けるのに待機していたアトリエ前でぼーっと
空を眺めているのだ。
私も通るたびに挨拶をして、時には相談したり相談を受けたりしていた。
元々私達は社交性は悪くないにしても特別良いわけではなかったから
最初は緊張から堅苦しい雰囲気を出していたけれど、話している内に
普通に会話できるくらいにはなっていた。
もうすぐ期限の1年が経とうとしている。みんなその日を待っていたかのように
アストリッドさん含めてワープしてしまった場所に集まっていた。
そこはアールズ内にある広場で、そこに集った人たちは私がよく知る人たちばかり
が顔を出していた。アーランドのハゲルさんやパメラさんも心配そうに
又は嬉しそうに顔に出しながらその時を待っている。
私は心配からか、緊張からか心臓がばくばく煩いくらいに鳴り響いていて、
そんな私の両肩にそっと手を置いてくる人が。
振り返るとそこには少し困ったように笑みを浮かべるミミさんの姿があった。
「大丈夫よ」
「はい」
簡単に、でも自信家のミミさんから言われると私も少しだけ
気持ちが幾分か楽になったような気がする。
「来るぞ」
アストリッドさんの声と共に辺りは緊張の糸が張りつめたような空気になる。
私がつばを飲み込むようなゴクッという音がしたのとほぼ同時に辺りが
眩い光に包まれた。
短いような長いようなそんな時間の後に光は消えて去り、輪のように
囲っていた達の中に、トトリさんと…メルルの姿があった。
彼女たちは目を瞑って、徐々に目を開くとキョロキョロと辺りを見回した
後に私と目があって人の間を割って入って私にメルルが飛び掛かってきた。
「ただいま!ケイナ!」
「メルル・・・おかえりなさい!」
本当に二人は帰ってきた、そのことに驚き、そして喜ぶ住民の人たちの
姿があった。彼女は本当にみんなに愛されてるんだなって思えた。
一気に周囲が賑わう中で私は一人目に涙を浮かべていた。
気を緩むと泣き出してしまいそうだったのをメルルが苦笑して私を抱きしめた。
「なんて顔してるの〜。ね、大丈夫だったでしょ」
「うん…」
「私は何があってもケイナから離れたりしないよ」
「うん…」
「もう〜うん、ばっかり。よく私の顔を見てよ、ケイナ」
メルルの元気な声を聞きながら顔を伏せていた私は自分の泣き顔を
メルルに見せたくなかった。けど、彼女にそう言われたら上げざるをえない。
私はゆっくりと視線をメルルに合わせると、彼女もまた嬉しそうにしながらも
目にはうっすらと涙を浮かばせていた。
しばらくしてから疲れたとトトリさんとメルルはアトリエに移動して
それぞれ休憩をして過ごしている。トトリさんはまだ小さいロロナちゃんと。
メルルは隣にあるベッドに顔から倒れるようにしてベッドの上に沈んだ。
今日の日のためにベッドの布団は綺麗なものに取り換えていた。
気持ちよさそうにしているメルル。すぐに眠るものかと思っていたら
私を誘うように手招きをしながら空いた手で私の腕を掴んで引き寄せてきた。
私はバランスを崩すも、綺麗にメルルの隣に体を倒して二人目が合った。
灯りをつけず、少し薄暗い部屋の中でも彼女の瞳は宝石のように輝いていて
とても綺麗に見えた。
「やっぱりケイナと一緒にいると落ち着くな」
メルルの何気ない言葉にドキッとして心が躍るような気持ちになる。
それはとても嬉しいし私もメルルといると同じ気持ちになるから。
同じように想いあっているんだって安心できた。
「ねぇ、ちょっとしようよ。1年間してなかったんだから」
「もう、メルルったら。これからはいつでもできるんでしょ」
「今はすごくしたい気分なんだ」
「私も…」
私は熱く潤んだような目をしたメルルの唇に自分のをあてがった。
ぷるぷると水分を含んだメルルの唇が気持ちよい。
「んっ・・・」
「んっぅ・・・」
最初は触れて少しずつ深くなっていくキスに互いの呼吸が漏れた声を
聞いて少しずつ気持ちが高揚していく。
「ふぅっ・・・」
「んんっ・・・」
「ケイナ・・・」
「メルル・・・」
どれくらいの間していたのか体感ではわからなかった。ただただ目の前の
愛おしい人の名前を呼んでそこに確かに存在していることを確かめたかった。
何度名前を呼び合ったか頭に残らないくらいたくさんたくさん呼び合った。
私の腕の中には確かにメルルを感じていた。
彼女の匂いが、柔らかさが、暖かさが私の張りつめていた緊張を
ほぐしてくれて、疲れが一気に出てきた。それをわかっているのかいないのか。
メルルはニコッと笑って。
「一緒に寝よう、ケイナ」
「うん…」
二人手を繋いで目を瞑った。もう今度はこの手を離さないようにって
強く想いながら深い眠りに就いたのだった。
戻って数日にしてメルルはアトリエでの仕事を再開していた。
もう少し休んでもいいだろうに、この仕事が好きで好きで仕方ないのだろう。
その合間にアトリエ前にある石垣に座っているとメルルの頭が私の膝の上に
乗っかってきた。
「ケイナの膝枕〜♪」
「もう、そうやってすぐ…」
「いいじゃん。それともケイナは嫌?」
「そんなわけないでしょう…」
ただ人の目が気になるだけで、別に嫌ではなかった。
むしろこういう時間が取れることは私にとってはとても幸せなわけで。
そんな穏やかな気持ちになったのも僅か。
メルルは膝枕を堪能しながらも次のことを考えていた。
「向こうのロロナ先生に刺激されてさ」
「うん」
「あれを作りたいなぁ、これを作りたいなぁって思ったり」
「うん」
「またドラゴン倒したいなぁって思ったり」
「え?」
アールズを発展させるためにメルルに付き合っていろいろ危険な目に
遭ってきたのを思い出して私は血の気が引くような気持ちになったが。
私のその考えを肯定するようなことをメルルは口にした。
「また今度冒険の旅にでようよ!一緒に」
「えぇぇぇぇ!?」
メルルの時折見せる冒険者魂がまた起きだしたか、こうなるともう
誰にも止められなかった。でもそんなことも彼女と一緒だと何だか楽しい
気持ちにさせてくれる。怖いけど。
「仕方ない…じゃあメルルのために美味しいお弁当作ってサポートするわ」
「さっすがケイナ!わかってる〜!」
メルルがいない時と比べたら危険でも一緒にいたときのほうがよほど
生きた心地がするというものだ。嬉しそうにしているメルルの顔を見ていると
そう自然に思えるのだった。
私たちは・・・もう離れたりしない・・・何があっても。
心地よい風が私たちを包んで、準備を整えてから私たちは歩き出す。
メルルの気の向くままに。
終
説明 | ||
ブログで書いたもの。新ロロナの延長シナリオから、メルルの話を混ぜてみました。ただ二人をイチャイチャさせたいというのが主ですw | ||
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