見張り兵A「こちらです！」

左慈や于吉は見張り兵の後ろから走ってついてきていた

見張り兵B「隊長！曹操様の使者が面会を求めています！」

見張り兵Bは檻越しに一刀に話しかけていた

一刀「…………華琳の……？」

左慈「俺達だ、北郷」

于吉「大丈夫ですか？北郷さん」

左慈と于吉が一刀の前に姿を現した

一刀「左慈…………于吉…………華琳が一体何の用だ……？」

于吉「……………すみません、見張り兵のお二方……席を外して頂けませんか？」

見張り兵B「御意！」

見張り兵は自分の仕事へと戻っていった

于吉「北郷さん………最早一刻を争う状態となっています

黙って私達についてきてくれませんか？」

一刀「于吉…………君は俺がどんな目にあったか大方予想がつくはずだ

頼むから放っといて欲しい…………

正直今の俺は…………自殺したいくらいなんだ………」

于吉「……………(これは……重症ですね……)」

于吉がそう思っていると左慈はお構いなしに

左慈「北郷、てめぇの私情何か知ったこっちゃねぇんだ

さっさとこの独房から出てきやがれ」

と言い放ち、乱暴に牢獄の扉を蹴り開けた

一刀「…………左慈、俺の言った事が分かんないのか？放っといてくれって言ったんだぞ………？」

一刀はそう力無く言った瞬間、

左慈「うるせぇっ!!!四の五言わずにさっさと出てきやがれっ!!!」

一刀「っ!!」

左慈は牢屋全体に響き渡る位の怒号を一刀に向かって放った

左慈「人を殺したんだろ!?あぁそうだ！お前は人殺しだ！罪を償った人を『暴走した体気吸収』で生命の抜け殻と化した『只の灰』にしちまった！」

一刀「っ!!」

于吉「左慈!?言葉を選んでください！」

于吉も思わず声を荒らげる

左慈「だがな、こんなクソみたいな独房で餓鬼みたいに反省してる場合じゃねぇんだ!!

この国……この外史が危機に晒されてるんだ!!」

一刀「っ!!?何だと…………!?」

左慈「いいからさっさとついて来い!!」

左慈は無理矢理一刀の腕を掴むと強引に牢獄から引っ張り出し牢屋を後にした

場所は変わって此処は大広間………

此処にはこの大陸の重鎮が全員緊急集合がかかり急遽集まったのだ

そこへ一刀の腕を掴んだ左慈といつにも増して真剣さを表に出した于吉が入ってきた

因みに卑弥子、貂蝉、華佗は既に大広間に居る

華琳「ようやく全員集まったわね」

一刀「華琳…………」

雪蓮「一刀………」

翠「一体何があったんだ？ご主人様も来たことだし早く教えてくれよ」

稟「何があったのですか？華琳様」

小蓮「何にも聞かされてないんだもん

お姉ちゃん、早く教えてよ」

蓮華「………全ては華琳が話すから」

蓮華がそう言うと大広間が静まりかえり、華琳に視線が集まった

華琳「……………皆、心して聞いて

今、一刀の身に危機的状況が陥っているの……」

春蘭「一刀の身にですか!?どういう事ですか!?」

華琳「実はね……………」

華琳は今起きている出来事を話始めた

一刀の体の異常…………

その正体は響窃の『存在能力の暴走』………

既に第一症状が起こり始めていること…………

それによりもう既に一人犠牲者が出ていること……………

何れの内容も知らなかった春蘭や恋達は驚きを隠せなかった

華琳「……………以上言ったことが起きていたのよ……」

音々音「そんな事が…………あったのですか……？」

全員絶句していた

特に最近一番近くにいた蒲公英や凪は責任を感じていた

霞「……………なんでや……？」

霞は震えながら一刀に問いかけた

霞「なんでウチらに相談してくれへんかったんや!!?」

霞は一刀に向かって叫んだ

朱里「そうですよ！何でご主人様はそうやって一人で全部抱え込もうとするんですか!?」

亜莎「私達は一刀様がお一人苦しむ姿なんて見たくないんですよ!!?」

次々と心の叫びが大広間中に響き渡った

そして、一刀が遂に口を開いた

一刀「…………俺だって皆に相談したかったさ……言い訳じゃないよ……？」

秋蘭「ならばどうして………!?」

秋蘭が聞き返すと一刀は

一刀「怖かったんだっ!!!」

全員「「「「っ!!」」」」

皆に向かって叫んだ

一刀は胸のうちをさらけ出した

一刀「触れる物が尽く灰となっていく………

物までならまだしもこのままでは生き物までも灰となってしまう

それが怖かったんだ…………」

月「ご主人様……………」

一刀「信頼していた皆が………

愛する人達が………

俺のこの手で……自分の目の前で灰になるのが怖くてたまらなかった………

想像しちゃうんだよ………そういう最悪の結末というのを…………」

霞「だとしてもなんでや………？

なんで話してくれへんかったんや!?」

一刀「話してどうにかなる問題じゃないんだっ!!!」

霞「っ!!」

一刀「最早俺の両手は触れた物の生命の気を一滴残らず吸い取ってしまう

物体であろうと………生命であろうと………全てだ………」

一刀は涙ぐみながら話していく

一刀「これはもう…………駄目なんだよ……」

霞「だとしても………」

霞が言いかけた時に一刀は目つきを鋭くし、近くの柱に近づき

一刀「これを見てもか!!?」

柱に右掌をつけた

すると…………

ｷﾞｭｫｫｯ!!!

柱がみるみるひび割れを起こし

ｻﾞｱｱｱｧｧｧ……………

あっという間に灰となってしまった

愛紗「……………なんということだ……」

星「速度が速すぎる………」

于吉「……………」

霞「嘘やろ……………」

一刀「霞、残念ながら………これは現実だ…………

もう、俺は……………」

一刀が諦めかけの言葉を言いかけたその時

左慈「北郷…………諦める必要はねぇぞ？」

一刀「っ!?何だって!!?」

左慈は勝ち誇ったかのような笑みを一刀に向けた

華琳「どういう事よ？一刀が助かるの？」

于吉「えぇ……響窃の存在能力が暴走しているのなら

ようはその存在能力を操れればいいのですよ」

貂蝉「つまり気を操る修行をすればいいのよん♪」

卑弥子「そうすれば『体気吸収』を自由自在に操ることができるのだ」

一刀「何をすればいいんだ!?」

一刀は管理者に問い詰めた

だが左慈は首を横に振り

左慈「生憎だが、今の北郷には修行をする以前に欠けているものがある」　

一刀「っ!?欠けて………いるもの………？」

卑弥子「それは技術、経験、能力といった初歩的な事をものを会得していないことじゃ」

一刀「………………」

一刀は黙ってしまった

于吉「それを会得しない限り、修行をすることはできないのですよ」

左慈「しかもな、俺達管理者は成都から一人しか離れられないんだ」

一刀「っ!?どういう事だ？」