三日前

零士「一体何があった！？」

私達は桜に緊急で招集され、洛陽にやってきていた。

そこで待っていたのは、ボロボロにやられていた貂蝉と卑弥呼の姿だった

貂蝉「あらん零士ちゃん。みっともないわぁ、こんな姿晒しちゃうなんて…」

卑弥呼「不覚…張譲め…とんでもない者らを復活させおって…」

咲夜「何があったんだ？」

この二人の実力は知っている。

だから二人がこうもやられるとなると、ただ事ではないことがわかる

華佗「二人は、俺としばらく別行動をとっていたんだ。

なんでも、気になるところがあるとかで。向かった先は泰山の奥地、そこにある神殿だ」

貂蝉「ずーっと網を張ってた甲斐あって、ようやく張譲を捉えたのよん。

でも、少し遅かったわ。奴らは、既に準備を終えていた」

卑弥呼「わしらも失念しておったよ。奴の太平要術の使い方に」

零士「太平要術の使い方？」

私は今までの、張譲が関わっていたとされる事件を振り返る。

黄巾では民衆の魅了と扇動、

反董卓連合は群雄割拠の引き金、

袁紹は操り、

孫呉では強化、

そして悠里の時は蘇り…

咲夜「なるほど、試していたのか。太平要術がどこまでできるのか」

卑弥呼「十中八九そうだろう。

今までの事件は、奴にとって太平要術の書の力を、奴が使いたい力を使えるか確認するため。

奴がこの瞬間に全てをかけれるように」

貂?「今ご主人様、北郷一刀がどこで何してるかは、知ってるわよね？」

零士「……！！まさか、張譲の狙いは初めから一刀君か？」

貂蝉「それしか考えられないわねぇい」

北郷一刀が狙い？確かに北郷一刀の軍は、赤壁での決戦で疲弊しているだろうし、

三国が手を組んでいるとは言え、五胡の迎撃という連戦を強いられている。

間違いなく弱っているだろう。だけど…

咲夜「仮にそうだとして、何故今まで狙わなかった？いくらでも機会はあったはずだ」

貂蝉「かつて、それがことごとく失敗するとわかっていたら、どうかしら？」

わかっていたら？結果を？そんな未来を見るなんて…

咲夜「いや、ちょっと待て。まさか…」

私は零士を見て思う。こいつはある程度の未来を知っている。

それは別の世界からやって来たから。となると張譲も…

貂蝉「…あいつは、別の外史の記憶を持ち合わせているわ」

咲夜「……なるほど、そりゃ最悪だ」

結果を知っている。だから、今までは力を抑え、ここ一番で全力で叩く気か

零士「おい貂蝉、奴には協力者がいるんじゃないか？それも、お前ら側の。

張譲はだいたい連合時に死ぬんだろ？それ以降の記憶はないはずだよな？

なのに、この時を狙うとなると、第三者の入れ知恵がなきゃおかしいよな？

そして、それが可能なのは外史の管理者サイドの人間だ。違うか？」

零士は僅かに敵意を出し、貂蝉に問い詰めた。その話が真実なら、こいつらも敵になる

貂蝉「えぇ。考えられるのは2人しかいないわ。于吉、そして左慈だと思うわ」

零士「于吉だと？お前は以前、奴は死んだと言っていなかったか？」

貂蝉「確かに死んだわ。死体も回収済みよ。

でも、奴らがもし、奴らの記憶を張譲に譲渡していたとしたら、どうかしら？」

零士「そんな事が可能なのか？確かにそれなら…だが、何故その結論に至った？」

卑弥呼「やつの戦い方だな。左慈に武術を仕込んだのはこのワシだ。

そして、張譲には奴のクセを感じられた」

貂蝉「それに、あいつの妖術、あれは紛れもなく于吉のものだった。

于吉と左慈の記憶が、力が、張譲にはあるのよ」

咲夜「ちょっと待て。なんだってそんな事…その2人はお前ら側の人間なんだろ？」

貂蝉「簡単に言ってしまえば、あの2人は北郷一刀を憎んでいた。

そして自分達には抗う力を残されていなかったから、全てを張譲に託した。

北郷一刀を倒すためだけに」

零士「北郷一刀を倒すため、つまりは世界を壊す気でいるのか」

そんな事に、なんの意味が…

咲夜「いや、今はそれよりも、奴を止める事が先決だな。

卑弥呼、お前さっき、とんでもない奴とか言っていたよな？それは誰だ？」

卑弥呼「かつて、西楚の覇王と唄われたものだ」

咲夜「！！項羽？そんな伝説級の奴が復活したのか！」

なんて馬鹿げた力だ、太平要術…

貂蝉「蘇ったのは項羽、虞美人、季布、龍且の四人よ」

桜「以前、洛陽で妖刀の盗難、そして殺人鬼の蘇り事件があったであろう？

あれ自体が陽動であったのだ。本命はこっち。西楚の軍勢の復活であった」

あの事件で注意を逸らし、その隙にってか。なかなかとコソコソしているな

零士「…なるほど、かつての英傑を呼び戻したのか。確かに全力だ」

卑弥呼「さらに、奴は兵馬俑と結界祭壇も有しておる。兵馬俑は命のない、自動人形。

なかなかに厄介だよ。なにせ死なないのであるからな。

そして結界祭壇は四つの祭壇の力を使って結界を施す。

恐らく太平要術の書を守るためのものだろう」

詠「四つの祭壇って事は、四つにそれぞれ過去の英傑が布陣してるでしょうね」

咲夜「勝ちの目が薄すぎるな」

華佗「だが、奴らに勝てるのはお前達だけでもあるんだ」

零士「どういうことだ？」

華佗「祭壇は、特定の力を有している物でしか破壊できない。その特定の力は龍の力。つまり…」

咲夜「…なるほど、これのことか」

私、悠里、そして華雄が自前の武器を見つめる。

以前、零士が作ってくれた龍の素材から成る武器だ。

確かにこいつには、不思議な力が宿っている

恋「…恋には、ない…」

恋が悲しい顔をしている！？

咲夜「おい零士、恋にも作ってやれ」

零士「ちょ、ちょっと待って！あれ結構疲れ…」

チャキ

咲夜「さっさとしろ」

零士「はい！できました！はぁはぁ…ど、どうぞ恋ちゃん…」

恋「♪」

恋は新しく手渡された方天画戟を見つめ、ご機嫌になったようだ

咲夜「さぁ、武器は揃ったな。奴の狙いが北郷一刀なら、恐らく奴の背中を狙うだろう。

五胡と兵馬俑に囲まれちゃあ、さすがのあいつもひとたまりもないな」

月「それに今は、五胡と戦っているのは北郷さんだけじゃありません。

華琳さん達も危ないです」

悠里「勝ち目が薄すぎても、これはあたし達にしかできない事ですね」

詠「僕らがやられたら、この大陸も終わりでしょうね」

咲夜「奴には散々掻き回されたんだ。

ここできっちり落とし前つけとかなきゃ、いけねぇよなぁ」

恋「家族を傷つけた奴、許さない」

零士「はは、みんなやる気満々だ。だけど、家族を、友人を守る為にも、ここは退けないな」

華佗「やってくれるか？」

咲夜「もちろんだ。張譲は、必ず殺してみせる」

桜「無論、我も手伝おう」

京「私たちも、張譲を討つ為に力をつけました。そして、今がその時です」

高順「月様、劉協様、今こそあの時の雪辱を晴らしてみせましょう！」

咲夜「なら、さっそく軍議だ。編成、兵糧、奴の進行経路、全て割り出して今日中に構えるぞ！」