恋姫?夢想 ━━一人乙女━━ 《弐》 |
―――それは森が静まり返った夜の事だった。
森の近隣に存在する一つの山・・・そこには、 木々も生えず、 砂と岩でだけがむき出しになっているだけのハゲタカ山―――
その中にひっそりと存在する、 今はもう誰も使っていない打ち捨てられた砦・・・
その砦の中には約3千人ほどの賊達が集まり、 山を下りては村々を襲撃し、 女と食糧を掻っ攫い毎日酒と女で有意義に暮らしていた。
その中に一人、 賊の中で人一倍筋肉質が高く、 肉などを大量に食らい、 攫った女の尻を撫でまわす男が一名、
恐らく賊の大将なのだろう、砦の中では上等な玉座に座り、 馬鹿笑いをしていた。
「がーはっはっはっ!!! いやぁ〜、 この昨日の村は大漁、 大漁!! こんっなに食糧と女が手に入るとはなぁ! あと金目の物とかもバッチリだったぜ!」
「へぃっ! いやぁ〜、 まさかあんなちっちぇ村に、 こんだけの貯えがあったなんて思ってもみませんでしたよ親分!」
「なーに、 あの村は俺達の為に汗水垂らして頑張って築いてくれたんだろうよぉ! まっ! 有効的に使ってやろうじゃねぇか! なぁ!」
そういって、 男は自分の膝でうつ伏せになっている女の尻をこれでも言うかと笑いながら叩きまくる。
「へへへっ! 親分の喜びの尻太鼓が響くたぁ! 今日は運の良い日ですねぇ!」
「ちげぇねぇ! ちげぇねぇ! がーはっはっはっ!!!」
そう尻太鼓を叩かれている女の目には生気が見られず、 何回も賊連中に廻されたと見受けられる。
檻の中には、 村娘が20名ほど・・・それぞれ檻の隅でガタガタと震える女、 中には絶望で全身の力が完全に抜けてしまって横たわっている者も居た・・・。
待てど行けどもこの世の地獄とはまさにこの事・・・、 村娘達は賊頭の膝の上に抱きつくように横たわる生気の無い女、 そしてその周りに死んだように倒れこんでいる女達を見て、 自分らも何時かは必ずああなると察し、絶望していた。
あんな下衆に犯されるぐらいならば、舌を噛み切ってしまいたいが、もはやそんな力も度胸もなく、ただ泣く泣く性に飢えた猛獣達の餌になるのを待つばかりだった。
そんな中、 笑っている賊達の中で鼻の長い、 まるでゴブリンのような顔をした賊の下っ端が一つのことを話題に出した。
「あー・・・そういやぁ・・・ちぃ〜っとばかし小耳に挟んだことがあるんですけどね?」
「おぉぅ? なんでい、聞かせてみ?」
「いやね、昨日聞いたんだが・・・俺達と同業の奴らが誰かに次々と消されているってー話だ」
「なんでぇ? 賊狩りか。 次々ってーと? どうせ三つぐらいなもんだろ?」
「ぃんや、 それがよぉ。 三つや四つじゃないんだってよ! 昨日で潰れたのは・・・―――」
「それ以上言うなァッ!!!」
城壁の隅を陣取っていた賊の一人がいきなり大声を出した。
その大声に驚いて、 周りの賊達は、その賊の方に目が行く。
「お・・・おいっ、なんだよそんな大声あげて?」
「そうだぜ、あまりの大声に驚いて酒ぇこぼしちまったじゃねぇかぁ・・・勿体ねぇぜ、畜生め…」
「・・・ん? そういやオメー・・・昨日辺りにウチに転がり込んできた奴だっけか? なんかその賊狩りのことを知っているのか?」
賊頭はその男が、昨日の昼頃に怯えて逃げる様に、この砦にやってきて、 大声で 「助けてくれ!」 と助けを求めてきた同業の男だと今思い出した。
そんな賊頭が思い出す中、その逃げてきた賊の下っ端は、ぽつりぽつりと皆には聞こえるがやや低く小さな声で自分の身に起きた出来事の始終を語り始めた。
「俺は・・・この群れに来る前、 百人程度の群れにいた・・・いつも通りだった・・・女も飯も全部掻っ攫って群れの頭も満足だった、だけど・・・その後、朝になって、眼が覚めた時、そいつは居た・・・そいつは・・・―――ッ!」
そこから口を鈍らす男。
その様子は、喉元まで来ている言葉が男のおぞましい記憶蘇らせ、喋るのを防いでいるようだった。
「な、なんだよ・・・! 早く言っちまえって・・・!」
傍に居た賊の下っ端に一喝され、 ビクッと怯えながら気が緩んだのか、重い口を開いてそのおぞましき続きを言った。
「そいつは一人の女で、周りにはぐちゃぐちゃになった仲間がいた・・・! あいつが・・・あの野郎が俺以外の全員・・・殺っちまっていやがったんだ!!!」
最後のほうは泣きそうな声で叫び、 男は怯えるように両手を頭に当て、 壁に向きを変えて小さく屈みながら怯え震える
ゴクリッ…。
賊の中の数名ほどがその話を聞いて、 唾を呑んだ。
この男は自分以外の仲間が皆殺された時に一度足を洗おうと考えていた、・・・が、しかし、この者は生まれた時から、この環境で育った言わば血筋の賊。
ゆえに、 賊としての生き方以外に選択肢が無いのだ。
賊として生きるか、 賊を止めて野性の肉食獣に襲われて喰われるか・・・
その選択肢しか残っていない、 だから男は今この瞬間、 絶望の海に呑まれている状態だった。
「で、でもよ、そいつは、たったの一人なんだろ?!」
「そ、そうだぜ。 俺たちゃ天下一の山賊一味! 賊狩りなんて親分の斧で真っ二つさ! ね、親分!!」
男の言い分を必死に否定し、そう言う賊達。
常識的に考えてそうだ。
一人で・・・ましてや女が百人単位の人間をいっぺんに殺すことなど不可能。
ましてや、 一夜にして殆どの賊達を葬るなど不可能でしかない。
そうやって当たり前の常識を頭の中で並べ、 気を紛らす賊達、
しかし、その考えを一気に覆すように震える男はガタガタと怯えて震える口を開いた。
「違う・・・お前達は分かっていない・・・あの女、あの女・・・あんなに人を殺したというのに、俺達みたいに笑ったりもしなかった・・・ましてや絶望も、悲しんでいなかった・・・何も感じていない・・・人の死に・・・人を殺めた事に・・・あの野郎は、何も感情を示していなかったんだ!!!」
その賊はいきなり信じられないことを言う
本来、賊とも言えども人を殺めるのだ、このご時世だからと理由を付けても相手の死は少しづつ苦痛になっていく、
だから、それを紛らわす為に笑い、自分達の良い感情と常識を表に出し切り、悪い部分は完全に奥底へと仕舞い込んで、人を殺める事に誤魔化しをする。
ただ普通に飯を取りたいのならば、女まで掻っ攫いはしない、女を攫い、犯す行為は、人を殺めた時の衝動と葛藤から逃げる為、そうしなければ全うに立つことさえ出来ないのだ。
しかし、この男が放った言葉は、そんな賊達の常識を打ち消すモノだった。
人を大量に殺めても尚、悲観も快楽も苦痛も無い、そこに感情などという代物が無い事が、何よりの恐怖だった。
それでいて、腕が立つという、そんな者に許しを扱いても無慈悲に、無残に殺されてしまうだろう。
周りの賊達も 「オメー夢でも見たんじゃねーのか!?」 とか 「んな事ある訳ねぇだろ! 嘘に決まってらぁ!」 と否定され、最終的には相手にしなくなってきた。
しかし、 男はしっかりと見ている。 精神は・・・今まさに狂いそうになっているが、 あの場・・・仲間が死んだ現場で確実に見た。
――――――必死に逃げようとした時、女は自分の方を感情の無い顔で金色の瞳でジッと見つめていたが、追いかける素振りは見せなかった事に。
その時だった。
――――――「ギャアッ!!」
賊の一人の断末魔が一瞬聞こえた。
「てめぇ!!! 賊狩りッ―――」
砦の中間辺りから聞こえた声・・・だが、 その声も一瞬で聞こえなくなった。
もう二度と聞けない声。
そして砦の隅々まで感じる殺気。
怯える男は両目を見開いて冷や汗を流しながら怯えながら心の中で叫んだ。
――――――奴だ! 奴が来た!! あの野郎(化け物)がやってきた!!!
戦闘態勢を整える賊達。
次々と鳴り響いては悲鳴が小さくなっていく・・・
そしてその時は来た。
殺気が賊頭達が居る部屋の大きな扉の前で止まる
賊達はポタポタと冷や汗を地面に垂らし、怯える男は腰が抜けて動けずに居た。
"ギィィィィィ・・・"
開いていく扉に一同は息を呑んだ。
・・・しかし、 そこには誰も居らず、「あれ?」っと、全員肩の力を落とし、緊張状態から放たれた。
その時だった。
ゴトンッ
何かが石の床に落ちる音がした。
それはちょうど賊頭が居る場所から聞こえてきた。
「あ・・・ぁああ・・・あああ!」
怯える男が壁にへばり付き怯えている姿を数名の賊の下っ端が横目で見た。
後ろを振り向くことに抵抗を覚える賊が後ろを振り向くと・・・
全身が巨大な血の塊のように紅い斧を片手に自分より数倍デカいであろう、 賊頭をたった一撃で首を刎ねて絶命させている金髪の青年が居た。
斬られた断面から噴水の如く噴き出す血を近くに居た賊や周りに倒れている女、 そして金髪の青年も全員真っ赤に血濡れた。
「あ・・・あ・・・うわあああああああああああああああ!!!」
恐怖しながらも目の前の敵を排除しようと突っ込んでいく賊達、 しかしそれも空しく賊頭を刎ねた大斧を振るい、 賊の胴体や首を刈っていった
辺りは、一変として血の海と化していった。
その光景を目にした怯える男は、 なんとかして逃げようと床を這いながらゆっくりと出入り口まで急ぐ。
その顔は涙と鼻水、 そして絶望と逃げたいという気持ちが一心に表現されている顔をしていた。
ドカッ
何かが切断された音がした。
「キャアッ!」
捕まっていた村娘の一人が小さな悲鳴を上げた。
それと同時に両足から感じる激痛と喪失感、 急に体が少し軽くなった気配。
男は最悪の妄想をしながら、 ガチガチ震えながら後ろを振り向いた。
――――――そこには、 妄想通りの光景が映っていた。
両足が無くなっており、 大量の血が床に流れ、 死んだ同業者の血と混ざり合う。
目の前には、 金色の美しい瞳をして、 こちらを見つめる青年が一人。
「あ・・・あぁ・・・あはっ・・・あはははははははははははっ」
男は完全に壊れ、男が最期に目にしたのは自分の顔目掛けて振り下ろされた紅い刃だった。
「・・・殲滅完了。 残りは・・・」
頭の潰れた男の死骸に背を向け、彼女は村娘達が捕まっている檻に近付く。
当然、村娘達は先ほどの一部始終を見ており「自分達も殺される・・・!」という恐怖心から、 悲鳴を上げながら酷く怯えていた。
だが、 自分らが想像していた事とはまったく違う結末が待っていた。
彼女は檻の扉の前に立ち、 錠前は流石に持っていなかったのか、縄でキツく何重もグルグル巻きにしているだけで施錠されている扉を斧で壊した。
それでも村娘達が最悪の事態を想定した・・・が、そのまま青年は背を向け、去り際に告げた。
「帰り道、気をつけてちゃんと家に帰れよ。 それから倒れてる女達もちゃんと連れてけよ」
それだけを残して、青年はそれ以上言わずにその場から立ち去っていった。
残された女たちは何が起きたのかサッパリ理解不能であったが、とりあえず助かったのだと安心し、檻から出ていき、それぞれ脱出の準備に取り掛かり始めた。
―――――――――――――――・・・
――――――――――・・・
―――――・・・
一戦を終えて、砦から外に出た青年の肌に冷たい風が通る。
「今日は冷えるな・・・」
思えば今日一日はスケジュールが沢山で少し疲れてしまった。
明朝すぐに賊と遭遇し、当然の如く無礼な言葉を吐かれて怒った彼女は賊を殲滅したが、その後すぐにまた賊と遭遇して倒して・・・
気が付けば辺り一面の賊をペンペン草が生えない程に狩っていた。
というのも、彼女自身が酷くキレており、次々出てくる賊の台詞の中で誰一人として彼女を女と見ずに金品を要求する台詞ばかりで完全に女と見られなかったのが主な原因だった。
途中で怒りは収まったが、それでも再びこんな事が起きるのが嫌だった事もあり、賊狩りを続けた。
それが丸一日、太陽は完全に沈み、月が空に出ていた。
「さて! 寄り道し過ぎたな・・・さっさと先に進むか!」
そう独り言を呟き、青年は先へと進み始めた。
――――――これが、 一夜にして殆どの賊が惨殺される事件の一部始終である。
●【リント変身図鑑】
《迷いのホロウレディ》
《小話》
今話で登場した別衣装。
今回では大きく能力を見られなかったが、リントにとっては本気とも言える衣装。
主にキレた時や本気にならざるを得ない状況下に陥った時のみ、この衣装になる。
今後もたまに登場して活躍して、次第にどういった性能なおか解っていきます。
●【今話のバトルBGM】
(今回の戦闘シーン:ポロリもあるよ!山賊大虐殺)
戦闘曲: {Eccentric Rhapsody} (PSVITA専用ゲームソフト「ソウルサクリファイス」戦闘BGMより)
《小話》
緊張感と絶望感が同居したようなBGMといえばこれかと。
ソウルサクリファイスはストーリーおよびゲームシステム上、良作ともいえるゲームなのですが、あまりにも出来が良すぎて、ややマイナー化してしまった作品。
何より、PSVITA発売後まもなくして登場したゲームで、さらにそこから数年掛かってシステムとシナリオ強化した「ソウルサクリファイス・デルタ」を発売したのは良いのですが、数年という大きな間がありすぎて当時のプレイヤーか最近になってVITAを触った人しか興味が向かなかったが宜しくなかった。
しかし、このデルタではエンディングが前作と一変しており、前作はダークファンタジーの定番であるトゥルーエンドでさえ救いがないバッドエンドであったのですが・・・デルタでは一部のエンディングを撤去、そこに救いのあるグッドエンドが入っており、そのエンディングまでの条件も追加されたシナリオを果たす事で見れるという仕様。
デルタは体験版からやった口ですが、前作よりもスタイリッシュさが増してやりごたえがあります。
・・・が、売れ行きが宜しくなかったのと、良ゲーが重なり現在では最寄りの中古店では前作でさえ見られなくなってしまった現状。
あのゲオでさえ、売ってないというデデドン!(絶望感)
●【あとがき】
「さーて、 どれぐらい見てくれてる人が・・・ん?」
( 0w0) ■←PC
seigouさん「思い通りに書いちゃってください!」
( ・ω・)ゞ
「・・・・・・・・・。」
( 0w0) ■←ぴーしー
「ぜあ?」(※パクメンボイス)
( ◇) ←驚いてます。
ビビりました。 すっげぇビビりましたとも。
しかも、 今日になって別の方の感想を頂くなどありがてぇ・・・ありがてぇ・・・!
今回のお話でリントの大きな力が出ましたが、まだまだ強い能力を持った衣装が次々と登場します。
ですが、話によっては既に出た衣装が何回も出る事もしばしばあると思います。
まぁ成るべくストックしてある衣装たちが全部出れたらなっと思っています。
次回はちょっと派手にドンパチするお話です。
それから次回からキャラクターの台詞前に名前が付くようになります
名前無しのモブや主要キャラでもまだ名明かしでは無い場合などに対しては台詞のみとします。
あと、あとがき部分はサブタイトルとなっております。
ではでは〜
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グロイ…でもそこがいい!次回も楽しみにしています! いあいあ(ツナまん) | ||
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